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将棋世界

ここでは、将棋世界の内容と感想を簡単に書いていきます。何年もたまっていけば、いつその記事があったかのデータベースになりますし、普段購入していない方の購入時の参考になればとも思っています。
また、何年もたまり、長く重くなってしまった為、2015年以前を分けました。今後は5年単位に分けて載せようと思っています。
※この「将棋世界のレビュー」は2019年12月号までで終了しました。
2019年12月号(2019年11月2日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、「ドキュメント 第60期王位戦七番勝負」として木村新王位の話から始まり、「第7局」(豊島-木村)を王位の自戦解説で載せています。続いて「竜王戦第1局」(広瀬-豊島)があり、こちらも広瀬竜王の自戦解説です。そしてその後に、「プロ編入試験挑戦記念座談会」というちょっと変わった記事があります。これは、折田翔吾さんが、今年編入試験を受けるということで、今まで受けてプロになった瀬川六段と今泉四段を加えての座談会です。当時は話題になり本にもなりましたが、その時の心情など普段あまり見聞きすることもないだけに興味深い記事となっています。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「王座戦第3局」(斎藤-永瀬)(文:編集部)(「第2局」は棋譜のみ)、「新人王戦第1局」(高野-増田)(文:雨宮知典氏)、「銀河戦本戦Bブロック」(折田アマ-村田)、「竜王戦昇級決定戦2組」(斎藤-郷田)、「順位戦B級1組」(谷川-松尾)(「戦国順位戦」の中)、「白瀧あゆみ杯争奪新人登竜門戦決勝」(山根-加藤)などがあります。

前半に女流の記事が二つ。一つ目は「里見香奈女流六冠へのインタビュー」記事です。清麗戦五番勝負が終わって三週間と言うことで、この対局の感想が多いですが、後ろの方では奨励会退会後のことや今後のことについても話をしています。
そしてその後に「
人物クローズアップ」として「西山朋佳物語」を大崎善生氏が書いています。「聖の青春」などベストセラー本を書いている氏ですから当然面白く一気に読んでしまいました。この人物クローズアップが今月号だけなのか来月もあるのか不明ですが、連載であれば今後の楽しみが一つ増えます。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」はなんと最終回の特別編で、「藤井将棋次の一手」です。問題はポイントの局面を取り上げ全部で14問、少しずつですがそれぞれにプロ棋士の解説もあります。この取り上げた局面はどれも見たことあるな、という感じですので過去に棋譜が載ったり、実況されているものが多いと思われます。そして改めてこの一つ一つを見るとすごい一着ばかり。驚愕とも言えるこうした手をひねり出す、あるいは読みの中に入れている、このような将棋が面白くないはずがありません。今回の記事でややもったいないのは、局面図ですから相手は分かるのですが、棋譜やどの対局だったかの情報がないことです。実際、もう一度並べて見たいと思わせる局面図なのですが、棋譜を見つけるのは大変そうです。

今月の技術的な特集は「現代に生きる矢倉脇システム」。
Chapter1は戦法解説として「家元が語る脇システム」。解説は当然脇謙二八段。インタビュー形式で、誕生の頃から戦法のポイントを分かりやすく話されています。(参考棋譜:平成7年順位戦B2脇-西川戦、平成11年順位戦B2脇-田中魁秀戦、平成15年順位戦B2脇-木村戦)
Chapter2は基本講座「現代の脇システム」で、講師は池永天志四段。前半は基本的な定跡からかなり突っ込んだ局面まで解説しており、後半は、副題に「藤井矢倉との融合がトレンド」とあるように、現代の脇システムを解説しています。
Chapter3は付録としてです。内容は最後の付録のところで。

定跡最前線パトロール」第11回は「角交換振り飛車」です。「バリエーション増加中」とあるように、昔アマチュアが、それも初心者が指していたような形がプロでも出てきています。最初は正式な名称はない、としながらも「ゴキゲン三間飛車」から。二つ目は「4手目△3二飛」。この戦法には実況でも見た驚きの△3三金〜△3四金型も出てきます。そして三つ目は「角頭歩戦法」。どれも定跡の整備されていない力戦形ですが、将棋は何を指しても良い、のかもしれません。力自慢の振り飛車党だけでなく、頭を柔軟に保つ必要のある全ての人に役に立つ内容です。(参考棋譜:平成29年順位戦A級佐藤康光-久保戦、平成31年順位戦C1千葉-門倉戦、平成29年順位戦C1金井-安用寺戦)

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第16回。前回に続き「タイトルを懸けての巻」ですが、今回は棋聖の防衛戦。第13期の挑戦者は大山名人、第14期の挑戦者は山田道美八段を退け3連覇。後半には第17回王座戦の決勝三番勝負で有吉道夫八段との対局。この第3局は棋譜もあります。

付録は「攻めて楽しい脇システム」。定跡&実戦次の一手になっており、出題は北島忠雄七段。今月の特集の続きで、いつものように39問あります。定跡の基本的な形から、実戦の終盤まで取り上げていますので、本文を読んだ後こちらで復習して下さい。

2019年11月号(2019年10月3日発売)の内容と感想
表紙は六冠達成で清麗戦を制した里見女流六冠ですが、それに関わる記事はそこまで多くありません。巻頭カラーは、「竜王戦挑戦者決定戦第3局」(豊島-木村)(文:編集部)から。棋譜を含め3ページの短い記事でもこれは大きな一番でした。続いて既に決着が着いてしまった「王座戦第1局」(斎藤-永瀬)(記:雨宮知典氏)があり、その後に「棋士対談」として伊藤真吾五段×香川愛生女流三段が「YouTubeで広がる将棋の世界」と題する対談をしています。こうした将棋普及の取り組みは今後もいろいろなものが出てくるのかもしれません。そしてさらにその後は、「王将戦二次予選決勝」の谷川九段vs藤井聡太七段戦(関西本部棋士室24時として:文:池田将之氏)。この将棋、将棋センターに来た人が「今日すごい対局やってるのに実況ないんだよなぁ!」と言っているのを聞いて初めて知りましたが、改めて興味を持って読んでみました。うーん、ちょっと内容的には・・・でしたね。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「王位戦第6局と王位戦第5局」(豊島-木村)(記:大川慎太郎氏)(「第4局」は棋譜のみ)、第5局は豊島王位が勝ち第6局でフルセット。この王位戦も先月末すでに終わっていますが、改めて実況を見ていた終盤戦を思い出しました。他に「清麗戦第3局」(甲斐-里見)(文:小島渉氏)(「第2局」は棋譜のみ)、「YAMADA女流チャレンジ杯決勝」(伊奈川-山根)「YAMADAチャレンジ杯決勝」(井出-門倉)(記:相崎修司氏)、「銀河戦決勝」(渡辺明-豊島)(文:渡部壮大氏)、「竜王戦決勝トーナメント」(豊島-渡辺明)などがあります。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第16回はなんと師匠の杉本昌隆八段の登場。今まで出ていなかったのが不思議ですが、「源流に見る天才性」として研修会時代の将棋を取り上げています。しかもその当時から今のように踏み込む将棋、人が見ても魅了する将棋を指しているようです。取り上げた対局はなかなか面白く並べて見たい棋譜で、特に最後の杉本八段との飛香落ちは146手、緩めない上手玉を攻めるすごい将棋でした。これは必見です。(参考棋譜:平成22年東海研修会対津坂戦、平成22年東海研修会対高橋戦、平成22年東海研修会対堀戦、平成23年東海研修会(指導:飛車香落ち)対杉本七段戦)

今月の技術的な特集はちょっと変わっていますね。戦法ではなく、「苦しい時の戦い方」。「根性の棋士」深浦康市九段と佐々木大地五段の師弟が「心理と技術の両面から、将棋の醍醐味でもある逆転術を伝授」しています。
Chapter1は「九州男児 師弟対談」。「逆境を乗り越える考え方」として二人のそれぞれの対局を何局も取り上げ、その時々でどのように考え指していたか指すべきかを対談形式で話をしています。
Chapter2は好局鑑賞、「不屈の闘志!深浦将棋の真髄」として長手数の将棋二局(平成27年A級順位戦対佐藤天彦戦と平成27年A級順位戦対佐藤康光戦)を取り上げています(一局2ページの簡単なコメントのみ)
Chapter3は付録としてです。内容は最後の付録のところで。でもこの付録が結構良いです。

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第15回。「タイトルを懸けての巻」で、初タイトルである棋聖を取った時の話。先月号の初タイトル戦では敗れましたが、二期連続挑戦で第12期棋聖戦、山田道美棋聖への挑戦です。ここには第4局の棋譜が載せられています。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって64回目。今月のテーマは、(1)青野流は壁であり続けるか、(2)糸谷流右玉のさばき、(3)升田幸三、名人戦の力技、(4)将棋の先生はよく食べますが、の四つ。(1)は今でも有力な横歩取り青野流に対しシンプルに△5五角と打つ変化。(2)は平成30年のA級順位戦での羽生-糸谷戦。終盤の糸谷八段の指し手を問題にしています。(3)は昭和33年の第17期名人戦第2局。当時の升田名人が大山を挑戦者に迎えた一戦で中盤戦からの力の駒組みです。(4)は囲碁の棋士は小食派が多いのに将棋ではたくさん食べる人が多い、ということでこの質問になっています。(参考棋譜:平成30年順位戦A級羽生-糸谷戦、昭和33年名人戦第2局升田-大山戦)

定跡最前線パトロール」は第10回で前回の続き、「角換わり腰掛け銀」中盤編です。今回は、▲2九飛・△8一飛型に組んだ後の戦いを▲2五歩型と▲2六歩型に分けて解説しています。最初は▲2五歩型で後手の待機戦術から。実況を見ていても良く出てくるのでその時の参考にはなりますが、やはり実際に指さないと身には付きません。内容は非常に細かいので実戦で指す有段者向けと言えそうです。(参考棋譜:平成31年順位戦B1渡辺-斎藤戦、令和元年順位戦B1千田-永瀬戦、令和元年竜王戦5組近藤誠-阿部光戦)

付録は「
ちょいワル局面の処世術」。実戦次の一手になっており、出題は遠山雄亮六段。今月の特集の続きですので、失敗したと思う局面でどう指すかという問題39問。はしがきには、「アマチュアの方の棋譜を元に作りました。」とあるようにいかにもアマの将棋に出てきそうな局面で構成されています。難易度も級位者から有段者まで幅広く、こうした問題集はなかなかないので良いですね。本体の中に毎月10問くらい欲しい感じです。

2019年10月号(2019年9月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、「師弟Vol.5」からです。登場しているのは淡路仁茂九段と久保利明九段。(構成・写真:野澤亘伸氏)。『「不倒流」でA級に上り詰めた師と、振り飛車一本でタイトルをつかみ「さばきのアーティスト」と呼ばれる弟子の半生をたどる』と言うことで、あまり知られていない久保九段入門当時の話や昔の淡路九段の話など、いろいろ興味深い話が多く一気に読んでしまいました。
棋譜は豊島-木村の十番勝負から。つまり、「王位戦第3局」(第2局は棋譜のみ)(豊島-木村)(記:大川慎太郎氏)と「竜王戦挑戦者決定戦第1局」(豊島-木村)(文:相崎修司氏)です。両方とも終盤はネットで見ていましたが、改めて記事で読むと「そうだったのか」と思うようなことも多いですね。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「清麗戦第1局」(甲斐-里見)(文:雨宮知典氏)、「銀河戦決勝トーナメント」(折田アマ-佐藤天彦)、「竜王戦決勝トーナメント」(近藤誠也-梶浦)などがあります。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第15回は森内俊之九段。副題の「未知との遭遇」で何となく言おうとしていることも分かるような気はしますし実際そうした新しい価値観を藤井将棋に見いだしているようです。ただそれだけではなく、取り上げた将棋のポイントを上げ、そこからも藤井将棋強さの理由を考察しています。(参考棋譜:平成31年王将戦1次予選対森内九段戦、令和元年王座戦本戦対佐々木大地五段戦、令和元年順位戦C1対村田六段戦、令和元年竜王戦決勝トーナメント対近藤誠也六段戦、令和元年竜王戦決勝トーナメント対久保九段戦)

今月の技術的な特集は「なんでも居飛車穴熊!」。今回は、なんでも居飛車穴熊に関する著書を持つ北島忠雄七段監修。メインは、藤井システムに対して穴熊に組む方法。
Chapter1は基本講座、「対藤井システム なんでも穴熊」。講師は北島七段で、様々な藤井システムに対し、居飛車穴熊側はどのように組んでいくかという定跡講座。内容は居飛車に有利なように書かれている訳でもないので、藤井システムの勉強にもなりそうです。
Chapter2は好局鑑賞、「臨機応変 居飛穴の組み方を学ぼう」・・・と題していても、鑑賞とあるように、実戦譜とその簡単な解説です。1ページに一局ずつ。取り上げた棋譜は、平成29年女流王将戦上田-山根戦(藤井システムに急戦)、平成16年倉敷藤花戦岩根-坂東戦(▲5五角から穴熊)、平成17年銀河戦大島-中村修戦(▲5五角から穴熊)、平成29年棋聖戦第3局斎藤-羽生戦(▲7八金から穴熊)、平成22年日本シリーズ郷田-久保戦(▲5五角から穴熊)、平成28年叡王戦近藤誠-井出戦(振り飛車美濃に穴熊)。

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第14回。「タイトルを懸けての巻」で、タイトル初挑戦と敗戦の話。そのタイトルは第11期棋聖戦で、当時の棋聖は山田道美。第1局は棋譜も載っており中原五段(当時)の快勝でした。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって63回目。今月のテーマは、(1)最後の年に32勝を上げた棋士、(2)糸谷流右四間飛車は通用するか、(3)最高峰2人、まさかのエアポケット、の三つ。(1)は29歳で亡くなった村山聖九段のことで、現役最後の年でも32勝を上げたとあります。そして取り上げた局面は平成9年、順位戦B級1組の森けい二九段戦(その終盤)。(2)は平成30年のA級順位戦での糸谷-三浦戦。後手の雁木に右四間飛車はどうかという質問。(3)は平成9年の第55期名人戦第1局。羽生と谷川の二人がそろって錯覚をしたという珍しい将棋。(1)は問題としてはやさしすぎる局面で当然プロならひと目。(2)は各棋士により多少見解の相違がありました。(3)は錯覚とは言え、ひと目詰みそうで実は詰まないという不思議な局面。問題として出されればさすがに気付きますね。(参考棋譜:平成9年順位戦B級1組森-村山戦、平成30年順位戦A級糸谷-三浦戦、平成9年名人戦第1局谷川-羽生戦)

定跡最前線パトロール」は第9回で「角換わり腰掛け銀」。何冊でも本が書けてしまう大きな題ですが、最近はやりの▲2九飛▲3七桂▲4八金の形を2回に分けて見ていくそうで、今回は「駒組み編」「▲2五歩型と▲2六歩型の違い」とあります。ざっと読みましたがかなり細かい。この将棋を指す有段者に取っては必須のことかもしれませんが、振り飛車党には「難しいなぁ〜」というのが実感です。(参考棋譜:令和元年王将戦1次予選青嶋-松尾戦、平成31年王将戦伊藤真吾-西尾戦、平成30年順位戦A級行方-佐藤康光戦)

毎号アマチュアの情報も取り上げられますが、今月は特に多いですね。プロの公式棋戦の後に、第32回アマチュア竜王戦、第18回全国小学生倉敷王将戦、第55回全国高等学校将棋選手権、第15回高校生将棋王将戦、第40回全国中学生選抜将棋選手権大会、第44回中学生将棋名人戦、第22回中学生将棋王将戦、第15回文部科学大臣杯小・中学校将棋団体戦などの記事があり、それら決勝の棋譜も載せられています。

付録は「
必至か、否か」。今月の付録はなかなか面白いです。「終盤力トレーニング」として、”必至か”必至ではないが必至がかかるか”必至ではなく必至もかからない”の三択問題。しかも基本の必至に少し局面を変えての出題。詰将棋と違い、そう思っても正解かどうか自信がないため熟考することになります。表紙に著者(講師)名が書かれていないので編集部作かと思っていましたら、中に金子タカシ著とありました。あの名著を送り出した人ですね。という訳で今月は棋力アップにお薦めの付録。棋力的には初段前後が対象でしょうが、級位者の人にとっても、さらには有段者にとっても役に立つ良い付録です。

2019年9月号(2019年8月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは表紙と共に三冠に復帰した渡辺明棋聖の自戦解説である「棋聖戦第4局」(豊島-渡辺)(構成:相崎修司氏)から。自戦解説と言っても、形式はインタビュー方式。一局のポイントとなる局面の解説や終盤の複雑な変化、さらにインタビューの最後には6年ぶりの三冠王についての感想や復活のきっかけについても話をしています。続いて「王位戦第1局」(豊島-木村)(記:大川慎太郎氏)。棋譜の解説もさることながら、「これが豊島将棋だ」とあるように、豊島王位の研究が深く、ソフトの話と共に面白い内容でした。この記事の後には、元号が変わったからでしょうか、「平成の将棋界あの場面この場面」があり、この30年間、平成の将棋界を知っている人には懐かしい写真と記事がたくさんあります。さらに巻頭カラーから本文に移るところに、藤井聡太七段が優勝した「AbemaTVトーナメント決勝」の模様が載せられており、糸谷八段との決勝譜3局もあります。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「棋聖戦第3局」(豊島-渡辺)(記:大川慎太郎氏)、「棋聖戦第2局」(豊島-渡辺)(文:結城広大氏)、「銀河戦本戦Fブロック」(羽生-谷川)、「竜王戦2組決勝」(佐藤天-橋本)などがあります。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第14回は振り飛車御三家の一人であり単行本もたくさん書いている鈴木大介九段。「予言者が語る覚醒の日」とあるのは何かと思いましたら、三段リーグのことを予言し当てていたそうです。今回の記事では対振り飛車での藤井将棋を全部で5局から分析。対振り飛車が苦手と言われていましたし、実際そのように感じてもいましたが、そのことの推移、そして進化も分かる記事となっています。(参考棋譜:平成30年棋聖戦1次予選対里見女流四冠戦、平成30年順位戦C1対門倉五段戦、平成31年棋王戦予選対中村亮介六段戦、平成31年棋聖戦2次予選対久保九段戦、令和元年竜王戦4組決勝対菅井七段戦)

今月の技術的な特集は「
下町発!粋でいなせな三間飛車」です。今、振り飛車のトレンドは三間飛車として、2017年に二人の共著で単行本も出した小倉久史七段と山本博志四段がこの特集を書いています。
Chapter1は師弟対談として、「
下町師弟が三間飛車を語る」。対談形式ですが、記事は10ページでかなりの分量。実は単行本を出した当時、山本四段はまだ奨励会三段。この本を読んでいたこともありより興味深く記事を読みました。ここでは、指し方のコツや考え方の他いろいろな話をしており、三段リーグでの藤井聡太-山本博志戦の棋譜もあります。
Chapter2は「トマホーク基本講座」。「居飛穴の攻略法教えます」として山本四段がトマホークの指し方を伝授。基本講座と言ってもこちらも全部で10ページありますので、様々な局面の指し方を解説。今回の講座をしっかり読んでおけば、後は実戦で試すことで会得して行けるでしょう。
Chapter3は次の一手。小倉七段出題「三間飛車の本筋を学ぼう」。問題は全11問ありこれまでの復習の意味もありそうです。

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第13回。新鋭時代の巻に入り、「タイトル初挑戦」に至るまでの話です。棋譜は一つ、そのタイトル挑戦権を獲得した昭和42年の棋聖戦挑戦者決定戦で中原五段時代の板谷六段(当時)との対局です。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって62回目。今月のテーマは、(1)升田幸三、豪快すぎる打開、(2)広瀬竜王の棋士人生を変えた一局、(3)森内永世名人誕生の1局、(4)佐藤康光九段神話、目隠し五面指し、の四つ。(1)は昭和40年のA級順位戦。升田-有吉戦の中盤。ものすごい悪形からどのように打開していくかという問題。(2)は昨年の竜王戦挑戦者決定三番勝負の第2局、広瀬-深浦戦。その終盤戦ですが、ここからもまだ混戦が続きました。(3)は平成19年の名人戦第7局で森内-郷田戦の最終盤です。(4)は目隠し五面指しは出来ますか?との問い。(1)から(3)の局面は棋士間による差があまり出ていなくてやや残念。(4)の答えもおおむね予想できるものでしたが、藤井七段の話だけは意外でした。(参考棋譜:昭和40年順位戦A級有吉-升田戦、平成19年名人戦第7局郷田-森内戦)

定跡最前線パトロール」は第8回で今回は「エルモ囲い」。囲いが講座の題材になるのは珍しいですが、これは将棋センターでも時々指す人がいて話題になっていますね。ここでは対三間飛車に対する指し方、対四間飛車に対する指し方などいろいろ見ていますので、エルモ囲いの長所や短所をしっかり確認しておけそうです。

付録は「令和の三間飛車対急戦
」。定跡次の一手で39問、今月の特集と完全にリンクしている訳ではありませんが、「昔ながらの急戦策、最近になって登場したエルモ囲い急戦、左美濃急戦の3つを主に解説」とあり、特集と合わせて三間飛車を勉強するには良い教材です。

2019年8月号(2019年7月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは表紙も含め羽生九段の「大山越えの1434勝達成」からです。最多勝記録を更新し歴代単独1位となったことで、記者会見の話とその後のページには比較された記録も載せられています。続いて「師弟Vol.4」があり、今回の登場は勝浦修九段と広瀬章人竜王。(構成・写真:野澤亘伸氏)。去年注目されたタイトル戦で竜王を獲得、勝浦九段の棋士人生と対比させながら広瀬竜王の歩んできた道をたどっています。中でも「竜王戦狂騒曲」では、この前後の話をノンフィクション小説のように書かれており、面白くて一気に読んでしまいました。
観戦記は、「棋聖戦第1局」(豊島-渡辺)(記:小暮克洋氏)から。「頂上決戦の大激闘」と書かれているようにまさに今絶好調の二人ですから内容も紙一重ですごかったです。さらにこの後には、タイトル戦が終わったということで振り返りの記事。その一つ目は、「
豊島将之名人が振り返る第77期名人戦七番勝負」で、本文に入り二つ目は「永瀬拓矢叡王が振り返る第4期叡王戦七番勝負」(どちらも構成は大川慎太郎氏)。この二つの記事、もちろん局面によるポイントの解説はたくさんあります。しかしそれ以外の話、勉強方法やソフトのこと、これからの目標などいろいろと面白い内容があり、こちらは読み物としても面白かったです。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「マイナビ女子オープン第4局」(西山-里見)(自戦解説:西山朋佳女王)、「女流王位戦第4局」(第3局は棋譜のみ)(渡部-里見)(文:相崎修司氏)、「銀河戦本戦Cブロック」(佐藤康-山崎)、「竜王戦1組」(木村-羽生)などがあります。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第13回は佐々木大地五段と大橋貴洸四段の若手俊英二人。「藤井将棋に進化を見た」としてこの二人の会話形式で記事が書かれています。この二人とも、全員が四段当時(平成29年)藤井四段に勝っており、最初はまずその将棋のポイントから。そして最近、つまり今年2月以降の将棋の解説へと進めており、どのように変わっていったかを書いています。(参考棋譜:平成31年銀河戦本戦Eブロック対近藤誠也五段戦、平成31年竜王戦4組対畠山成幸八段戦、平成31年竜王戦4組対高見叡王戦)

今月の技術的な特集は「矢倉は怖くない!進化する右四間飛車」。流行の左美濃と右四間飛車を融合させるアイデアで甦った現代の矢倉における右四間飛車の指し方についてです。
Chapter1は基本講座、「流行再び!攻めて勝つ令和の右四間飛車」で講師は池永天志四段。まず基本的な矢倉への右四間飛車からの攻め方。後半は雁木への攻め方ととにかく左美濃にして存分に攻めています。
Chapter2は「好局鑑賞」。1ページに一局を収め、簡単な解説付き。全部で4局、平成25年棋王戦予選の佐藤慎一-加藤一二三戦、平成29年順位戦C級1組の阿部健治郎-長沼戦、平成30年叡王戦九段戦の井上-塚田戦、平成4年王将戦リーグの羽生-米長戦を取り上げています。
Chapter3は付録としてです。内容は最後の付録のところで。

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第12回。修行時代からの続きで「四段に昇段」です。話は奨励会時代から四段昇段前後のこと。その三段リーグ東西決戦を桐山清澄三段(当時)と対局した棋譜が載せてあり、なんと187手の激戦です。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって61回目。今月のテーマは、(1)豊島名人の新しい攻め筋、(2)トライボーディアンへの挑戦、(3)大内、怒濤流の受け、の三つ。(1)は相掛かりの急戦形。豊島名人の新しい攻め筋についての各棋士の見解(平成30年竜王戦の豊島-深浦戦)。(2)は将棋、囲碁、オセロの3種競技の日本選手権があるということで紹介し、各棋士に参加するかどうかを聞いています。(3)は平成13年のC級1組順位戦の大内延介九段対西村一義九段というベテラン同時の一局の終盤(乱戦?)。(1)は中盤から仕掛けの局面、(3)は終盤戦ですが、どちらも棋士によって見解が違います。このように違った感想が出る問題は面白いですね。(参考棋譜はなし)

