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その七 ネット将棋と将棋道場


最近、インターネット将棋対局(以下ネット将棋)が、はやり、町の将棋道場がその為に減りつつある、というような話を聞くことがあります。
先日、そのことについての質問をいただいたことを機に、以前から、ある程度の考えを持っていたので、今回ちょっとまとめておくことにしました。
なお、本来はもう少し検証してから載せたいのですが、今回は、急遽載せることになりましたので、ここでは、あくまで、現段階の私の考えということにしておいて下さい。
そして、ネットそのものも、まだまだ発展途上のものです。ですから、新しい技術によって、これからはネット対局そのものも、様々に変わっていくであろうと思われますが、これも、今のそして、ネット対局と言えば、将棋倶楽部24が最も会員数も多いと思いますので、この24を考えながら、ネット対局と将棋道場について考えてみたいと思います。


さて、一概に将棋道場と言いますが、ネット将棋との対比で考えた場合、将棋道場に二通りあることを考慮しなければならない、と私は考えています。

一つは、都会にあるような、大きな将棋道場で、将棋をたくさん指したい人が行く将棋道場です。そして、もう一つは、地方の将棋道場で、もちろん将棋を指すために行くのですが、行けば知り合いばっかりの、小さな将棋道場です。
もちろん都会には、大きな所ばかりでなく、地方と同じように、顔なじみの者だけが集まる小さな将棋道場もあります。
要は、形態を二通り考えなければならない、と言うことです。

私の将棋センターでも、ネット将棋を指している人は、何人かいます。
しかしそういう人たちが、その為に、将棋センターに来なくなる割合は、今のところ10人に1人くらいだと思います。
逆にインターネットで将棋を覚えて、将棋センターに来る人もいます。
私のところでは、ネットで見て、将棋センターに来る人の方がはるかに多い訳ですが、ホームページを出している「入間将棋センター」を、そのまま、他の将棋道場に当てはめるわけにはいかないかもしれません。
しかし、少なくとも、地方の将棋道場においては、ネット将棋の為に来なくなる人というのは、ごく僅かだと私は考えています。

その理由は、いくつかありますが、まずネット将棋と将棋道場などでの対面での将棋の違いから見ていきます。

実は私も、将棋倶楽部24では、会員になっています(他のネット将棋は、一つもやったことはありませんが)。
そして、最初のうち、何局か指してみましたが、正直それほど面白いとは思いませんでした。
規定対局数である30局程度は、仕方なしに指しましたが、とてもそれ以上指す気にはなれず、最近は入っても観戦だけです。
そしてそれは、今のような、将棋センターをやっていなかったとしても、たぶん同じように感じて、近くの将棋センターに行くことはあっても、ネット将棋はそれほどやらないでしょう。

なぜ面白いと感じないのか?それは、将棋そのものがつまらない、と言う訳ではなく、対面しての将棋に比べると、つまらないということであり、普段指したり、将棋を見ることができるのに、わざわざネットで指すことに意味がないと感じているからです。

「つまらない」ことを、具体的に、文字に表すことはなかなか難しいことです。
ただ、一番つまらないと感じる理由は、人と指している、というよりは、コンピュータと指しているみたいに感じることです。特に、まったく話をしない場合(最初と最後にあいさつはするかもしれないが)、画面の向こうに人がいると分かっていても、やはりコンピュータ相手にしているのと変わらないのです(これは人によって違うでしょうが、私は一人でテレビゲームをやることに面白さを見い出せない人間です)。

上記の理由が私の場合は、一番ですが、それ以外に、一般的な理由をあげれば、一つには、感想戦がほとんどできないことがあります。
これは、ネット将棋でもできる、と言う人がいるかもしれませんが、仮にチャットで1時間感想戦をやるとしたら、対面では10分程度で済むでしょう。私は、感想戦を一局1時間程度行うのが普通なので、もしチャットで行うとしたら、3、4時間かかってしまうかもしれません。
しかも駒を動かして検討することも出来ず、キーボードを打つだけでは、言いたいことの半分も話せないでしょう。しかも対局が終わると、すぐに去ってしまう人も多いので、感想戦はほとんどできないことが多いです(もちろん、感想戦などやりたくない、将棋をたくさん指したい、という人の気持ちも分かりますし、すぐに去ってしまうことが悪いと言っているのではありません)。

さらに、地方の将棋道場では、より強い人が見ていて、その検討に加わることが、よくありますが、それもまたできません(一部ネットでも出来るかもしれませんが、やはりチャットの限界はあります)。

