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(21)激指定跡道場3のレビュー

将棋ソフトのレビューをするのは本当に久しぶりで前回は2008年の12月であるから4年ぶりとなる。実は将棋ソフトの購入そのものも良くレビューを書いていた当時とは違い、最近買う頻度は極端に少なくなっている。それでも今回、「定跡道場3」を買うのにそれほど迷いはなかった。と言うのも、辞書的に定跡の変化を調べるのにこれほど便利な物はないからだ。

さて、ソフトに定跡講座を載せたものとしては、「東大将棋、定跡道場完結編」というのが2004年に出ていてこれについてはここでもレビューをしている(完結編)。その後、「定跡道場」は激指に移り、最初の「激指 定跡道場」の発売が2007年4月、「激指 定跡道場2」の発売が2010年7月にあり、そして今回、2012年7月に「激指 定跡道場3」の発売となったのである。

定跡講座の評価そのものは、個人的には最初から高かったと言って良い。当初から解説は決して多い訳ではなかったが、その変化を簡単に調べられるという意味においては他に似たようなものがないだけにたいへん貴重で有用なものだった。
今回は久しぶりに買ったので、比較という形ではレビューしていない(実は今使っているパソコンには柿木将棋8とフリーのkifu for Windowsしか入っていないので)。
また、一番興味があるのは「定跡講座」なのでこれを中心に、他に詰み機能や指し手等についてのレビューをしている。機能的には他にも様々なものがあるのでちょっと片寄っているかもしれないが了解願いたいと思う。

今回調べた気になっている点

(1)定跡講座の有用性

(2)詰み機能について(柿木将棋の販売がなくなってしまった為、これで流用できないかを調べた)

(3)駒落ち上手の指し方(指導対局に十分な棋力になった現在、駒落ち上手も人間のように指すのかどうか)

(4)プロ棋戦の実況観戦に使用(以前もたまに使っていたが、その使い勝手は変わったのかどうか)

これら四つの点について特に今までのものと比較という形ではなく、簡単に使って見た感想を書いてみた。

---目次---
(1)激指 定跡道場3の「定跡講座」について
(2)詰み機能について
(3)駒落ちについて
(4)タイトル戦の観戦に使用
(5)結論

※Amazonの販売先:激指 定跡道場3(別ウインドウ)

(1)激指 定跡道場3の「定跡講座」について

「激指定跡道場3」のリニューアルポイントとして、講座は『居飛車92講座、振り飛車107講座、駒落ち61講座、合計260もの講座を収録しています』とある。
ところが前の「定跡道場2」と比較しようとしたのだが、「定跡道場2」の内容をネットで調べても見つからなかった。そこで、ここでは目次を載せておくので、もし今までの定跡道場を持っている人がいたら比較してもらえればと思う。


まずは左側に定跡講座の全体像を載せた。

大きく居飛車、振り飛車、駒落ちと分かれており、それぞれ10部ずつ。そしてその中に章があり初期局面から動かせるようになっていてさらにその中が節で分かれている。

一番興味のある三間飛車、石田流の部分を右側に載せて見たが、当然他の箇所がどうなっているか知りたい人は多いと思う。

そこで、別のページにこの目次すべてを画像にして載せることにした。

「激指 定跡道場3」の全講座一覧

図面がないと分からない部分は多いが、何しろ膨大な数で画像を作るのも大変だったのでこれで我慢してもらえればと思う。

次にこの講座の中身である。
全部を見るのはとても無理なので、今一番興味のある石田流の箇所を少し見てみた。

現在私は、ミニ冊子「一歩千金」に石田流の講座を書いている(将棋センターに来ている人と、将棋タウンで本を買っている人に配っているもの)。そしてその講座の参考にしているのが、今までに出版された20冊以上の石田流関連の本である。

こうした本に比べてどのくらい詳しく載っているかを見てみたが、さすがに本より詳しいという訳にはいかないようだ。先月先々月と、後手石田流について主に三冊「復刻版三間飛車」「久保の石田流」「佐藤康光の石田流破り」を参考に書いているが、この三冊に書かれた主要な変化についても載ってはいるものの(このソフトには)細かい変化や解説はなかった(一応上の第8部三間飛車の第2章第1節にある)。

