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(16)東大将棋7の実力

2004年8月6日、今年もパソコンの将棋ソフトでトップを走る「東大将棋」に新バージョンが発売された。そこで、ここでは、その東大将棋7を使っていろいろと検証した結果を載せていこうと思う。

なお、今回の東大将棋7からレベルの分け方が変わった。従来検証していたマスターは、「四段」と名称変更されたようなので、特に断りのない限り、この四段(最強レベル)で、さらにコンピュータは、今では遅くなってしまったが、Pentium4の1.6G、メモリ512M、WinXPで検証している(検証中は他のソフトは起動していない(一部常駐ソフトを除く)(コンピュータ速度は、9297))。また、文中の段位は、全て平均的な将棋センターのもの。

---目次---(東大6で検証した項目とほぼ同じ)
(1)対局した私の感想
(2)他の将棋ソフトとの対戦(対東大将棋6、激指3)
(3)下位レベルを検証
(4)東大7の新機能
(5)その他の機能
(6)結論

参考:MYCOM GAME WEB/将棋ソフトのページ(販売先のAmazon)/アップデートモジュール(販売後のバグ等を修正)

(1)対局した私の感想

週刊将棋などに出ている東大将棋7の宣伝文句を見ると、「棋風を持たせた」とか「女流棋士が4人登場」など、強さに対しての宣伝はない。

なので、あまり強さには期待せずに一局目を指してみた。3手目▲6六歩と角道を止めると、なんと東大7は△3五歩と相振り飛車を明示。東大6も多少そういうところがあったが、(この後も指してみたところ)東大7になって、さらに序盤(一般的な定跡にせずに)変化するようになった感じを受けた。
元々ソフトは序中盤がヘタなのだから、こちらが定跡を外さない限り、定跡通り指した方が強いと思うのだが、この辺りは不思議である。結局、相振り後、ソフトが飛車を動かし、手損している間に優勢を築き、そのまま押し切った。

さらにその後、3局ほど指してみたものの、内容は特筆すべきものもなく、これらから得た私の感触は、「東大5と東大6の欠点を僅かながら直し、ほんの少し強くなったような気はするもののはっきり強くなったかどうかは分からない。」と言うものであった。

前回、激指3の検証の時、東大5と6を「4.6段」、激指3を「4.8段」と評価しているが、今回の東大7、私が数局指した感じでは、ほとんど同じ「4.6段」か僅かに上がり「4.7段」と言ったところ。「激指3と同じか微妙に弱いのではないか」と言うのが、私が指した感触である。(この感触は、平手で指し中盤の段階で差がついてしまったために感じた間違いであり、もう少しギリギリの中盤戦を戦っていたなら、踏み込みが鋭くなったことに気づいたことと思う:この下にある「追記」及び「ミニ感想」も参照のこと:最終的には激指3と同じ4.8段としたい(8月18日記)

なお、今回から四段の上に「長考」が出来たので、これも一度だけ試してみた。しかし、中盤で大差になってしまった(四間飛車で普通に組んでいたら、△7二飛▲7八飛△7五歩▲同歩△同飛▲8八角で飛車交換が避けられず、さらに△7七歩▲同角となり一歩損確定となった)為、「長考」の良さは分からなかった。

ところで今回、たまたま知り合いに東大将棋7を購入した人がいて、その人のパソコンで2回ほど使わせてもらった。そのパソコンは、Pentium4の2.8G。指し始めて感じたのは、「(指し手が)早い」ということ。1.6Gでは、定跡から外れると、30秒くらいは頻繁に考えるのだが(最長40秒)、その一手に要する時間がかなり短くて快適だった。ただ強さと言うことになると、特に強くなったという感じは受けなかった。というのも、やはり中盤までに差が付いてしまったからかもしれない。

東大7の最低動作保証は、Pentium2の233MHzである。ただ、このCPUだと考える時間は、当然長くなると思われる(40秒近く考えることが多くなる)。しかし、強さに関して言えば、早いパソコンでも遅いパソコンでも極端には違わないのではと思っている(最大でも一段差くらいか)。
とはいえ、こういったソフトを使うには、早いパソコンを使うのに越したことはない。快適に対局できるし、詰将棋を解かす時間も早くなるからだ。ただ、多少前のパソコンでも十分に使えるということをお知らせしておきたい。

さて、いろいろ対局した結果、結局、強さと言うことだけに限って言えば、今回の東大将棋7もそれほど期待は出来ないと言う結論になるな、と思っていたのだ・・・が!?(この続きは、次の将棋ソフトとの対戦で)

