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その九 トライルール運用状況

入間将棋センターにトライルールを採用して約4年が過ぎた。
「マリオ武者野ホームページ」の掲示板で、このトライルールの話題が出たことをきっかけに、この4年間でのトライルール運用状況について、ここに書き記して置きたいと思う。
トライルールが何なのかということについては、勝手に考察文「その一 持将棋とトライルール」をご覧下さい。

なお、状況説明の前に、一つ訂正しておきます。
トライルールは、先崎プロの提唱しているものと「その一」で書きましたが(そのこと自体は間違ってはいませんが)、発案は武者野プロが昭和51年(1976年)の近代将棋で発表しているものだそうです。
私自身は、1996年の将棋世界で読んだのが初めてでしたので、これが最初と思っていました。ここに訂正しておきたいと思います。


さて、実際の運用から4年、その間に発生したトライルールを、百局以上実際に見てきた。
そして、その結果を一言で言うなら、当初のもくろみ通りうまくいっている、と同時に、このトライルールは、非常にすぐれたルールだということを再認識させられたということだ。

それまでは、持将棋になると、永遠と駒の取り合いが続いたり、入玉された後で、判定を求められたり(特に駒落ちの場合など)と、いろいろ問題があったのだが、トライルール採用により一挙に解決した。

当初、多少危惧された問題点も、実際にはほとんど起きなかった。
そういった問題点について、今回、マリオ武者野ホームページの掲示板に書かれた反対意見について、ここに反論を載せておきたいと思う(反論と書くときつい言い方になってしまうが、これら反対意見は、大変考えさせられるものであり、参考になりました)。

反対意見を取り出して見ると、多少重複するものもあるが、主たるものは、次の8つであろうか。

(1)「詰ます」という目的以外の勝敗決定ができてしまうのはどうか。
(2)1にニュアンスが重複するが、将棋のゲーム性が変わる可能性があるのではないか。
(3)引き分けをなくすことは重要なのか
(4)過去の名局の勝敗がひっくり返るのではないか
(5)詰将棋などで、入玉形や長編などが、トライルールとぶつかってしまうのではないか
(6)トライルールでも、5一を固め合って、終わらない状況が生じるのでは
(7)6に重複するが、無勝負となる状況は発生しないのか
(8)序盤から、あるいは中盤からでも、故意にトライを狙う指し方が発生しないか。


(1)及び(2)について
「詰ます」という目的以外の勝敗決定ができてしまうということであるが、それは今の持将棋規定でも同じことが言えると思う。そう言う意味では、実際に試してみれば分かるが、トライルールの方が、今の将棋に近いものであり、将棋のゲーム性は、先崎プロの言うように、「ほとんど変わらない」と言える。逆に言うと、途中から、駒取り合戦になってしまう、今の持将棋規定の方が、将棋の本来のゲーム性を失っていると言えるのではないだろうか。

(3)引き分けをなくすことは重要か、については、これら反対意見のなかでは、根本的な問題だ。
引き分けでもいいじゃないか、と言われれば、それについての反論はないが、やはりそれが勝負である以上、できるだけ決着をつけるべきものだと思う。
さらに、問題となるのが、プロとアマの規定の違いだ。「その一」でも書いたが、この規定の違いも、トライルールを推奨する大きな理由の一つである。

(4)過去の名局の勝敗がひっくり返る可能性、これは確かにあると思う。このことは考えたことがなかったが、ある一定の時期から一斉にルールを改正すれば、それほど問題はないと思えるがどうだろう。

(5)詰将棋の規定に関しては、確かにトライルールを採用すると問題があると思う。ただ、これも、詰将棋の規定として、はっきりさせればいいことではないだろうか。

(6)及び(7)5一を固めあって、延々と将棋が終わらないかも、ということに関しては、少なくとも従来の規定よりは、早く決着がつくことは確かだ。やはりいくら5一を固めても、と金で攻められることになるので、早晩トライは阻止できなくなる。
ただ、百局も見てくると、いろいろな局面に遭遇する。5一を金銀で固めて、かなり超手数になった将棋もあった(1〜2%だと思う)。だが結局は勝負がつき、無勝負にはならない。仮に1万局あっても、(入玉形の千日手などを別にすれば)無勝負にはならないのではないかと思う(証明はできないが、同時に無勝負になる状況というものも想定できない)。

(8)序盤から入玉を狙うことになるのでは、というのが、反対意見として、かなりあったように感じたが、実際にやってみれば分かるように、入玉狙いは、かなり棋力が離れていないと無理だ。
これは、トライルール採用の際、実際に初、二段の人を相手に(本来は二枚落ちの手合い)何局もやってみたが、最初から入玉を狙っても、途中で詰めてしまった方が、はるかに早いという結果に終わった。また、同じくらいの手合いの人とでは、逆に入玉狙いでは、ほとんど勝てない。
高段者なら、分かってもらえるだろうが、入玉のコツは、追われながら入る、ということであり、自ら入ろうとすると、なかなか入れないものだ。さらに、先崎プロも書いていたが、自ら入って、トライできるようなら、今の規定でも、十分入玉して勝ちまくれるだろう。

ただ、ある程度、入玉が可能になってきた中盤過ぎに、今までの将棋と変わることは考えられる。今までなら、持将棋も視野に入れながら、大駒を取られないように指し手を進めてきたが、今後は、駒数に関係なく、トライを試みることになろう。
これは、今の将棋センターの将棋がそうなっており、逆に言うと、本来の将棋に近く、捨て駒をして手をかせぐ妙手が出たりと、従来の駒数判定よりは、はるかに面白くなっているのが実状だ。

以上、トライルールの経過を書いてきたが、今問題となっている点も書き記しておこう。

一つは、やはり負けた人の不満。トライルールでなければ、勝っているのに、ということだが、これもローカルルール故の不満であると思う。打ち歩詰の局面になって、「打ち歩が禁じ手でなければ勝っているのに」と文句をいう人がいないように、トライルールが増えればこれに対する不満を言う人もいなくなるだろう。

もう一つは、詰んでいながら、トライルールのために、負けになるパターンだ。
これは、詰みの途中で5一を通過してしまう場合だ。百局のうち、3〜4局見たかもしれない。私自身、横から詰みを読んでいた際、どうしても5一を通過してしまうという経験をしている。
この場合、やはり詰み優先にした方が良いのだろうか、と考えたこともあった。
しかし、現状は、変えていない。理由は、「ルールは簡単に」することがもっもと大切だと思うからで、詰みの場合だけ、例外にするという風に複雑にすると、ますます分からなくなる人たちが出て来るからである。


以上のように、多少問題点はありながらも、駒数判定に比べれば、トライルールは非常にすぐれたルールであると思う。
すぐにルール改正が行われるとは思っていないが、持将棋の規定に不満があったり、駒落ちの場合の入玉規定に悩んでいる将棋道場の席主などは、是非このトライルールの導入を検討して見てもらいたいと思う。

私自身、導入理由は、駒落ちの場合の入玉が問題となったからである。導入して4年、今ではほとんど問題にはならず(ごくまれに入玉されてから、ルールを思い出す人もいるが)、入間将棋センターのすぐれたローカルルールとして、運用されている。

2001年06月20日作成

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