また石田流の久保新手や鈴木新手などはどうなっているだろうかと思いこれについても見てみた。
もちろん両方とも載っている。ただ、本ほど詳しいかと言うとやはり何冊も出ている本より優るとは言えない。もっとも去年の3月に発行されている「久保の石田流」の第8章、最新の石田流に書かれている変化もちゃんと載っているのには驚いた。重箱の隅をつつくような細かい変化はさすがに載っていないものもあるが、全戦型についてこれだけ詳細に変化が出ているものはやはり他にないと言えるだろう。

さて、解説については(石田流に限らず)全体的に言える事だと思うが本の親切な解説より良いわけではない。つまり級位者が定跡を覚えようとしたり、ある程度定跡を知っている有段者がもっと詳しく勉強しようとして買うソフトではないということだ。そういう人は、専門の本を買った方が良いだろう。
また、Amazonの「定跡道場2」のレビューに評価を低くした人が『強い人には理解できるかもしれませんが、私には理解できない部分も多く期待外れでした。解説はほぼ無しと思った方がいいですし、突っ込んで説明されていない部分も多いです。』と書いているが、この人の言っていることも良く分かる。初心者や定跡の基本を知らない人が、このソフトで勉強しようとしても、あまり役に立たないと言うこと。

では、どういう人に良いのか。たとえば、私の場合は、将棋センターで横歩取りの変化を聞かれることがある。主要な変化は知っていても、自分で指さないとちょっとした横道でもすぐに知らない変化に入ってしまうことは多い。そこでそうした変化を調べるのには大変重宝する。本来なら載っていそうないろいろな本を調べなければいけないのだが、それを一本のソフトで済ますことが出来るのである。そして、このソフトにも載っていないような手であれば、定跡外れの手として何か相手方に手のある可能性は高いし、ここに載っていればそれをそのまま解説出来るという訳だ。

普通の人であれば、実戦で相手が知らない手を指してきた。その手が定跡の手なのかどうかを調べるにはまさにもってこいのソフトである。

つまり広範囲に定跡の変化を知りたい人向けということ。このソフトでは、画像を載せたように「目次」から調べることも出来るし、局面検索で講座内容を調べることも出来る。局面検索で、「完全一致」の検索しか出来ないのはちょっと不便ではあるが、出来る限り序盤の状態から検索をかければすぐに見つけることが出来たいへん便利だ。
本で言うなら、東大将棋の道場シリーズをそのままソフトに組み込んだ感じだろうか。そして新しいだけあって、石田流やゴキゲン中飛車、一手損角換わりなど最近流行の戦法の比率もかなり増えている。これならある程度定跡を知っている級位者から有段者まで幅広く使えると思う。

(2)詰み機能について

去年のことだったろうか、「柿木将棋8」の販売がなくなってしまったのを知った時はかなり残念に思った。詰将棋を作る人にとってこれはもう神のようなソフトで、自分もこれがなければ将棋タウンの「実戦の詰み」もここまで続けられなかったかもしれないからだ。

「柿木将棋8」がなぜそんなに優れているかというと、詰みを調べるのに、常に最短で詰将棋で言う「正答」の手順を出してくると言うことと、余詰めを調べる機能があるから。さらにそうした余詰めを調べるのにも、時間制限や、成、不成のチェック、変化別詰、非限定等々、非常に細かく様々な事を設定、調べることが出来るので詰将棋を作る人にとってこの便利さは計り知れないのだ。

昔こうしたソフトがなかった時は、当然自分で余詰めを調べていた。もちろんそれはそれで、棋力向上になるのであるから、若いうちは決して無駄にはならない。むしろ若い人たちにとってはソフトなど使わない方が良いのかもしれないが、”もう余詰めの検討にそこまで労力を使いたくない”人にとってこれほど便利なソフトはなかったのである。

その「柿木将棋」の販売がなくなってしまった今、この「激指」でどこまで代用できるのかと言うことを調べて見たのが以下のレポートだ。

まず題材として8月8日に出題した「実戦の詰み」の原図を使って見た。それが下図。(kifファイルのダウンロード


これを「柿木将棋8」で詰めて見ると、▲2四桂△2二玉▲4四馬△3三桂打▲3二金△同金▲同桂成△同玉▲3一金△2二玉▲2一金△1三玉▲2二銀△1二玉▲1一金△2二玉▲2一飛成△1三玉 ▲1二金まで19手詰。
という解を出してくる。そして当然のことながら、この19手詰というのが詰める為の最短手順のハズである。

では「激指定跡道場3」ではどうか。このソフトには、「詰みチェック」の欄に、「高速」と「最短手順」を選べるという選択肢がある。
そこで、まずは高速で詰めてみた。すると瞬時に、33手以内で詰みますと出て、以下の手順を出して来た。