(2)他の将棋ソフトとの対戦(対激指3、東大将棋6)

対戦は各々10局、全部で、20局行った。今回、対戦を組む前の私の予想は、東大7から見て、対激指3「4勝6敗」、対東大将棋6「6勝4敗」で場合によると「5勝5敗」であった。

東大将棋6は最強のマスター、激指3は最強の「四段」で対戦した。

第1ラウンドは、東大将棋7と激指3の10対局(先後5局づつ)。
第2ラウンドは、東大将棋7と東大将棋6の10対局(先後5局づつ)。

対局方法は、一台のコンピュータに対局ソフトを二つ起動させ、人間(私)が、コンピュータの指した手を、もう一方のソフトの人間側の指し手に入れてやるという方法である(先読み機能オフ)。

そして、その結果は次のようになった。

20局全ての棋譜は次のところにリンクしてあります。

◎対激指3・対東大将棋6の棋譜(別ウインドウ)

第1ラウンド(東大7対激指3)
  先手 東大7 戦型 激指3 戦型 手数
第1局 東大7 四間飛車 左美濃 101手
第2局 東大7 相矢倉 相矢倉 115手
第3局 東大7 居飛車 四間飛車 111手
第4局 東大7 相矢倉 相矢倉 110手
第5局 東大7 四間飛車穴熊 左美濃 103手
第6局 激指3 玉頭位取り 中飛車 146手
第7局 激指3 矢倉 矢倉中飛車 133手
第8局 激指3 横歩取り 横歩取り 67手
第9局 激指3 雁木 銀矢倉 146手
第10局 激指3 横歩取り 横歩取り 242手
7勝 3勝

第2ラウンド(東大7対東大6)
  先手 東大7 戦型 東大6 戦型 手数
第1局 東大7 向かい飛車 居飛車舟囲い 137手
第2局 東大7 矢倉 棒銀 111手
第3局 東大7 相矢倉 相矢倉 114手
第4局 東大7 角換わり腰掛け銀 角換わり腰掛け銀 124手
第5局 東大7 居飛車急戦 四間飛車 183手
第6局 東大6 矢倉模様 力戦 80手
第7局 東大6 四間飛車 棒銀 118手
第8局 東大6 棒銀 矢倉模様 113手
第9局 東大6 矢倉 矢倉 129手
第10局 東大6 相矢倉 相矢倉 84手
6勝 4勝

まず、激指3相手にいきなり3連勝したのには大いに驚いた。内容も、一手目から四間飛車に振ったりとへんな序盤ではあるものの、勝ちっぷりは堂々としている。ひょっとして、自分の評価(感触)が間違っていたのだろうか?と思いつつその後の対戦をしていった。

そして、10局の対局が終わったところでは、対激指3に7勝3敗、東大6に6勝4敗で終わった。東大6に対してはこんなものだろうと思う。しかし、激指3の対局結果は、自分にとっては意外だった。もっと対局を多くして100局とかした場合にどうなるのか、それでも勝ち越せるのかどうか興味はあるものの、残念ながらそこまでは出来ない。
ただ、この内容と対局結果を見る限り、激指3に引けを取るものではなさそうだ。このような結果になり、自分が対局した時に感じた、激指3「4.8段」、東大7「4.7段」という評価にちょっと自信が持てなくなってしまった。

(3)下位レベルを検証

東大将棋6に比べ、今回から下位レベルの分け方が変わり、かなり細かくなった。これは大変うれしいことで、これなら少しずつ上達していく実感を得られるかもしれない。

もっとも、厳密に言うと、今回から変わったのではなく、「定跡道場完結編」の段階から徐々に変えていったといえる。そこで、ここに、それぞれのレベル分けを載せておこう。

東大将棋6・・・6段階(よちよち、ビギナー、初級、中級、上級、マスター)

東大将棋定跡道場完結編・・・10段階(よちよち10級、ビギナー8級、初級6級、見習い4級、中級2級、お山の大将初段、上級二段、ヘビー級三段、マスター四段、長考派)

東大将棋7・・・10段階(10級、8級、6級、4級、2級、初段、二段、三段、四段、長考派)


下位レベルについては、ほんの少ししか指していないが、内容的には、以前の指し手と同じように、自然な弱さがかなり正確に追求されているように思う。それでも、多少はソフトらしい筋の悪いところもあるので、級位者は練習のために使うのなら、平手は少し指し、出来るだけ三段や四段の駒落ちを指した方が良いだろう。

