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(18)詰将棋解答機能の検証

2005年3月17日、柿木将棋の新バージョン、柿木将棋8(以下柿木8)が発売された。柿木8は、他の将棋ソフトと同じようにコンピュータとの対局も出来るし、いろいろな遊びの機能もあるが、一般的に特に高く評価されているのは、詰将棋解答機能と棋譜管理機能である。
ここでは、私自身が非常に便利に使わせてもらっている「詰将棋解答機能」についてのみ検証していこうと思う。なお、今回のこのページは、4年前に作成した「詰将棋解答機能の実力」の続編という位置づけにしている。

なお、パソコンは、(5)以外はすべて、AthlonXP2400、メモリ768Mのものを使用している。

---目次---
(1)現在私が使っているソフトの状況
(2)今回検証に使用した問題
(3)メモリ設定による差
(4)以前のバージョン及び東大将棋7との差
(5)パソコンの性能差による解答時間
(6)結論

参考:エンターブレインの柿木8(アップデータ有り)/将棋ソフトのページ

(1)現在私が使っているソフトの状況

将棋タウンでは、毎週「実戦の詰み」と「3手詰5手詰」を出題している。さらに時々は「実戦の難解な詰み」も出題している。これを出題する時に現在では余詰め検討を行う為、柿木将棋を使っている。

但し、私が使っているのは2年前に発売された柿木7ではなく、3年前に発売された柿木6だ。実際、柿木6でも精度は非常に良く、個人的な感触では、(「実戦の詰み」を検討するには)95%以上の信頼を置いていると言える。これだけの信用があり、なんら不満はなかったため、柿木7は購入しなかったし、実は柿木8も特に必要としている訳ではなかった。

柿木将棋の詰将棋解答機能が初めて搭載された柿木5は衝撃的だった。しかし、使い込むうちに、時々間違った答えを出すこともあった。これはあくまでも当時の感触だが、80%くらいの信頼を置いていた感じだったと思う。だからこそ、柿木6を買い、精度が上がったことに満足し使い続けたとも言える。

こうした状況ではあったが、柿木6から3年も経っているし、少しでも解答時間が短くなっていればそれで満足なので柿木将棋8を購入することにしたのである。

(2)今回検証に使用した問題

私がソフトの詰将棋解答機能検証に良く使うのが、「図巧100番」(611手詰)である。他に4年前の検証に使った問題を3題(当時正解を出せなかった勇略第2番(39手詰)、変化がものすごく複雑な青野九段の実戦譜(青野-加藤戦)、「難解な実戦の詰み28問(2000年10月)」)を使用したいと思う。

なお、短手数の詰将棋や、この将棋タウンの「実戦の詰み」などは、当然一瞬で正解を出す。

図巧100番(kif形式 勇略第2番(kif形式
青野-加藤戦(kif形式 難解な実戦の詰み28問(kif形式

解答と解説

(3)メモリ設定による差

柿木将棋には「思考・対局設定」の項目にメモリを設定できる欄がある。そして、当然メモリを大きくすれば、早く詰将棋が解けるだろうと考えていた。

ところが、図巧100番を解かせていた時のこと。Duron650MHz、メモリ192Mで1分で解けたのに、何とAthlonXP2400、メモリ768Mが、3分57秒!
えーー!!いったい何故!?という訳だ。

この時、ひょっとしてメモリ設定を最大にしたのではマズイのかも、と思い、いろいろな設定で確認してみたのが次の表である。

AthlonXP2400、メモリ768M(下の3Mは短手数用メモリ)
(3M:16M) (3M:40M) (3M:192M) (3M:376M) (3M:652M)
2分32秒 46秒 26秒 27秒 3分57秒
なお、短手数メモリは増やしても、解答時間は変わらなかった。

この時間を見る限り、このパソコンでは、設定を192Mか376Mにした方が良いようだ。但し、メモリ搭載の少ないパソコンでは、最大にした時に最も解答時間が短かったものもあった(この下の「(5)パソコンの性能差による解答時間」参照)。

実際に使う時には、自分の使っているパソコンでいろいろと確認してから使われた方が良いだろう。

(4)以前のバージョン及び東大将棋7との差

AthlonXP2400、メモリ768Mのパソコンを使用し、さらに設定を192Mにして、以前のバージョン(柿木5、柿木6)と東大7との差を計ってみた。

問題 手数 柿木8 柿木6 柿木5 東大7
図巧100番 611手 26秒 42秒 2分6秒 14秒(不正解)
勇略2番 39手 15秒 16秒(不正解) 16秒(不正解) 10秒(不正解)
青野-加藤戦 23手 37秒(不正解) 44秒(不正解) 35秒(不正解) 21秒(不正解)
実戦の詰み28問 37手 5秒 6秒 3秒 1秒(不正解)