▲2四桂△2二玉▲4四馬△3三銀▲3二金△同金▲同桂成△同玉▲3一金△2二玉▲2一金△1二玉▲1一金△1三玉▲2二銀△同銀▲同馬△同玉▲2一飛成△3三玉▲4五桂△4三玉▲2三龍△4二玉▲4三香△同 金▲同龍△同玉▲5三香成△3二玉▲3三金△4一玉▲4二成香まで33手詰である。

ここで問題となりそうなのは、4手目の合駒。柿木では桂合いをしたのに、激指は銀合いだ。どういう事かと言うと、▲3二金から詰めに行き、さらにその後▲3一金から追いかけるのであれば、銀の方が△1三玉と上がった時、手数が長くなる。それしかないのであれば当然銀合いをすべき手なのである。ところが、銀合いには▲同馬と取る手があり、この変化は9手で詰む。そうした単手数で詰む手があるから正解は桂合いとなる訳で、そこまで柿木では考えて正答を出してくれるのである。

では次にもう一つの選択、「最短手順」で詰めてみた。すると19手詰、高速より若干時間はかかったが、それでも数秒で柿木将棋とまったく同じ手順を出して来たのである。これには感心した。

なおこの「最短手順」という機能、何年も前の激指から乗せられているようだが、最初の頃の精度はあまり良くなかったらしい。もし、一つ二つ前の激指を持っているなら、上記図面から「高速」と「最短手順」での詰みを確かめてもらえれば、最新の「激指定跡道場3」と違いがあるのかどうかが分かると思う。

また、この図面には余詰めもある(あえて余詰めのあるものを選んだ)。▲4四馬では▲3二金でも詰むし、▲3一金では▲4三金でも詰む。このような余詰めを「激指」で探す場合は、詰みそうな局面を設定し、そこから詰むかどうかを調べなくてはならないのでちょっと面倒だ。ただ「柿木将棋」が手に入らないのであれば自力で余詰めを探すよりははるかに見つけやすいので何もない時に比べたらずいぶん便利になったと言える。

上記以外でもいくつか試して見たが、少なくとも普通の詰将棋では、高速でも最短手順でもすぐに正答を出す。どの程度まで正確だろうか?と言うことで、詰将棋としてはかなり難しい部類に入る将棋世界の詰将棋サロンを解かせてみた。2012年9月号の最新詰将棋8題を解かせてみたところ、「高速」ではどれも瞬時に解いたが、詰将棋の解答としては間違っているものが三つあった。そこでさらにその三題について「最短手数」で解かせた所二題は正解に。最後の一題(最終8問目)だけはそれも間違っていた。もっともその間違いは、同手数で駒余りの方へ逃げてしまうという間違いであり、「最短手順」という意味では間違ってはいないのでこのあたりは微妙だ。
結局、「詰将棋の解答」を出すと言うことでは、「柿木将棋8」ほど正確ではないものの、一般的な詰将棋やほとんどの実戦の詰みにおいては、最短手順で解答を出せば、八割方望んだ答えを出してくれると言えそうだ。

「柿木将棋8」のように極めて手軽という訳ではないが、「最短手順」の精度が良くなり、それなりに使えるようになってきたのかな、と言うのが今回使って見た感想である。

(3)駒落ちについて

将棋ソフトが非常に強くなった今、駒落ちに対してもソフトが上手で「棋力向上の役に立つのか?」と言うことは以前から気にしていたことである。そして以前も何度も試してはいつもちょっとガッカリしていた(激指5や8での指し方に対して)。

今回も六枚落ちや二枚落ち、飛香落ち等でコンピュータを上手にしてどのように指すのかを試して見た。
こちらが定跡通り駒組みをすると、コンピュータも途中までは、ほぼ定跡通り指してくる。がやはり人間の上手が指すような指し方はしない。ほとんどの場合、玉を囲い下手の攻めを待つという感じになる。
もっとも、そこから特に初段位の人達が攻略するのはかなり大変で、良い指導相手にはなりそうだ。

この「激指定跡道場3」は通常の「激指」と違って、定跡から指すには便利だということが言える。
と言うのは、定跡の形から指したいのであれば、講座を途中まで進めて、そこから盤面編集→通常対局→現在の局面から指すという風にすれば良いからだ。