定跡最前線パトロール」は第7回で今回は「相振り飛車」。相振り飛車と言えば、昔は片方は角道を止め、またあまり定跡化もされておらず力戦形というイメージでしたが、最近は研究もされ、さらに様々な形が出ています。数が多いのでそれらを網羅する訳には行きませんが、現在の状況を分かりやすく解説しています。女流の将棋では良く出てきますので、指さない人でも現状を知るのに良い記事で勉強しておきたいですね。(参考棋譜:平成31年竜王戦4組井上-菅井戦、平成28年朝日杯藤井猛-戸辺戦、平成31年順位戦B2北浜-田村戦)

付録は「新時代の右四間飛車
」。定跡次の一手になっており、出題は長谷部浩平四段。今月の特集の続きですので、すべて相居飛車のみの39問。本体の特集記事を読んだ後、こちらもすべてやっておきましょう。

2019年7月号(2019年6月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーの1ページ目は初タイトルとなった永瀬新叡王の写真から(観戦記は本文)。続いて「AIと将棋の未来像」という題の特別対談。長年将棋ソフトの進歩を見続けてきたという下條信輔氏と羽生九段の対談であり、読む前からいかにも面白そうと言った感じの企画です。この記事が11ページあり、その後に、「名人戦第4局」(佐藤-豊島)(記:大川慎太郎氏)(第2局は棋譜のみ)。こちらの観戦記は、あえて敗れた佐藤名人にスポットを当てて書くという、やはりひと味違った記事です。さらにその後には、「弦巻勝が撮る第77期名人戦第3局」として大山名人の話、写真から今の名人戦の写真まで撮られています。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「叡王戦第4局」(第3局は棋譜のみ)(高見-永瀬)(文:雨宮知典氏)、「名人戦第3局」(佐藤-豊島)(文:編集部、2ページのみ)、「マイナビ女子オープン第3局」(第2局は棋譜のみ)(西山-里見)(文:荒井勝氏)、「女流王位戦第2局」(第1局は棋譜のみ)(渡部-里見)(自戦解説:渡部愛女流王位)、「銀河戦本戦Dブロック」(屋敷-佐々木勇)、「竜王戦1組」(山崎-豊島)などがあります。

三ヶ月ぶり「我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は前半にあり今回で第10回。話の内容も変わり、「修行時代の巻:入門の頃」です。昭和32年に内弟子として入門されたということで、この頃の奨励会の話など、昔の状況が分かる記事も読んでみると面白いですね。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第12回は広瀬章人竜王で「”フジイ印”のブランド力」。そのブランド力の話は池永四段との将棋の終盤で指された手に対して。さらに一般のテレビニュースでも取り上げられた中田八段との将棋のすごい一着もあります。後半では負けた将棋も取り上げ、若干あるかもしれない弱点も。こうした長所と短所、なかなかの分析で面白く、今回も一気に読んでしまいました。(参考棋譜:平成30年棋聖戦2次予選対大石七段戦、平成31年王将戦1次予選対池永四段戦、平成30年NHK杯戦対今泉四段戦、平成31年棋聖戦2次予選対久保九段戦)

定跡最前線パトロール」は第6回で今回は「矢倉」。昔は将棋の王道、「純文学」だった訳ですが、これも様変わりしました。「注目は急戦と左金」とあるように、現在指されているいろいろな急戦の形を紹介しています。そして後半は「△4三金左の登場」。これからも研究され変わっていくのかもしれませんが、現在の状況が良く分かります。(参考棋譜:平成30年王位戦佐藤康光-上村戦、平成28年王座戦八代-遠山戦、平成31年棋王戦永瀬-及川戦)

今月の技術的な特集は「
痛快!角換わり▲4五桂強襲」。「居玉でガンガン攻める角換わり」ということで、初心者には「玉を囲って」と教えているのにそれに背く戦法です。
Chapter1は基本講座、「▲4五桂強襲 仕掛けと狙い筋」。今回はChapter1も2も講師、解説は単行本を出している長岡裕也五段です。この基本講座は分かりやすい。攻め好きな人は、とりあえず基本的な筋を覚え、実戦で試してみて下さい。
Chapter2は「好局鑑賞」。1ページに一局を収め、簡単な解説付き。全部で4局、平成30年順位戦C級2組の長岡-大平戦、平成30年棋聖戦1次予選の金井-石井戦、平成30年王将戦挑決リーグの中村太地-渡辺明戦、平成31年新人王本戦の高野智史-渡部愛戦を取り上げています。
Chapter3は付録としてです。内容は最後の付録のところで。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって60回目。今月のテーマは、(1)久保流先手三間飛車にどうする?(2)この豊島新手、指せますか?(3)鬼才・村山聖、深夜の激闘、(4)七冠王と8棋士8タイトルの時代、の四つ。(1)はノーマル三間飛車に、居玉で▲6七銀を先に決めた形。居飛車が穴熊を目指せばトマホークにする訳です。(2)は去年の王位戦第6局の序盤。居飛車穴熊を目指す途中の新手について。(3)は平成9年のB級1組順位戦で村山聖-丸山戦の終盤。王手のかかっている局面で、どう応対するかという問題。(4)は昨年将棋界では8棋士8タイトルになり、囲碁界は井山七冠が君臨する状態。どちらの状況が自然なのかとの質問を各棋士に聞いています。(参考棋譜:平成30年王位戦第6局豊島-菅井戦、平成9年順位戦B級1組丸山-村山聖戦)

今まで「詰将棋サロン」の近くに、「あっという間の3手詰」と「実戦に役立つ5手7手詰」がありましたが、中段玉や入玉形などが混ざっており、正直あまり実戦に役立つかというとやや疑問でした(詰将棋としては面白かったのですが)。それが今月号から、「ホンマにやさしい3手5手詰」(出題:本間博六段)と「ステップアップ7手9手詰」(出題:東和男八段)に変わりました。解いて見たところ、級位者から詰将棋の苦手な有段者までまさに実戦に役に立ちそうな五段目以降に玉のない良い問題です。今までこのページの詰将棋は難しいと思っていた人は、今度はちょうど良いかもしれません。

付録は「角換わり▲4五桂強襲
」。定跡次の一手になっており、出題は伊藤真吾五段。問題は全部で39問、本体の特集記事を読んだ後、こちらでさらに練習を積んでおきましょう。

2019年6月号(2019年5月2日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーの記事は、叡王戦開幕企画として「師弟Vol.3」から始まっています。先月に引き続きであり今回は3回目、登場しているのは石田和雄九段と高見泰地叡王。(構成・写真:野澤亘伸氏)。高見叡王が石田門下になった頃の話からライバルの話題、最強の挑戦者である永瀬七段の話まで今回もあまり知らないことが多く面白く読めました。
そして第77期名人戦が開幕し、その「名人戦第1局」(佐藤-豊島)(記:小暮克洋氏)がその次に。表紙にも「封じ手なき名人戦」とあるように、この第1局は千日手となり異例の1日決戦。ここに書かれている対局規定の話は初めて知りましたね。続いてマイナビも始まり、「マイナビ女子オープン第1局」(西山-里見)(写真・文:田名後健吾氏)までが巻頭カラーになっています。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「
棋王戦第4局」(渡辺-広瀬)(自戦解説:渡辺明棋王)、「叡王戦第1局・第2局」(高見-永瀬)(記:泉正樹八段)、「NHK杯決勝」(羽生-郷田)(自戦解説:羽生善治NHK杯選手権者)、「銀河戦本戦Fブロック」(千田-佐々木大)、「竜王戦1組」(稲葉-永瀬)などがあります。さらに、八王子将棋クラブの記事である「清廉」の中には、昭和57年の「小学生名人戦の決勝」(山下-羽生)と同じく昭和57年の「都下小学生名人戦決勝」(羽生-森内)の棋譜もあります。
今回、自戦解説も含めプロ棋士の観戦記は三つ。これらはやはりプロ棋士ゆえの視点があり面白いものです。なかでも渡辺棋王の自戦解説は絶品。先月号を赤字にしているので迷ったのですが、やはり赤字にせざるを得ないほど断トツ面白い記事でした(個人の感想です)。

今月の特集は、毎年6月号に掲載される「
熱局プレイバック」。今回も羽生九段と藤井聡太七段はたくさん出てきます。1位に選ばれたのは升田幸三賞も取ったあの話題の一手の入った竜王戦5組決勝の藤井聡太-石田直裕戦でした。2位は名人戦第第1局(もちろん去年のです)。以下、朝日杯決勝(藤井聡-渡辺)、竜王戦第7局(広瀬-羽生)、竜王戦第1局(広瀬-羽生)、竜王戦4組(藤井聡-中田宏)、名人戦第6局(佐藤天-羽生)、叡王戦挑決第2局(菅井-永瀬)、順位戦A級(羽生-佐藤康)、王位戦第6局(豊島-菅井)となっています。話題になった対局ばかりで、10局すべて棋譜も載っていますので一手一手振り返ることも可能です。

第46回将棋大賞選考会」の記事があり、様々な賞の他、平成30年度の棋士の成績も今月号には載っています。さらにその後には、「第25回升田幸三賞/第13回名局賞選考会」の記事も。ここに藤井聡太七段の妙手の受賞の話が出てくる訳ですが、戦法としてトマホークや雁木の話も出ていたのですね。妙手に升田幸三賞と言うのはやや違和感があり、個人的には、戦法と妙手、別々に選んで戦法部門、妙手部門としたら良いのにと思ってしまいますがどうなのでしょう?
そして女流名局賞が新設され女流王位戦第3局(里見-渡部)が選ばれました。同時に名局賞特別賞に、女流名人リーグの一局(渡部-上田)が選ばれ、その2局は棋譜も載っています。この女流名人リーグの一戦に、「駒柱が2桁も発生」と書かれていてすぐに意味が分からなかったので並べて見ました。すると相穴熊戦で204手という超激戦。駒柱が本当に、何度も何度も8筋に出来るという非常に珍しい一局でした。これは対局自体も参考になるので是非並べて見て下さい。

今月の技術的な特集は「新時代のミレニアム」。再ブレイクしており、改元ということでも特集になっているようです。
Chapter1は戦法解説として「家元が語るミレニアムの歴史と考え方」。三浦弘行九段がインタビュー形式で、いろいろな実戦を題材に解説しています。前半は藤井システムに対する囲いとして、後半は、居飛車戦でのミレニアムであったり、現代感覚のミレニアムについてです。(参考棋譜:平成10年王座戦2次予選藤井猛-中村修戦、平成31年順位戦C級1組船江-杉本戦、平成31年順位戦C級2組佐々木大-矢倉戦)
Chapter2は「定跡最前線パトロール」として。第5回で題はそのまま「ミレニアム」。組む時の注意点から最新の戦い方についての解説。ちょっと驚いたのは(知りませんでしたが)、最後に振り飛車版ミレニアムが紹介されていたこと(澤田-都成戦)。振り飛車党にも参考になるかもしれません。棋譜もあるので並べて見たいですね。(参考棋譜:平成30年順位戦C級2組三枚堂-中村亮戦、平成30年朝日杯1次予選鈴木大-森下戦、平成30年王将戦1次予選澤田-都成戦)

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第11回は斎藤慎太郎王座で「脳内に紡ぐ終局までのストーリー」です。現タイトルホルダーで、研究会でも指し、詰将棋好きと共通項の多い王座の分析。なるほどと感心する鋭い分析です。途中には、自身の指した叡王戦の感想もあります。(参考棋譜:平成30年叡王戦七段戦対千葉七段戦、平成30年叡王戦本戦対斎藤慎太郎王座戦、平成30年新人王戦記念対局対豊島二冠戦)

今月号には、藤井聡太七段が5連覇を飾った「第16回詰将棋解答選手権」の記事があります。7ページですが、チャンピオン戦の問題10問に解答、総合成績も分かります。

付録は毎年この時期に出ている勝又清和六段の「新手年鑑2019年版
」。問題は23問とやや少ないのですが、解説が詳しく書かれていたりコラムがあったりと、今の将棋を振り返るのに良い付録です。特に大勢の棋士に話を伺ったと書かれているように、一通りさっと読むだけでも勉強になるでしょう。

2019年5月号(2019年4月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーの記事は、名人戦開幕直前企画として「師弟Vol.2」があります。2月号に一度この師弟記事があり、今回は2回目で登場しているのは中田功八段と佐藤天彦名人。(構成・写真:野澤亘伸氏)。中田八段は大山十五世名人の弟子であり、その頃の話から佐藤少年を弟子にした時のこと、ネット対局から当時話題になったフリークラスを蹴った話など詳しくは知らない内容が多く面白い記事になっています。
今月号はカラーの対局が多いですね。まず、「叡王戦挑戦者決定戦第2局と第3局」(菅井-永瀬)(文:一瀬浩司氏)から始まり、「マイナビ女子オープン挑戦者決定戦」(里見-加藤)、「棋王戦第4局」(渡辺-広瀬)(棋譜のみで自戦解説は来月号)と続きカラー最後は「
王将戦第4局」(久保-渡辺)(自戦解説:渡辺明王将/構成:大川慎太郎氏)。この自戦解説は渡辺新王将の大盤解説を聞いているような歯切れの良さがありこの記事もあっという間に読み切ってしまいました。居飛車対振り飛車の対抗形に渡辺王将の見解があるので必読です。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「棋王戦第3局」(渡辺-広瀬)(記:大川慎太郎氏)、「朝日杯準決勝・決勝」(渡辺-千田)(行方-藤井聡)(渡辺-藤井聡)(文:渡部壮大氏)、「女流名人戦第4局」(里見-伊藤)(文:下村康史氏)、「銀河戦本戦Aブロック」(折田アマ-窪田)、「竜王戦1組」(糸谷-渡辺)などがあります。

特集は、毎年5月号に載せられる「第77期順位戦最終局」です。「将棋界の一番長い日」であるA級順位戦最終日は9ページに渡って書かれており以下B1、B2と順に。そしてここに載せられている棋譜は、B1では渡辺-斎藤戦と行方-木村戦、B2では千田-窪田戦と永瀬-戸辺戦、C1は杉本-千葉戦と近藤-増田戦、C2は石井-中村亮戦と佐藤和-長岡戦、藤森-及川戦があり、この記事の後に、「昇級者喜びの声」もあります。

今月の技術的な特集は「
攻めをつなげるテクニック」。書いているのは、総合監修という形で”攻めっ気120%”藤森哲也五段。
Chapter1は実戦解説として「実戦から学ぶ攻めの考え方」。実戦を題材に、藤森五段がインタビュー形式で解説をしています。その前半は基本的な考え方を中心に話をしており、これは級位者の人には参考になる覚えておいて欲しい考え方。後半は実戦を題材にしていますのでちょっと難しいですが、有段者に参考になる問題となっています。(参考棋譜:平成元年竜王戦第6局羽生-島戦、平成29年棋聖戦1次予選藤森-高野戦)
Chapter2は次の一手。「攻めの急所を見極める」として問題は全11問、難易度は星一つから二つ。すべて中盤から終盤へ向けてどのような攻め筋があるかを考える問題です。

定跡最前線パトロール」は第4回で今回は「相掛かり」。相掛かりにも様々な形はありますが、最初はひねり飛車から。昔からある形を解説し、その後に現代の相掛かりについて、参考棋譜の実戦を題材に空中戦や最新の工夫などを解説されています。(参考棋譜:平成30年新人王戦斎藤明-三枚堂戦、平成30年順位戦C級2組脇-遠山戦、平成30年朝日杯郷田-千田戦)

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第10回の今月号は今までとちょっと違います。登場したのは西尾明七段ですが、ソフトである「やねうら王を引っさげて」分析しています。ソフトが強くなりすぎ、その意味が分からなくなってきているそうですが、その形勢判断を見ながら藤井将棋の長所と危うい点を指摘しています。(参考棋譜:平成30年アベマTV対佐々木勇気六段戦、平成30年王将戦1次予選対井上九段戦)

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第10回で引き続き米長邦雄永世棋聖の巻「最後のタイトル戦」。昭和55年の第36期棋聖戦の話から竜王戦誕生のこと、そして平成5年の第51期名人戦の話などで、棋譜はその名人戦第1局があります。

付録は「4×4マスの美 伊藤果の詰将棋」。すべての問題初形が4×4に収まっている詰将棋です。3手から11手詰まで各10問ずつ均等に全部で50問。パッと見たところ、3手はひと目、後ろの方の9手や11手はちょっと考えましたが、いずれもやさしそうです。初心者から詰将棋の苦手な有段者まで幅広く役に立つ付録となっています。

2019年4月号(2019年3月1日発売)の内容と感想
藤井聡太七段が朝日杯を二連覇しました。その決勝の相手は今絶好調の渡辺棋王。という訳で私も実況を見ていましたが、今月の表紙、そして巻頭カラーも当然その「朝日杯決勝」(渡辺-藤井)からです。ただこの将棋の解説は2ページだけの簡単なもので、本戦の様子は本文10ページに渡って書かれています。続く「棋王戦第2局」(渡辺-広瀬)(記:大川慎太郎氏)は12ページとたっぷりの解説。内容も非常に読み応えがあり面白かったです。その後は「叡王戦挑決第1局」(菅井-永瀬)(文:池田将之氏)と続いています。

プロ棋戦は他に(特集を除く)、「棋王戦第1局」(渡辺-広瀬)(記:大川慎太郎氏)、「王将戦第3局」(久保-渡辺)(文:小島渉氏)、(「第2局」は棋譜のみ)、「女流名人戦第1局〜第3局」(里見-伊藤)(文:雨宮知典氏)、「銀河戦本戦Eブロック」(佐藤慎-藤井聡)、「竜王戦1組」(羽生-阿部健)などがあります。

発売日の3月1日は「将棋界の一番長い日」としてA級順位戦最終日ですが、今月号には特集として「第77期順位戦ラス前」があります。A級からC級2組までそれぞれ別の人がレポートしており、C級1組だけ特別な棋譜二局も載っています(藤井聡-近藤戦と船江-杉本戦)。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第9回は佐藤康光九段で「”実戦的”なんてのはいらない」です。自身で対局したAbemaTVの炎の七番勝負から始まり、取り上げた棋譜は全部で5つ。これらの棋譜は全て載っていますので、解説を見ながら並べることも出来ます。(参考棋譜:平成29年アベマTV対佐藤康光九段、平成29年朝日杯対竹内雄悟四段、平成29年NHK杯対森内俊之九段、平成31年順位戦対富岡英作八段、平成30年王位戦対山崎隆之八段)

巻頭カラーにあった「朝日杯」の本戦レポート、ここには棋譜も6つ載っています。(久保-行方戦、屋敷-久保戦、菅井-行方戦、佐藤天-糸谷戦、稲葉-藤井戦、糸谷-藤井戦)

今月の技術的な特集は「
ゴキゲン中飛車の現在地」。プロアマ間で良く指されいるゴキゲン中飛車の現状はどうか、最新研究を考えて見るというものですね。
Chapter1は戦法解説として「ゴキゲン中飛車のいまを語る」です。解説は今泉健司四段で、プロの眼から見た見解と、アマが指すのに良い形は何かを解説しています。居飛車側の戦法がいろいろある為一つ一つの解説は短いですが、全体的な今の状況を把握しておくには分かりやすい記事となっています。(参考棋譜:平成24年順位戦C級2組村田-菅井戦、平成30年王位戦第3局菅井-豊島戦)
Chapter2は「定跡最前線パトロール」の第3回として、「先手ゴキゲン中飛車」です。今泉四段も書いていますが、プロ的に後手のゴキゲンは苦しい。しかし先手には居飛車側が逆に苦労しているとのことで、居飛車側の様々な先手ゴキゲン中飛車に対する対策を解説しています。(参考棋譜:平成31年叡王戦菅井-渡辺戦、平成29年棋王戦黒沢-行方戦、平成29年棋王戦北浜-阿部隆戦)
Chapter3は付録としてです。内容は最後の付録のところで。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって59回目。今月のテーマは、(1)矢倉は本当に終わったの?(2)武富女流の研究手順、(3)女性中学生名人の誕生、(4)藤井聡太、トン死で勝つ、の四つ。(1)は5手目▲7七銀と上がる形。昔からありますが、今は考え方が違うのですね。その辺り、最新の考えを各棋士が答えています。(2)は女流の対局を取り上げるのは珍しいですね。昨年9月の女流王位戦予選、武富女流初段と里見咲紀女流初段の一戦で、後手のゴキゲン中飛車に先手の一直線穴熊。テーマ図からの踏み込みが研究手順というのもすごい将棋で、棋譜もあります。(3)は昨年初の女性中学生名人が誕生したことに関して。(4)は昨年の叡王戦、藤井聡-小林裕士戦。その終盤で棋譜は1月号に掲載されているとのこと。この解答に対する各棋士の話、自分ならというのがちょっと面白かったです。

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第9回で引き続き米長邦雄永世棋聖の巻「中原の妙手▲5七銀」。昭和53年から54年当時のタイトル戦の話で、特に妙手▲5七銀だけで何の話か分かるくらい有名な手ですね。今回はその対局前後のことでした。

付録は今回も特集にからんで「縦横無尽!ゴキゲン中飛車の世界」。問題作成(選定)は安用寺孝功六段。定跡次の一手で、「進化の歴史をたどりながら理解する」との副題がある全39問です。本文の講座を読んだ後、しっかりこの付録の問題もやっておきましょう。

2019年3月号(2019年2月1日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、「八王子将棋クラブ」が閉店したことに関して。この話は去年、私も聞いていましたが、今回多くの棋士が巣立った将棋道場の足跡を短期連載として回顧していくようです。そしてその第1回は「聖なる夜に」と題して閉店の日の一日をレポートしています。この日には羽生九段も来ており、後半には9ページに渡って席主である八木下氏との対談が載せられています。続いて、本来ならトップに来そうな「竜王戦第7局」(羽生-広瀬)(自戦解説:広瀬章人竜王、構成:大川慎太郎氏)があります。「8年ぶりのタイトル獲得」とあるように、広瀬竜王にとっても大きければ、羽生九段にとっても100期か無冠かという大きな一番でした。どのような読みで指し進めていたのか、自戦解説ですのでその辺りも分かります。またこれで番勝負が終わったと言うことで、本文最初には「広瀬章人竜王が振り返る第31期竜王戦七番勝負」もあります。構成は引き続き大川氏で、第1局からポイントの局面を解説しており必見ですね。

プロ棋戦は(特集を除く)、「
王将戦第1局」(久保-渡辺)(記:大川慎太郎氏)から。最近のプロ棋戦は相居飛車系統ばかりなので面白くないですが(振り飛車党にとっては)、この王将戦は一局目から面白かったです。しかも書いているのが大川氏ですから、今月号で一気に読んでしまった一番の記事と言えるでしょう。他には最後の方に「銀河戦本戦Hブロック」(黒沢-田中悠)があるだけです(それ以外の棋譜はいろいろな記事の中に)。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第8回は山崎隆之八段で「知識と経験の融合」です。今回も記事内容はとても面白かったですね。実戦譜から、「自分なら」ということを踏まえて現状、さらにこれからの藤井将棋について分析しています。(参考棋譜:平成30年アベマTV対増田康宏六段、平成30年棋聖戦対村田顕弘六段、平成30年棋聖戦対今泉健司四段)

今月の特集は(ついに戦法は在庫切れでしょうか?)「賢い金の運用法」でした。ただ駒の活用法というのも、手筋である意味即効性のある上達法ですからこれはこれで役に立つ講座かもしれません。
Chapter1は「金の狙撃手が教える錬金術」として解説は金井恒太六段。インタビュー形式のような形で、金の基本性能から攻めや受けに使う金、実戦での金の使い方まで様々なパターンを解説しています。中でも、金銀逆は成立するかどうかと言ったものを実際の局面を使って考えているのには、普段そこまで考えないだけに面白い試みです。(参考棋譜:平成29年叡王戦六段戦金井-永瀬戦、平成29年名人戦第3局佐藤天-稲葉戦、平成21年竜王戦挑決深浦-森内戦)
Chapter2は次の一手。「勝つための資金運用」で、出題は編集部。問題は全11問あり難易度は星一つから二つ。序盤の急戦形から中盤での指し方、終盤の次の一手まで様々ですが、何らかの形で金を使うということが分かっている意味ではやさしい問題と言えるかもしれません。
Chapter3は付録としてです。内容は最後の付録のところで。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって58回目。今月のテーマは、(1)新しい後手一手損。その意味は?(2)升田、会心の攻め、(3)谷川浩司、華麗な収束、の三つ。(1)は最近の角換わりの手損をめぐる攻防について。その基本形をテーマ図にもってきて各棋士に語ってもらっています。但し最新の基本形なため、棋士間による見解の相違はあまりなく、講座という意味では参考になりますが、テーマとしてはやや不適切でしょうか。(2)は昭和33年の名人戦第1局で升田-大山戦。その中盤から終盤にかけての猛攻している一局面。(3)は昭和58年王位リーグで谷川-大山戦。最終盤の詰みの有る無しの局面ですが、あまりに有名すぎる局面です。なのでプロ棋士なら当然知っているでしょうし、知らなくても指せる局面。今回のテーマ選出はちょっと微妙でしたね。ただ、参考棋譜はなかなかですので、並べて見たい人には良い題材です。(参考棋譜:昭和58年王位戦リーグ谷川-大山戦、昭和33年名人戦第1局大山-升田戦)