初期局面を、二枚、四枚、六枚、八枚、十枚などと設定できる他、盤面編集を使えば、五枚落ちや七枚落ちなど細かい手合い差でも指すことができる。定跡通り指してくれないのがちょっと不満だが(どうしても定跡通り指させようとするなら、局面を指定して指し始める)、かなり強い上手と駒落ちを指せる訳で、これはこれで勉強になると思う。

(4)東大7の新機能

週刊将棋や将棋世界にある東大将棋7の宣伝文句を見ると、「棋風を持ったこと」「女流棋士が4人登場すること」などが前面に押し出されている。そこで、この二つに、「検討モードの強化」を加えてこれらの新機能を見てみた。

「棋風を持たせる」

レーティング戦や将棋大会で、棋風を持った対戦相手が登場する他、通常対局でも、強さ(10段階)、戦型(居飛車か振り飛車)の指定の他にタイプの指定が出来るようになった。このタイプは、「標準」「強引」「慎重」の三つに分けられる。

これはなかなか面白そうと思い、一方を「強引」、もう一方を「慎重」にして、コンピュータ同士で対局させて見ることにした。

◎強引対慎重の棋譜4つ(別ウインドウ)

しかし、これらの棋譜を見ても、正直、何も言わずに見せられたら、どちらが強引か分からないかもしれない。言われてみれば、微妙に棋風が出ているような気もするが、期待していたほどはっきり棋風が出ているものでもなかった。

但し、レーティング戦や将棋大会では、もっとはっきりした棋風を持たせて様々なキャラクターを登場させている。いろいろ遊ぶには飽きない東大将棋の良さは引き継がれているようだ。

「女流棋士に挑戦」

東大6にもあった機能だが、今回から従来の二人(千葉涼子女流三段・安食総子女流初段)に、島井咲緒里女流初段と鈴木環那女流1級が加わった。

なので、とりあえず試してみようと指してみたら、これが大受け。指している途中で、「こまったなぁ〜」とか「難しい局面だなぁ〜」などの独り言を言う。駒を捨てると、「いいのかなあ、そんな手で」と言ったり、「いい手見つけちゃった」とかその言い方も面白く、これはハマる人が出ても不思議ではない。

この独り言があまりに面白かったので、千葉と安食両女流とも指してみたが、こちらは独り言を言わない。局面が極端に変わらないと言わないのかな、と思い、わざと駒を捨てたりしたがそれでも何も言わない。おかしいなと思い、後でヘルプを見たら、独り言は、今度の島井、鈴木女流プロだけだと言う。うーむ、せっかくの面白い機能なので、全員にして欲しかったが(^^;

「検討モードの強化」

パッケージに「より実用的な内容に」とあったので、この検討モードがどのように変わったのか見てみたら、東大6では、一つしか検討に出てこなかったものが、今度は、1手から10手まで表示させられるようになっていた。また、同時に画面も見やすくなった。これは、対局後に出てくる感想の画面、棋譜解析も同じである。

こうした検討に関する機能は、東大6に比べ、大幅に機能改善されているが、厳密に言えば、これも今回からと言うわけではないらしい。つまりこれらの機能を「定跡道場完結編」と比べてみたら、ほぼ同じような仕様であった。

こうしてみると今回の東大7の様々な機能は、東大6と定跡道場完結編の良いところだけを集め、それに「女流棋士に挑戦」などを追加改良した感じになっているようだ。

(5)その他の機能

東大将棋7にある様々な機能についてざっと述べておこう。

対局のメニューには、東大6と同じように、通常対局の他に、レーティング戦、将棋大会、女流棋士に挑戦、棋力認定所がある。但し、定跡道場と目隠し道場は今回から廃止された。「機能をシンプルに」ということらしいが、なぜ機能を削る必要があったのかは不明。多彩な遊びが売りなのだから削る必要はないような気もするが。

また、詰将棋コーナーについては、従来対局メニューの中にあったものを、「詰将棋」として独立させた。そして、この中に、詰将棋道場、詰将棋マシンに挑戦、詰将棋問題生成、詰将棋解答、名作詰将棋鑑賞がある。

機能は、どれも数回やっただけで、とても短い期間では、全部試すことはできなかったが、遊ぶのに十分な機能が詰まっているのは従来の東大シリーズと同じである。

(6)結論

さて、今回使ってきた感想を、まとめてみようと思うが、その前に対局していて気になったことを先に検証しよう。

[形勢判断の精度]