初手から指すと、なかなか人間の上手のようには指さない。しかし、講座の途中から指し継ぐことが簡単に出来、そこから相手のレベルも設定し、いかに勝ちまで持っていくかを勉強することができるのでそのような使い方で十分役に立つと思う。

(4)タイトル戦の観戦に使用

最近はやっていなかったが、以前は将棋ソフトを使って、タイトル戦の終盤の形勢判断を良くしていた。但し、ソフトに形勢判断を任せるのではなく、片方をソフトに持たせて実際にその時動いている盤面を戦ってみるのである。そしてその両方を自分で指して見て、どのような手があるのかを調べ、自分で形勢を判断するのだ。

今回は、久しぶりに王位戦第4局で「激指定跡道場3」を使って観戦してみた。
そしてそのことを、8月13日発行のメルマガに書き、それをこちらにも載せたので見てもらいたいと思う。

王位戦第4局、終盤を「激指定跡道場3」で観戦(別ウインドウ)」

詳しくは上記リンク先を見てもらいたいが、今回実況の終盤をこのような形で使用してみて、有段者なら同じような使い方で形勢判断や検討が出来るのではないかと思った。しかし、級位者ではちょっと無理かもしれないので、そういう場合は、両方をコンピュータに指させてみるのである。
そしてある程度結果を見て、実況の手が変わったらまた再びそこから指させてみる。「次の一手」や「検討モード」なども併用し、その人に合った方法で有段者と同じような使い方が出来るのではと考えている。

(5)結論

さて、使って見た結論であるが、最初に不満点を二つ上げておこう。

実は、駒落ちを検証する為、ソフトを上手にして六枚落ちを指している時である。最後の詰みまでいかないうちにソフトが投げてしまったのである。さらに、タイトル戦の終盤をソフトと指している時。こちらの玉があと5手で詰むと言うときに、「詰みです:○手をもちまして激指の勝ちです」と宣言されて対局を終了させられてしまったのである。まあ確かにどちらも間違っている訳ではないのだが。

しかし、駒落ちなら最後詰むまで指して欲しいし、完全に詰んだ状態になっていないのに「詰みです」はないだろ、と思ったものだ。このことが常にそうなのかどうか八枚落ちの上手と下手を持って実際に何局か指して見た。するとやはり駒落ちでソフトが上手の場合は、まだ全然詰むまでに時間のかかる状態の時に(王手ですらないのに)ソフトは投げてしまうのである。また逆に自分が上手の場合、詰み三手前の状態で、「詰みです」と宣言されて終了させられてしまうことが多かった。

この「最後の詰みまで指せない」ことと「完全に詰みの状態でないのに詰みですと宣言される」ことが不満の一つ目だ。もっともこれは今に始まったことではなく以前のバージョンもそうだったらしい。あまりソフトと指す事がなかったので今まで気がつかなかったが、これは設定で最後まで指す事が出来るようにしてもらいたいと思う。

そしてもう一つの不満。それは、「王位戦第4局の観戦」でも書いたのだが、激指で解析させた「次の一手」は、コピーも出来ないし、ソフトにも取り込めないのだ。
棋力が上がり、次の一手の精度が極めて良くなっただけに「取り込めない」と言うのはずいぶん不便に感じた。そんなに難しい事ではないと思えるだけに取り込み機能は積んで欲しいと思う。

以上二点だけで他に不満はほとんどない。定跡講座は非常に広範囲で詳しいし(解説がではなく変化が)、詰み機能も「柿木将棋8」の八割位の信頼感がありまあまあ、駒落ちの指し方も数年前に比べてずいぶん良くなっている。
また指し手もさらに早くなった感じだ。もちろんコンピュータの処理速度が上がっていることもあるが、同じコンピュータを使っても、以前のものより一手にかける時間が短くなりより快適になっている。

さらに今回「王位戦第4局」で使い、局後も検証してみたが、プロ並みの検討が出来ることも分かった。「次の一手」や「検討モード」の精度が上がり、本当にプロ棋士に聞いている感じであり、これなら有段者同士で指した将棋でも分からない所は激指に聞くことも出来そうだ。

以上、すべての機能という訳ではないが、私の気になった箇所はおおよそ検証してみた。そして、最近のソフトを持っていない人には間違いなく「買い」と言い切れるだろう。ただ、直近の「定跡道場2」とか他の最新ソフトを持っている人は、買う価値があるかどうかここに載せた内容と比べて見て購入の参考にしてもらえたらと思う。

2012年8月16日作成

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