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(13)ソフトが指すタイトル戦最終盤 part2

前回、「ソフトが指すタイトル戦最終盤」と題して、王位戦第4局を取り上げた。検証するのに時間がかかるため、これ一つでしばらくはやらないつもりでいたが、続く第5局でも終盤面白い局面が発生した。

そこで、前回と同じように(今回はあまり深く突っ込んでいないが)、ソフトが、どのような指し手を下すかを検証してみたい。
なお、参考までに、「ミニ感想の9月分」も見ておいてもらいたいと思う(変化が少し書かれているので)。

(ソフトが指す王位戦第5局最終盤)


この局面から、▲5一銀成と指せば、先手の勝ちになる、と言うのが感想戦で分かっていること(実際は▲5一銀不成と指して後手の勝ち)。そこで、ソフトに、先手を持たせ、この局面から勝ち切れるかどうかを試してみた。

この局面からの指し手を検証するのは、東大将棋5のマスター(無制限)と東大将棋6のマスター(無制限)。そして、激指2(四段)だ。


左図からコンピュータが先手を持ってスタートした(後手は私)。

まず、東大6(無制限)の指した手順。(カッコ内はソフトの形勢判断)

▲6六桂(先手優勢)△4五玉▲8七銀(先手有利)△同桂成▲同金△6八角▲5一銀成(先手優勢)△8六歩▲7八玉(後手有利)△5九角打▲5七桂打(後手勝勢)△4四玉▲4五銀△3三玉▲3四銀△2二玉まで東大6投了。

次に東大5の指した手順。

▲6六桂(先手勝勢)△4五玉▲8七銀△同桂成▲同金△6八角▲5一銀不成△8六歩▲7八玉(先手優勢)△5九角打▲5七桂打(後手優勢)△4四玉▲4五銀(後手勝勢)△3三玉▲3四銀△2二玉まで東大5投了。

最後に激指2の指した手順。

▲6六桂(先手有利)△4五玉▲5一銀不成△6八角▲4六銀打△4四玉▲5五銀(後手有利)△3三玉▲4二銀不成(後手優勢)△同金▲3一飛(後手勝勢)△2二玉▲2一飛成△同玉▲7九桂△5九角打まで激指2投了。

どのソフトも▲6六桂から入った。実際、この▲6六桂は、かなり有力な一手である。そして、その後、東大6と5の違いは、面白いことに、▲5一銀を成りと不成で指したことだ。実戦では、羽生四冠が、成っていれば勝ちと言っていたが、▲6六桂を決めてしまうと、全然違うことになってしまい、この場合は、(五十歩百歩ではあるが)不成の方が良い。また、激指2のように、▲8七銀と精算しない方が、紛れが多いと思うが、それでも、▲6六桂と打ってしまうのは、僅かに先手が勝てないようだ。



次に、▲5一銀不成の局面から後手を持たせて、谷川王位と同じように、△8八と▲同金△6八角と打てるかどうかを検証して見た。

今度は、左図から、コンピュータが後手を持ってスタートだ(先手は私)。

東大6の指した手順

△7八と(先手勝勢)▲同玉△8七歩▲7七銀△8八金(先手優勢)▲6八玉△7八金打(先手勝勢)▲5八玉△4四歩(結局寄せきれず、ここで受けるようではダメ。これ以降の手順には意味がない)▲5二飛△4三玉▲5三銀△3一角▲4四歩△3三玉▲4二銀引不成△同角▲4五桂△2二玉▲4二銀成△1二玉▲3二成銀△6五歩▲3三成銀まで東大6投了。

東大5の指した手順

△7八と(先手勝勢)▲同玉△8七金▲6八玉△8六角(先手優勢)▲5八玉△8八金▲4六桂△4五玉▲5二飛△6八角成(先手勝勢)(これ以降は単なる王手攻撃、意味がない)▲同玉△7八金▲同玉△8七桂成▲6八玉△7八成桂▲同玉まで東大5投了。

激指2の指した手順。

△8八と(先手優勢)▲同金△4四歩(ここで受けるのではダメ。これ以降の手順には意味がない)▲5二飛△4三玉▲5三銀△3一角(先手勝勢)▲4四歩△3三玉▲4二銀引不成△同角▲4五桂△2二玉▲4二銀成△7九金▲同玉△8七桂不成▲同金△1三角▲2四桂まで激指2投了。

東大5と6は、いきなり△7八とと金を取ってしまった。実際、この局面、金を取るか銀を取るかは難しい。普通の寄せでは、玉の側の金をはがす方が8割方正しいと考えて良い。但し、この場合は、数少ない例外で、銀を取った方が寄せやすいのだ。激指2は、銀を取ったので、おっ!と思ったのだが、△6八角を見逃し、△4四歩と逃げ道を開けてしまった。しかし、これでは、手を延ばすことが出来なかった。

東大5と6の違いは、3手目に△8七歩か△8七金かだ。△8七金は取っても先手が残しているはずだが、やや難しい。しかし、東大6の△8七歩から△8八金では、かわされて全然ダメなので、ここでは東大5の方が僅かにまさった手を指したと言えるかもしれない。

(結論)

さて、今回は、前回に比べると、ソフトにとっては、やや難しい問題だったと思う。と言っても、実際には、前回の詰めろやとん死があれだけ頻繁に発生する将棋自体がかなり珍しく、今回の一手争いの将棋ですら、それほど多くはないと思う(谷川−羽生戦は、こういうのが多いから面白いとも言える)。

良く、私が、将棋センター内の初二段クラスの将棋を見ていると、「一手指した方が悪く見える」と冗談を言いながら感想戦に加わるが、実際、このクラスの将棋なら、どの段階からどっちを持っても、勝てる、と思うことが良くある。
逆の意味で、同じ事が、谷川−羽生戦でも言えると思う。第4局にしろ、第5局にしろ、終盤は、非常に難解だった。この終盤は、自分らレベルでは、どっちを持っても(勝ちのある局面からでも)、間違いなく負かされてしまうだろう。

今回、ソフトは、いずれも勝ち切ることが出来なかったが、その結果を持って、弱いとは言えない。それは、十分検討した後の私と対局したからであって、もし、この局面を突然出され、ソフトと対局しなさいと言われたら、きっと互角の勝率に持っていくのが精一杯だと思う。

この局面から、検討した後の私に勝てるとしたら、それは、はっきりプロの力を持っていないと無理だ。
しかし、いずれは、▲5一銀成から▲5二飛と指すソフト、後手を持って△8八とから△6八角と指すソフトが現れると思う。この第4局や第5局の問題を、今後出てくるソフトにも試して見たい。こう言った局面から、勝ち切れるソフトが出た時、ソフトの終盤力はプロ並みになったと言うことが出来るだろう。

今は、「詰みはソフトに聞け」と言った感じだが、5年後には、「終盤はソフトに聞け」となっているかもしれない。それを楽しみにしながら、今回の検証を終わりにしたいと思う。

2003年09月18日作成

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