先月号から始まった「定跡最前線パトロール」の第2回で「角換わり早繰り銀」。最近、プロの将棋ではとにかく角換わりが多い。そんな中、相腰掛け銀は後手もやれる変化が多くなってきたということで、今回は早繰り銀。「基本から最新のプロの工夫まで」を見ていくという訳です。内容は、後手の腰掛け銀に対し、先手の玉の位置の工夫。その後後手の対策としての自陣角や△4三銀。後半は相早繰り銀からの変化を解説しています。(参考棋譜:平成29年順位戦B級1組阿久津-斎藤戦、平成30年順位戦C級1組小林裕-千葉戦、平成29年叡王戦上村-佐々木大戦)

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第8回で引き続き米長邦雄永世棋聖の巻「永世名人の資格を得る」。その内容は、昭和51年の第35期名人戦での話。第1局からポイントの局面を解説し、最終第7局は棋譜もあります。

毎年そうですが、3月号には、「詰将棋サロン年間優秀作品選考会」の様子が載っています。ここには優秀作品の他、候補に挙がったものも一部載っており、全部ですばらしい作品が10個もありますから、これだけも解く価値はあります。

付録は今回の特集にからんで「実戦で学ぶ金の手筋」。問題作成(選定)は北島忠雄七段。実戦に現れた金の使い方を学べる問題が全部で39問ありますので、一問一問解いて感触を会得して下さい。

2019年2月号(2018年12月29日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、「竜王戦第6局」(羽生-広瀬)(自戦解説:広瀬章人八段、構成:大川慎太郎氏)から。すでに7局まで終了し決着している訳で、しかもこの第6局は二日目昼に終わるという言ってみれば凡戦。それでも自戦解説と言うことと大川氏の構成もあり面白い内容の記事になっていました。その途中で広瀬八段も触れていたことですが、中盤のソフトの形勢判断というものを各プロ棋士はどの程度信用しているのか知りたいものです。続いて新春スペシャルインタビューとして、「藤井聡太七段へのインタビュー」記事があります。内容は今までの将棋や記録についての感想、ソフトの話、これからのこと等々。さらにもう一つ大きな読み物が巻頭カラーに。王座を獲得した為、タイトル獲得記念対談として「師弟」という題で「畠山鎮七段と斎藤慎太郎王座の記念対談」があります(構成・写真:野澤亘伸氏)。巻頭カラーから白黒の本文につながる全部で14ページ。斎藤王座の話だけでなく師である畠山七段についてもかなり書かれており、「いままで誰も知ることのなかったエピソード」とあるように内容も新鮮で面白いものでした。

プロ棋戦は(特集を除く)、「竜王戦第5局」(羽生-広瀬)(記:大川慎太郎氏)(第4局は巻頭カラーの所に棋譜のみ)からスタート。この記事の題は「なぜ広瀬は序盤で苦しくなるのか」であり、先手勝率と後手勝率から面白い考察をしています。続いて「女流王座第3局」(里見-清水)(文:馬上勇人氏)、「倉敷藤花戦第2局」(里見-谷口)(文:一瀬浩司氏)、「プレミアムフェスin名古屋」(佐藤天-藤井聡)(文:渡部壮大氏)、「王将リーグ4局」(糸谷-渡辺:佐藤天-糸谷:中村太-郷田:渡辺-豊島)、「日本シリーズ決勝」(菅井-渡辺)(自戦解説:渡辺棋王)、「銀河戦本戦Cブロック」(佐藤和-木村アマ)などがあります。

今月号の表紙は「藤井聡太、通算100勝達成」と大きく写真とともに出ており、このニュースは一般のテレビや新聞でも取り上げられました。その記録が、2ページに他のトップ棋士との比較、祝福のコメントと一緒に載せられています。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第7回はついに、と言うかなんと谷川浩司九段の登場です。読む前からちょっと期待してしまいますね。光速流は藤井将棋をどう見ているのか。そこで取り上げた将棋の部分的な手に関する考察・分析は「なるほど」と感心することの多い記事でした。(参考棋譜:平成30年竜王戦5組対阿部光瑠六段、平成30年王座戦対斎藤慎太郎七段、平成30年順位戦C級対千葉七段)

今月の特集は「振り飛車新機軸!」「三間飛車 藤井システム」です。未来型の三間飛車として注目されているとのこと。そしてChapter1から3まですべて総合監修として佐藤和俊六段が執筆しています。
Chapter1は基本講座「駒組みからシステム発動まで」。まずは基本的なことからスタート。個人的にも興味がありますので後でじっくり再読したいと思っていますが、自由度の多そうな戦法に見えます。単行本も出ているとのことですので、実際に指して見て、面白そうならさらなる勉強教材があるということですね。
Chapter2は「システムの魅力を語る」として佐藤六段がインタビュー形式でこの戦法について語っています。
Chapter3は好局鑑賞。「実戦例からシステムを知る」で、4局の実戦譜があります。一ページ一局でポイントの手を解説しており、これも盤に並べて研究した方が良いでしょう。それらは、平成28年竜王戦2組西尾-杉本戦(雁木から強攻で穴熊攻略)、平成30年順位戦C級2組八代-佐藤和戦(自由自在!振り直して端攻め)、平成30年叡王六段戦勝又-佐藤和戦(遠大な構想実現で作戦勝ち)、平成30年順位戦C級2組南-佐藤和戦(急戦策にも的確に迎撃)の4局です。

先月で「サトシにお任せ」が終わりその代わりかどうかは分かりませんが、技術的な講座で新連載が始まりました。
それが、「
定跡最前線パトロール」で、講師は石田直裕五段です。その第1回目は「三間飛車」。その中で、「天敵、居飛穴を攻略せよ」として現在の対居飛穴に対する指し方を解説しています。最初はトマホークについて。そして▲5六歩型の再来には、△5四銀揺さぶりの形や今回の特集でもある三間飛車藤井システムについて。後半には居飛車側の工夫やエルモ囲いについても触れ、現状を紹介しています。内容も分かりやすいので、これから期待したい講座かもしれません。(参考棋譜:平成30年棋王戦予選石田-小倉戦、平成30年加古川青流戦杉本和-大橋戦、平成30年銀河戦渡辺大-佐藤和戦)

付録は「プロ棋士の詰将棋」です。ほぼ一年前、若手棋士だけの詰将棋が出ましたが、今回は一人一問で40問あります。内容はまだ表紙の7手と次の9手しか解いていませんが(手数順ではない)、パラパラッと見たところ、手数は短いものから17手くらいまで様々なようです。以前のように難解なものが多ければ一ヶ月楽しめる詰将棋ですね。ただ、「あっという間の3手詰」や「実戦に役立つ5手7手詰」がちょうど良い人ですとちょっと難しいかもしれません。

2019年1月号(2018年12月3日発売)の内容と感想
今回、巻頭カラーに観戦記がなかったのは初めてかもしれません。ただ本文にはタイトル戦が多かったこともあり取り上げられている棋譜は多そうです。さて、その巻頭カラーは「新春スペシャル座談会」から始まり、グッズプレゼント、似顔絵と続きその後は棋戦等の写真レポートのみ。その座談会に登場しているのは高見叡王、斎藤王座、山口恵梨子女流二段の三人。将棋界の一年を振り返っています。そしてこの巻頭カラーの最後には、加古川清流戦で優勝した「大橋貴洸四段へのインタビュー」記事があります。

プロ棋戦は(特集を除く)、「
竜王戦第3局」(羽生-広瀬)(記:古川徹雄氏)(第2局は棋譜のみ)からスタート。この一戦は私も実況で見ていましたが、終盤の攻防がすごかったですね。その辺りのことが解説されています。続いて「王座戦第5局」(中村-斎藤)(記:大川慎太郎氏)、「加古川清流戦第2局」(大橋-梶浦)(自戦記:大橋四段)(第1局は棋譜のみ)、「女流王座戦第1局」(里見-清水)(文:加藤まどか氏)(第2局は棋譜のみ)、「倉敷藤花戦第1局」(里見-谷口)(記:雨宮知典氏)、「女流王将戦第2局」(里見-加藤)(文:一瀬浩司氏)(第1局は棋譜のみ)、「銀河戦本戦Aブロック」(瀬川-折田アマ)、「竜王戦昇級者決定戦3組」(西川-飯塚)、「関口慎吾六段熱戦譜」(「戦火に消えた幻の天才棋士」から)、などがあります。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第6回は深浦康市九段。今回取り上げた将棋は全部で4つあり、そのうちの二つは深浦九段自身の将棋です。この記事は作者が変わっても毎回面白いのですが、今回は特に一気に読んでしまうほど引き込まれる内容でした。(参考棋譜:平成30年王座戦本戦対深浦九段、平成30年棋聖戦1次予選対里見女流四冠、平成30年叡王戦予選対小林裕士七段)

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第7回で前回に引き続き米長邦雄永世棋聖の巻「タイトル戦初対決」。その内容は、昭和49年に初めてタイトル戦でまみえた「第23期王将戦」でのこと。翌24期も同一対局ですのでその話もあります。(棋譜は、昭和50年第24期王将戦第7局)

今月の特集は「シンプルな仕掛けで攻め勝とう」として「一点集中!右四間飛車」です。プロの将棋にはほとんど出てこない右四間ですが、アマでは良く見ますし、得意とする人、やられて嫌だと思っている人も多いかと思います。対居飛車、振り飛車、両方ある上に攻めはシンプルで破壊力抜群。指す場合でも相手にする場合でもその指し方を知っておくのは必要なことです。
Chapter1は基本講座「仕掛け簡単!右四間で振り飛車撃破」。講師は長谷川浩平四段で、四間飛車対右四間の基本的な対抗形から。ただし居飛車は良く本にあるような急戦ではなく、穴熊や左美濃、ソフトが指していたというelmo囲いなど対振り飛車右四間の基本とは言えないかもしれません。急戦の攻め筋を知った上でこれを読めばさらに見識が深まると言える講座です。(急戦の攻めは付録に)
Chapter2は「最新形はサトシにお任せ」として。第12回目で、なんと最終回と出ていますね(1年間の予定だったらしいですが)。有段者向けの講座として個人的にはかつての「突き抜ける!現代将棋」並みに良い記事と思っていただけに残念です。その最終回は、「対居飛車の右四間飛車」。対居飛車ということなので他とはリンクしておらず、ここだけで完結する解説ですね。(参考棋譜:平成5年王座戦第2局谷川-羽生戦、平成30年NHK杯佐藤康光-斎藤慎太郎戦、平成29年朝日杯三浦-藤森戦)
Chapter3は次の一手。「サクサク解いて右四間を体感」で、出題は藤森哲也五段。問題は全11問あり難易度は星一つから二つ。対振り飛車の問題で、基本講座の復習です。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって57回目。今月のテーマは、(1)宗看・看寿でプロ棋士になれるか、(2)升田幸三、三桂乱れ打ちの受け、(3)羽生、ふんわりと歩、の三つ。(1)は米長邦雄永世棋聖の有名な言葉「無双・図巧を全部解けばプロ棋士になれる」ということに関して。最後の増田六段の話を読んで、こうした考えと同じ人はプロ棋士の中にどれくらいいるのだろう?と思いましたね。詰将棋必要派と不要派に分かれて激論と詰将棋大会を見たい気がします。(2)は昭和26年のA級順位戦での升田-高島戦。その終盤で非常に難解。一人一人の回答も長く全部で5ページになっています。(3)は平成12年第48期王座戦第5局で当時の羽生王座対藤井猛竜王との一局。中盤から終盤に入るところの一局面です。(参考棋譜:昭和26年A級順位戦升田幸三-高島一岐代戦、平成12年王座戦第5局藤井猛-羽生戦)

付録は、定跡次の一手「対振り右四間飛車の攻防」で、著者は所司和晴七段。特にChapter4とはなっていませんが、今月の特集にからめてですね。内容は基本の急戦から始まっていますので、本来はまずこれから勉強し始めるところです。30問までその急戦で、その後39問まで少しだけ左美濃から銀冠を取り上げています。

2018年12月号(11月2日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーの1ページ目は、表紙とともに新人王になった藤井聡太七段から。但しその「新人王戦第2局」(藤井-出口)(文:鈴木宏彦氏)の観戦記は巻頭カラーの最後。第1局の棋譜とポイント解説は本文にあります。そして竜王戦が始まりました。その「竜王戦第1局」(羽生-広瀬)はなんと広瀬章人八段の自戦解説です。角換わりの最新形ですので、前半は講座を聞いているようでした。しかし終盤の局面は「そういうことだったのか」と実況を見ている時に感じたこととちょっと違っていてさすがに対局者の観戦記でしたね。続いてこの巻頭カラーには二冠になった「豊島将之二冠へのインタビュー」記事と写真があります(さらに「関西本部棋士室24時」の中には「豊島二冠ミニインタビュー」も。新人王戦第2局の観戦記はその後です。

他にプロ棋戦の棋譜としては(特集を除く)、「王座戦第4局」(中村-斎藤)(記:相崎修司氏)(第2局と第3局は棋譜とポイント解説)、「王位戦第7局」(菅井-豊島)(記:渡部壮大氏)、「銀河戦本戦Cブロック」(森村アマ-伊奈)、「竜王戦昇級者決定戦3組」(行方-中座)、「白瀧あゆみ杯決勝」(藤井奈-塚田恵)などがあります。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第5回は最近特に好調な三浦弘行九段の登場。朝日の広瀬戦、王座戦の屋敷戦、竜王戦の船江戦、そして新人王戦の八代戦と近藤戦を分析し、強さの秘密に迫っています。(参考棋譜:平成30年竜王戦5組対船江六段、平成30年新人王戦本戦対八代六段と対近藤五段)

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)は第6回になり、今回から米長邦雄永世棋聖の巻になりました。その最初の話は、奨励会当時の米長永世棋聖との出会いからA級昇級に至るまでの対局について。そのポイントとなるところを話されています。(棋譜は、昭和39年古豪新鋭戦と昭和40年王座戦予選の二つ)

今月の特集は「ノーマル四間でクマせて勝つ!」として「対居飛穴△4四銀型四間飛車」です。居飛穴にはやや不利と思われているノーマル四間飛車ですが、それを△4四銀型にすればクマせても攻略出来るということで、その指し方を勉強します。
Chapter1は基本講座で、「読んで学ぼう!△4四銀型」。講師は井出隼平四段。居飛穴の形もいろいろあり、それに対応する為一手も無駄にしないで△4四銀型に組む方法、基本的な変化を詳しく解説しています。
Chapter2は好局鑑賞で、「並べて学ぼう!△4四銀型」。選局・棋譜解説は石井健太郎五段。全部で6局、1ページに一局ずつで棋譜とポイントの手の解説があります。図面がほとんどないのでこの棋譜だけで分かる人は少ないでしょうから盤に並べる必要がありますね。その棋譜は、平成23年順位戦C級2組西尾-石川陽生戦、平成12年NHK杯決勝郷田-鈴木大介戦、平成19年新人王戦本戦中村太地-中村亮介戦、平成20年王将戦1次予選松尾-櫛田戦、平成29年順位戦C級2組土佐-井出戦、平成30年NHK杯予選斎藤明日斗-石井健太郎戦です。
Chapter3は定跡次の一手。「解いて学ぼう!△4四銀型」で、出題は安用寺孝功六段。問題は全11問あり難易度は星一つから二つ。Chapter1と2をしっかり勉強していれば分かる問題です。

最新形はサトシにお任せ」の第11回は「矢倉」。シンプルな題名ですが、昔からの王道です。副題は「受難の矢倉に春は来るか?」。最初に「減少の原因から、現在の矢倉まで、お話しできたら」と書いていますがこれを読むと今までの矢倉の流れが良く分かります。と言っても基本的な矢倉は知っている上で、ということなので有段者向け、基本を知らないと難しいかもしれません。(参考棋譜:平成29年A級順位戦佐藤康光-豊島戦、平成28年順位戦C級2組佐藤紳哉-増田戦、平成30年王座戦1次予選高見-石井健太郎戦)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって56回目。今月のテーマは、(1)角頭歩に向かっていくと?(2)谷川浩司の強烈な詰み、(3)増田康宏、昇級のドラマ、の三つ。(1)は角頭歩戦法に正面から切り込んだ将棋の一局面。(2)は平成4年第5期竜王戦の羽生-谷川戦、その終盤の長手数の詰み筋。(3)は今年の順位戦C2の最終日。深夜2時過ぎの最終盤、ドラマの起きた局面。(1)の角頭歩はプロの将棋でも10年で34局も指されているとのこと。しかし公式戦で▲2五歩と突いた将棋は一局だけでそこから進んだ局面がテーマ図です。アマではやってくる人もいるでしょうからこの局面の見解を知っておくのも大切なことです。(参考棋譜:平成4年竜王戦第1局羽生-谷川戦、平成30年順位戦C級2組増田-神谷戦)

付録は、「四段昇段の記、セレクション(第2集)」。7月号の付録の続きですね。こちらも26名、豊島二冠や高見叡王、この度初タイトルを獲得した斎藤慎太郎王座などが載せられています。

2018年11月号(10月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、竜王戦初登場の「広瀬章人八段へのインタビュー」記事から。挑戦者決定戦の内容や七番勝負に向けての話をしており、深浦九段との挑決第3局の棋譜もあります。次に、9月4日に始まった「王座戦第1局」(中村太-斎藤慎)(記:大川慎太郎氏)。この一局は私もAbemaTVで見ていましたが、最後まで目の離せない熱戦でした。それを大川氏の観戦記で。続いて「銀河戦」の記事。佐藤天彦名人初優勝と言うことで「銀河戦決勝」(佐藤-行方)の棋譜が名人の自戦解説で載せられています。
さて、先月面白い座談会がありましたが今月もあります。カラーで始まり途中から白黒になって全部で12ページ、「
将棋界近未来シンポジウム」です。これは「3年後の覇者は誰だ!」と言う内容で、谷川九段、森下九段、木村九段の三人が語り合っています。トップを走ってきたベテラン勢が羽生時代の話から現代、そして未来に至るまで様々な状況を分析し話しています。

他にプロ棋戦の棋譜としては(特集を除く)、「王位戦第6局」(菅井-豊島)(解説:飯島栄治七段)(第4局と第5局は棋譜のみ)「AbemaTVトーナメント」の記事と棋譜(決勝3局:佐々木勇気-藤井聡太)、「第3回YAMADAチャレンジ杯決勝」(大橋-近藤)、「第4回YAMADA女流チャレンジ杯決勝」(石本-中澤)、「竜王戦昇級決定戦2組」(村山-小林裕)などがあります。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第4回は趣向を変えてきました。若手二人による対談編です。登場した俊英は三枚堂六段と青嶋五段で、2人の目に映る後輩の将棋分析、これもなかなか面白い内容でした。(参考棋譜:平成29年竜王戦6組決勝対近藤五段、平成29年竜王戦決勝トーナメント対増田四段、平成30年順位戦C級1組対西尾六段)

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)の第5回も引き続き大山康晴十五世名人の巻で今回が大山名人は最後のようです。題は「会館建設と名人戦」。昭和49年第33期名人戦の話と名人戦の契約問題、そして後半には盤外戦術の話もあります。(棋譜は、昭和49年第33期名人戦第7局)

今月の特集は「力戦歓迎、豪快振り飛車で居飛車攻略」として「常識破壊!ダイレクト向かい飛車」です。佐藤康光九段の編み出した独創的な戦法を「付録」を含め3章立てで勉強します。

Chapter1は実戦解説。「会長直伝!ダイレクト向かい飛車の極意」で、当然解説は佐藤康光九段。インタビュー形式で佐藤九段が話ながら解説をしているのですが、前半は序盤の基本的なポイントを説明しています。後半は参考棋譜にあるものから局面を解説しており、内容は技術的な参考になるというより佐藤九段らしい話に面白さがありました。(参考棋譜:平成25年王位戦リーグ渡辺明-佐藤康光戦、平成27年棋聖戦決勝T松尾-佐藤康光戦、平成27年王座戦2次予選行方-佐藤康光戦)
Chapter2は基本講座。「駒組みから仕掛けまで」として、講師は大石直嗣七段。序盤の居飛車からの角打ちは避けて通れない変化ですが、まずは打たずに駒組みを進めての解説。囲い合った後、どこから仕掛けるか、その辺りの変化をいろいろな形で解説しています。後半にその▲6五角(図面を逆にした場合△4五角)の基本的な変化を解説。かなり先まで解説している印象を持ちますがその分横の変化は少なくなっているかもしれません。元々定跡の整備がそれほどされていない戦法ですので、基本的な内容を頭に入れて実戦で試して見る方が良いでしょう。
Chapter3は付録としてです。内容は最後の付録のところで。

このところずっと技術特集の一つになっていましたが、久々に普通の講座としての「
最新形はサトシにお任せ」です。第10回になり「相掛かり」。毎年150局ほどだった対局数が昨年度は200局越えだったそうで、「いま、相掛かりが熱い」ということです。そのためこの辺りで整理してみるとのことで記事を書かれていますが、今回は特にお薦め記事と言っておきます。内容は大きく、「飛車先交換保留の謎」と「相掛かり空中戦」ですが、この理由と現在の戦い方を指さない人にも分かりやすく説明しています。(参考棋譜:昭和23年塚田・升田五番勝負塚田正夫-升田幸三戦、平成29年NHK杯稲葉-藤井聡太戦、平成30年王位戦予選宮田-増田戦)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって55回目。今月のテーマは、(1)高見叡王誕生のカギとなった一戦、(2)菅井王位誕生のカギになった一戦、(3)青嶋五段、必殺の一撃、の三つ。(1)は今年の1月に行われた高見-渡辺明戦。終盤でのギリギリの寄せの局面がテーマ。(2)は昨年の王位戦第2局での珍しい出だし、つまり▲5六歩△3四歩に▲7八飛と進んだ局面がテーマ図です。(3)は平成28年の順位戦での阿部健治郎-青嶋戦です。その終盤での一局面。(参考棋譜:平成29年王位戦第2局菅井-羽生戦、平成30年叡王戦本戦渡辺-高見戦、平成28年順位戦C級阿部-青嶋戦)

付録は「定跡次の一手」で「ダイレクト向かい飛車の攻防」。今月の特集のChapter3としてでもあり、著者は伊藤真吾五段。序盤から始め、△4五角と打つ変化(先後逆)、逆棒銀に出たり▲6六銀と出る形など基本的な筋を次の一手として39問。「本付録でコツをつかんでいただければ」ということです。

2018年10月号(9月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、王座戦の挑戦者になった「斎藤慎太郎七段へのインタビュー」記事が最初。決勝トーナメントを振り返った局面の解説・感想から、五番勝負へ向けての内容です。続いて、「竜王戦挑決第1局」(深浦-広瀬)(文:鈴木健二氏)が3ページあり、その後に「王位戦第3局」(菅井-豊島)の写真。この王位戦の観戦記は本文最初で取り上げています(記:大川慎太郎氏)。そして今月号の巻頭カラーには、緊急座談会として、「関西天才少年たちの仰天秘話」があります。これは元奨励会幹事である井上九段、脇八段、畠山鎮七段の三人による座談会。現在のトップ棋士に成長した関西若手棋士の状況を奨励会時代の話から興味深く語っています。全部で16ページとボリュームも有り大変面白く一気に読んでしまいました。さらにその後、今話題の「泣き虫しょったんの奇跡」の映画化の記事と写真。豊田監督と瀬川五段の対談もあります。

他にプロ棋戦の棋譜としては(特集を除く)、「関西本部棋士室24時」の中で、竜王戦の都成-藤井戦、朝日杯の増田-里見戦、福崎-里見戦(すべて平成30年)を取り扱っている他、「銀河戦決勝トーナメント」(羽生-黒沢)、「竜王戦決勝トーナメント」(千葉-深浦)(増田-佐藤康光)などがあります。

第89期の棋聖戦五番勝負が終わり、初タイトルを獲得した「豊島将之棋聖へのインタビュー」記事があります。棋聖戦の総括と言うことで、第1局から第5局までポイントとなる局面をいろいろ聞いていました。

強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」第3回は屋敷伸之九段で「負けにくい作りと踏み込みの力」。この後に載せられている参考棋譜の局面を取り上げ、鋭く分析しています。(参考棋譜:平成29年C2順位戦対瀬川五段、平成29年NHK杯対稲葉八段、平成29年朝日杯対屋敷九段、平成30年C2順位戦対梶浦四段、平成30年竜王戦対石田五段)
藤井聡太、記録への道」1ページに8月13日時点での15勝3敗の記録。「藤井将棋コレクション」には5局、棋王戦(対牧野五段)、王座戦(対深浦九段)、竜王戦(対増田六段)、C1順位戦(対豊川七段)、NHK杯(対今泉四段)の棋譜が簡単なコメントと共にあります。

