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その四 将棋上達論


「将棋が強くなるためには、どうすればいいか」
これは、将棋を指す人にとっては永遠のテーマかもしれません。

強くなるために、詰将棋をやる、実戦を指す、感想戦を行う、手筋を覚える、必死問題をやる、テレビ将棋対局を見る、定跡を覚える、そのほかいろいろなことが言われています。
そして、それらはだいたい正しいと思う。

私は聞かれたときは、まず
級の人は(初段を目指すために)、実戦を指す(できれば自分より強い人と)、簡単な実戦型の詰将棋をやる、手筋ものの本を完全に自分のものにするまで読む、と答え、
初段から三段の人は(四段を目指すために)、上記のこと以外に様々な将棋の本を読んだり、一局一局を大事に指し、感想戦を行う、ことを言っています。

しかし、そういったことをやっているのに強くならないよ、という人も大勢いる。

ここでは、「将棋センター」である利点をいかし、ちょっと変わった方面から、将棋上達の道を探っていって見ようと思う。

将棋センターを始めて五年、その間明らかに強くなった人と、いっこうに強くならない人がいる。
なぜ、この違いが出るのか、その原因を追究することで、将棋上達の方法を考えて見たい。

なお、上達においても、級の人が初段になるのと、初段が四段になるのとではその難易度は自ずと違う。棋力は上に行けばいく程、さらに上達は困難になってくる。級の人は、実戦、詰将棋、手筋で初段になれると思う。
ここでは、初、二段の人の上達を中心に考えることにする。

では、常連の中で将棋を上達した人を具体的にあげてみよう。(平成6年7月にセンター開始)

柳内四段(平成5年1月2級、6年7月二段、8年10月三段、11年1月四段)
プチ五段(平成5年1月初段、6年7月三段、8年1月四段、9年2月五段)
関根三段(平成6年7月1級、7年8月初段、8年12月二段、9年12月三段)
山口三段(平成8年3月初段、9年4月準二段、9年7月二段、10年11月三段)
竹武初段(平成10年5月1級、平成10年8月初段)

平成6年7月以前は、別の将棋クラブがあり、そこで指していた段位。
竹武さんは、昨年5月に始めて来たときは、1級でもぎりぎりだったのだが、現在準二段へ昇級しそうな程、力を付けたのでここに載せてみた。

では、いっこうに強くならない人をいちおうA初段、B二段、C二段、D二段、E三段としておこう。
(私の頭の中では、具体的な人がいますが、イニシャルでも差し障りがあるので)

まず、年齢について。
上達組5人の年齢は、二十代2人、五十代3人だ。
A〜Eさんは3人が四十代で、二人が五十代だ。
若ければ強くなり易い、というのは事実のようだが、これ以外で二十代で来ていた人の中でもいっこうに強くならないで来なくなってしまった人もいる。
・・・・・・・意外に年齢は関係ないのかもしれない。

次に対局数。
平成10年の対局数を見ると(手合いカードのみ:それ以外では土曜トーナメントと入間順位戦数局)、
柳内四段450局、プチ五段193局、関根三段303局、山口三段235局、竹武初段184局だ。

これに対して、A〜Eさんは、少ない方からおよそ50局、100局、300局、400局、450局となっている。
これ以外でも、確かにあまり来ていない人は上達していないことも事実のようだ。
・・・・・・・・指さないと強くならないのは事実のようだが、局数だけ多くてもダメらしい。

次に感想戦の有無、又は長さとその質。
感想戦が長いので有名なのはプチ五段。小松四段と組んだときは、3時間はほっといていいと思っている(実戦1時間半、感想戦1時間半かかるので)。
他の人を見ると、上達している人はそれなりにみんな熱心に感想戦を行う。
一番短いのが柳内さんかも知れないが、それでも負けたときや寄せに関してはよく検討している。
私に疑問や感想を聞きに来るのも、たいてい上達組だったことも今改めて気づいた。

これに対して、A〜Eさんは、最も長い人でも柳内さん並だ。ほとんどの人は、二言三言話しただけで感想戦を終わりにしている。
さらに、その内容にしても、自分の主張だけして、他の(特に上段者の)意見をあまり聞こうとしない場面も時々見受けられる。
・・・・・感想戦とその質は、明らかに上達の有無に関わってきていると考えられる。

次に棋風。
柳内四段、山口三段、竹武初段はおよそ攻め6分受け4分。プチ五段と関根三段はほぼ5分5分。

これに対してA〜Eさんは、何と全員が攻め7割から9割の攻め将棋だ。

さらに、上達組5人に共通して言えるのは、みな粘り強い、と言うことだ。
山口さんは、初段当時過激な攻めで切れてしまうことが多かったが、今は攻めと受けにバランスが取れてきた。他の四人も、悪くなっても粘って耐えることを知っている。

これに対して、A〜Eさんは、攻められるのが苦手で、ちょっと悪くなると、まだ十分頑張れるなと思うところでさえもぽっきり折れてしまうことが多い。

次に指し手を見ていて感じたこと。
上達組5人は、一手一手に少しずつでも考慮時間を使う。

これに対して、A〜Eさんのうち3人は、相手が指すか指さないかの内に、すぐ指してしまうことがよくある。
他にも、たまに相手が駒を置くか置かないかという時に、むしり取るように駒を取る人を見かけることがあるが、こういう人は、まず上達はしないと思っていい。

