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(14)激指3の実力

2003年12月11日、激指(げきさし)の新バージョン、激指3が発売された。ここでは、その激指3を使っていろいろと検証した結果を載せていこうと思う。

なお、検討対象としたレベルは、特に断りのない限り、強さは「四段」で、棋風は初期設定のまま。人間が指す場合は、「人間の手番の時間を利用」し、思考時間の上限は60秒とした。使用のコンピュータは、今では、遅いものになってしまったが、Pentium4の1.6G、メモリ512M、WinXPで、検証中は他のソフトは起動していない(一部常駐ソフトを除く)。また、文中の段位は、全て平均的と思われる将棋センターのもの。将棋倶楽部24の段位は辛いため、もう少し下がると考えて下さい。

---目次---
(1)対局した私の感想
(2)他の将棋ソフトとの対戦(対東大将棋6、激指2)
(3)新機能(棋風設定、棋譜集分析)を検証
(4)その他の機能
(5)三段の人が対局して
(6)結論

参考:MYCOM GAME WEB/将棋ソフトのページ/アップデートモジュール(販売後のバグ等を修正)

(1)対局した私の感想

今回の激指3の売り文句は「棋風を変えられることと、棋譜集分析」だ。発売前から「より強くなった」と言うことを全面に押し出していないので、たぶん強さはあまり変わっていないのだろう、との思いを持っていた。

まず、一局目、普通に指してみたが、その前に、一言。今回から、思考時間の上限が設定できるようになった。今までは、たとえば、四段なら長くても30秒で指すようになっていた訳だが、これを30秒、60秒、180秒、無制限の四段階に設定できる。と言うことで、とりあえず、60秒に設定して指してみた。

60秒と言っても、実際に60秒考えることはほとんどない。序盤は、とにかく早いし、中盤から終盤でさえも、まったくストレスを感じさせない。

さて、その一局目だが、中盤でそれほど有利に出来なかった。普通、ソフトは、中盤おかしな手を指すことが多いので、そこで、差を広げて、終盤寄せ切ると言うパターンにすることが多いのだが、中盤、あまりおかしな手を指さなかったので、やや有利くらいにしか出来なかった。そして、そこから慎重に読みを入れて、かろうじて勝ったものの・・・。

「強い!」・・・これが、最初に感じたこと。

そして、「激指2より明らかに強いのではないか、さらに、東大5や6より強いかもしれない。」と思った。

もっとも、実際に、この感想が合っているかどうかは分からない。期待が大きければ大きいほど、その期待に合わない時の落胆も大きい。逆もまた同じこと。
今回は、強さと言うことに触れてなかったので、強くなっていないと思っていた。ところが、指してみて、強くなっている感じがしたので、よけいに驚いたとも言える。もし、前宣伝に、「より強くなったソフト」と言うことが全面に押し出されていたら、「なんだ、たいして変わってないじゃない」って思ったかもしれない。

しかし、2局、3局と指してみた感じでは、中盤の感覚が良くなったような気がする。もちろんソフトの欠点なので、中盤が決してうまい訳ではないが、それでも以前のものに比べたら、おかしな感覚の手が少なくなったような気がする。

終盤については、元々強かったので、それほど変わった感じはしなかったが、それでも、読み筋がさらに合うようになり、激指2に比べると、やはり緩手が、僅かながら減った感じを受けた。中盤は、東大6よりやや強くなり、終盤は、ほぼ同じくらいになった、と言った感じだ。また、終盤、勝ちだと思っていた局面から、攻防の一手を放たれ、難しくなった時は、本当に感動した(これは、東大5の時にも感じたこと)。終盤に限って言えば、読み筋は、アマ五段とまったく変わらないと思う。さらに、読み抜けがないので、実戦的には、もっと強いと言えるかもしれない。

今回、感じたのは、(激指は元々人間の指し手に近かったが)激指3になって、さらに人間の指し手に近づいたのではないか、と言うこと。ソフトが指したものと言うのは、特徴があるので、ある程度は棋譜を見れば「これはソフトが指したもの」と言うのが分かったが、今回の激指3については、中盤のちょっとした感覚の悪い手を除けば、棋譜だけを見ても、ソフトが指したものと分からないのではないか、と思う。それだけ、人間の指し手に近いと言える(但し、最終盤、負けが決まってから、無用な王手をかけてくる)。