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)の第4回も引き続き大山康晴十五世名人の巻。題に「クーデター内閣」とあるので何かと思って読みましたら、その話は最後の方に。前半は、前回の続きで名人獲得以降のタイトル戦の話から。棋譜は、昭和48年王将戦第4局と昭和49年十段戦第7局。クーデター内閣の話は、当時の将棋連盟の運営についてでした。

今月の特集は「ゴキ中対策の王道を徹底マスター」として「対ゴキゲン中飛車超速▲3七銀」です。プロの将棋を観戦していても良く出てくる超速。今回はこれを3章立てで勉強します。

Chapter1は基本講座。「現代版二枚銀でゴキゲン退治」と題し、講師は石田直裕五段。超速▲3七銀に対し後手の対策△4四銀型をメインに戦い方のポイントを解説しています。
Chapter2は実戦解説。「家元から学ぶ超速の考え方」として、講師は星野良生四段。この超速は、当時奨励会員だった星野三段が創案し、2010年度に升田幸三賞を受賞した戦法。と言うことで、構想の誕生から指し方のコツをインタビュー形式で話しています。形としては、序盤のポイント、持久戦になった時の考え方など。(参考棋譜:平成23年竜王戦澤田-及川戦、平成28年棋王戦千田-久保戦、平成24年棋聖戦佐藤天彦-横山戦)
Chapter3は「最新形はサトシにお任せ」として。第9回で「ゴキゲン中飛車」。特集が超速なのでそれだけの解説かと思いましたら、半分はそれ以外の戦型。超急戦、丸山ワクチン、穴熊とそれぞれにポイントを解説した後に、超速▲3七銀について。△4四銀の形の他、軽くさばく△5六歩から最新の超速事情まで。一つ一つに細かい変化は多くはないですが、変遷と最新事情が分かりやすく説明されており、プロの将棋を観戦する上でも基本の情報になっています。(参考棋譜:平成30年加古川青流戦大橋-古森戦、平成29年A級順位戦屋敷-久保戦)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって53回目。今月のテーマは、(1)ライバル対決で出た歴史的名手、(2)高見叡王と増田六段、似てますよね、(3)相矢倉の次は相雁木の時代か、の三つ。(1)は平成16年に行われた王将戦第6局の終盤戦。このテーマの局面での次の一手が話題になりその後定跡になったそうです。そして郷田九段が詳しく解説しています(参考棋譜:平成16年王将戦第6局森内-羽生戦)。(2)はAIの自動認識が二人を同一人物と認定したそうです。(3)は相矢倉があるなら相雁木の時代が来るのかどうかと言うことで7人の棋士に聞いていますが、意外にも人によって考え方が違っていましたね。

付録は児玉孝一八段の「詰め手筋サプリ3」。前回「2」は2015年11月号ですのでほぼ3年ぶり。今回は「5手詰から9手詰まで13題ずつ、プラス表紙の計40題」ということ。1問目、思わず「ほう!」と感心する手順でした。全体としては有段者向けですが、考える事が好きなら級の人も挑戦して見てもらいたいと思います。

2018年9月号(8月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、「棋聖戦第5局」(羽生-豊島)(記:相崎修司氏)から。続いて村山慈明七段解説の「第4局」。やはり新棋聖誕生、と言うことで表紙の写真も含め、まず棋聖戦の記事からです。そしてさらに続く「王位戦第1局」(菅井-豊島)(記:今泉健司四段)も豊島八段が挑戦中ですね。八つのタイトルを八人が分け合うまさに表紙に書かれている通り、「将棋界は戦国時代へ」でありこれを抜け出すのは誰かということがこれから話題になりそうです。続いて「名人戦第6局」(佐藤-羽生)を佐藤天彦名人の解説(構成:大川慎太郎氏)で。この一戦は難解な終盤戦になり、それ故当事者の細かい読みが書かれていて読み応えがあります。その後の本体には、「佐藤天彦名人が振り返る第76期名人戦」として第1局から第5局までを振り返っています。

他にプロ棋戦の棋譜としては(特集を除く)、「銀河戦本戦Bブロック」(谷川-渡辺明)、「棋聖戦第3局」(羽生-豊島)(熱闘!羽生将棋の中)などがあります。

先月から始まった「
強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」、第2回は糸谷哲郎八段の「対応力と逆転術」。今回も興味深い内容で、面白く一気に読んでしまいました。(参考棋譜:平成29年叡王戦対深浦九段、平成29年棋王戦対澤田六段、平成30年朝日杯対佐藤名人、平成30年王将戦対南九段)
この記事の後に、「竜王戦5組決勝」(石田直裕五段-藤井聡太七段)の記事が、「関西本部棋士室24時」の中にあります。この一局は、ソフトも見えなかった手としての△7七同飛成のある話題になった一戦です。

今月の特集は「究極の寝技」として「
右玉で勝つ!」でした。右玉は将棋センターでも指す人はいますが、定跡本もほとんどなく、それでいてアマには人気もあります。その右玉のコツを学ぶ特集ということです。

Chapter1は基本講座。「ミライの攻める右玉教えます」と題して講師は青嶋未来五段。右玉そのものにはっきりした定跡というものはありませんが、よく出てくるパターンをいろいろ解説されています。角交換して矢倉に組む場合、角交換をしないで指す場合、さらに角換わりからの右玉など様々な戦い方です。
Chapter2は実戦解説。「実戦から学ぶ右玉テクニック」として、講師は中村修九段。実戦解説とありますが、構成はインタビュー形式。質問に答える形で、右玉についていろいろ語っています。その中でどのように指すべきか、そのコツを実戦譜を見ながら、ということです。アマチュアの実戦にどのくらい役立つからは分かりませんが、話の内容は面白かったです。(参考棋譜:平成29年NHK予選永瀬-中村戦、平成23年B1順位戦中田宏樹-中村戦)
Chapter3は「最新形はサトシにお任せ」として。第8回で「右玉」。ただこちらでは右玉を解説するのではなく、「右玉対策」として見ています。大きく角交換する場合としない場合に分け、それぞれどのような指し方があるか、どのような指し方が過去に指されてきたかなどいつも通りわかりやすく詳しい解説です。(参考棋譜:昭和63年棋王戦第2局谷川-高橋道雄戦、平成28年叡王戦千田-青嶋戦、平成20年A級順位戦木村-羽生戦)
Chapter4はいつもの「次の一手」ですが今回も付録としてです。(内容は最後の付録の所で)

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)の第3回は引き続き大山康晴十五世名人の巻。そして今回は名人位を取った時の話。つまり昭和47年に行われた第31期名人戦七番勝負の第6局と第7局の話です(棋譜もあります)。

中原十六世名人の後に、「蛸島彰子女流六段のインタビュー」記事があります(聞き手:鈴木宏彦氏)。若い人は知らないかもしれませんが、ここに書かれている通り、「蛸島さんの棋士人生は女流棋士発展の歴史そのもの」です。将棋を始めるキッカケから奨励会時代、その後の女流棋士とその歩み、これからの事を話しています。また思い出の棋譜として昭和57年第8期女流名人戦第4局の山下-蛸島戦があり、この6ページの記事の後に2ページ「ミニアルバム」として写真が載せられています。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって52回目。今月のテーマは、(1)損して得取れ!1歩取らせ作戦、(2)糸谷流中段玉は強いか?(3)羽生の超逆転術の三つ。(1)は最近良く見るようになった、相掛かりの出だしから△7四歩を突き一歩を取らせる指し方について。但し、いくつかパターンがありそのうちの一つです。(2)は昨年12月のB1順位戦での糸谷-谷川戦の終盤。金銀があまり動いていないような形なのに玉が▲8六玉と歩の上にいます!(3)は第26期棋王戦第4局での羽生-久保戦。羽生苦戦の終盤戦での指し方。今回は三つともなかなか面白い題材でした。(1)は序盤の感覚的な問題で、ほとんどの人が同じような感触を持っています(但し微妙に違う)。(2)は糸谷八段でなければ指せないようなものすごい玉さばき。(3)の羽生棋王の指し方は”超絶技巧”です。この問題、棋譜を知らない人はまずテーマ図をしばらく考えてから本文を読んでみて下さい。感動ものです。(参考棋譜:平成30年王座戦2次予選飯島-屋敷戦、平成29年順位戦B1糸谷-谷川戦、平成13年棋王戦羽生-久保戦)

付録は、「地下鉄飛車で右玉退治」で、筆者は北島忠雄七段。特集のChapter4としての付録ですが、こちらも3と同じく右玉対策、「右玉破り」としての出題です。問題は次の一手として39問。書名に地下鉄飛車とありますが、最初は片矢倉で▲3五歩から動き角銀桂を使って攻める指し方です。以降いろいろな指し方を解説し、最後の方で地下鉄飛車が出てきます。右玉に悩まされている人も、あるいは自分が右玉を指す人もポイントを押さえる一冊として活用して下さい。

2018年8月号(7月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、ストレートでタイトルを取った「高見泰地叡王のインタビュー」記事から始まり、その後に「叡王戦第4局」(高見-金井)を自戦記で。やはり自戦記は対局者本人の言葉なのでいろいろな意味で興味がわき、面白く読めます。そして今月の巻頭カラーにはタイトル戦が多く、「名人戦第6局」の速報、「名人戦第5局」(佐藤-羽生)(記:大川慎太郎氏)と続き、もちろん書いているのが大川氏ですからこの記事も面白いです。巻頭カラータイトル戦の最後は「棋聖戦第1局」(羽生-豊島)(文:鈴木健二氏)で「第2局」は速報の棋譜のみとなっています。

他にプロ棋戦の記事としては(特集を除く)、「マイナビ女子オープン第4局」(加藤-西山)(西山女王の自戦解説)、「女流王位戦第4局」(里見-渡部)(文:古川徹雄氏)(「第2局」「第3局」は棋譜のみ)、「銀河戦本戦Eブロック」(澤田-郷田)、「竜王戦2組」(三浦-山崎)などがあります。

今月からの新連載「
強者の視点-棋士たちの藤井将棋論」が始まりました。これは副題にある通り、トップ棋士や若手俊英が語る藤井将棋論のようです。その第1回に登場しているのは永瀬拓矢七段。この記事、非常に面白くて一気に読んでしまいました。内容は、藤井聡太七段が、最初の四段の時からの将棋を取り上げ、その後に変化していく所を的確に分析しています。この面白さが永瀬七段だからなのかそれとも構成(美馬和夫氏)がうまくて誰が書いても面白いのかは来月以降を見なければ分かりません。ちなみに来月は糸谷八段ですね。(参考棋譜:平成28年竜王戦対加藤一二三九段、平成30年王座戦対畠山鎮七段、平成30年王座戦対糸谷八段、平成30年棋王戦対古森四段、平成30年棋王戦対大石七段)

この新連載の後に、藤井聡太、七段昇段の一局として、「竜王戦5組準決勝」の棋譜と解説があります。これは船江六段との一戦。(文:渡部壮大氏)
そして藤井絡みでしょうか、記録への道も前半にあります。
藤井聡太、記録への道」1ページには新年度2ヶ月あまりで7連勝の記録。「藤井将棋コレクション」は見ていない人にはうれしいAbemaTVトーナメントが多くあります。王座戦(対屋敷九段)、以下はアベマTVトーナメントAブロックの4局でいずれも藤井勝ち(対近藤五段2局、対橋本八段2局)。

我が棋士人生」(中原誠十六世名人)の第2回で、今回も引き続き大山康晴十五世名人の巻。ただ内容は、昭和47年の第31期名人戦の話です。この時、後に有名になった一着も出てきますので、当時の将棋を知るには良い記事です。(参考棋譜:第31期名人戦の第一局から第五局まで)

今月の特集は「流行先取り!」として「
角交換相振り飛車」が取り上げられています。角交換が流行していると言うことで、近未来にはそうなるかもしれない”スピード重視の相振り飛車”の特集です。

Chapter1は基本講座。「角交換相振り飛車の狙いと指し方」で講師は井出隼平四段。ここで解説しているのは、石田流に対して、四間に振り、角を交換して戦う指し方です。まだはっきりと定跡化がされている訳ではありませんので、様々な筋を勉強し、実戦で試して見る必要があるかもしれません。
Chapter2は「最新形はサトシにお任せ」としてです。第7回「広がる相振りの世界」。昔指された相振りの基本形から現在指されている相振りまでその移り変わりを理論的に詳しく解説しています。「止まらない互いの駆け引き」と書いているように、相手の手によって方針、戦法、形をを変えていく相振りの広大な世界の一端です。(参考棋譜:平成28年棋王戦予選田中悠一-黒沢戦、平成28年叡王戦五段戦宮本-佐々木勇気戦、昭和56年王位戦予選内藤-脇戦)
Chapter3は「リレー自戦記・プロの思考」として。登場しているのは瀬川晶司五段で、取り上げた棋譜は順位戦C級2組4回戦黒沢怜生五段との一戦。Chapter1の基本講座で解説している出だしで、先手の石田流を目指す手に△4二飛と振り、角交換をした将棋です。
Chapter4はいつもの「次の一手」ですが付録としてです。(内容は最後の付録の所で)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって51回目。今月のテーマは、(1)15歳の藤井少年、羽生竜王を破る、(2)菅井新手、阪田流三間飛車?(3)四段でタイトルを取った棋士の三つ。(1)は朝日杯準決勝の藤井-羽生戦。終盤に入ったところでの藤井五段(当時)の一着についてです。(2)は昨年の王位戦第2局、序盤の菅井新手について。(3)の四段でタイトルを取った棋士というのは郷田九段だそうです。これについての各棋士の感想。(参考棋譜:平成30年朝日杯準決勝藤井聡太-羽生戦、平成29年王位戦第5局羽生-菅井戦)

江戸将棋・次の一手 名人たちの譜跡」という連載が始まりました。田丸昇九段が書いている記事で、ページ数は僅か2ページ。江戸時代の棋譜の局面を問題にし、その解答とコラム的な記事があります。今回の第1回は、一世名人初代大橋宗桂。先々月に始まった「潮流が生まれるとき」もそうですが、2〜3ページで完結する記事というのは、気楽に読めて面白さを感じるものが多いような気がします。これも楽しみになりそうな記事ですので続くのを期待しましょう。

付録は、「魅惑の角交換相振り飛車」で、筆者は西田拓也四段。特集講座の一つですと11問しかありませんが、これは付録ですので次の一手として39問あります。本体の講座と一緒で、便宜上先後を逆にしており講座の復習を兼ねています。本文を読んだ後、こちらもしっかり解いて知識を定着させておきましょう。

2018年7月号(6月1日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、「名人戦第3局」(佐藤-羽生)(記:大川慎太郎氏)から。角換わりの将棋でしたが、じっくりとした中盤戦を記事にしています。続いて「叡王戦第3局」(金井-高見)(文:下村康史氏)があり、その後に「藤井聡太七段へのロングインタビュー」(構成:北野新太氏)があります。これは表紙にも「隘路を抜けて」「カラー12ページ」とあるように今月号の目玉記事でしょう。内容も、興味深いものが多々ありました。将棋に対する考え方の他、自身の将棋のポイントについて、さらに段位の事、将棋という競技についてや高校進学の事等々。ただ、写真を含めて12ページな為、読んでしまうと少ないようにも感じるので、もっといろいろ聞いてみたいですね。

他にプロ棋戦の記事としては(特集を除く)、「名人戦第2局」(佐藤-羽生)(文:相崎修司氏)、「マイナビ女子オープン第3局」(加藤-西山)(文:国沢健一氏)、「第2局」(文:田名後健吾氏)、「女流王位戦第1局」(里見-渡部)(文:渡部壮大氏)、「銀河戦本戦Cブロック」(木村-千田)、「竜王戦1組」(稲葉-広瀬)などがあります。

今月の特集は升田幸三賞に輝いた「
横歩取り青野流」。今、将棋センター内でも一部話題になっていますので、私もしっかり読んでおくつもりです。

Chapter1は講座。「家元が教える青野流の狙いと指し方」という題で講師はもちろん青野照市九段。講座と言ってもここでは実戦を題材に様々な変化を解説しています。ただ、その狙い筋や指し方のポイントも分かりやすく話していますので、もし定跡から外れた手を指されてもそのポイントを覚えておけば大丈夫でしょう。
Chapter2は「最新形はサトシにお任せ」としてです。第6回で「横歩取り青野流」「流行の変遷と最新事情」と書いているように、青野流が出た16年前より現在に至る移り変わりが書かれています。横歩取りを指す人には常識なのかもしれませんが、この変遷は分かりやすいですね。いろいろ「なるほど」と納得しました。(参考棋譜:平成14年王位戦第2局谷川-羽生戦、平成24年王将戦2次予選飯島-森内戦、平成28年棋王戦第2局渡辺-佐藤天彦戦)
Chapter3は「次の一手」で、「青野流必須の攻め筋をマスター」。出題は藤森哲也五段で全11問。難易度は星一つから二つでほとんどが講座を読んでいれば分かる問題、つまり復習ということです。
Chapter4は「リレー自戦記・プロの思考」として。登場しているのは西尾明六段で、取り上げた棋譜は今期王将戦1次予選の阿久津八段との一戦。先手の青野流に、後手も横歩を取って積極的に動く形で対抗した将棋です。

棋聖戦の挑戦者になった「豊島将之八段へのインタビュー」記事があります。5ページとそれほど多くはありませんが、トーナメントの将棋のポイントを三局と3年前や2017年度を振り返った感想や五番勝負への意気込みなどを語っています。

新連載として「我が棋士人生」が始まりました。これは中原誠十六世名人へのインタビュー形式の記事です。「次の世代に伝えたい対話形式の自叙伝」とあり、第1回は大山康晴十五世名人の巻。昔の知らないような話を興味深く書いているのかな、と期待したのですが、なんとなく淡々と昔戦った当時のことを語っており、それをそのまま記事にしている印象です。(参考棋譜:昭和45年十段戦第3局と第6局中原-大山戦、昭和46年王将戦第7局大山-中原戦)

藤井聡太、記録への道」1ページには2018年度が始まったことでその5局と最年少七段にまつわる記録。「藤井将棋コレクション」はそのうちの4月の3局が短いコメントと共に載せられています。棋王戦(対古森)、竜王戦(対阿部光)、棋王戦(対大石)(すべて藤井勝ち)。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって50回目。今回から高見泰地六段が加わり七人になっています。今月のテーマは、(1)矢倉の序盤に革新が起きた、(2)朝日杯優勝、15歳の絶妙手、(3)矢倉は終わったか?の三つ。(1)は序盤で指された▲6七金左について。この見解についてベテランと若手の考え方が違うというのは分かりますが、ここでは意外に人によって見解が分かれています。これは面白かったですね。(2)は朝日杯決勝で藤井五段(当時)が指して話題になった妙手。(3)は「矢倉は終わった」と言った増田五段の言葉に対して7人がそれぞれ所感を語っています。(参考棋譜:平成30年朝日杯決勝藤井聡太-広瀬戦、平成29年棋聖戦1次予選高見-西尾戦、平成30年竜王戦4組高見-北島戦)

5月連休に行われた「第28回世界コンピュータ将棋選手権」の記事が5ページあり、その中に事実上の決勝戦である6回戦、PAL対Hefeweizenの棋譜もあります。この一戦はなんと240手。将棋の行き着く先の手数は長くなるのか短くなるのか興味のあるところです。

付録は、「四段昇段の記、セレクション」。これは1992年11月号から将棋世界に掲載を始めた「四段昇段の記」から26人の棋士を厳選したものとのこと。三浦九段に始まり、渡辺棋王、佐藤天彦名人などが登場し、最後は今泉四段と藤井七段で締めています。

2018年6月号(5月2日発売)の内容と感想
まず1ページ目を開けると、巻頭カラーは「藤井聡太六段、満点優勝で4連覇」の文字から。これはもちろん「詰将棋解答選手権」の話。本体内部に詳しいレポートと問題もありますので、後でじっくり考えて見ようと思ってます。そして「名人戦第1局」(佐藤-羽生)(記:小暮克洋氏)。これは私も生で見ていましたが、本当にすごい将棋でした。「超絶技巧の名局」とあるように、横歩取りで最初から激流に飛び込み、それでいて最終盤までどちらが良いのかどうなっているのか分からない熱戦。その時の両者の考え、感想も載っています。続いて「叡王戦第1局」(金井-高見)(記:相崎修司氏)、棋王戦の総括として「渡辺明棋王へのインタビュー」記事(この中に「第4局」の棋譜と「第5局」(渡辺-永瀬)の観戦記)、その後に女流王位戦挑戦者になった「渡部愛女流二段へのインタビュー」があります。

他にプロ棋戦の記事としては(特集を除く)、「NHK杯決勝」(山崎-稲葉)(文:古川徹雄氏)、「マイナビ女子オープン第1局」(加藤-西山)(特別寄稿:大崎善生氏)(対局レポート:田名後健吾氏)、「銀河戦本戦Aブロック」(森下-佐々木慎)、「順位戦プレーオフ」(豊島-羽生)(熱闘!羽生将棋の中)、「竜王戦1組」(広瀬-久保)などがあります。

今月の特集は、毎年6月号に掲載される「熱局プレイバック」。今回はやはり羽生と藤井聡太ばかりですが、1位に選ばれたのは420手で話題になった竜王戦6組の牧野-中尾戦でした。2位は竜王戦第4局で3位はその第5局。そして、後半5位から10位までなんとすべて藤井聡太がらみ。AbemaTVでも良く放送されていましたので見た将棋も多く、棋譜と記事で改めて当時の対局を思い出します。
また特集とは別ですが、6月号には、将棋大賞選考会の模様や全棋士の成績、升田幸三賞など、賞や記録も載せられています。

今月の「戦術特集」は「対ゴキゲン中飛車、一直線穴熊」です。時間のないアマチュア向けと言っても良い戦型で、今回ページ数は少ないですが、参考にできる人は多いと思います。

Chapter1は講座。「ミライの穴熊でゴキゲン退治」という題で講師は青嶋未来五段。「基本的な駒組みから戦い方のコツを解説」と書いており、戦型的には大きく三つ取り上げています。最初は対袖飛車で、△7二飛から△6四銀〜△7五歩に対する応手。次に相穴熊。そして最後は後手の積極策として△4五銀と動いて来た時の指し方です。(参考棋譜:平成21年竜王戦5組豊島-戸辺戦、平成27年順位戦C2及川-田中悠一戦、平成29年棋聖戦鈴木大介-青嶋戦)
Chapter2は「次の一手」で、「実戦で役に立つ序盤必須手筋」。出題は斎藤明日斗四段で全11問。難易度は星一つから二つで講座の復習にもなっています。そして今回の戦術特集はここまででした。

最新形はサトシにお任せ」の第5回、今月は「角換わり(後編)」です。「先手も▲4八金型へ」ということで前回の続きは先手も同様の形で対抗した場合を扱っています。僅かな形の違いで様々な攻め筋が変わるのはこの戦型に限ったことではないですが、指さない人には難しいですね。しかしそれだけに指す有段者には有益な情報が多いと言えるでしょう。(参考棋譜:平成30年棋聖戦村山-行方戦、平成29年王座戦斎藤慎太郎-豊島戦、平成29年王位戦千田-脇戦)

新連載として「潮流(トレンド)が生まれるとき」が始まりました。千田翔太六段が書いており僅か2ページですが、これから期待したい記事と言えます。その第1回目は「相矢倉の新手▲6七金左(前編)」です。

藤井聡太、記録への道」1ページには2017年度成績一覧。「藤井将棋コレクション」には平成30年3月の対局が3局、短いコメントと共に載せられています。竜王戦(対阿部隆)、順位戦(対三枚堂)、王将戦(対井上)(前2局藤井勝ち)。そしてこの後に、「第15回詰将棋解答選手権・チャンピオン戦」の記事があり、藤井伝説の今までの経過が書かれています。これを読むとまさにレベルの次元が違うということがよく分かります。

リレー自戦記・プロの思考」は三浦弘行九段の登場です。取り上げた棋譜は今期順位戦の最終局、渡辺明棋王との一戦。角換わりですが、先手は棒銀に出て矢倉の戦いのような一戦になり、熱戦でした。その前後の心境も語っておりこれも一気に読ませる面白い内容です。

今月号の「かりんの振り飛車WATCH」は最終回で特別編。今までのような問いもなく、これまでかりんさんが指して来た実戦を元に、駒落ち将棋のポイントを解説した記事になっています。一番最初は六枚落ちですが、その後はいろいろなプロ棋士と指した四枚落ちや二枚落ちで読みながら一緒に考えれば勉強になるでしょう。

付録は毎年この時期に出ている勝又清和六段の「
新手年鑑2018年版」。今回の問題は20問とちょっと少ないのですがページ数は変わっていない。つまり一問にかけている解説が長いということ。そして今回は戦型を絞り、表紙には、「阪田流三間飛車、雁木、矢倉4三金左型・・・驚愕の新手満載の最新プロ将棋観戦ガイド」とあります。単なる次の一手ではなく解説に興味を持たせる書き方で、ちょうど数年前の人気講座「突き抜ける!現代将棋」のような感じで読みやすい付録になっています(と言うことで付録ですが赤字にしました)。