東大将棋は、指していると下のバーに、「互角」「(先手又は後手)有利」「優勢」「勝勢」の形勢判断が出る。この機能そのものは、指していて今ソフトがどのように考えているかが分かり、大変面白い機能だと思うが、問題はその精度である。

私自身は、東大6以前から、この形勢判断は、それほど正確ではないと思っていた。というのも、以前にも書いているが、どうもソフトは、自分の方を有利と思ってしまう傾向にある。

今回、東大7がどのようになったのかな、と思ったが、なんとこの傾向がさらに強くなったような感じを受けた。まだ、ほとんど形勢が互角なのに、「(ソフト側)有利」と出たり、逆に人間側有利なのに、「互角」のまま動かなかったり・・・。そして、東大6の時ならまだ「有利」くらいであろうと思われるところでも、あっと言う間に「優勢」になってしまう。

そこで、次のように読み替えればちょうど良いのではないかと考えている(この読み替えは東大6以前のものにも適用できる)。

(人間側)勝勢→勝勢、(人間側)優勢→勝勢、(人間側)有利→優勢、互角→(人間側)有利又は互角

(ソフト側)勝勢→勝勢又は優勢、(ソフト側)優勢→有利、(ソフト側)有利→互角

つまり、一段階人間に有利なように読み変えれば、ほぼ妥当な形勢判断になるという解釈だ。但し、終盤寄せのある局面でも、ソフトにその寄せが見えなくて、(たとえば先手)勝勢と出ることもある。これは東大将棋に限ったことではなく、形勢判断が比較的正確な激指3でもあることで、この場合は、先手勝勢から一転後手勝勢に変わることもあり、これは仕方のないことであろう(高段の人間でも寄せが見えず、あるいは自玉の危険度に気づかなければ形勢判断を間違うことはあり得ること)。

ところで、今回東大6と東大7を対局させていた時に面白いことが起きた。

双方共に「有利」になることは、自分の方を良く見る東大なら想像できたことだが、終盤、共に自分の方が優勢と出た時は、思わず唸った。

それは、対東大6との最終対局「対東大6-10」である。67手目▲5五桂と打った時は、先手の東大6は自信を持って寄せきれる(東大6優勢)と考え、後手の東大7もここではダメ(東大6優勢)だと考えていた。ところが、数手後の72手目△5四同銀となったところで、いきなり東大7は後手優勢となった。ところがこの局面で、東大6はまだ自分の方が優勢と信じていたようで、▲5五歩△同玉となって始めて寄せがないことに気づいたと言った感じだ。

これを見ると、終盤寄せ合いでの形勢判断が東大7で上がったことが分かる。形勢判断が上がったのだから、寄せそのものの棋力も上がったのだろうか?この辺りはもっといろいろ検証してみないとちょっと結論は出せないが、少なくとも、細かい点で一歩一歩ソフトが改良、前進していることは間違いないようである。


さて、全体的な結論をまとめてみよう。

まず多くの人が気になっているソフトの強さのアップ。これは、人間が指して分かるほどの棋力アップはなかったものの、激指3との対局でも分かるように、僅かずつながら、中盤、終盤ともに改良されている感じも受けた。今回、もっとも強いはずの「長考」の検証はほとんどやらなかったが、早いパソコンで「長考」なら適度な時間で強さを実感できたかもしれない。

購入するかどうかについては、
東大将棋シリーズを持っていない人、及び東大将棋4以下しか持っていない人には、まず文句なくお勧めである。東大将棋5から棋力がアップしている為、これ以降を持っていて、パソコンも新しくなってないなら、強さのみを求めて購入するのはどうかと思うが、検討モードや遊びの部分など常に様々な改良が施されているため(特に今回の「女流棋士に挑戦」は面白い!)、そうした機能を使いたい人にとっては、購入しても十分満足してもらえるのではと思う。


最後に、いつものように、今後の要望を出しておきたい。

(1)詰将棋解答機能などの操作性を良くして欲しい。(東大6の時の要望と同じ)
(2)感想機能の精度と形勢判断の精度をもっと上げて欲しい。(これは常にある要望)
(3)対局する早さは十分だが、強さをもっと強くして欲しい(いずれプロと並ぶ強さに)。特に序、中盤の駒組み(大局観の悪さを直して)、より強くして欲しいし、戦型による弱点も克服して欲しい。(これも前回、前々回からある要望)
(4)詰将棋作成の機能アップ(これは最初に出た「詰将棋道場」の頃とあまり変わっていないと思う。創作についても、マシンに挑戦についても、いろいろ改良する余地はありそうだ(不満点は、2年前の「激指2と詰将棋道場」のところに書いている)。