さて、東大5のレビューの時に、私は、「東大将棋4と柿木将棋6が、3.8段、実戦金沢将棋が4.0段、激指が4.3段、東大将棋5が4.5段」と言っている。さらに、激指2は、激指1と変わらずなので、4.3段と言うことになり、東大6も東大5と変わらずなので4.5段と言うことになる。

これらを踏まえた上で、今回の激指3の段位を表したいが、その前に、東大将棋5と6は、「4.6段」に修正しておきたい。その上で、この激指3の棋力を認定するなら、「4.8段」である。東大5や6でもそうなのだが、(四、五段の)人間が勝つためには、中盤で有利にしなければならない。ところが、東大の場合は、ほとんどが、有利な体勢に出来るのに比べると、激指3は、時々、あまり有利に出来ないまま、終盤になだれ込むことがある。ある程度、不利のまま終盤に入ったのでは、容易に逆転出来ないと言う訳だ。今回、激指3が、体感的に強さを感じさせるのは、そんなところにあるのでは、と思う。

東大将棋4の発売から2年ちょっと。この2年の間に、さらに一段アップさせ、もう道場五段と言っても、まったく問題なくなったようだ。

また、パソコンの性能が、どの程度強さに影響するかと言うと、私が、Celeron1.2GHz、メモリ128MBでも試した限りでは、ほとんど強さの変化が分からなかった。逆に言うと、もっと早いパソコンでも(Pentium4、2.6GHzくらい)極端に強くなると言うことはないだろうと思われる。遅いパソコンだと指し手が遅くなるくらいなので、早いパソコンなら、上限を60秒にしても、消費時間は、非常に短くなる。とは言え、将棋ソフトは、早いパソコンで指すに越したことはない。最速パソコンなら、はっきり、五段の力があるのでは、と考えられる。

(2)他の将棋ソフトとの対戦(対東大将棋6、激指2)

対戦は各々10局、全部で、20局行った。今回から思考時間の上限を設定できるようになったので、これをどうするかが問題だが、基本的には、トータルで同じくらいの消費時間になるように設定しようと思った。つまり、対東大将棋6の時は、上限を60秒に、対激指2の時は、上限を30秒と言う感じだ。ところが、第3局目に、174手と言う長手数があり、60秒では大変なので、ちょっと変則になってしまったが、第4局から上限を30秒に変更した。

東大将棋6は最強のマスター、激指2も最強の「四段」で対戦。

第1ラウンドは、激指3と東大将棋6の10対局(先後5局づつ)。
第2ラウンドは、激指3と激指2の10対局(先後5局づつ)。

対局方法は、一台のコンピュータに対局ソフトを二つ起動させ、人間(私)が、コンピュータの指した手を、もう一方のソフトの人間側の指し手に入れてやるという方法である(先読み機能オフ)。

そして、その結果は次のようになった。

20局全ての棋譜は次のところにリンクしてあります。

対東大将棋6・激指2の棋譜

第1ラウンド(激指3対東大6)
  先手 激指3 戦型 消費時間 東大6 戦型 消費時間 手数
第1局 激指3 左美濃 14分0秒 四間飛車 12分50秒 129手
第2局 激指3 四間飛車 4分53秒 居飛車 6分56秒 101手
第3局 激指3 相矢倉 25分56秒 相矢倉 19分16秒 174手
第4局 激指3 四間飛車 5分54秒 左美濃 6分5秒 119手
第5局 激指3 左美濃 11分0秒 四間飛車穴熊 12分16秒 136手
第6局 東大6 相居飛車 5分41秒 相居飛車 11分26秒 94手
第7局 東大6 居飛車 4分0秒 居飛車急戦 5分34秒 83手
第8局 東大6 居飛車 4分59秒 中飛車 3分59秒 102手
第9局 東大6 相居飛車 4分24秒 相居飛車 2分46秒 121手
第10局 東大6 居飛車 6分48秒 四間飛車 6分34秒 101手
5勝 5勝

第2ラウンド(激指3対激指2)
  先手 激指3 戦型 消費時間 激指2 戦型 消費時間 手数
第1局 激指3 四間飛車 4分27秒 居飛車急戦 4分45秒 96手
第2局 激指3 千日手 居飛車穴熊 1分57秒 四間飛車 1分50秒 94手
第2局 激指2 四間飛車 18分54秒 山田定跡 19分6秒 190手
第3局 激指3 相矢倉 27分9秒 相矢倉 24分5秒 253手
第4局 激指3 居飛車穴熊 13分5秒 四間飛車穴熊 14分36秒 197手
第5局 激指3 左美濃 6分55秒 四間飛車 5分18秒 116手
第6局 激指2 四間飛車 8分59秒 トーチカ 9分5秒 130手
第7局 激指2 四間飛車 21分5秒 棒銀 19分54秒 222手
第8局 激指2 矢倉右四間 5分26秒 矢倉 5分34秒 105手
第9局 激指2 横歩取り 5分35秒 横歩取り 7分0秒 119手
第10局 激指2 陽動振り飛車 8分47秒 矢倉穴熊 8分36秒 123手
5勝 5勝