それら以外に、画面上で将棋を指すより、駒や盤を使った方が、はるかに感触がいいことも上げられます。
これは、テレビゲーム慣れしている人には、「なんだ、そんなことか」と思われるような事ですが、実際にツゲ駒を使って指すのは、画面上でマウスを使って指すのとでは、雲泥の差があります。
実際、私などは、ネット対局では、15分の60秒では長すぎて(特に相手が考えている時)、30秒の早指しがちょうどいいと感じるのに、将棋道場など対面での対局では、普段指している25分の60秒でも、短いと感じてしまいます。
これは、コンピュータ相手にした場合と似ているということもありますが、いかに、ネット対局では、本気で考えていないか(なかなか本気になれない)、ということの証明にもなっているでしょう。

さて、ネット対局と対面対局の違いの他に、将棋道場がなくならないと考える理由がもう一つあります。
但し、これは、すべての将棋道場に当てはまることではないかもしれません。

それは、地方の将棋道場に来る人たちは、なんの為に、将棋道場に来ているか、という事に関係しています。
前に将棋道場の形態を二つに分類したのは、この理由を説明する為ですが、地方の将棋道場では、単に将棋を指しに来る、というだけではなく、「同じ趣味を持つ友達」に会いに来る、ということもあると思います。

以前、私は将棋もできる喫茶店によく出入りしていた時期があります。
そしてそこには、たいてい誰かがいて、何時間もおしゃべりしたり、将棋をしたりと、楽しい時間を過ごしていました。
私は、地方の将棋道場というのは、ある意味、将棋も出来る喫茶店に近いもの、と思っています。

ですから、将棋だけをやっている、都内の大きな将棋道場の場合には、ネット将棋にお客さんを取られる、ということは、あり得ることかもしれません。
将棋を指すことだけしか、行くことに意味がないのであれば、ネット将棋でも同じだからです。

しかし、将棋を指すこと以外に、将棋道場に来る理由があるなら、ネット将棋にお客さんを取られることはないと思えるのです。

ネット将棋がはやることを将棋道場閉鎖の理由に上げる人がいるかもしれませんが、私は、その理由はそれほど当たらないと思っています。もし、将棋道場が全体的に減っているとしたら、それは、ネット将棋とは関係なく、減っているのです。
もちろん、将棋をただ指すだけで感想戦さえ行えないような大きな将棋道場にとっては、ネット将棋の隆盛は、大きな脅威になる可能性はあります。その時は、ネット将棋との差別化を図らなければならないでしょう。
それに、将棋道場の効率の悪さは今に始まったことではありません。
将棋道場の経営については、いつか機会があれば、また話したいと思いますが、単に将棋が好きだから、という理由だけで将棋道場を始めよう、というのでは、自分の考えていたことと、現実との違いにすぐに気付くことになるでしょう。

さて、ネット将棋が将棋道場に与える影響ということで、簡単に述べてきましたが、もちろんこういった考えが、ネット将棋を否定していると言うことではありません。

むしろ私は、インターネットのこれからの発展を、期待をもって迎えたいと思っています。
ネット将棋には、様々な利点があります。まず、「将棋だけをたくさん指したい人」には、これほど便利なところはないでしょう。特に、級位者でも、これほどたくさん平手の相手がいるところは将棋道場では皆無です(但し、強くなろうと思うのなら、同じくらいの人との平手と、明らかに棋力が上の人との駒落ち、両方指せることがベストです)。
また、地方で、将棋道場自体がないところもたくさんあるでしょうし、そういう人たちにとっては、まさにすばらしい場所が提供された訳です。

そして、これはネット将棋に限りませんが、ネットそのものが、今までなら、一生出会わなかった人たちとの出会いも提供しています。

私自身、ネット将棋がそれほど好きでない、と言っていますが、それは、あくまで対面の将棋に比べて、と言うことで、たとえば、掲示板に書き込みをしてくれたり、メールをくれたり、あるいは他の将棋のホームページで知り合った人たちと、将棋を指したり、観戦したりするのはとても楽しいことです。

遠くの方へ引っ越してしまった友達から、最近メールをもらい、時間を合わせて、将棋を指すこともあります。こんなことはちょっと前なら、考えても見なかったことで、本当にすばらしいことです。

インターネットは、まだ本格的に普及して、数年しか経っていないのに、産業構造そのものを変えるほどインパクトのあるものです。今後は、将棋道場も、また将棋の普及ということに関しても、ネット社会を見据えた上で、柔軟に対応していかなければならない時代に来ているのでしょう。

21世紀の始まりに
2001年01月01日作成

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