2018年5月号(4月3日発売)の内容と感想
今月の特集は、「順位戦最終局」と技術的なものは「阪田流向かい飛車」です。そして表紙には大きく「藤井聡太、記録4冠!」の文字。
まずは巻頭カラーから。今回、史上初の6者プレーオフがありました。その最終戦、「羽生-稲葉戦の記事と写真」が最初です。次に「王将戦第6局」(久保-豊島)(記:渡部壮大氏)(第4局と第5局は棋譜のみ)、「
王将戦1次予選」と続きますが、この1次予選は一般のニュースでも話題となった藤井聡太六段と杉本七段の師弟戦。しかも杉本昌隆七段の自戦記で、内容も面白かったです。元々「相振り革命」など技術的な単行本を読みやすい形で出版している杉本七段ですが、こちらは師匠としての小ネタもはさみつつ一気に読ませてしまう内容でした。その後には「棋王戦第3局」(第2局は棋譜のみ)(渡辺-永瀬)(記:大川慎太郎氏)。こちらも大川氏の記事なので対局内容は完勝でしたが、記事は面白いです。

他にプロ棋戦の記事として(特集を除く)、「マイナビ挑戦者決定戦」(西山-岩根)は西山奨励会三段の自戦解説。「銀河戦本戦Cブロック」(伊藤真吾-千田)、「王位戦リーグ」(近藤誠也-羽生)(熱闘!羽生将棋の中)、「竜王戦1組」(稲葉-渡辺)などがあります。また、最長手数局として「竜王戦6組」の牧野-中尾戦の棋譜もあります。

特集は、「
第76期順位戦最終局」。A級は史上初の6者プレーオフになるという大混戦でした。その最終局一日の状況を詳しく記事にしています。そして第1戦から第4戦までのプレーオフのハイライトシーンも。ここに載せられている棋譜は、B1、阿久津-松尾戦、B1、郷田-橋本戦、C1、永瀬-宮本戦、C1、片上-佐々木勇気戦、C2、増田-神谷戦、C2、藤井聡太-三枚堂戦、C2、都成-杉本和陽戦であり、こうした記事の後に、「昇級者喜びの声」もあります。

リレー自戦記・プロの思考」として千田翔太六段が登場しています。取り上げた棋譜は今期順位戦のC級1組8回戦で北島忠雄七段との一戦。「従来の矢倉定跡に一石を投じる新構想で戦った」とあるのは、矢倉戦においてソフトが指した衝撃の一着をこの将棋で指しているからです。文章も面白くお勧めの記事。

「戦術特集」という名称になっていますが、今月号は、「豪快!阪田流向かい飛車」です。最近、時々プロでも見られるようになってきた為、「現代将棋で復活」とのことですね。
Chapter1は「阪田流向かい飛車の真実」という題でコラムから。書いているのは鈴木宏彦氏。この名称で呼ばれるようになった歴史的な事実からその後の発展までを記しています。
Chapter2は「阪田流今昔講座」。「現代に蘇る阪田流」で講師は安用寺孝功六段。昔からある阪田流向かい飛車の定跡手順をまず解説し、その後に現代ではどういう風になっているかを解説、なぜ復活したのかも分かりました。
Chapter3は「次の一手」で、「阪ちゃんの阪田流戦いの急所」。出題は阪口悟五段で全11問。内容は序・中盤のポイント、急所はどこかを探すような問題で難易度は星一つから二つ。級位者から初段前後と言った感じで、講座の復習になっています。

最新形はサトシにお任せ」の第4回で今月は「角換わり(前編)」です。-△6二金型の全貌-ということで最近はプロの実況でも良く見ます。この出現の理由や現状どうなっているのか、いつも通り詳しく分かりやすく、指さない有段者にとってもプロ将棋を見る上で役に立つ知識です。(参考棋譜:平成28年日本シリーズ深浦-佐藤天彦戦、平成28年順位戦B1糸谷-畠山鎮戦、平成29年竜王戦4組村田-飯塚戦)

藤井聡太、記録への道」1ページに、4冠制覇の記事と成績。「藤井将棋コレクション」には平成30年1月と2月の対局が5局、短いコメントと共に載せられています(すべて藤井勝ち)。王座戦(対村田)、順位戦(対梶浦)、王将戦(対南)、新人王戦(対古森)、王座戦(対畠山鎮)。

今月号の「かりんの振り飛車WATCH」は特別編とのこと。巻頭カラーにも載っていますが、初段試験を実施しており内容は二枚落ちで森内九段との対局です。この一局、上手はもちろんあまり変化をしていませんが、それでも(かりんさんも)しっかり指しており、若干のおまけはあったものの普通に将棋道場でも初段で指せるだろうという内容でした。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって49回目。今月のテーマは、(1)時代は4五ポン跳ね、(2)佐藤康光、一分将棋の読みきり、(3)升田幸三対灘蓮照、白熱の終盤戦、(4)青年長嶋に升田の強烈アドバイス、の四つ。(1)は角換わり、序盤早々単桂を跳ねて行く最近の将棋です。(2)は平成2年のオールスター勝ち抜き戦で羽生竜王との終盤戦。(3)は昭和38年のA級順位戦での終盤。(参考棋譜:平成2年オールスター勝ち抜き戦佐藤康光-羽生戦、昭和38年A級順位戦灘-升田戦)

付録は「中田章道 実戦型詰将棋作品集」。中田章道七段の7手詰から15手詰40題です。実戦型と言っているように、全局玉方の端に香と桂のある作品でまとめられており、いくつか解いた感じでは、やさしい筋ものの良問多数でしょうか。こうした詰将棋は、同じ手数でも詰将棋サロンよりはずいぶん易しいので、初二段クラスにちょうど良く、初段を目指す級位者の人達にも解いて欲しい問題集になっています。

2018年4月号(3月2日発売)の内容と感想
今月の特集は、「順位戦ラス前」と技術的なものは「対振り銀冠穴熊」です。しかし、表紙は先日大きな話題となった朝井杯での羽生vs藤井聡太の一戦。
と言うことでまず巻頭カラーから。最初は「
棋聖戦第1局」(渡辺-永瀬)(記:大川慎太郎氏)。渡辺棋王優勢の局面から驚異の粘りであわやという所まで追い込んだ一戦。それを両者の感想も含め興味深く綴っています。続いて「王将戦第3局」(久保-豊島)(記:椎名龍一氏)。こちらは相振り飛車で序盤早々▲9七角の端角が出て定跡からは外れた熱戦でした。続く3つ目が表紙の写真にある「朝日杯将棋オープン戦準決勝」の羽生-藤井聡太戦(記:渡部壮大氏)。この将棋は私も実況を見ておりいろいろ疑問点もあったのですが・・・。残念ながら5ページにある解説だけではそれほど深く考察されておらず私の疑問は解決しませんでした。またもう一つの「準決勝」(久保-広瀬)と「決勝」(藤井-広瀬)の棋譜と簡単な解説もあります。
巻頭カラーの最後はインタビュー記事。「叡王戦七番勝負」に出場する金井恒太六段と高見泰地六段にそれぞれ5ページずつそれまでの対局を振り返ったり、研究や趣味の話を聞いています。

他にプロ棋戦の記事として(特集を除く)、「マイナビ準決勝」(西山-里見)は「関西本部棋士室24時」の中で解説:もう一つの準決勝(岩根-伊藤)は棋譜のみ。「女流名人戦第3局」(第2局は棋譜のみ)(里見-伊藤)(文:古川徹雄氏)、「銀河戦本戦Fブロック」(豊川-増田)、「A級順位戦」(羽生-佐藤康光)(熱闘!羽生将棋の中)、「竜王戦1組」(広瀬-糸谷)などがあります。また、最後の方に、「女流名人戦予選」での清水-カロリーナ戦が片上六段の文で載せられています。

特集の一つ目は、「
順位戦ラス前」。この将棋世界の発売日がA級順位戦の最終日となっていますが、そのA級から順にすべてのクラスのラス前の状況とその結果を特集しています。記事の内容は、特にプロ棋界に興味のある人には面白いでしょう。そしてここで取り上げられている棋譜は五つでした。(C2、梶浦-藤井聡太戦、C2、増田-佐藤和俊戦、C1、千田-塚田戦、C1、近藤誠也-永瀬戦、B2、畠山鎮-鈴木大介戦)

毎号ある技術的な特集は、「対振り銀冠穴熊」。仕掛けの周辺を徹底マスターと言うことで、振り飛車党にはやっかいな特集です。ただ、他にページを取られた為か中身は二章立てでちょっと少ないですね。
Chapter1は「基本講座」で講師はあの所司和晴七段です。「対振り新機軸!銀冠穴熊のコツ教えます」とあり、読む前から分かりやすいだろうなということは想像できます。そして読んでみてその感想通り。丁寧に解説していますので、初段位を念頭に置いているのかもしれません。
Chapter2は「次の一手」で、「序・中盤のポイントを押さえよう」。出題は藤森哲也五段で全11問。内容は序・中盤のポイントとあるようにまさにこの戦法を指すと実際に出てきそうな局面から出題しており、難易度は星一つから二つ。級位者から初段前後と言った感じで、講座の復習にもなっています。

リレー自戦記・プロの思考」として糸谷哲郎八段が登場しています。取り上げた棋譜は今期順位戦のB級1組9回戦で斎藤慎太郎七段との一戦。阪田流向かい飛車と言うアマチュア向けと言って良いかどうか分かりませんが、アマには参考になる力戦形の将棋です。そして初のA級昇級を決めた一局でもあります。

最新形はサトシにお任せ」の第3回。「ノーマル三間飛車の逆襲-衝撃のトマホーク戦法」です。実はこのトマホーク戦法、私も最近将棋センターに来た人から聞いたばかりで、「ネットではやっている」とのこと。それがプロの棋譜と共に解説してもらえるのは有り難いですね。今回の講座は、まず石田流の現在の状況があり、続いて理想形をめぐる攻防、トマホークの出現となっています。また後半には左美濃銀冠穴熊も出てきて、これからさらなる研究が続いていくのでしょう。(参考棋譜:平成24年王将戦一次予選橋本-村山戦、平成27年順位戦C2門倉-長岡戦、平成29年順位戦C2中田功-杉本和陽戦)

藤井聡太、記録への道」1ページに、「今年度の連勝賞、最多対局賞、最多勝利賞はすでに確定している。残るは勝率1位賞のみ。果たして史上2人目となる記録4部門の制覇はなるのだろうか。」とあります。「藤井将棋コレクション」には平成29年12月から30年1月までの対局が5局、短いコメントと共に載せられています。その5局は、NHK杯戦(対稲葉)、王座戦(対豊川)、王位戦(対大橋)、竜王戦(対中田功)、順位戦(対矢倉)です。
大崎氏の「神を追いつめた少年」、なんと今回の9回目で最終章とのこと。題は「輝ける明日」。内容は19連勝目を上げた頃に著者が初めて会い、インタビューした時のこと。主に将棋の勉強について話を聞いており、後半には進路についての話もあります。

かりんの振り飛車WATCH」第12回は「銀冠の厚みを生かせ!」です。という訳で、最初の4問、いずれも振り飛車銀冠の中盤から終盤の局面。プロの棋譜ですので、やさし過ぎはしませんが、初段前後向けの問題と言えるでしょう。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって48回目。今月のテーマは、(1)よみがえった△6二金型、(2)羽生王位の56手負け!(3)米長の豪腕、升田を倒す、(4)天才と呼ばれるうちは二流?、の四つ。(1)は昭和20年代に指されている角換わりの序盤から中盤にかかる局面で最近再び指され始めた為問題に。この見解は棋士によってどうか。(2)は平成6年の第35期王位戦第5局で羽生-郷田戦の短手数将棋。(3)は昭和46年の米長-升田戦の終盤。この局面は難解で、形勢判断も棋士により違ったものとなっています。(4)は大山十五世名人の「天才と呼ばれているうちは二流。勝ち続けて憎まれるようになってこそ本物」という言葉についてです。(参考棋譜:平成6年王位戦第5局羽生-郷田戦、昭和46年最強者決定戦米長-升田戦)

付録は「受けとしのぎ2018」で筆者は武市三郎七段。初段の手筋問題集とあるように難易度はそれほど難しくありません。詰みをしのぐ問題、詰めろを受ける問題で全39問。単行本の「凌ぎの手筋200」や「186」を高段者向けとするならばまさに初段前後向け。級位者の人にもじっくり考えてもらいたい良問が多く、同時に初段くらいの人達にも役立つ問題集になっていると思います。

2018年3月号(2月2日発売)の内容と感想
今月号は、羽生善治竜王が国民栄誉賞を受賞されたということで、この関連記事がたくさんあります。
それはまず巻頭カラーから。竜王就位式を合わせ、数々の写真の他に、あいさつや謝辞の文章があり、続いて「写真とデータで綴る羽生善治「永世七冠」への軌跡」があります。ここには永世称号の説明もあり、成立時期や過去の獲得者まで知らなかった内容も多々あります。後半は、羽生竜王が永世称号を獲得してきた軌跡が書かれており、改めて読むと驚くような出来事、すごい内容で、特に将棋界のこうした歴史に興味のある方には面白い記事になっています。
巻頭カラーには、次に王将戦の写真、棋王戦挑戦者となった「永瀬拓矢七段へのインタビュー記事」、朝日杯で藤井聡太四段が佐藤名人に勝利した記事と続きます。

その「王将戦第1局」(久保-豊島)は本文最初(記:大川慎太郎氏)。この一戦は相振り飛車だった為私も実況を見ていましたが、やはり対局者がどう考えていたか、棋譜だけでは分からないことも多くこうした記事は勉強になります。
他にプロ棋戦の記事として、「朝日杯将棋オープン戦」(文:池田将之氏)には簡単な解説と棋譜4つ(高見-羽生)(八代-羽生)(澤田-藤井聡)(藤井聡-佐藤天)、「女流王座戦第5局」(里見-加藤)(文:渡部壮大氏)、「女流名人戦第1局」(里見-伊藤)(文:相崎修司氏)、「銀河戦本戦Hブロック」(石田-黒沢)、「竜王戦2組」(真田-飯島)などがあります。

今月の特集は、「桂の潜在力」。題だけを見ると、そろそろ技術的な特集は在庫切れかなとも思わせるテーマですが、内容は分かりやすいです。中身は三章立て。
まずChapter1は「桂の貴公子が教える桂の技法」で解説は三枚堂達也六段。記者が質問し、それに答える形で桂の特性、使い方を解説しています。対象は基本的なものが多く級位者向け。ただ後半は、プロの桂使いから学ぶとして参考棋譜も載せられていますので、有段者の人は、記事を見た後こちらを並べて見るのも良いでしょう。(参考棋譜:平成29年順位戦C級2組石田-三枚堂戦、平成29年順位戦C級2組田中悠一-三枚堂戦、平成28年棋王戦第4局渡辺-佐藤天彦戦)
Chapter2は「次の一手 実戦に役立つ桂の手筋」。出題は梶浦康孝四段で全11問。内容は中盤から終盤、いかにも出てきそうな手筋を出題しています。難易度は星一つから二つと表示されており、級位者から初段前後と言った感じでしょうか。級位者の人は、じっくり考え答えを出し、有段者はひと目映った筋を確認と言った感じで答えを出してみて下さい。
Chapter3は「かりんの振り飛車WATCH」としてです。第11回で、「振り飛車党は桂が命」。問題そのものも今までよりやや易しいくらいでしたが、特に桂ということまでヒントに出ていますので、最近では特にやさしい回になっているかもしれません。

藤井聡太、記録への道」1ページの後、「藤井将棋コレクション」には平成29年の対局が6局、短いコメントと共に載せられています。その6局は、棋王戦(対豊島)、棋聖戦(対大橋)、順位戦(対高野)、朝日杯(対屋敷と対松尾)、叡王戦(対深浦)です。
大崎氏の「神を追いつめた少年」の第8章は「驚異の29連勝達成」。内容はまさにこの29連勝の過程で18連勝以降の話。竜王戦6組決勝の近藤戦、棋王戦予選決勝の澤田戦と今までにもマスコミ等で取り上げられているポイントの対局などを、他のプロ棋士のコメントと共に話を進めています。そして最後は29連勝目の対増田四段戦。神谷八段の話も交えこの大記録達成の状況を綴っており、今回も一気に読んでしまいました。

先月号で特集の一つとして取り上げられていた「
最新形はサトシにお任せ」が第2回として載せられています。棋譜も入れると全部で9ページ。難易度はプロの将棋の細かい仕掛け周辺を解説していますので難しく有段者向けと言って良いかもしれません。ただ内容は分かりやすく、(読者の)指さない戦法の時は現在のプロの将棋を見る上での知識として読み、(自分の)指す戦法の時は最新の考えを取り入れることが出来るので、私もそうですが役に立つと思う有段者は多いような気がします。(参考棋譜:平成29年朝日杯永瀬-金井戦、平成29年順位戦C2八代-阿部戦、平成28年銀河戦横山-千田戦)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって47回目。今月のテーマは、(1)いまどきの超急戦、(2)羽生善治竜王の名手、(3)プロの乱闘劇、倒れたのはどっちだ?、(4)羽生善治竜王の言葉、の四つ。(1)は昨年のNHK杯、佐藤天彦-永瀬戦での角換わり急戦。居玉で仕掛けた将棋の是非。(2)は平成4年の王座戦第1局で羽生-福崎戦の終盤。(3)は平成8年、新人王戦の屋敷-田村戦でゴキゲン中飛車の乱戦。(4)は「直感の7割は正しい」という言葉についてです。(参考棋譜:平成8年新人王戦屋敷-田村戦、平成4年王座戦第1局羽生-福崎戦、平成29年NHK杯戦佐藤天彦-永瀬戦)

付録は「羽生善治 永世竜王への一手」で筆者は勝又清和六段。次の一手形式で全31問。取り上げた棋譜については「はしがき」にあるものをそのまま転載しておきます。「タイトル獲得につながった勝利が4勝×7期で、メモリアルな最終局は2問に分けました。さらに有名な大山康晴十五世名人戦と、2度の千日手につながった矢倉の歴史的妙手を入れて、計31問です。」ということで、平成元年から去年のものまで幅広くあります。

2018年2月号(12月29日発売)の内容と感想
今月の特集は、「迷ったら先手中飛車」です。副題は、「初手から中飛車宣言で、真っ向勝負!」とあり、四章立てプラス付録という構成。
まずChapter1は「中飛車対談」。登場しているのは関西きっての中飛車コンビということで、北浜健介八段と今泉健司四段。話の内容は、先後の違いや指す時の基本的なこと。相振り飛車になった時の指し方や5筋の歩を切る是非、端歩、左金の処理などの話をし、その後に好局、名局を紹介しています。(参考棋譜:平成28年王位戦今泉-畠山鎮戦、平成29年竜王戦北浜-佐藤紳哉戦、平成29年王座戦菅井-渡辺明戦、平成21年王位戦戸辺-久保戦)
Chapter2は「先手中飛車講座」。講師は2007年に「ナニワ流ワンパク中飛車」の本を出した阪口悟五段。当時からは定跡も進歩しており、今回は最新の定跡を解説しています。内容は、居飛車の角道をすぐに突かない左美濃(早繰り銀)と居飛車穴熊対策です。
Chapter3は「最新形はサトシにお任せ-先手中飛車」で、講師は高野智史四段。新連載ということで、これから月ごとに違ったテーマを取り上げるようです。今回は「細分化する後手の対策」。後手の指し方を、相振りも含め現状を細かく分析し、それに解説を加えています。初心者の人にはちょっと難しく感じられる内容ですが、戦法の成立と変遷を理路整然と語っており、数年前の人気講座「突き抜ける!現代将棋」を彷彿とさせる書き方です(←個人的な感想です。読んでいて、それを思い出してしまったので)。連載ということですので、これからの講座に期待大ですね。(参考棋譜:平成24年NHK杯鈴木大介-谷川戦、平成29年棋王戦伊藤真吾-村山戦、平成29年叡王戦近藤正和-千田戦)
Chapter4は「かりんの振り飛車WATCH」としてです。第10回で、「プロも大好き中飛車の攻め」として最初に出題される四問も当然中飛車で、すべてプロの実戦から中盤の仕掛け前後。今回の問題もそうですが、最近はほとんど初段前後向けの問題となっています。

巻頭カラーは表紙にも大きく書かれているように羽生竜王の永世七冠に関する記事からです。まずは「
竜王戦第5局」(渡辺-羽生)の記事で羽生竜王の自戦解説(構成は大川慎太郎氏)。この一戦は角換わりで私も見ていましたが、解説は中盤から角換わりの講座のような分かりやすさで進められています。そしてその後の本文には「羽生善治竜王が振り返る竜王戦七番勝負」というインタビュー記事があります。
今月の巻頭カラーには他にもインタビュー記事があります。一つは王将戦の挑戦者になった「豊島将之八段へのインタビュー記事」(構成:鈴木健二氏)。王将リーグでのポイント局面や七番勝負に向けて、また勉強法やソフトとの向き合い方などを話しています。そしてもう一つは、「藤井聡太四段へのインタビュー記事」(構成:田名後健吾氏)。この記事の前に「将棋プレミアムフェスin名古屋」という記事があり、久保銀河に藤井聡太四段が挑戦した棋譜と解説があります。

他にプロ棋戦の記事としては、「竜王戦第4局」(渡辺-羽生)(棋譜のみ)、「王将戦リーグ最終局」(深浦-豊島)(渡辺-佐藤天彦)(郷田-斎藤慎太郎)(文:鈴木健二氏)、「女流王座戦第3局」(里見-加藤)(文:馬上勇人氏)と「女流王座戦第4局」(文:一瀬浩司氏)、「倉敷藤花戦第2局」(里見-伊藤)(文:松本哲平氏)、「日本シリーズ決勝」(山崎-豊島)(文:浅見将平氏)、「銀河戦本戦Fブロック」(牧野-及川)などがあります。

藤井聡太、記録への道」が1ページあり、続いて「藤井将棋コレクション」に載っているのが、すべて平成29年の対局で、王位戦(対小林健二)、順位戦(対脇)、王座戦(対平藤)、王位戦(対北浜)の棋譜と簡単な解説です。
大崎氏の「神を追いつめた少年」の第7章は「快進撃の始まり」。内容は「炎の七番勝負」とそれに続く29連勝のこと。そして斎藤慎太郎七段がいろいろと面白い話と解説をしています。

付録は「痛快!先手中飛車」で書いているのは西田拓也四段。ここでは、後手の対策を居飛車穴熊と左美濃に限って、次の一手形式で39問。本文を読んで、この付録も一通りやってから実戦で使うと面白いかもしれません。

2018年1月号(12月1日発売)の内容と感想
今月の特集は、「角換わり進化論」です。副題に「消えた戦法から最新形まで」とあり、三章立て。
まずChapter1は「谷川浩司が語る角換わりの歴史」。谷川九段が指し始めて30年経つということで、その頃から今までどのように変遷していったかと言うことをインタビュー形式で話しています。角換わりをあまり指さない人にも分かりやすく、指す人にとってはこうした過去に指された形からも何かしらアイデアを得られるかもしれません。(参考棋譜:昭和61年棋王戦挑決谷川-勝浦戦、平成3年王位戦第5局谷川-中田宏樹戦、平成14年王位戦第4局谷川-羽生戦、平成2年王位戦第3局谷川-佐藤康光戦)
Chapter2は「流行形のメカニズムを探る」。解説者は千田翔太六段ということで、副題は「創始者が分析する△4二玉・6二金・8一飛型」。この定跡を作り上げる過程と、指すポイントをこちらも解説は分かりやすいです。(参考棋譜:平成28年NHK杯村山-千田戦、平成28年棋王戦千田-広瀬戦、平成28年叡王戦千田-佐々木勇気戦)
さて、ここまではインタビュー形式で話ながらの解説でしたが、最後のChapter3でようやく基本講座です。題は「好形でリード!流行形を簡単マスター」。解説は石田直裕五段。内容は、「流行形」とあるように、昔ながらの角換わりではなく、△6二金・8一飛型の指し方です。千田六段も話しているように、それほど定跡を覚えなくても指せる、ということですので、ポイントだけしっかり覚え実戦で指して見ましょう。

巻頭カラーに「将棋世界は盤寿」と言うことで、新春読者プレゼントがあります。昔の将棋世界を見たことがありますが、創刊して81年も経つのですね。それほど昔から、先人たちから受け継がれてきているということです。
さて、棋戦は「竜王戦第3局」(渡辺-羽生)からです。大川慎太郎氏の構成で解説は藤井猛九段。いろいろ疑問の残る将棋ということを話されていますが、その「なぜ」をもう少し掘り下げて欲しかった気はします。
他にプロ棋戦の記事としては、「竜王戦第2局」(渡辺-羽生)(文:相崎修司氏)、「新人王戦第2局」(佐々木大地-増田)これは増田康宏四段の自戦解説で、戦型は特集でも取り上げられている角換わりの最新形。さらに「加古川青流戦決勝三番勝負の三局」(西田-井出)(文:渡部壮大氏)、「女流王座戦第1局」(里見-加藤)(記:古川徹雄氏)、「倉敷藤花戦第1局」(里見-伊藤)(文:一瀬浩司氏)、「女流王将戦第1局、第2局」(里見-伊藤)、「銀河戦本戦Cブロック」(佐藤慎一-小山アマ)、「竜王戦昇級決定戦2組」(澤田-広瀬)など今回はいつもより多くの棋譜があります。