戦前の私の予想では、対東大将棋6が6対4、対激指2が、7対3くらいではないか(もちろん激指3の勝ち越し)と言うものだった。ところが、蓋を開けてみてビックリ。東大6も激指2も、どちらも5勝5敗である。

東大6については、まあ、ほとんど同じくらいなので(実際の感覚でも、0.2段差では)、星が五分になっても、おかしくはない。しかし、激指2に比べると、明らかに棋力がアップしたと思っていたので、ちょっと意外だった。途中、5勝2敗になった時は、こんなものだろう、と思いつつ、対局を進めていたのだが、後半三連敗には驚きだ。もっと、対局数を増やすと、やっぱり五分なのか、それとも激指3が勝ち越していくのか分からないが、この辺りを含め、ちょっと内容を簡単に振り返ってみよう(ざっと見ただけなので、間違っている評価があるかもしれません)。

◎東大将棋6との戦い(全て激指3側から見た評価)

第1局・・・居飛車(激指3)対振り飛車/中盤、互角の戦いから、一歩抜けだし優勢になったが、終盤逆転。その後、再逆転で勝利。
第2局・・・四間飛車(激指3)対居飛車/中盤、やや不利から、一時は切れ模様に陥ったが、終盤、逆転で勝利。
第3局・・・相矢倉/中盤、難解な局面から、やや不利に。その後、東大6の隙を与えない指し回しに逆転出来ず敗れる。
第4局・・・四間飛車(激指3)対居飛車/中盤、高段者並みの応酬があったが、東大6にポイントを取られ、不利に。その後、玉頭に嫌みを付け逆転、勝利。
第5局・・・左美濃(激指3)対四間飛車穴熊/中盤、穴熊にうまく動かれ、やや不利に。その後、粘り強い指し回しで逆転。必勝態勢になったが、最終盤再逆転され敗れる。
第6局・・・相居飛車/中盤、東大6にポイントを取られ、不利に陥るが、決め手を与えず、終盤逆転の勝利。
第7局・・・相居飛車/中盤、東大6の急襲を喰らい、不利に。その後、粘るも、逆転には至らず、敗れる。
第8局・・・居飛車(激指3)対中飛車/中盤、難解な戦いから、急襲し、有利に。その後、東大6に差を詰められるが、一手違いの寄せ合いを制し、勝利。
第9局・・・相居飛車/中盤、右玉に変化する柔軟な対応を見せるも、中盤の動き方がまずく不利に。そのまま逆転できず敗れる。
第10局・・・居飛車(激指3)対四間飛車/中盤、巧みに動かれ、不利に。その後、粘るも玉頭が支えきれず、敗れる。

こうして見ると、中盤では、東大6の方が有利になっていることが多い。私が指した感覚では、東大の方が中盤はヘタな感じがしていたのだが、ソフト同士だからなのかどうかは分からないが、そうとは言えないようだ。また、あの強い東大6の終盤に逆転すると言うのも、終盤が強化された結果かもしれない。

◎激指2との戦い(全て激指3側から見た評価)