検出した解答については、「解答と解説」のページに載せてあります。

これを見れば分かるように、解くスピードでは、柿木8でも依然東大7に負けるが、柿木6に比べると柿木8は明らかにスピードアップしている。ただ、面白いのは柿木5。なんと実戦の詰みでは、最新の柿木8より早く解答している。しかし、図巧100番でははっきりとかなり遅い。なぜこのような結果が出るのであろうか。

実は、この結果とは直接関係ないが、以前柿木5を使っている時にちょっとした不備を見つけたことがある。


たとえば、実戦の詰みを作っている時に、収束5手前に左図のような局面が生じたとしよう(7七玉は別の場所で実際は盤面に多くの駒があるとする)。

これは、以下、3二龍・2二合駒・2四桂・同歩・2三銀までの詰みである。しかし、余詰めとして、2四桂・同歩・2三銀・同玉・3二龍まででも良い(あるいは2三銀で先に3二龍)。

このような時、余詰めを消す方法として別の場所から7七玉(2二からの角筋)に移すのである。これで、3二龍には2二角と逆王手で詰まないようにしていた。

ところが、この図で柿木5に解を求めると、2四桂・同歩・3二龍・2二香・2三銀までの詰みとしてしまうのである。
この不備は柿木6では直っていた(当然柿木8でも)。柿木5にやや不安を覚えたのはこのような事情が何度かあったからである。

ところで今回、上の不備を確認している時に、ふと、では左のような不詰め問題でも柿木5は解答を出してしまうのだろうか?と思い確かめたところ、別の面白い結果が出た。

これは、3二龍に香や銀など下に利かない駒は2一龍まで、2二飛なら同龍から飛車打ちまでとやさしい。しかし、3二龍には2二角と逆王手されて詰まないという訳だ。

これを柿木5で確認したところ、0秒で不詰と出した。「へー、これなら正解を出すんだ」と思い、念のため柿木8に入れた所、「不詰」のコメントを出すのに、なんと37秒もかかった。そして柿木6では4秒で、東大7は0秒で「不詰」を出した。

これは柿木8が、より完璧に読もうとしているのか、それとも無駄な読みをしているのかは分からない。ただ、結果としてちょっと面白い現象ではあった。


さて、今回の柿木8の検証で特に驚きうれしかったのが、勇略2番を正解したことである。「実戦の詰み」を確認する上ではあまり変わらないかな、と思うが、個人的には、図巧100番がかなり早く解けるようになり、勇略2番を正しく解けるようになった。これだけで、今回買った価値は十分に感じられた。

実戦の詰み28問は、この将棋タウンで出題している難解な実戦の詰みの中でも最も難しいもの(ソフトが最も時間がかかったという意味)で、それでもたったの5秒だった。他のものもいくつか解かせてみたが、そのほとんどは1秒で解いていたことも報告しておきたい。

さらに、東大7は4問とも最短で解いていないと、この結果だけをみるとなんだか使えないように見えるが、ここで使用した問題は、実戦にはまず出現しないような特殊な問題、高度な詰将棋である。一般的に、実戦が詰んでいるかどうかを確認するだけ、短手数の詰将棋を解かせるだけならなんら問題なく使えるということも言っておきたいと思う。

(5)パソコン性能差による解答時間

こういった比較はあまり必要とされないかもしれないが、参考までにと思い、使っていないパソコンを引っ張り出して来て「図巧100番」と「難解な実戦の詰み28問」の解答時間を算出してみた。

解答時間は当然CPUとメモリに左右される訳であるが、それ以外に長い間パソコンを使っているとそれ自体が重くなってくる場合もある。自作機以下の古いパソコンはこの実験の為にリカバリーしたものもありあまり使い込んであるものはないが、DELLパソコンだけはかなり使い込んでいるので、新品時代と比べると同じスペックでも解く時間が遅くなっている可能性もある。あくまで参考ということで見て欲しい(設定値は最大設定とその下3つまで試してみた)。

LaVie DELL 自作 DESKPOWER DESKPOWER VALUESTAR BIBLO
CPU AthlonXP2400 Pentium4、1.6G Celeron1.7G Duron650M K6-2、400M Pen2、266M Pen133M
メモリ 768M 512M 256M 192M 64M 256M 48M
OS WinXP WinXP Win98 Win98ME Win98 Win98 Win95
図巧100番 3分57秒(652) 3分21秒(376) 57秒(192) 1分0秒(112) 3分36秒(40) 2分31秒(192) 12分2秒(40)
27秒(376) 39秒(192) 45秒(112) 1分5秒(64) 5分13秒(24) 2分21秒(112) 17分41秒(24)
26秒(192) 39秒(112) 50秒(64) 1分26秒(40) 13分37秒(16) 2分38秒(64) 42分13秒(16)
実戦の詰み 26秒(652) 13秒(376) 16秒(192) 11秒(112) 30秒(40) 28秒(192) 1分28秒(40)
6秒(376) 8秒(192) 8秒(112) 10秒(64) 23秒(24) 26秒(112) 1分18秒(24)
5秒(192) 8秒(112) 8秒(64) 9秒(40) 23秒(16) 26秒(64) 1分22秒(16)