藤井聡太、記録への道」が1ページあり、続いて「藤井将棋コレクション」に載っているのが、すべて平成29年の対局で、王座戦(対小林健二)、銀河戦(対藤倉)(対上村)、棋聖戦(対竹内)、順位戦(対星野)、王位戦(対小林裕士)の棋譜と簡単な解説があります。
大崎氏の「神を追いつめた少年」の第6章は「鮮烈のデビュー戦」。内容はもちろん加藤九段との一戦。前半は郷田九段による解説。後半はその時の状況。そして最後に加藤九段と藤井四段の縁でしめています。

金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.12は「最新形の総まとめ」-太地新手△3五歩など-で、前回振り飛車が最終回ということでしたが、こちらも最終回とのことです。その最後は居飛車の最新形のまとめ。まずは矢倉、5手目▲7七銀から始まっていますが、現在は様々な急戦がある為、戦型の分類も難しいところがあります。後手早繰り銀から王座戦に現れた太地新手の△3五歩、さらに後半には横歩取りにおける最新の勇気流対策まで現状の居飛車戦を幅広く紹介しています。(参考棋譜は平成29年叡王戦広瀬-稲葉戦と平成29年王位戦佐藤天彦-佐々木勇気戦)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって46回目。今月のテーマは、(1)最新の角換わり、同形の結論は?、(2)升田、貫禄の受けきり勝ち、(3)史上最高の?実戦詰将棋、(4)藤井聡太少年の言葉の四つ。(1)は最近流行の角換わり△6二金・8一飛型の同形について。(2)は昭和47年の升田-桜井戦の終盤。(3)は平成10年、王将戦第5局での羽生が一分将棋で詰めた局面。(4)は将棋を考えて頭が割れそうになった経験はありますか?という質問です。(参考棋譜:昭和47年十段戦桜井-升田戦、平成10年王将戦第5局羽生-佐藤康光戦)

かりんの振り飛車WATCH」第9回は「受けのテクニック」。プロの実戦から受けの問題を作った四問です。問題として出されれば有段者なら答えられる問題ですが、これを実戦で指すのは難しい。これらを実際に使えるようになればかなり強いと言えるでしょう。

付録は「
7棋士が競演!若手棋士の詰将棋」。登場しているのは、斎藤七段、宮田六段、及川六段、村田六段、都成四段、上田女流三段、藤井聡太四段の7人。5手から17手詰までこの順番に、自身の作った詰将棋を手数順に載せています(一人5〜6問で全39問)。有段者向けと言えるでしょうが、手数も書かれていますので、短いものだけ解いてみるのもアリでしょう。私は(あまり早く解いてしまうのはもったいないので)一ヶ月かけて少しずつ楽しみたいと思っています。

2017年12月号(11月2日発売)の内容と感想
今月の特集は、「角交換四間飛車ABC」です。ABCとあるように、基本形に限定して紹介。三章立てになっている他、付録も角交換四間飛車です。
まずChapter1は「レオ先生が教える角交換四間飛車」。解説は力戦振り飛車を得意としている黒沢怜生五段。インタビュー形式で角交換四間飛車を解説しています。その後半は自身の実戦譜や角交換四間の好局からそのポイントを丁寧に説明。(参考棋譜:平成26年NHK杯藤井猛-佐藤康光戦と平成29年王将戦丸山-鈴木大介戦)
Chapter2は「角交換四間飛車基本講座」。講師は西田拓也四段。初手から基本的な駒組みや狙い筋を解説。と言っても、居飛車の対応も非常に多い。ここでは良く現れそうな基本的な筋だけになりますので、実際にはそれを知識としてたくさん指して身に付ける必要があります。
Chapter3はなんと「かりんの振り飛車WATCH」としてです。講師は戸辺七段で、形式はいつもと同じで今回は第8回。最初に4つの問題を出していますが、これもプロの実戦から。中盤の仕掛け前後の局面ですので、基本講座と合わせ一緒に覚えておきたい筋です。

巻頭カラーは、「
ドキュメント 中村太地新王座誕生」(構成・写真:北野新太氏)から。4年越しのタイトル獲得であり、このインタビューは、今回の激闘を終えて24時間しか経っていない時に話されたものだそうです。4年前から、今回王座を獲得するまで、その心の内を素直に述べています。赤字にしたのは、本文に第3局第4局の自戦解説もあるのでそれらを合わせてのお薦めです。
続いて、「竜王戦第1局」(渡辺-羽生)(記:大川慎太郎氏)。ついに始まりました黄金カード。加えて羽生棋聖には永世七冠がかかっていて、その期待も大きい。その第1局目ですが、読み応えのある記事でした。続く巻頭カラーには「新人王戦第2局」(佐々木大地-増田康宏戦)が棋譜と写真で2ページあります。その「第1局」は本文の中に(文:渡部壮大氏)。さらに「魂の七番勝負第3局」(藤井聡太-行方)が棋譜と解説で3ページ載っています。
他にプロ棋戦の記事としては、「王座戦第3局」と「第4局」(羽生-中村太)。これは中村太地王座の自戦解説。さらに、「銀河戦本戦Aブロック」(阿部光-板谷アマ)、「あゆみ杯争奪新人登竜門戦決勝」(渡部-塚田)、「竜王戦昇級決定戦3組」(小林裕-中座)などがあります。

菅井竜也王位と久保利明王将の対談」記事。題は「振り飛車に限界はない」として、10ページ、振り飛車を語っています。個人的には(振り飛車党的には)これが今月号で一番の面白い記事でした。(参考棋譜:平成19年A級順位戦深浦-久保戦、平成23年C2中座-菅井戦)。
この記事の後に、「データで見る第30期竜王戦七番勝負の展望」があります(4ページ)。

大崎氏の「神を追いつめた少年」の第5章は「駆け抜けた奨励会」。内容的には大きく二つの話。一つは詰将棋創作と詰将棋選手権。そしてもう一つは、奨励会最終戦で対戦した女性の西山奨励会三段との話。どちらも引き込まれる話で、今回も一気に読んでしまいました。
続いて、「藤井聡太、記録への道」というページがあり、さらに「藤井将棋コレクション」には、すべて平成29年の対局で、新人王戦(対佐々木大地)、順位戦(対佐藤慎一)、朝日杯(対宮本)、叡王戦(対佐々木大地)、叡王戦(対杉本和陽)の棋譜があります。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって45回目。今まで一問だけ藤井聡太四段が特別参加していましたが、今回から屋敷九段、増田四段が加わりレギュラーになると言うことです。従って、登場している6人は、郷田九段、屋敷九段、木村九段、糸谷八段、増田四段、藤井四段。そして今月のテーマは、(1)藤井聡太流の△2四歩、(2)中原誠名人の妙手、(3)木村名人の「君は僥倖を頼んで・・・」、の三つ。(1)は藤井四段が29連勝中に2局指している相掛かり棒銀に対する新手。(2)は昭和51年の新人王戦記念対局、中原誠-石田和雄戦の終盤。(3)は有名な昔のエピソードを取り上げ、「詰まない玉に王手をかけたことはあるか?」という質問です。(参考棋譜:平成29年竜王戦ランキング戦6組決勝藤井聡太-近藤誠也戦、昭和51年新人王戦記念対局中原誠-石田和雄戦)

門倉啓太五段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.12は「角頭歩戦法と菅井流」。-時代を変える新構想-です。そして何と最終回とのことです。その最後に取り上げたのは、いわゆる奇襲戦法と考えられている角頭歩戦法。なぜ菅井流と一緒に取り上げたのかと思っていたら、角頭歩戦法も最近指されていて、それも進化しており、ある意味同じような系統に入るからのようです。こうした指し方は、たとえば早石田のような乱戦好きな振り飛車党にはたまらないでしょう。時間のないアマチュアの将棋では特に研究しておけば勝てることも多いかもしれません。後半は、菅井流△5四歩型三間飛車と△3三金型三間飛車について解説しています。(参考棋譜は平成28年王将戦1次予選島本-西川和戦と平成29年棋王戦予選小林裕-菅井戦)

付録は今月の特集に関連して「すぐに指せる!角交換四間飛車」。書いているのは杉本和陽四段で、基本的な駒組みから仕掛けや狙い筋までを次の一手形式で39問。本文の講座と合わせて読む事で実戦に使える知識を身に付けることが出来そうです。

2017年11月号(10月3日発売)の内容と感想
今月の特集は、「現代に蘇る「雁木」の思想」です。雁木というと、昔の戦法というイメージでしたが、コンピュータの影響で見直され、プロ間でも指され始めました。今、旬であるその雁木の特集という訳です。
内容は五章立て。まずChapter1は「コラム」から始まるという今までにない導入。鈴木宏彦氏のコラムで、「雁木、その不思議な呼び名の由来」として雁木の歴史から書かれています。もし、名前の由来について興味がなかったとしても、昔指された戦法から鉱脈が見つかることは良くあることです。背景として知っておきたいミニ知識になっています。
技術的な内容は、Chapter2の「雁木基本講座」から。講師は北島忠雄七段。後手の矢倉に対する先手の雁木の駒組み、その仕掛けの基本を解説しています。
Chapter3は「ツノ銀雁木講座」。講師は増田康宏四段。後手の雁木で△5三銀ではなく△6三銀と上がる形。このツノ銀雁木がなぜ有力か。若手らしくコンピュータの話も持ち出し、また非常に的確にポイントを解説しています。この特集の中でも一番のお勧め記事と言えるでしょう。(参考棋譜:第47期新人王戦本戦増田-高見戦、第76期順位戦C級2組大平-増田戦)
Chapter4は「リレー自戦記」として。登場したのは、豊島将之八段で、取り上げた棋譜は日本シリーズの対糸谷八段戦。先手の菊水矢倉に後手のツノ銀雁木の戦い。中盤から巧みに攻めた雁木の戦い方を解説しています。
Chapter5は「最新定跡探査」として。これは居飛車編Vol.11で金井恒太六段。「相掛かり&ツノ銀雁木」ということで相掛かりとツノ銀雁木の二つを解説していますが、メインは飛車先をすぐに切らない最新の相掛かりで5ページ。雁木は3ページです。ただいずれも最新の実戦を多く取り上げ、現状の分析をしています。(参考棋譜:第76期順位戦C級2組渡辺正和-佐藤和俊戦、第66回NHK杯行方-永瀬戦)
なお、雁木の記事としては、今月の「付録」もそうです。

巻頭カラーは、「
王位戦第5局」(羽生-菅井)(記:今泉健司四段)から。戦型は「予測不能の三間飛車」。角交換振り飛車から離れた金銀をさばくすごい振り飛車で王位を獲得した一戦を、少年時代から親交があるという今泉四段の解説でお送りしています。続いてその王位を獲得した菅井竜也王位への「王位戦総括インタビュー」記事があります。主に第2局と第4局について話をし、第4局は棋譜もあります。
他にプロ棋戦の記事としては、「王座戦第1局」(羽生-中村太)(記:大川慎太郎氏)、「竜王戦決定三番勝負第2局」と「第3局」(羽生-松尾)(文:下村康史氏)、「銀河戦決勝」(久保-羽生)(文:瀬尾淳氏)、「銀河戦決勝トーナメント」(羽生-渡辺)、「YAMADAチャレンジ杯決勝」(高見-三枚堂)と「女子決勝」(鈴木-石本)、「竜王戦特選譜」(大石-森下)などがあります。

そして今月号には、上記以外にもいろいろな所に棋譜があり読み物もあります。
まず、「佐藤康光九段1000勝達成」として、棋士生活30年の歩みとこれからのことを自身でつづられています。ここでは、先輩棋士達の話や藤井聡太四段についても触れています。(参考棋譜:第6期竜王戦第6局佐藤-羽生戦)、第24期新人王戦第3局森内-佐藤戦、第53期王座戦第2局羽生-佐藤戦、第75期棋聖戦第1局森内-佐藤戦)。

大崎氏の「神を追いつめた少年」の第4章は「秘密の練習パートナー」。誰かと言うと、稲葉陽八段の兄であり、アマとして史上ただ一人のプロ棋戦優勝者でもある稲葉聡氏。二人の関係がこれほど濃密だったことを初めて知りました。そして後半には、師匠が決まる時の杉本七段の話も出てきており、今回も一気に読ませる面白い内容です。
続いて、「藤井聡太、記録への道」という記事があります。ここには、二つの棋戦、第7期加古川青流戦(対井出四段)と第67回NHK杯(対森内九段)の棋譜と簡単な解説があり、9月10日分までの成績一覧が載せられています。
前回あった「藤井将棋コレクション」もこの「記録への道」の中に。棋譜は四つに簡単なコメントです。(第89期棋聖戦一次予選、対西川慶二四段と対阪口五段、第11回朝井杯一時予選、対大石六段と対竹内四段:すべて藤井四段の勝ち)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって44回目。今回も一問だけ藤井聡太四段が特別参加しています。そして今月のテーマは、(1)升田の構想、これでおしまい、(2)大山、升田を完封、(3)井上四段、羽生四段の猛攻をしのぐ、(4)受けの技術は退化していないか、の四つ。(1)は昭和37年のA級順位戦、升田-丸田戦の角換わりの中盤。(2)は昭和28年の第12期名人戦、升田-大山戦の終盤。(3)は昭和61年のC級2組順位戦、当時の羽生四段-井上四段戦の終盤。(4)は現代は攻め優先の時代な為、棋士の受けの力が弱くなっているということはないだろうか?との質問をしています。(参考棋譜はテーマ1の升田-丸田戦とテーマ2の升田-大山戦、テーマ3の井上-羽生戦)
(1)は中盤、(2)は終盤ながら棋士による差はあまりなく、特に(2)は郷田九段が「なんでこれがテーマ図になっているんだろう」との疑問を呈していますが同感です(なぜかは読んでいくと分かりますが)。(3)は凌ぎがあるかどうかの難解な終盤で、この問題に藤井四段も参加しています。そして確かな読みを披露しています。

かりんの振り飛車WATCH」第7回は「若手棋士たちの振り飛車」です。つまり問題は、若手振り飛車党4人の将棋から出題されているということです。第1問は西田四段の序盤の技。第2問は戸成四段の中盤のさばき。第3問は杉本和陽四段の終盤の一着。そして第4問は井出四段の居飛車穴熊に対する中盤の仕掛け方。

付録は今月の特集に関連したもの。「攻めて楽しい雁木戦法」で本文Chapter2の講師もしている北島忠雄七段です。そのため、はしがきに「本誌では基本的な攻防、付録ではより実戦的に応用編となるように構成しています」とのことです。定跡次の一手問題として全部で39問、本文を読んだ後、取り組んで見て下さい。

2017年10月号(9月1日発売)の内容と感想
藤井フィーバーが一段落し、普段の将棋世界に戻ってきましたね。しかし、今月号は個人的にはとても興味のある記事ばかりです。なぜならその特集が、「極めよ!振り飛車穴熊」だからです。
この特集記事は三章立て。まずChapter1は「実戦講座」で、講師は青嶋未来五段。自身の実戦譜から相穴熊戦での戦い方を解説しています。特に、定跡ではなく終盤戦での考え方、戦い方ですので、まったく同じ局面は出ないでしょうが、なるほどと思う内容も多く、穴熊を指す人にはどちらを持つ人でも参考になるでしょう。(参考棋譜:第87期棋聖戦北島-青嶋戦、第1期叡王戦増田-青嶋戦、第65期王座戦青嶋-佐藤天戦)
Chapter2は「序盤講座」で、講師は黒沢怜生五段。こちらは序盤から中盤の戦い方まで。戦型的には、四間飛車穴熊対急戦、銀冠、相穴熊と、中飛車穴熊対急戦、相穴熊です。それぞれの居飛車に対する最も有力な指し方を解説していますので、この成功例を描きながら指し進めると良いでしょう。
Chapter3は「振り穴党総裁の穴熊から学ぶ」として、大内九段の指し回しを弟子の鈴木大介九段が解説しています。そしてそれだけではなく、現在振り飛車穴熊を指すプロ棋士たちの話もあり、最後には振り穴を極めるポイントについても話されています。(参考棋譜:第29期A級順位戦大内-大山戦、第5回全日プロ大内-中村修戦、第14回オールスター大内-郷田戦)
振り飛車穴熊の特集としては上記だけですが、「付録」や「かりんの振り飛車」でもこの振り飛車穴熊を取り扱っています。

巻頭カラーは、「王位戦第3局」(羽生-菅井)(記:大川慎太郎氏)から。王位戦唯一の菅井七段敗局で完敗という感じですが、実際は微差だった、ということで、序盤、菅井流の意味からこの一戦のポイントを詳しく解説しており面白い記事です。続いて王座戦挑戦者になった「中村太地六段のインタビュー記事」があり、「竜王戦挑決第1局」(羽生-松尾)と続きます。
他にプロ棋戦の記事としては、「王将戦一次予選」(菅井-藤井聡)(関西本部棋士室24時で池田将之氏による観戦記)、「銀河戦決勝トーナメント」(青嶋-羽生)、「王位戦第2局」(羽生-菅井)(熱闘!羽生将棋の中)、「竜王戦決勝トーナメント」(丸山-稲葉)(佐藤康-村山)などがあります。

大崎氏の「神を追いつめた少年」の第3章は「詰将棋界に旋風」。この題のように今回の話の中心は詰将棋。小さい頃からいかに早く解いていたかと言うことはもはや伝説になりつつありますが、その詰将棋選手権での話も詳しく書かれています。
その藤井聡太四段の棋譜をたっぷり詰めた「クローズアップ!藤井将棋」がパワーアップしてます。先月号は2ページで棋譜一つだったものが、今月は5ページになり、棋譜も五局あります。解説はポイントの手だけ箇条書きと短めですが、並べたい人はうれしいでしょう。(参考棋譜:竜王戦決勝トーナメント対増田四段戦と対佐々木勇気五段戦、上州YAMADAチャレンジ杯対三枚堂四段戦、銀河戦対平藤七段戦、順位戦対高見五段戦)

先々月大内九段が亡くなられたということで「追悼記事」として弟子の人達の話があり、また森九段の「現役引退」に伴い、棋士人生49年を振り返った記事があります。

門倉啓太五段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.10は「対四間飛車銀冠穴熊」。-角道を止めない新戦略-です。最近指されるようになった「角道を開けたまま固い囲いを目指す」というもので、振り飛車からの仕掛けも僅かの形の違いにより成立したりしなかったりする繊細な駒組み。深い研究を必要とする戦型ですが、課題もまだたくさん残っているようです。(参考棋譜は平成29年棋聖戦1次予選井出-佐藤秀戦と平成29年棋王戦1次予選飯塚-藤井猛戦)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって43回目。なんと一問だけ藤井聡太四段が特別参加しています。そして今月のテーマは、(1)米長邦雄、驚異の読みきり、(2)大山康晴十五世名人の油断、(3)大山の一喝、暗くしなさんな、の三つ。(1)は昭和43年の中原-米長戦の終盤。難解で長い変化を読み切ったという将棋でこの問題だけ藤井四段にも聞いています。(2)は昭和49年のA級順位戦での大山-二上戦。中盤で丸々一歩損をした大山十五世名人の将棋。プロ的には大差の将棋を逆転しています。(3)は有名な逸話。その大山が放った一言をあなたは言えますか?との質問です。(参考棋譜はテーマ1の中原-米長戦とテーマ2の大山-二上戦)

かりんの振り飛車WATCH」第6回は「怒濤流穴熊に学ぶさばき方」です。つまり問題は、その大内九段の実戦から。豪快なさばき方というヒントがあるなら、手筋も含め見つけられる問題かもしれませんが、第2問の私のひと目はかりんさんの答えと同じでした。どのくらい強くなっているのでしょうか?そろそろまた実戦も見てみたいですね。

付録は今月の特集に関連したもの。「振り飛車穴熊 終盤のトリック」であのスーパートリックの森信雄七段です。問題の難易度はこれから解くので分かりませんが、どうもスーパートリック並みに難しそうです。「派手な手やアクロバティックな手が多い」ということのようですので、一問一問時間をかけて解いていこうかと思っています。もちろん有段者向けです。

2017年9月号(8月3日発売)の内容と感想
今月は「総力特集!」がすごいです。表紙を見てもらえれば分かりますが、「おめでとう!藤井聡太四段29連勝達成、ありがとう!加藤一二三九段現役引退」として非常に多くのページが割かれています(目次の半分がこの特集記事!)。
当然巻頭カラーも、藤井四段の写真からです。何枚もあり、記者会見のインタビューの後には、29連勝の軌跡としてその内容も載せられています。そしてその後に加藤一二三九段、現役引退の記事と写真です。

本文中にある「藤井四段の記事」としては、「夏、十四歳の声」としてロングインタビューからです。ここでは中田戦と増田戦、澤田戦などの感想の他、いろいろと質問し聞いています(順位戦C2、対中田功戦の棋譜あり)。その後には、「クローズアップ!藤井将棋」として順位戦C2、対瀬川五段戦(26連勝目)の棋譜と記事(順位戦デビューの一局)。続く「関西本部棋士室24時」では、27連勝28連勝になった藤岡アマ、澤田六段との対戦の記事と棋譜が取り上げられています。さらに、竜王戦決勝トーナメントでの対増田四段戦と対佐々木五段戦の記事「狂騒の連勝と、そのあと」(記:相崎修司氏)が続きます。
そしてここからもまだ面白い。「連勝対談」として、28連勝の神谷広志八段と22連勝の塚田泰明九段の登場。話の内容は、前半が昔の連勝時のこと。後半は今の藤井聡太四段について。最後に参考棋譜として3局、昭和61年全日プロ塚田-羽生戦、昭和62年NHK杯神谷-石田戦、平成29年王将戦有森-藤井聡太戦があります。
先月から始まった大崎氏の「神を追いつめた少年」の第2章「才能の芽生え」。今回は小学生の時の子供教室での話がメインですが、奨励会、研修会のことにも触れ、前回と同じく一気に読ませてしまう内容です。

続いて本文中にある「加藤九段編」ですが、こちらもインタビュー記事としてまず「引退記念会見」を載せており、2ページしかありませんが内藤九段の特別エッセイ「十四歳の貴重な思い出」もあります。そしてこちらにも「対談」があり「加藤一二三先生は信念の人」という題で、登場しているのは、勝又清和六段と郷田真隆九段。対談しているのがこの二人ということもあり、加藤将棋を取り扱いながら、一部定跡講座風になっている箇所も見られ勉強になります。また、終盤における歩の使い方、金の使い方など面白い対局も取り上げており、参考棋譜も5局、味わってみたいものがたくさんあります。(平成8年A級順位戦加藤-村山戦、平成8年A級順位戦加藤-森下戦、昭和59年NHK杯加藤-米長戦、平成6年NHK杯加藤-佐藤康光戦、平成11年A級順位戦加藤-郷田戦)
そしてその後、5人のトップ棋士に、「個性派棋士・加藤将棋の魅力」として、2ページずつ語ってもらいそれぞれ一局ずつ棋譜も載せられています。その5人とは、中原誠十六世名人、羽生善治三冠、佐藤康光九段、森内俊之九段、渡辺明竜王です。それぞれに思い出の局面、魅力を語っており、加藤将棋を見ていた人には納得のいく面白い内容になっています。

プロ棋戦の記事は、まず巻頭カラーの「王位戦第1局」(羽生-菅井)(記:渡部壮大氏)から。振り飛車党がタイトル戦に出るのは珍しいのでもっといろいろな角度から取り上げて欲しいのですが、今は別の話題が大きすぎましたね。そして本文最初にはあるのは「
棋聖戦第3局」(羽生-斎藤)(記:大川慎太郎氏)。毎回面白い観戦記を書かれますが、今回も一気に読ませてしまう工夫の構成です。実況で見ていて分からなかったこともたくさんここには書かれていました。他には、「棋聖戦第4局」(文:相崎修司氏)、「女流王位戦第5局」(里見-伊藤)(記:瀬尾淳氏)、「銀河戦本戦Bブロック」(船江-佐藤康光)、「叡王戦九段戦」(羽生-小林健二)(熱闘!羽生将棋の中)などがあります。

佐藤天彦名人が振り返る第75期名人戦&第2期電王戦「激動の半年間」という記事があります。名人戦と電王戦が並行して行われた訳ですが、その印象に残った局面を挙げながら振り返っています。7ページのそれほど多くはない記事ですが、いろいろと面白く興味深いことが書かれていました。

かりんの振り飛車WATCH」第5回は「勝っている棋士に学べ」です。問題は、二つが藤井四段の実戦の詰みから。あとの二つが菅井七段の中終盤のさばき。なんか最近はどんどん問題が難しくなっていくような気がします。