第1局・・・四間飛車(激指3)対居飛車/中盤、駒損を先にするも、難解な戦いが続いたが、端に手を付けられると、受けのまずさもあり、攻めきられる。
第2局(千日手局)・・・居飛車穴熊(激指3)対四間飛車/振り飛車にうまく動かれたが、中盤は互角。千日手は、激指3から見れば、仕方ない所か。
第2局・・・四間飛車(激指3)対山田定跡/典型的な山田定跡から、激指3がポイントを奪い、有利に。その後、双方に、好手、疑問手が入り乱れ、難解な戦いに。最後は、激指3が、ギリギリ残した。
第3局・・・相矢倉/中盤の難解な戦いから、ポイントを奪い有利に。その後、必勝態勢に入るも、寄せを逃し、入玉される。しかし、さらにその入玉の玉を捕まえ、勝ちきる。
第4局・・・居飛車穴熊(激指3)対四間飛車穴熊/初めての相穴熊。中盤の難解な戦いが長く続き、終盤有利になるも、寄せをぐずり、さらに長くなった。最後は、相手の攻めを凌ぎきり勝ちきる。
第5局・・・左美濃(激指3)対四間飛車/中盤の折衝で不利になり、その後、粘るも逆転には至らず、敗れる。
第6局・・・四間飛車(激指3)対トーチカ/中盤、うまい攻めでやや有利に。その後、寄せをややぐずったものの、何とか寄せ切り勝利。
第7局・・・四間飛車(激指3)対棒銀/中盤、定跡形から、やや有利になったものの、疑問手で、逆転。その後、千日手模様で粘り、再逆転。さらに、捕まえ損ね、再々逆転。さらにさらに、終盤、形勢が何度も入れ替わったが、入玉した玉を捕まえ、勝利した。
第8局・・・矢倉右四間(激指3)対矢倉/激指3の攻めが決まり、中盤優勢に。しかし、終盤、攻めと受けを間違い、逆転される。
第9局・・・横歩取り8五飛/中盤から終盤まで、ずっと形勢不明の難解な戦いが続いたが、終盤、僅かに届かなかった。
第10局・・・陽動振り飛車(激指3)対矢倉穴熊/一方は陽動振り飛車から銀冠へ、もう一方は矢倉から穴熊へと高段者並みの駒組みの後、難解な中盤、終盤戦が続いた。最後は、穴熊の遠さが、僅かにまさり、勝ちきれなかった。

こうやって、内容と見ると、激指2も激指3もそれほど変わってないように見える。第2局、7局共、双方に好手、疑問手が入り乱れたものすごい戦いであったし、第9局、第10局も、どちらが強いのか分からないような戦いだった。

ただ、指し手を入力していて感じたのは、激指2の方に、「やや緩いな」と言う手が、何回かあったことと、激指3の方には、「(攻めに関して)そこまでしなくても良いだろう」というような手があったことだ。

ソフトは、昔から受けが主体で強かったが、人間が指すには、面白くなかった。最近のソフトは、良く攻めるようになって来てはいたが、それでも、無理攻めはしないし、受けきれるところは受けつぶしてしまう。
ところが、激指3は、見ていて、ここは(ソフトなら)受けるだろう、と思ったところでも、攻めに出ることが良くある。これは、より人間の指し手に近くなり、また、人間が指していて、面白く感じる原因なのだと思う。

ソフト同士の対戦は、私も意外な五分だったが、0.5段差しかなく、10局限定なら、それほどおかしな結果でもない。ただ、何度も言うようだが、激指3は、攻めっ気たっぷりだし、人間の指し手により近いので、人が指すには、激指2より面白く感じられるのではないかと思っている。

(3)新機能(棋風設定、棋譜集分析)を検証

今回の激指3の”売り”は、「棋風をアレンジできる棋風設定」と「大量の棋譜を分析できる棋譜集分析」だ。

この二つについて、考えてみよう。

◎棋風設定


まず、棋風設定だが、左の図のように、ユーザーが変更できるパラメータは、4種類だ。

どうしたら良いのかよく分からなかったので、試しに、全部左に寄せて指してみたら、かなり弱かった(^^;。まあ、駒得も働きも軽視したのでは、当然かと思い、今度は、一方を駒得重視にして、次の対局では、一方だけ駒の働き重視にして、激指3同士で戦わせてみたのだが、これが、延々と終わらない。

その2局の棋譜(1局は、たまたま「初期設定」が勝ち、もう一局は、たまたま「駒の働き」が勝った)

結局、2局だけで、後は、早指しで、何度か、自分で指して見たのだが・・・。

思うに、どのバーでもそうだが、極端に寄せてしまうと、棋風が片寄り、ちょっと弱くなるのでは、と考えられる。

なにより、将棋というのは、局面により、考え方を変えなければならないゲームだ。たとえば、序盤から中盤は、駒得重視、中盤から終盤は、駒の働きや寄せを重視しなければならない。

また、ある局面では、重い寄せが正解となり、別の局面では、軽い寄せが正解となるのである。

それを、一局を通じて設定する、ということに無理があるのでは、と思う。

今回の、このような、棋風を設定できる、という考え方は、非常に面白いものだと思うが、やはり最初だけに、今後、改良すべき点も多いような気がする。

駒得や、駒の働き、寄せ等は、局面ごとに正解が、変わってくるものだ。むしろ、設定するなら、「受け重視」か「攻め重視」かであろう。ここで、受けたら良いか、攻めたら良いか、判断が、五分五分の時は、このバーによって、手が変わる。それなら、結構、棋風が出るように思うのだがどうだろう?