また、上達組5人は、決して「待った」をしないが、A〜Eさんは、ともすると「待った」をするのを見かける。
「お前のところでは待ったを許すのか」と怒られそうだが、
うちの規定では他と同じく、「駒が手から離れた時点で、指し直しはできない。微妙な場合は、時計を押したかどうかで判断します」としているが、反則の場合は、相手が許せば指し継ぐことができる(その場合は反則はなかったものとして扱う)というふうにも規定しています。
だが、A〜Eさんは、反則をしたとき(二歩の時はさすがに投了することが多いが、成れないところで成ったり、筋違いに角が動いたり、王手を見落としたりしたとき)は、相手の意向に関係なく勝手に戻してしまうことが多いようだ。
これは、初二段クラスの将棋では、結構普通のような気もするが(王手を見落としたとき、そこで「負けました」と言って投了してますか?)、こうすることが、上達の妨げになっているとも言えそうだ。

最後に、この考察文を書くに当たって、全員に、うちに来ること以外に、何か将棋についてやっているかどうか聞いてみた。

上達組に1人、A〜Eさんの中に1人づつ、詰将棋を時々やっている人がいただけで、ほとんどの人はテレビ将棋対局を見ること以外何もやっていなかった。

さて、そろそろまとめてみよう。
実は、この考察を始める前に、いちおう自分なりに上達する人やその方法は考えていた。
しかし、そこへ結論を持っていくことはしないで、できるだけ忠実にデータを見ていくことにした。
その結果、
(1)年齢だが、私は十代は将棋にかけた時間に比例して強くなる時期、二十代も速度は遅くなるが、まだ強くなれる。三十代以降は、基本的に強くはならない、と思っていたのだが、少々考えを変えた。
つまり、データを見る限り、若くて強くならない人もいれば、五十代でも確実に強くなる人もいる。
基本的に、そんなには関係ない、ということだ。

(2)データを並べてみて、一番面白いと思ったのは、強くなる人は、弱いうちから、攻守にバランス良く、粘り強いということが分かったことだ。
これは、裏を返せば、攻めだけの人は、粘り強い棋風に変えていく事ができれば、一段と上達の可能性が見えてくるということでもある。

(3)将棋の勉強方法は、「実戦と感想戦に尽きる」とこのデータは教えている。
詰みの弱い人は、プラス、易しい詰将棋を数多く解くこと。
感想戦は勉強になる、とは思ってはいたのだが、私自身これほどまでに、有効なものだとはこのデータを集計するまで考えていなかった。
逆にいえば、感想戦のない実戦は、上達に関してはほとんど意味のないものと言える。
ただし、これはあくまで大人の場合で、子供の上達方法は全く別のものなので、間違えないように。
さらに、感想戦の質だが、自分の主張しかしないで、別の将棋になっていたり、明らかにどうしようもない局面を検討している場面を見かけることがあるが(あるいは、どうしようもない、ということが分からないのかもしれないが)、できるだけ、上段者の言うことは素直に聞くことだ。
局面によって意見の分かれるところはもちろんある。しかし、自分より二段以上上の人の意見はほぼ間違いなく自分の見方より正しい。
上達組の関根三段は、級の頃から、我々の意見を一番素直に受け容れて来て、しかも確実に吸収していった、と感じている。

週1回は将棋センターで、5局指し、感想戦を納得するまで行い(できれば強い人にどう指したらいいか聞き)、テレビ将棋対局を見、時々易しい詰将棋を解く。勉強方法は、これで十分と言えそうだ。
なお、上達組5人の空き時間は、週刊将棋、近代将棋、将棋世界を読んだり、他人の将棋を熱心に観戦していることが多い、ということも付け加えておきたい。

(4)将棋の指し方に関して
相手の指し手に対して、間髪を置かず指すクセのある人は、上達しない、と言えそうだ。
プロやアマ強豪でも早指しの人はいるが、「間髪を置かず」などどいう人はいない。
相手がまだ駒から手を離さないうちに、指してしまうなどと言うことは、相手に失礼でもある。

これは、指す時の心構えで変える事ができるのだから、上達したいと思う人は、是非一手一手に考慮時間を使って欲しい(絶対の一手と思えるところでも一呼吸置くことだ)。

もう一つ、心構えとして、絶対に「待った」をしないということもあげておきたい。
当たり前じゃないか、と思われそうだが、たとえば、王手を見落として着手してしまって、相手がまだ指す前であっても、指し直しをしないで投了する気構えが必要だ、ということだ。
これは、成れないところで成った駒に対しても同じだ。反則は反則、二歩と同じなのだ。
反則負けをし、次からは気をつけようと本当に思わなくては、なかなか早指しのクセは直らないものだからである。


以上、データから見た上達法を探ってきたが、いかがだったろうか。

と、ここまで書いてきて思ったのだが、こうした上達法を実践していく上で、大前提がある。
それは、将棋が「好き」であること。
当たり前のようだが、将棋センターに来る人の中には、会社で将棋をやっているからとか、「好き」なこと以外の理由で、将棋を習いたい(勉強したい)と言う人が、時々来る。だが、「勉強する」という意識のある人は九分九厘上達しない、と言える。
まず、「好き」であること。そしてその上で、今まで見てきたような上達法を実践することで、上達への道が開けてくるのではないだろうか。
1999年02月16日

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