付録は「
藤井聡太 29連勝の軌跡」。書いているのは師匠の杉本昌隆七段。29連勝の公式戦の他、少年時代の対局や三段リーグ、「炎の七番勝負」での一戦なども取り上げ、次の一手として出題した39問です。テレビで取り上げられるようになってからは実況も増えましたが、それまでの対局はあまり知りません。ここではそのポイントの局面でどんな手を指したか、その才能の一端を狭いスペースの中で存分に紹介されています。
※将棋世界は、7月号完売、8月号増刷とのことらしいですが、藤井聡太特集ということであれば間違いなくこの9月号が一番の買いですね。

2017年8月号(7月3日発売)の内容と感想
今月の表紙も当然のように藤井四段です。中の記事を読む限り、25連勝くらいの所で記事の締め切りはあったようですが、7月3日の発売の時点で残念ながら昨日29連勝までで止まりました。それでもこの偉業をなし遂げた藤井四段の話、新連載としてドキュメント「神を追いつめた少年-藤井聡太の夢-」開始です。これはあの「聖の青春」や「将棋の子」など数々の将棋関係のヒット作、読み物を出版している大崎善生氏の著述。第一回目から引き込まれる内容で、これから大いに楽しみですね。
そしてその後に、「クローズアップ!藤井将棋」として25連勝になった「第2回上州YAMADAチャレンジ杯」と「第3期叡王戦段位別予選」の記事があります。さらにその記事の最後にはそこで指された5局の棋譜もあります。

巻頭カラーは、「
名人戦第6局」(佐藤-稲葉)から。解説は名人自身、つまり佐藤天彦名人。この一戦は私も見ていましたが、やはり単に解説を聞いているのと、実際に本人が感じていることとは違うことがいろいろとあります。その時の形勢判断など、これを読んでそうだったのかと思うようなことも多かったです。続いて王位戦挑戦者になった「菅井竜也七段のインタビュー記事」。決定戦となった澤田六段との一戦の解説からタイトル戦に向けた意気込みまで。
他にプロ棋戦は、「棋聖戦第1局」(羽生-斎藤)(文:松本哲平氏)、「名人戦第5局」(佐藤-稲葉)(解説:山崎八段)、「電王戦第2局」(佐藤-PONANZA)(文:相崎修司氏)、「マイナビ第3局」(加藤-上田)(自戦記:加藤桃子女王)、「女流王位戦第4局」(里見-伊藤)(文:鈴木健二氏)、「銀河戦本戦Cブロック」(深浦-糸谷)などがあります。

特集として、今月号は「
対矢倉左美濃急戦の全貌」です。これは今が旬の新戦法。升田幸三賞を受賞しています。
Chapter1は「流行形のメカニズムを探る」で、創始者である千田六段が基本的な内容を解説しています。千田六段と言うことで、戦術以外にソフトの話も載っていて、いろいろと参考になる面白い話がありました。(参考棋譜:第74期順位戦C級1組堀口七段-千田五段戦、第1期叡王戦本戦森内九段-阿部光五段戦、第66期王将戦1次予選南九段-斎藤慎六段戦、第75期順位戦B級2組中田宏八段-斎藤慎六段戦)
Chapter2は「リレー自戦記」として。書いているのは遠山雄亮五段で、取り上げた棋譜は王将戦1次予選の対所司和晴七段戦。この一局はまさに左美濃急戦の理想の勝ち方。固さを頼りに豪快な攻めが炸裂し、さらに味の良い手筋も頻発しています。指して見ようかと思わせる実戦解説です。
Chapter3は次の一手で「対矢倉左美濃急戦の手筋を覚えよう」。出題は佐々木大地四段。この戦法の急所、基本を問題にしており、それほど難しくはありません。
Chapter4は「最新定跡探査」として講師は居飛車編の講師金井恒太六段。Vol.10で対矢倉左美濃急戦-覆った矢倉の常識-です。最新の実戦譜を元にいくつかの型を解説。まだまだこれから研究されていく戦法でしょうが、現時点での基本的な指し方、考え方が丁寧に解説されていて分かりやすいです。(参考棋譜は平成29年竜王戦6組金井-藤井聡戦と平成29年竜王戦2組佐藤康-飯島戦)

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって42回目。今月のテーマは、(1)角道は開けない、でも急戦って?、(2)中原誠十六世名人の懐の広さ、(3)羽生善治四段、15歳の勝負手、(4)あなたは藤井聡太四段に勝てるか、の四つ。(1)は先手の中飛車に対して角道を開けずに△7五歩から仕掛ける戦法。テーマ図は昨年6月の藤井猛-野月戦(棋王戦)。(2)は平成2年のA級順位戦で中原-内藤戦の終盤。(3)は現在羽生三冠が15歳の時の順位戦デビューの一局。テーマ図は最終盤。(4)は取材当時19連勝の時点での問い。各棋士の藤井将棋の感想も面白いですが、勝てるか?という問いに対する答えも各人各様で面白いです。(参考棋譜はテーマ2の内藤-中原戦とテーマ3の森信雄-羽生戦)

かりんの振り飛車WATCH」第4回は「流れをつかむテクニック」。駒がぶつかった中盤から終盤にかけてどう指すかという問題。なお今回も取り上げた問題は、実際にプロ棋士の指したものなので難しいです。特に第4問目はちょっと難し過ぎるでしょう。

後ろの方にハガキがはさまっているなと思ったら、「竜王戦挑戦者予想クイズ」がありました。確か初めて、ですよね?順位戦の予想は毎年ありますが、これも竜王戦のトーナメント表に名前を入れていくものです。昨日の対局で藤井-佐々木戦までは分かっています。7月10日の消印有効なので出す人は早めに。

付録は「極限早繰り銀戦法」。書いているのは佐藤慎一五段です。この名称は、編集者との話し合いで決めたとのこと。内容は角換わりの出だしから角を交換せずに右銀を繰り出して行くというもの。「あふれるスピード感と圧倒的な破壊力!」とあるように、最近の流行の一つかもしれません。いろいろな指し方があるものだと改めて思わされます。

2017年7月号(6月2日発売)の内容と感想
今月は大きな二つの記事があります。一つ目は、今テレビでも一般紙でも取り上げられている藤井聡太四段の特集(名称は「クローズアップ藤井将棋」)。もう一つは、45ページに及ぶ技術特集「居飛穴破りの三間飛車」の二つです。
その一つ目、「
棋譜満載!クローズアップ藤井将棋」として様々な記事があります。表紙の写真も藤井四段ですが、巻頭カラーは「藤井四段へのインタビュー」から。そして「特別対談」として、深浦九段と広瀬八段が藤井将棋の非凡さと強さの秘密を分析しています。この分析も鋭いのですが、うれしいのはこの最後に参考棋譜が12局も載っていること。この中には、炎の七番勝負全局の他、初戦の加藤一二三戦、羽生三冠に負けた獅子王戦の棋譜もあります。
続く「関西本部棋士室24時」も特別編です。新人王戦における対横山アマ戦と王将戦の対西川和宏六段戦についての記事と棋譜があります。そしてさらにその後には、「岡崎将棋まつり」の記事とともに対豊島戦が載っています。

特集としては一つだけ。夏の総力特集として、「
居飛穴破りの三間飛車」。ここにはChapter7まであり、そのうち4までが講座となっています。
Chapter1は編集部による講座で「三間飛車の基礎知識」。居飛穴に対する三つの戦法としてその特徴を解説しています。そしてその一つ一つを次のChapterごとに解説するという方式を取っています。
Chapter2は中田功七段による「コーヤン流三間飛車」。Chapter3は井出隼平四段による「真部流三間飛車」。Chapter4は小倉久史七段による「下町流三間飛車玉頭銀」。全体としては居飛穴に組ませてからの攻略方法が多いです。じっくり研究して実際に指して見たいですね。
Chapter5は次の一手で「三間飛車の手筋を学ぼう」。三間飛車における仕掛けと、特に三間ということでなくても居飛車穴熊の陣形を攻める手筋の問題です。内容は比較的やさしく級位者でもじっくり考えれば答えられるものが多いような気がします。
今まではここまでが特集記事だったのでしょうが、今月はあと二つあります。
Chapter6は「リレー自戦記」として。書いているのは岩根忍女流三段で取り上げた棋譜は女流名人戦予選の対村田女流二段戦。戦型はノーマル三間飛車対居飛車穴熊。振り飛車は銀冠にして居飛車穴熊の玉頭を攻めていく形です。もちろん三間飛車の勝った棋譜。
Chapter7は「最新定跡探査」として講師はいつもの門倉啓太五段。振り飛車編Vol.10でノーマル三間飛車-コーヤン流&△4三銀型-です。Chapter2の方は基本的な攻め筋を丁寧に解説しているのに比べ、こちらは実戦を題材により高度な内容。そして後半は△4三銀型ですが、これは三間飛車にして藤井システムのような布陣を築くというもの。いろいろな指し方があるもので、今回の記事を全部読むと三間飛車を指したくなります。(参考棋譜は平成28年棋聖戦1次予選藤森-佐藤和戦と平成28年王座戦1次予選伊奈-中田功戦)

ここから巻頭カラーに戻りますが、最初は棋聖戦の挑戦者になった「斎藤慎太郎七段へのインタビュー記事」からです。続いて「名人戦第3局」(佐藤-稲葉)(解説:阿久津八段)(第2局は棋譜のみ)、「マイナビ第3局」(加藤-上田)があります。
他にプロ棋戦は、「マイナビ第2局」(加藤-上田)(文:国沢健一氏)、「女流王位戦第2局」(里見-伊藤)(文:渡部壮大氏)、「竜王戦1組」(羽生-糸谷)(「熱闘!羽生将棋」の中)、「銀河戦本戦Hブロック」(村山-三枚堂)、「竜王戦1組」(松尾-丸山)などがあります。

かりんの振り飛車WATCH」第3回は「三間飛車の手筋」。特に書いてはありませんが、今月の特集に揃えたのかもしれません。最初の問題4問はいずれも実戦から。それゆえ内容も難しくなっています。

世界コンピュータ将棋選手権」の記事があります。5月5日の決勝は私も見ていましたが、そこでの最終戦、ポナンザ-エルモ戦の棋譜もありますからこれは是非並べてみて下さい。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって41回目。今月のテーマは、(1)現代将棋のナゾ、横歩取りの端歩関係、(2)板谷四郎九段の強襲、(3)羽生五段、21分の読み、(4)チェスクロック方式は将棋を変えたか、の四つ。(1)は一つの局面を問うているのではなく、▲7七角型で端はどうなるか?という質問。(2)は昭和27年のA級順位戦で升田幸三八段との一戦、その終盤戦。(3)は昭和63年新人王戦の羽生-木下戦、その終盤。この問題は難しく、その読みはすごいです。(参考棋譜は昭和27年順位戦板谷-升田戦と昭和63年新人王戦の羽生-木下戦)

付録は「内藤國雄の短編詰将棋」。副題に、「全部詰めたら”九段”? 5手〜13手詰39題」とあり、この九段にした理由はちょっと面白いエピソードとともに「はしがき」にあります。またそこには、「面倒な変化もないのに解きにくいと思う短編を集めた」とも書かれています。実際に少しだけ解いて見ました。詰将棋サロンの初級よりは少し易しくその後にある5手7手詰よりやや難しい。そんな感じですので、詰将棋の好きな級位者、嫌いな有段者がじっくり解くのに良いかもしれません。

2017年6月号(5月2日発売)の内容と感想
今月は2016年度が終了したと言うことで、一年を振り返った記事があります。まず、特集1として「熱局プレイバック」でこれは毎年企画されている「プロ棋士が厳選したベストバウト10」。あの名人戦第2局が1位。他に一般のニュースにもなった藤井聡太-加藤一二三戦や女流名人戦第5局、棋王戦など確かにもう一度並べたい熱戦ぞろいです。すべて棋譜もありますので並べてみて下さい。また特集とは別ですが、いつも6月号には、将棋大賞選考会の模様や全棋士の成績、升田幸三賞など、賞や記録も載せられています。

特集のもう一つは、「勝率アップの早指し術」で、こちらは三章立て。
Chapter1は「早指し対談」。山崎八段と糸谷八段が、短い持時間での戦い方を実際の局面をあげて語っています。さらにこの二人で模範対局を行い、その棋譜もあります。一つは2分切れ負けでもう一局は1手10秒です。
Chapter2は講座で「秒読みに負けない早指しの極意」。講師は前期NHK杯準優勝だった佐藤和俊六段。持時間の短い将棋の中から、テーマを選んで終盤戦、どのような考えで指し進めたら良いかを解説しています。
Chapter3は「次の一手タイムトライアル」。比較的やさしいもの11問に難しいもの11問の計22問。タイムトライアルと言うように直感で解答するためか、じっくり考えると分かる問題が多いような気がします。なので、制限時間は書かれていませんが、(考慮時間については)それぞれの棋力に合わせトライしてみて下さい。

巻頭カラーは「
名人戦第1局」(佐藤-稲葉)から始まります。観戦記を書いているのは深浦九段。20代対決と言うことで、21年前の羽生-森内戦についても少しだけ触れています。対局自体は熱戦とはなりませんでしたが、観戦記は面白かったですね。さらに、「藤井聡太四段、炎の七番勝負」の最終局、対羽生戦が藤井四段の自戦記で載っています。その観戦記は中学生とは思えないほどきちんと書かれていました。この一戦は私も最後まで見ていましたが、その時の対局者の読みが分かって、これも良い記事になっています。

他にプロ棋戦は、「振り飛車の証明」の中で、久保九段が王将戦七番勝負を振り返っています。これは第1局からポイントのところを自戦解説で(棋譜は第4、5、6局)。そして「棋王戦第4局」と「第5局」(渡辺-千田)(記:相崎修司氏)があり、「電王戦第1局」(佐藤天彦-PONANZA)も西尾明六段の解説で載っています。こちらも今月の名人戦と一緒で、内容よりは解説が面白かったです。さらに、マイナビ女子オープンも始まり、「マイナビ第1局」(加藤-上田)(文:田名後健吾氏)、「NHK杯決勝」(佐藤康光-佐藤和俊)(文:渡部壮大氏)、「竜王戦1組」(羽生-郷田)(「熱闘!羽生将棋」の中)、「銀河戦本戦Gブロック」(畠山成-高見)、「竜王戦1組」(阿部健-丸山)などがあります。

隔月講座、門倉啓太五段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.9は「向かい飛車」。-飛車先逆襲の成否やいかに-です。5筋を突き合って角道を止めない先手向かい飛車と角道を止める後手向かい飛車に分けて解説されていますが、いずれも居飛車が飛車先を早めに突くことが条件です。昔からある戦型を現代ではどのように指しているか、最新の対局を見ながら解説しています。(参考棋譜は平成26年棋聖戦決勝トーナメント村山-森内戦と平成28年棋聖戦決勝トーナメント鈴木大-郷田戦)

かりんの振り飛車WATCH」第2回は「中飛車を指しこなせ!」です。今までと同じように最初に4問ですが、今回は急に難しくなっているような気がします。級の人は、じっくり時間をかけて考えて見ましょう。

付録は勝又清和六段の「新手年鑑2017年版」。この時期に出る新手の紹介(問題)29問です。はしがきにもあるように、「将棋の常識はどんどん変わっていく」ようですから、今どんな手が出ているか、一通り知っておくのは大切ことです。良いところだけを簡単に知ることが出来るこういう付録も助かりますし面白いですね。

2017年5月号(4月3日発売)の内容と感想
今月の特集も二つ。「第75期順位最終局」と「玉の手筋」です。
その巻頭カラーは名人戦挑戦者になった稲葉八段へのインタビュー記事から。本文にはA級から順に記事と注目対局の棋譜があります。掲載棋譜は、B1(豊島-糸谷戦、阿久津-山崎戦)、B2(先崎-菅井戦、北浜-斎藤慎戦)、C1(横山-青嶋戦、大石-平藤戦)、C2(小林健-近藤誠戦、西尾-脇戦、佐藤紳-門倉戦)。そしてその後に、「昇級者喜びの声」があります。

特集のもう一つは、「ピンチから勝つ!玉の手筋」で、三章立てです。
Chapter1は「受け師が教える玉の妙技18」。受け師ですから当然木村一基八段。インタビュー記事2ページに実戦解説が10ページあり全部で12ページ。実戦解説はまさに玉のさばきで、多くの実戦譜の一局面から凌ぎ方を解説、参考棋譜としても2局、平成26年の順位戦木村-飯塚戦と平成14年の順位戦行方-木村戦があります。
Chapter2は講座で「格言で覚える玉の手筋」。講師は高野智史四段。こちらは有名な玉の格言を分かりやすい実戦的な例で解説しています。Chapter1が有段者向けならこちらは級位者向けといった感じでしょうか。
Chapter3は「玉のシノギ次の一手」。難易度は星2つから3つで問題は11問。すべて王手がかかっている状態でどのように受けるかという問題です。一般的に寄せの問題よりシノギの問題の方が難しいと思われますが、普段から詰将棋をやっている人は常にすべての受けを考えるクセが付いている為、それほど苦にはならないでしょう。

巻頭カラーに「王将戦第6局」(郷田-久保)があります(2ページに写真と棋譜:来月、自戦解説とのこと)。またマイナビ女子オープンで挑戦者になった「上田初美女流三段へのインタビュー記事」もあり、その決定戦(里見戦)の棋譜もあります。
巻頭カラーに4ページ、さらに表紙にも使われているAbemaTVの「藤井聡太四段、炎の七番勝負」。棋譜もあるのかと思いましたら、単に写真による宣伝だけでした。

他にプロ棋戦は、「
棋王戦第3局」(渡辺-千田)(記:大川慎太郎氏)「第2局」は棋譜のみ、「王将戦第5局」(郷田-久保)(文:相崎修司氏)、「女流名人戦第5局」(里見-上田)(文:渡部壮大氏)、「竜王戦1組」(羽生-三浦)(「熱闘!羽生将棋」の中)、「銀河戦本戦Dブロック」(阿部健-小林裕)、「竜王戦1組」(阿久津-屋敷)などがあります。今回も、やはり面白いのは「棋王戦」でした。特に千田六段の考えや勉強法など興味を引く箇所が多く、局面も大差から急接近していく時の心の変化、最終盤に現れた幻の角引きなど棋譜としても面白い所が随所にあります。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって40回目。今月のテーマは、(1)羽生少年、大技を食らう、(2)矢倉早囲い+▲4六銀は成立するか、(3)升田幸三、ラジオ将棋の神技、(4)勝負を動かす世間の風、の四つ。(1)は昭和61年に行われたオールスター勝ち抜き戦予選で羽生-関戦から。終盤の入口で強烈な妙手のある局面。(2)は最近現れてきた矢倉定跡の一局面。それを各プロ棋士はどう見ているか。(3)は昭和27年の升田-原田戦。絶体絶命のピンチから放った升田の妙技。これは難問です。(今回、参考棋譜はなし)

隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.9は「横歩取り▲6八玉型」。-猛威を奮う「勇気流」-です。横歩取り△3三角戦法は、通常▲3四飛の後、▲3六飛と引いて使う方が多いですが、これを引かずに▲6八玉とするのが新しい指し方で佐々木勇気五段が用いて高勝率を誇っているとのこと。今回は、この指し方について。実戦に現れた変化を中心に現在の状況を解説し、今後の研究課題となっている部分は多いものの右桂の活用が早いのでアグレッシブに戦いたい方にはお勧めと言うことです。(参考棋譜は平成28年叡王戦佐々木-伊藤真戦と平成28年王座戦佐々木-岡崎戦)

新連載として「かりんの振り飛車WATCH」が始まりました。もっとも、新連載と言っても今までと大きくは変わっていません。最初に四問の問題が出題され、その解答と解説を見ていくという形式です。ただ、かりんさんが上達したことで、内容もプロが指した振り飛車を取り上げ、今までよりは少し難しくなっています。

付録は宮田敦史六段の「終盤のメカニズム」。はしがきに、受けのテクニックを主体にした終盤力を鍛える手筋集とあり、特集講座である「玉の手筋」の一環としてと書かれています。それほど難しくない問題もありますが、全体としては有段者向け。あの有名な「凌ぎの手筋186」と同じような内容ですので、終盤しっかりと読む力を付けるのに良いでしょう。全部で39問、時間をかけ考えてみて下さい。

2017年4月号(3月3日発売)の内容と感想
今月の特集は二つ。「第75期順位戦ラス前」と「無敵棒銀!」です。
まずは、毎年この時期に取り上げられる「順位戦ラス前」。A級は巻頭カラーに。そして本文にB1からC2までの記事と注目対局の棋譜があります。その掲載棋譜は、B1(久保-丸山戦、郷田-阿久津戦)、B2(菅井-澤田戦、斎藤慎-鈴木大戦)、C1(佐藤秀-大石戦、宮本-横山戦)、C2(門倉-神崎戦、中座-西尾戦、増田-近藤戦)です。

続いて技術的な内容の特集「
四間飛車には無敵棒銀!」。今回棒銀を取り上げたのには、加藤九段の引退が決まり、その関連での特集でもあるようです。ただ棒銀と言えば、ある意味誰もが通った道(級位者の時に、知らずにいっぺんに破られたとか)。それだけに今までの技術論と違い、ちょっと面白い内容かもしれません。
Chapter1は棒銀対談で「加藤棒銀は偉大なり」。対談しているのは、飯塚祐紀七段と高野秀行六段。棒銀についての話の後、それぞれ加藤棒銀の好局ベスト5を上げています。そこに上げた上位の6局の棋譜もありますので並べながら解説を読むことも出来ます。(参考棋譜:昭和62年日本シリーズ大山戦:平成12年A級順位戦中原戦:昭和58年十段リーグ大山戦、昭和51年A級順位戦升田戦:平成3年王位戦リーグ小林健二戦:昭和53年王将戦リーグ大山戦)
Chapter2は「ひふみん、棒銀を語る」。加藤一二三九段へのインタビュー記事で4ページ。質問に対する話ではなく、そのまま加藤九段が4ページ分話をしている感じです。そしてその内容と言えば、(話の内容が正しいかどうかは別にしても)棒銀愛がものすごく出ていて面白かったです。
Chapter3は講座。「攻めて勝つ!棒銀戦法」と題し講師は石田直裕四段。内容は、棒銀の基本的な考え方(一直線に出ていっても成功しない)から、四間飛車対棒銀の本道とも言える定跡を丁寧に解説しています。知らない人は、まずはここからじっくり読んでみて下さい。
Chapter4は「棒銀次の一手」。難易度は星1つから2つで問題は11問。全体的に級位者向けのやさしいものが多いですが、前半は棒銀の中盤における指し方、後半は終盤で、棒銀から生じた局面なのかもしれませんが、直接関係ない箇所もあり知っていると役に立つ手筋の一着です。

巻頭カラーには、「王将戦第4局」(郷田-久保)があります(3ページの写真と簡単な記事と棋譜)。また「3月のライオン」公開直前と言うことで、主演の「神木隆之介さんへのインタビュー記事」もあります。

プロ棋戦は、「王将戦第3局」(郷田-久保)(記:小暮克洋氏)、「
棋王戦第1局」(渡辺-千田)(記:大川慎太郎氏)、「朝日杯決勝」(村山-八代)(文:古川徹雄氏)、「女流名人戦第3局第4局」(里見-上田)(文:渡部壮大氏)(第2局は棋譜のみ)、「銀河戦本戦Fブロック」(千葉-石田直)、「竜王戦1組」(佐藤天-丸山)などがあります。これら記事の中で特に面白かったのは「棋王戦」。元々渡辺竜王の話は分かりやすく面白いですし、個人的に千田六段の考え方にも注視していきたいところに、書いているのは大川氏と言うことで興味深くならない訳はない記事でした。棋王戦は全局大川氏に、もっとページ数を割いて欲しいくらいです。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって39回目。今回から糸谷八段が加わっています(山崎八段が抜け)。今月のテーマは、(1)驚異の新戦法、(2)大山康晴、29歳の新名人、(3)屋敷、18歳の新棋聖、(4)AI新時代、コンピュータの創造力、の四つ。(1)は矢倉の後手急戦が流行していると言うことでそのキッカケを作ったのがテーマ図。飛車先を受けず、左美濃に囲う戦法です。(2)は昭和27年第11期名人戦の木村-大山戦から。終盤、受けの難問です。(3)は平成2年の棋聖戦最終局(中原-屋敷)で必殺の一手。(4)は序盤の創造力でも人間を超えたのか?飛車先交換の利はもうなくなってしまったのかとの問い。(参考棋譜は2つ:第11期名人戦第4局木村-大山戦、第56期棋聖戦第5局屋敷-中原戦)

隔月講座、門倉啓太四段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.8は「石田流」。-先手振り飛車、エースの登場-です。昔からある戦法で奇襲的なイメージもありますが、現在はプロでも広く採用されています。今月号で取り上げた内容は主に三つ。まずは基本の升田式石田流から。次に最新である居飛車左美濃戦について。▲1七桂と跳ねる宮本流について書かれています。三つ目は4手目△1四歩について。いずれも現在どのような考えになっているのか最新の状況が分かります。(参考棋譜は平成26年順位戦宮本-永瀬戦と平成27年竜王戦戸辺-菅井戦)