入玉の好き嫌いは、面白いバーだと思う。ソフトは、粘っこく指すので、時に入玉されてしまうことも多い。それが、嫌な人には、入玉を嫌いに設定しておけば良いわけだ。

一応、私がちょっと指しただけでは、「受け−攻め」重視と、入玉「好き−嫌い」の二つのパラメータだけで十分ではないかと思うのだが、この辺りは、たとえば、バーを少しずつ動かして、何十局と指してみると、また違った面白い結果が出てくるのかもしれない。

◎棋譜集分析

棋譜集分析は、文字通り、棋譜集にある棋譜をパソコンで解析するもの。あまり、手元に棋譜がなかったのだが、試してみたら、100局くらいなら一瞬だった。

戦型からそれぞれの総合戦績が出る他、一手ごとに、どの手を指したかが分かる。そして、これを定跡として保存することも可能だ。

もっとも、実際に、定跡として保存して、その定跡で指してみたのだが、どうも指し手がぎこちないように感じる。解析した棋譜は、プロのものなので、”ぎこちないはずはない”のだが、あまりうまく指し手が反映されていないように思う。

棋譜集解析機能そのものは、棋風設定と同じで、面白い機能だと思うが、ここまでしたのなら、内容的に、もっといろいろ出来るのでは、と感じた。

たとえば、王手を何回した、とか、どの駒を何回動かしたとか、いろいろ面白そうな解析をして、それらをプロの棋譜の解析と比べることで(アマチュアだと、王手の数が多いかもしれない)、参考になることもありそうだ。

こうした解析の使い道、良さは、これからさらに検討され、有用なものになっていくのだろう。

(4)その他の機能

激指2との大きな違いは、(3)で見た通りだが、それ以外の機能についても見てみたい。

パッケージには、次の7つの機能が主な機能として書かれている。

(1)通常対局=レベルは四段〜12級まで10段階
(2)レーティング戦=対局結果で実力を数値化
(3)検討モード=形勢判断、読み筋を表示
(4)指導対局=コンピュータがやさしく指導
(5)棋譜解析=指し手の善悪、形勢の推移等を表示
(6)詰みチェック=詰将棋機能を強化
(7)定跡編集=定跡の追加が自由自在

この中で、何が激指2から改良されたのか、メニューを見比べてみたのだが、あまり変わったようには見えなかった。そこで、「激指3のサイト」へ行ってみて、確認したところ、「検討モードがさらに使いやすくなりました」と、「詰将棋機能を強化しました」とあったので、少なくとも、この二点は改良されたことが分かった。

但し、検討モードについては、それほど変わっていない(ように思う)。「詰めろ」とかの表示が追加されたくらいか。詰将棋の解答については、「難解な実戦の詰み」でも、簡単に解く。但し、長手数の難解な詰将棋はダメのようで、この詰将棋機能については、まだ東大将棋に及ばないと考えて良いだろう。

また、指導対局に、「あなたの棋力」と「上手の戦型」が加わった。「あなたの棋力」は、8級、6級、4級、2級、初段の五段階。試しに、初段でやってみたのだが、どうも指導する「上手」が、あまり強くない。

この指導対局の機能は、この激指3から、「形勢の推移を表示させる」ことと、「現在の局面から対局を始める」ことも出来るようになった。途中で、「疑問手ですね」とか、「好手です!」などというコメントも入り、面白い機能なので、なぜ、もっと、上手の棋力をあげたものも入れてくれないのか不思議だ。現最強の激指3が、「指導」してくれるなら、有段者でも、かなり役に立つ機能だと思うのだが。

それ以外の、いろいろな機能も、細かいところで、改良が加えられているようだ。

(5)三段の人が対局して

「ソフトの検証」と言うことからは、少々離れるのだが、関係する将棋センター内での話をしたいと思う。

センター内にも、パソコンは置いてあるのだが、来店するお客さんで、実際に使う人は、ほとんどいない。常連では、24をやる人が、一人と、他にソフトと好んで指す人が一人いるだけで、この人たちが来るまでは、電源さえ入れていない状態だ。