「強く」という要望はいつまで経っても終わらないが、それでも要望そのものはもうあまりなくなってしまった。それほど完成した商品になったと言う訳だ。
しかし、そうは言うものの、まだまだプロとの差は大きい。仮に終盤がプロを越えたとしても、今のような序中盤しか指せないならプロに勝つのは永遠に無理だ。私自身もいずれはプロに勝てるようなソフトが登場するのでは、と考えているが、反面この2年間、いや序盤から中盤に限って言えば、この3〜4年ほとんど進歩していないのではないかとの思いもある。

プロに勝つようになるには、定跡を外されても、不利にならないような序中盤の構想力が必要になってくるだろう。そのようなものをソフトが持ち得るのかどうか私には分からないが、少なくとも定跡をなぞるだけの今の序中盤では無理な気がする。この2年のハードとソフトの進歩と同じレベルしか上がらないなら、プロに勝つには、さらに数十年の歳月を必要としてしまうだろう。

今後のさらなる序中盤の画期的な進歩を願って今回の検証を終わりにしたい。(まだ下があります)

2004年08月12日作成


(追記)

2004年8月15日、週刊将棋に、先週から4週に渡り、ソフト3強対鈴木八段の指し込み3面指しが連載されている。そして、8月18日号には、最初の飛車落ち3局が載せられていて、結果は、鈴木八段の2勝1敗。YSS(AI将棋)と激指は負けたが、IS将棋(以下東大将棋)は飛車落ちで勝利した。

私が興味を持ったのが、左の局面とその記事内容。ちょっと長いが週刊将棋から引用させてもらう。

図の一手前、▲4五桂を敢行した後、『上手は△2五桂の跳ね違いで良しと見ていたが、次の▲5五角が強烈な一着。「うっかりしました。▲5六歩を突いた後だけに5五の歩は歩で取るものと感じていました。▲5三桂成なら△同角▲同銀不成△同金で切れているのですが」と鈴木八段。
▲5五角を△同銀は▲5三桂成で上手陣が崩壊する。コンピュータ将棋の特徴は局面と指し手を線ではなく、点で捕らえること。だから▲5六歩を突いたときは、▲5五歩と取る読みだったとしても、ここでは前の読みを捨て▲5五角と実現できる。
もっともこの手はIS将棋の棚瀬寧さんが局後、感激していた一手で、こういった踏み込む手を指せるようにするため、1年がかりでプログラムを改良したと言う。ちなみに市販ソフトの「東大将棋定跡道場」での最善手は▲4七金だったが、「東大将棋7」では▲5五角と表示される。』

このような記事が載っていたため、本当に東大7とそれ以前のものでは指し手が変わるのかどうか試してみた。

上の局面を盤面編集し、その局面から「東大7の四段」「定跡道場完結編の四段」「東大6のマスター」及び「激指3の四段」に指させてみた。
その結果、東大7は11秒で▲5五角!を指した。そして、定跡道場は3秒で▲4七金、東大6は7秒で▲4七金、激指3は5秒で▲4七飛だった。

ソフトが△3七の桂成を防ぐだろうと言うのは、ちょっとソフトの性格(?)を知っていればすぐ分かること。また、▲5三桂成からの殺到を”切れ”と読むのはさすがプロだと思う。しかし、それ以上に▲5五角の踏み込みには感動さえ覚えた。

これらソフト3強の棋譜は、まだ東大将棋のものを簡単にソフト上で並べただけだが、なんともものすごい終盤戦が繰り広げられている。まるで、タイトル戦の実況を見ているよう、と言ったら褒めすぎだろうか。今回の棋譜は、見られる人は、是非並べてもらいたいと思う(後で、私も実際の盤面で検討してみるつもりだ)。

ところで、私が検証などの為にソフトと指すときは、その終盤力を知っているが故に、ついつい万全の序中盤から仕掛けてしまうが、これだとソフトの良さを出してあげられなかったかもしれないと反省している。結果、改良点にも気づかなかったことは十分考えられる。もし、序中盤にもうちょっと荒い人が検証していたなら、「東大6に比べ踏み込みが鋭くなった!強い!」と感じていたに違いない。

それにしても、ここでの▲5五角や、終盤の寄せ合いのすごさ、こういったものを見せつけられると、確実にソフトが進歩していること、そして、プロに平手で勝つにはまだまだ先、と思っていたものが、ひょっとして2015年位には、本当に勝ってしまうのでは、との期待も抱かせてくれるようになった。

2004年08月15日追記

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