※解いた時間の後にカッコで書かれた数字が、柿木8に設定したメモリ(そのパソコンにおける最大値から3つまで)。

もっとも早く解けた時間に色づけしてみたところ、メモリの大きいパソコンでは少し設定を押さえて、メモリの少ないパソコンでは設定値を最大にした方が早く解けるらしいということが読み取れる。
但し、実戦の詰みに関しては、いずれも最大値よりは少し落とした方が早かった(実際には、これよりさらに落として試してみたが、同じか時間が長くかかった)。

最も古いパソコンであるBIBLOは、柿木8の必要動作環境(Pentium166MHz以上推奨、Win98、Me、2000、XP、本体メモリ128Mbyte以上)を全然満たしていないのだが、とりあえずは止まることもなく普通に動いた(なお、この実験の為に、リカバリーしてその直後にこれだけ一時的にインストールして試している)。

(6)結論

最初に書いているように、私は柿木7を持っていないので、前バージョンとの比較は柿木6との比較になってしまう。

その柿木6との比較だが、長手数の詰将棋を解くことにおいては、図巧100番で見てきたように、かなり早く解くことができるようになり、また正確さも増した。しかし、実戦の詰みを検出するだけなら、元々がたいした時間もかからなかったということもあるが、柿木5からほとんど変わっていないとも言えそうだ。

使い勝手についても、いろいろと改良が加えられている。

今回からついたと言われる「局面編集での左右反転や全駒の一路移動」。これなどはまさに詰将棋作家仕様といえるだろう。さらに、7はどうなのか分からないが、柿木6では、余詰め検出と非限定の検出しかなかったが、これに手順前後や迂回手順まで検出できるようになった。

他に印刷設定などもユーザーが個別に設定できる箇所が多くなり、このあたりも使いやすくなっている。

元々が棋譜管理機能や詰将棋解答機能の使い勝手については何の不満もないのだが、それでも普段使っていて、「こうなっていれば」と思っていたことが2つあるのでここに書いておきたい。

一つは局面編集での作業。詰将棋作家の人たちには、全部の駒を配置するなんてことはあまりないのかもしれないが、「実戦の詰み」を検出させようとする場合、一枚一枚駒を駒箱からクリックして配置するのは結構手間なのである。駒箱の歩の上で、5回クリックしたら五枚の歩を取り出せ、盤上に一回クリックするごとに一枚ずつ配置できる・・・なんて機能があったら便利なのに、と常々思っている。

もう一つは、良く将棋センターでは、この局面に詰みがあるのかだけ柿木に聞くのだが、解答が表示されると同時に初手まで分かってしまう。何とか見ないようにと思っても、つい見えてしまうことが多い。ユーザー設定で、初手が表示されないようにできればなぁ・・・と思っていた。

まあ、ハッキリ言って、他の人が気にしないような小さな不満ではあるが。


さて、今回の柿木将棋8。ここでは、詰将棋解答機能しか見て来なかったが、当然他にも様々な機能がある。メニュー項目を見るだけでも、柿木6に比べると大幅に改良されているようだ。もっとも7との違いが私には分からないので、新機能については、販売元の「エンターブレインの柿木8のページ」を見てもらいたいと思う。棋譜データベースや詰将棋データベースの他に、アマチュア棋譜集としては、2500局以上に増加されているなど欲しい人にとっては、魅力的な機能も数多い。

今回の購入については、個人的には、詰将棋が早く正確になったことだけでも満足している。
今まで「実戦の詰み」の作成には、図面作成→一手10秒で余詰め検討→余詰めの修正→最終的に一手50秒で余詰め検討→出題という過程でおよそ30〜40分で作成していたのだが、今後は、図面作成→一手5秒で余詰め検討→余詰めの修正→最終的に一手30秒で余詰め検討→出題という感じで使っていこうと思う。これならさらなる短時間で余詰めのない作成・更新ができそうである。

(実戦に詰みがあるかどうかについて)今の標準的なパソコンで柿木8に3分かけて詰まなかったら、98%以上の確率で不詰めと判断して良い。そう言い切れるほど早く正確になった。何とも便利なソフトを作ってもらったものである。

2005年3月30日作成

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