今回、新しいソフトと言うことで、良くソフトと指すこの三段の人にだけは、試してもらいたいと思っていた。この三段の人、今までは、東大6と指していて、何度か「待った」をして、時々、勝つ、と言う状態だった。そこで、今度は、激指3と指してもらい、その手応えを聞いてみた。

「早いなぁ!」が、まず第一声。確かに、ものすごい勢いで、激指は指してくる。次に、やはり「強い!」。何度か、「待った」をして、ようやく勝った時は、「勝ったよー!」と大声で言っていたが、感じとしては、東大6より、強く感じたそうだ。もっとも、「待った」を何度しても、勝ちにならなかったので、そう感じただけかもしれないのだが。

この人が、「東大のように、形勢判断が出れば良いのに」と言っていたが、確かに、思考ウインドウの表示だけでなく(これは大きくて、通常指す時に置いておくのはじゃま)、東大にあるように、バーに形勢判断を表示させられるようになっていれば、指していて、より面白いと思う(ユーザーの好みで、消せればなお良い)。

また、「待った」を何回使ったかも、終わった後、表示させられればいいのに、とも話していた。「ちょっと(激指の)三段で、試して見てよ」と私が何度も言ったのだが、「いや、一番強いのとしかやらない」と言っては、「待った」をしながら、指し続けていた。案外、こんな人が多いのかな、とも思う。

他に、嫌がる四段の人にも、試してもらった。「コンピュータ、苦手なんだよ!」と相当渋っていたが、自分が、無理矢理お願いして、指してもらった。将棋センターでは、四段でも比較的強い方で、受け将棋だが、終盤緩いのが欠点と言う人だ。この人と激指の一局は、200手に及ぶ大熱戦になった。

ここに「再現できる棋譜」を置いておくが、パソコンをほとんどいじらない人なので、(画面じゃなく)将棋盤で、戦っていたら、きっと、勝っていただろう、とフォローしておきたい。

(6)結論

さて、今回使ってきた感想を、まとめてみよう。

まず多くの人が気になっている強さのアップ。これは、激指2との対戦でこそ、五分だったが、体感的には、もっと強くなっている感じであるし、実際に、強くなっていると思う。それは、中盤の作戦負けになる率が、ほんの少し減り、終盤は、東大将棋並みに、しぶとくなったからだ。

さらに、人間の指し手により近づいたと言うことも重要なことだ。たとえば、激指2では、受けつぶして、あるいは入玉して勝っていたところを、激指3になり、攻めて勝つようになった。もちろん、それは局面にもよるのだが、激指2との対局で、入玉模様の将棋を見れば、なんとなく分かるような気がするだろう。このことは、どういう事かと言うと、人間が指すには、面白く感じる、と言うことだ。さらに、「入玉嫌い」にでも、設定しておけば、なお、良いかもしれない(強さは、標準の方が強いと思われる)。

指し手の強さについては、一年(実際には激指1から数えると二年)で0.5段なら、十分アップしたと言えるだろう(もちろん、これは私の感触だが)。

二つの新機能(棋風設定、棋譜集分析)については、個人的には、イマイチだったかな、と思う。もちろん、機能そのものは、大変すばらしい発想で、ある意味、これからのソフトの新境地を開いたと言えるかもしれない。今後のさらなる改良、発展を望みたい。

激指3は、買いかどうか?
そう聞かれたら、間違いなく、”買い”と言える。もっとも、使う人の棋力、使いたい目的によって事情は違ってくる。

基本的に、激指シリーズは、将棋を強くなりたい人向けだ。いろいろな機能で、たくさん遊ぶなら、東大シリーズの方が面白い。指し手が人間の高段者に近いこと、そして、棋譜解析などが、この激指3の特徴と言えるだろう。


最後に、いつものように、今後の要望を出しておきたいと思う。

(1)新機能を改良して欲しい(内容は、(3)で書いたこと)。
(2)「指導対局」の上手をもっと強く設定できるように改良して欲しい。
(3)対局する早さは十分だが、強さをもっと強くして欲しい(いずれプロと並ぶ強さに)。←この要望は、いつまでたっても変わらない。

要望が、だんだん少なくなっていくような気がするが、「プロに並ぶ強さ」ということ以外では、完成品に近づいたのかもしれない。パッケージに、「棋力向上に最適」なソフトであり、「まさに将棋プロフェッサーの名にふさわしいソフト」とあるように、人が、棋力をアップさせるためのソフトとして、トップソフトであることは間違いないようだ。

2003年12月19日作成

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