かりんの将棋部屋」は最終回とありますが、次回から趣向が変わるだけのようです。その今回は「二枚落ち実戦編」。講師である戸辺誠七段との実戦の中から問題として最初に4問出題しています。銀多伝の定跡通りの進行ですが、寄せまで進めていますので、毎回勉強している人には参考になるでしょう。来月からのタイトルは「かりんの振り飛車WATCH」だそうです。

付録は泉正樹八段の「二枚落ち新定跡 居玉突貫棒銀」。はしがきに「約18年ぶり」と出ていました。四枚落ち、角落ち、飛香落ちを書いてから、と言うことらしいですが、本当に久しぶりで時の過ぎるのは早いものです。そしてこれは、二枚落ちにおける「居玉開戦」「突貫棒銀」がテーマ。二枚落ちとは言え、有段者相手には居玉では通用しないような気はしますが(下手が初段くらい)、それより下の上手、つまり初段以下の上手と二枚で指すような機会のある人(4、5級以下)には面白い戦法かもしれません。何にせよ実戦で試して見ることが新たな発見につながります。ポイントを覚えて使って見て下さい。

2017年3月号(2月3日発売)の内容と感想
表紙の写真は藤井四段と加藤九段。これは個人的にですが今一番気になっている棋士は藤井四段と千田六段です。その二人のインタビュー記事があり、さらに詰将棋サロンの年間優秀作品選考会と(あくまで個人的にですが)期待感のある今月号となっています。
しかも特集は表紙に「46ページ大特集講座」「
いま石田流がアツい!」とあるように石田流。これも気になるところでまずはその内容から。
Chapter1は「井出隼平の石田流基本のキ」。これは井出四段の石田流講座。角道を止めないので、常に居飛車から角交換される攻めがあるわけですが、その反撃の仕方を解説しています。また居飛車が穴熊に組んだ場合の石田流からの攻めのコツも解説。基本的な内容ですが、まずはしっかり理解して実戦で試して見て下さい。
Chapter2は「関西発・石田流座談会」。登場しているのは村田五段、西川六段、宮本五段の三人。石田流のイメージから実際の指し方まで話をしており、この中には面白い指し方もあり参考になります。末尾には参考棋譜として、平成27年竜王戦決定1組藤井-丸山戦、平成24年順位戦菅井-斎藤慎戦と平成28年棋王戦予選西川-宮本戦があります。
Chapter3、こちらも対談。「トップ棋士対談」として鈴木大介八段と佐藤康光九段が出ています。こちらの話の方がやや上級者向けと言った感じかもしれません。中に居飛車4手目の選択としてその局数や勝率が出ているのは参考になりますね。他にもアマ有段者が、プロはどう考えているのか知りたいことなどいろいろと話に出てきます。(参考棋譜:平成22年順位戦鈴木大-行方戦:平成19年王将戦リーグ久保-佐藤康戦)
Chapter4は「下町流軽快石田で居飛穴撃破!」という小倉久史七段の講座。題にもあるように居飛穴に対する石田の指し方。ここでは▲7八金とこちらに金を上がり、飛車をさばく方法を解説しています。
Chapter5は「リレー自戦記」として。書いているのは黒沢怜生五段で、取り上げた棋譜は第65期王座戦一次予選、勝又清和六段との一戦。戦型は石田流対左美濃。先手の石田流が作戦勝ちから優勢になっていますので、これも指し方の参考になるでしょう。
Chapter6は「石田流次の一手」。難易度は星1つから2つで問題は11問。それほど難しくなく、いかにも実戦に出てきそうな筋の良い問題、役に立つ問題が揃えてあります。

巻頭カラーのところに、「王将戦第1局」(郷田-久保)(記:大川慎太郎氏)があります。ゴキゲン中飛車対超速の熱戦。私も実況のページを見ていましたが、その時には分からなかった話などもあり面白く読みました。
続いて棋王戦挑戦者になった「
千田翔太六段へのインタビュー」記事(聞き手・文:池田将之氏)。「ソフトでの検証を交えた、彼らしい総括コメントとなった」とあるように、千田六段が本当に話しているのが目に見えるような内容です。これは6ページしかありませんが、ソフトを使った勉強法などもっと知りたいですね。
さらに続いて映画「3月のライオン」についての座談会があります。アニメの実写版と言うことで、将棋指導・監修として撮影に関わった、先崎九段、村中六段、藤森四段が撮影エピソードを交えて見どころを語っています。

プロ棋戦は、他に「竜王戦第7局」(渡辺-丸山)(記:小暮克洋氏)、「女流名人戦第1局」(里見-上田)(文:渡部壮大氏)、「銀河戦本戦Aブロック」(渡辺正-大平)、「王将戦1次予選」(伊藤能-佐藤天)(伊藤六段の追悼文のページ)、「竜王戦2組」(行方-森内)などがあります。

そしてもう一つ、一般のニュースでも話題になった「竜王戦6組」の「
加藤一二三九段-藤井聡太四段戦」も記事になっています(記:鈴木宏彦氏)。私はニコ生でやっていたのを知らなかったので初めて棋譜を見ましたが、これはすごい一局でしたね。この一戦、二人の感想をもっとたくさん聞きたいものです。この後に、「最年長・最年少対談」という二人が話をしている記事もあるのですが、正直私はもっと藤井四段の感想を聞きたいので、このページを使って欲しかったなと思ってしまいました。

隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.8は「角換わり△6二金-△8一飛型」。最近良く見るようになった後手の戦型です。まだ優劣の定まっていない局面も多く、最近の実戦例を解説しています。(参考棋譜:平成28年叡王戦本戦広瀬-千田戦、平成28年順位戦B2村山-飯塚戦)

かりんの将棋部屋」第11回は「二枚落ち[終盤編]」で講師は先月と同じく戸辺誠七段。問題は定跡から少し進んだ局面を載せています。まったく同じ局面というのはなかなか出ませんが、似たような筋は良く出てきます。指す機会のある人は、一緒に考えて見ましょう。

イメージと読みの将棋観2」。新しくなって38回目。今月のテーマは、(1)皇居済寧館の一戦、(2)郷田四段、王位を取る、(3)羽生四段の勝負術、(4)行方四段の鬼勝負、の四つ。(1)は昭和24年に塚田名人と木村前名人の第8期名人戦第5局から。(2)は平成4年の王位戦第6局から。谷川王位に挑戦し奪取したその一戦の終盤戦。(3)は昭和62年全日本プロトーナメントの勝浦九段戦。ギリギリの終盤戦での羽生四段の次の一手を問題に。しかし実戦とその後の検討でさらに驚きの結論になっています。(4)は平成6年第7期竜王戦挑戦者決定戦第1局の終盤戦で相手は羽生五冠。(参考棋譜は3つ:第8期名人戦第5局木村-塚田戦、第33期王位戦第6局郷田-谷川戦、第7期竜王戦挑決第1局羽生-行方戦)

付録は及川拓馬六段の「初段 常識の手筋2」。2とあるように2年前に同じような付録を出されています。今回も前半は1ページに2問、後半は1ページ1問で全部で50問とボリュームたっぷり。難易度もやさしい基本的な問題がほとんどですが、実戦で実際に指せるようになれば初段は近いと言えるでしょう。

2017年2月号(12月29日発売)の内容と感想
特集は今回も技術的な戦法解説。今月取り上げているテーマは「ゴキゲン中飛車でご機嫌!」とあるようにゴキゲン中飛車。その内容は4章に分かれています。
Chapter1は「黒沢怜生のゴキゲン中飛車 基本のキ」。これは黒沢怜生五段がゴキゲン中飛車の基本戦術を解説している講座です。一つの戦法と言っても変化は多岐に渡り、超急戦の変化だけでも一冊になってしまいますから、僅か8ページで多くの変化を載せることは出来ません。しかしここでは、級位者の人向けにゴキゲン中飛車を指す上でのポイントを的確に解説しています。
Chapter2は久保利明九段と戸辺誠七段のスペシャル対談「ゴキゲン中飛車”愛”を語る」です。ゴキゲン中飛車に対する思いの他、主要な居飛車の戦法に対しても二人で見解を述べています。ですからこれを指す有段者にも参考になるでしょう。最後には参考棋譜として2局、平成22年王将戦第6局羽生-久保戦と平成22年棋王戦第5局佐藤康-久保戦もあります。
Chapter3は隔月の講座である「最新定跡探査」振り飛車編としてです。講師は門倉啓太五段、Vol.7「超速▲3七銀戦法」。こちらは超速の最新情報を解説。振り飛車側から見て、△4四歩とする指し方に始まり、△4四銀の対抗形、△3二金や△4二銀としてさばく形などです。まとめとして「一時はゴキゲン中飛車を絶滅危惧種にまで追いやったこの戦法ですが、振り飛車側に次々と新しい指し方が生まれており、逆襲は始まったばかりです。」と述べられています。(参考棋譜:平成28年順位戦B級1組畠山鎮-阿久津戦)
Chapter4は「ゴキゲン中飛車次の一手」。一応難易度のやさしい問題11問と難しい問題11問の計22問という風に分かれてはいますが、数問確認の為解いたところ、それほどやさしい問題も逆に超難問もなく、全体として2、3級から有段者向けと言った感じだと思われます。

巻頭カラーは、「竜王戦第6局」(渡辺-丸山)(記:大川慎太郎氏)から。「今期七段勝負で最も凡戦と思われる」とまで書いていますが、それでも一気に読ませしまうほど面白い記事でした。特に最後、「つぶれ」と思われた局面ですらまだ手があったことなど、将棋の奥深さを伝える記事になっています。

プロ棋戦は、他に「竜王戦第5局」(渡辺-丸山)(記:小暮克洋氏)、「竜王戦第4局」(文:田名後健吾氏)、「王将戦リーグ最終局」(文:鈴木健二氏)(棋譜は三つ、糸谷-渡辺戦、豊島-羽生戦、深浦-久保戦で、その後に久保九段へのインタビュー記事)、さらに「女流王座戦第3局」(加藤-里見)(記:相崎修司氏)、「倉敷藤花戦第2局・第3局」(里見-室谷)(文:渡部壮大氏)、「叡王戦第2局」(佐藤天-千田)(文:渡部壮大氏)、「銀河戦本戦Fブロック」(村中-石田)などがあります。

羽生三冠へのインタビュー」後編です。前回は実戦の解説が多かったのですが、今回の実戦解説は王座戦だけ。それ以外に最新形への思いやコンピュータ将棋、モチベーションなどについても前回より考え方などが多く載っており興味ある記事になっています。さらにその王座戦も初めての糸谷八段とのタイトル戦であるだけに考えていなかった手順など内容の面白さもあります。

リレー自戦記」は、今泉健司四段。取り上げた棋譜は第58期王位戦予選で畠山鎮七段との一戦。これはフリークラス脱出を決めた一局でもあります。そしてその実戦解説の前に2ページですが、プロ棋士になってからの1年7ヶ月のことにも触れられています。その期間の気持ちも、またこの一局、大逆転の将棋も最近記事を見ることが少なかっただけに興味深く読みました。

久々ですね、「イメージと読みの将棋観2」。回数は書いてないのですが、(たぶん)新しくなって37回目。今月のテーマは、(1)花村、60歳の鬼勝負、(2)若き日の郷田新手、(3)大山、渾身の勝負手、(4)60歳のA級復帰、の四つ。(1)は昭和52年に行われた花村元司九段対石田和雄七段の終盤戦。(2)は平成4年の棋聖戦、21歳の羽生棋王と郷田四段の対戦で角換わりの終盤戦。当時定跡と言われた形から郷田新手の出た局面。(3)は第7期王将戦第7局、大山-升田戦の終盤。手順そのものが難解で誰も当たらなかった問題です。(なお、毎回載っていた参考棋譜ですが今回はありません)

かりんの将棋部屋」第10回は「二枚落ち銀多伝「乃木坂46定跡」」で講師は戸辺誠七段。題名が面白かったのでどんな内容だろう?と思いながら読み始めました。これは銀多伝にちょっと工夫を加えたものです。最初の問題に出題されている四問も、その乃木坂46定跡の形ですが、通常の銀多伝の定跡を知っていれば分かる問題とも言えるでしょう。僅かな駒組みの違いでも、「なるほど」と思える工夫。これは私も後で検討してみたいですね。

付録は久保利明九段監修「村山聖の振り飛車」。前回に続き村山聖九段。そして今回は「振り飛車の妙手を厳選」とあります。その問題が全部で35問。最後の方には「村山九段の全公式戦データ」も載っています。

2017年1月号(12月2日発売)の内容と感想
特集は、10月号から続いている技術的な戦法解説です。今月取り上げたテーマは、「ノーマル四間飛車」。プロ将棋では見ることは少ないですがアマチュアの将棋では今でも人気がありますから、この特集はうれしい人が多いでしょう。そしてその内容は4章に分かれています。
Chapter1は「教えて!大介先生」と題して、鈴木大介八段が講師で中村真梨花女流三段を生徒として会話形式で四間飛車を解説していきます。最初の方は級位者向けのやさしい内容もありますが、右四間に対する応手や、並べたい四間飛車の名局3選など有段者にも役立つ内容がたくさんあります。(参考棋譜:平成17年順位戦C級1組渡辺-千葉戦、平成18年順位戦C級1組窪田-渡辺戦、平成17年銀河戦決勝トーナメント櫛田-佐藤康光戦)
Chapter2は石井健太郎四段の「石井流 ノーマル四間の居飛穴退治」という読み切り講座です。ここでは自身の実戦譜から中終盤の戦い方を解説。振り飛車側は常に銀冠からの攻めとなります。(参考棋譜:平成26年順位戦C級2組石井-中座戦、平成28年NHK杯本戦大石-石井戦)
Chapter3は「四間飛車激闘自戦記」。これはリレー自戦記でもあります。登場しているのは窪田義行七段で、取り上げた棋譜は第75期順位戦B級2組の対森下卓九段戦。戦型は藤井システムの出だしでしたが、居飛車もトーチカ囲いにおさまり、結局美濃の振り飛車対居飛車銀冠という形になっています。
Chapter4は「四間飛車次の一手」。難易度のやさしい問題11問と難しい問題11問の計22問。やさしい方は級位者向け、難問の方は有段者向けと言えるでしょう。

巻頭カラーは、今年5つのタイトル戦に出続けた「羽生三冠激闘の軌跡」。ロングインタビューを次号の二回に渡り掲載するようです。内容は、それらタイトル戦の部分図を取り上げ、その読みとその時どのように考えていたかなどを聞いています。
続いて、先月1日に亡くなられた二上九段の写真。こちらは本文に7人の人の追悼文が6ページあり、その中には思い出の棋譜(平成元年オールスター勝ち抜き戦羽生-二上戦)や思い出の詰将棋も出ています。

プロ棋戦は、「竜王戦第3局」(渡辺-丸山)(記:大川慎太郎氏)から。珍しい相穴熊の熱戦でしたが、この終盤を詳しく解説しています。続いて「加古川青流戦」(石川-井出)の三対局。こちらは「関西本部棋士室24時」の特別編として載っています。さらに、「女流王座戦第2局」(加藤-里見)(文:馬上勇人氏)(第1局は棋譜のみ)、「倉敷藤花戦第1局」(里見-室谷)(文:鈴木健二氏)、「銀河戦本戦Eブロック」(門倉-今泉)、「日本シリーズ決勝」(佐藤天-豊島)、「竜王戦昇級決定戦2組」(松尾-飯島)などがあります。

短期連載、「大山将棋 強さの秘密」第4回目であり今回が最終回です。そして今回の題は「生涯現役、晩年の名局」。取り上げた対局は三つですが、どれもすごい。67歳の時のA級順位戦は二転三転で終局は深夜1時39分、手数227手という熱戦。また三局目には最後に指された絶局も紹介しています。(参考棋譜:平成3年A級順位戦大山-青野戦、平成4年日本シリーズ大山-小林健二戦、平成4年棋聖戦2次予選大山-中村修戦)

ドキュメント 藤井聡太四段」という記事があります(文・構成:鈴木宏彦氏)。史上5人目の中学生棋士であり、史上最年少記録も塗り替えた藤井四段。また詰将棋も得意で、詰将棋解答選手権に出てすばらしい成績を上げている。・・・と言うことはいろいろな所で読みましたので私も知っていました。しかし、本人についてそれ以上詳しいことは知りませんでしたので、今回のこの記事、関心を持って面白く読みました。これからどう成長し、どんな成績を上げていくのか。大注目の若手を取り上げた12ページに渡る記事です。

隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.7は「横歩取り△8五飛戦法-復活への課題」。現在△8五飛の出現率は減っている訳ですが、「復活の兆しがないわけではありません」と言うことで、「今年新手が出た形を中心に取り上げて」います。(参考棋譜:平成16年竜王戦第7局森内-渡辺戦、平成13年棋聖戦第4局郷田-羽生戦)

かりんの将棋部屋」第9回は「終盤のテクニック(必至)」で講師は黒沢怜生五段。最初に出されている四問は基本中の基本の必至なのでさすがにやさしすぎるだろうと思ったのですが、本文にあるものは、それを応用した問題で解説しています。この"ちょっとした応用"が、実戦でも使えるようになれば初段と言って良いかもしれません。

付録は森信雄七段監修「村山聖 魂の一手」。通常の付録と同じ形式で、35問の次の一手集。ただ、「順位戦を中心に村山聖九段珠玉の妙手を厳選」しています。さらに昇級した時に将棋世界誌に載せられた「喜びの声」がC1からA級昇級まですべて載せられています。この「昇級者喜びの声」、普段私はそれほどじっくりと読む事はないのですが、改めてこうして読むといろいろ考えさせられることがあります。指し手の問題も難しいですし、特に村山九段の指していた当時を知っている有段者には良い付録です。

2016年12月号(11月2日発売)の内容と感想
今月も特集は、実戦的な技術解説。題は「寝技で勝て!逆転の入玉術」で、その内容は論考、入玉講座、腕だめしと3章に分かれています。
Chapter1は「トップ棋士が考える入玉論」。これは佐藤康光九段がインタビュー形式で入玉について語っているもの。そしてその後に、参考になる棋譜が全部で4つ。普段あまりこうした将棋をまとまって見ることがないだけにいろいろ参考になりそうです。(参考棋譜:昭和60年名人戦第1局谷川-中原戦、平成13年棋聖戦トーナメント行方-佐藤康光戦、平成27年名人戦第5局行方-羽生戦、平成19年竜王戦第5局佐藤康光-渡辺戦)
Chapter2は北島七段の「終盤の切り札!よくわかる入玉テクニック」という講座です。入玉しやすい戦型の話の後に、実戦譜を使った様々な入玉テクニックを紹介しています。
Chapter3は森信雄七段の「入玉の攻防!次の一手」という次の一手問題11問。難易度は初段前後向けと言った感じでしょうが、中には難しいものも混ざっています。

巻頭カラーは、羽生三冠の連続防衛や竜王戦第1局、倉敷藤花戦挑決、女流王将戦などですが、写真だけで内容は本体に。そしてその写真の後に、映画「聖の青春」公開記念特集1として「松山ケンイチ×東出昌大インタビュー記事」があります。そのカラーページが終わった後に、公開記念特集2として「森信雄×大崎善生の対談」があります。

プロ棋戦は、「
竜王戦第1局」(渡辺-丸山)(記:大川慎太郎氏)から。「お世辞にも熱戦と言えるものではなかった。」と堂々と書かれていますが、それでも読むには面白い記事でした。続いて「王座戦第3局」(羽生-糸谷)(文:小暮克洋氏)(第2局は棋譜のみ)、「王位戦第7局」(羽生-木村)(解説:飯島栄治七段、構成:相崎修司氏)、「新人王戦第2局」(増田-石田)(文:鈴木健二氏)(第1局は棋譜のみ)、「竜王戦昇級決定戦6組」(田丸-近藤)(今回が最終回である「盤上盤外一手有情」の中)、「銀河戦本戦Aブロック」(加藤桃子-川上)、さらに最後の方の「熱闘!羽生将棋」の中に二局、「日本シリーズ」(深浦-羽生)と「叡王戦本戦」(羽生-山崎)があります。

隔月講座、門倉啓太四段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.6は「ゴキゲン中飛車1」。今回から2回に渡りゴキゲン中飛車を取り上げると言うことで、今月は丸山ワクチンと▲5八金右超急戦、▲7八金型の居飛車三戦法の解説です。(参考棋譜は平成28年竜王戦2組飯島-広瀬戦と平成27年順位戦広瀬-久保戦)

かりんの将棋部屋」第8回は「さばきの手筋」で講師は広瀬章人八段。今回は「さばき」とあるように問題図も中盤の局面。それだけに今までよりやや難しめかもしれません。

短期連載、「大山将棋 強さの秘密」第3回です。題は大山vs中原 中期の名局。今回も取り上げた対局は三つ。第9期十段戦第4局大山-中原戦(昭和45年)、第12期王位戦第4局大山-中原戦(昭和46年)、第11期十段戦第4局大山-中原戦(昭和47年)。前回と同じ形式で棋譜もあり、この将棋についてここに登場している佐藤天彦名人、行方尚史八段、中田功七段の三人が会話形式で解説しています。どの将棋も名局として取り上げただけのことはあります。是非じっくり並べて鑑賞したいですね。

付録は田丸昇九段の「将棋雑学ゼミナール」。全問が三択形式。テーマは、「棋戦と記録」「棋士の裏話」「将棋の歴史」「将棋と文化」「将棋の雑学」「写真クイズ」の六つ。知らない話も多く、「へー、そうなんだ」と思うような事も多々ありました。こうした面白そうな話をもう少しふくらませて、付録ではなく本体に2ページくらいで載せるのも良いような気がします。

2016年11月号(10月3日発売)の内容と感想
先月は「穴熊」で50ページ大特集でしたが、今月は25ページの特集で、(大会を勝ち抜くための)「超B級戦法」が載せられています。これも面白い企画です。
Chapter1ではその「B級戦法ミニ講座」。それぞれの専門家とも言えるプロ棋士(うち一人アマ)が解説。「カニカニ金戦法」(児玉八段)(←銀ではなく金)、「筋違い角戦法」(武市七段)、「角頭歩戦法」(西川五段)、「きんとうん戦法」(島本五段)、「嬉野流バージョン2」(嬉野アマ)(←嬉野(うれしの)流の最新)の五戦法。一つにつき3ページですからそれほど詳しい変化は載せられていませんが、ポイントは分かりますので実戦で使ってみるのも面白いでしょう。
Chapter2は「魅惑のB級戦法」の題で瀬川五段と今泉四段の対談編。ここでもいろいろと面白い戦法が出てきます。B級戦法と言っても、完全なハメ手(はまらなかったら悪くなる)と違って、相手に正確に受けられても互角くらいになるものも多い。それでいて相手が知らないと優勢になる。このような戦法を指すのも面白いですが、知っていないと指された時に困る、という訳で今月号のこの記事、必読です。

巻頭カラーは、「王位戦第6局」(羽生-木村)(記:鈴木宏彦氏)から。続いて先月から始まった「王座戦第1局」(羽生-糸谷)(記:田名後健吾氏)こちらは本文に棋譜と解説があり、大川慎太郎氏の構成で糸谷八段の自戦解説となっています。
それ以外のプロ棋戦は、「王位戦第5局」(羽生-木村)(文:池田将之氏)(第4局は棋譜のみ)、「竜王戦挑決第3局」(三浦-丸山)(文:渡部壮大氏)(第2局は棋譜含め2ページ)、「銀河戦決勝」(広瀬-藤井)(藤井九段の自戦解説、構成:相崎修司氏)、同じページに(藤井-梶浦戦)(屋敷-広瀬戦)の棋譜もあります。さらにYAMADAチャレンジ杯で2局、「女子将棋YAMADAチャレンジ杯決勝」(渡部-貞升)と「上州YAMADAチャレンジ杯決勝」(千田-船江)(文:浅見将平氏)、さらに「関西将棋夏まつり席上対局」(谷川-郷田)(「関西本部棋士室24時」の中)、「竜王戦昇級者決定戦3組」(野月-鈴木大介)、「東急将棋まつり50回記念特別対局」(郷田-羽生)(「熱闘!羽生将棋」の中)など今月号には多数の棋譜があります。
読んでいて面白かったのは、やはり自戦解説の二つ。特に藤井九段の話は振り飛車党に役に立つ内容も多々ありますので必読です。

リレー自戦記」は、遠山雄亮五段。取り上げた棋譜は第10回朝日杯将棋オープン戦一次予選で梶浦宏孝四段との一戦。モバイル編集長ということで、その話も少しありますが、それ以上にこの対局には驚きの「次の一手」のような大技が出てきます。私はすらすら棋譜を読んでしまいましたが、一手一手盤に並べながら見ていたらもっと驚いたでしょう。是非一手一手考えながら鑑賞してみて下さい。

隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.6は「2016年上半期、居飛車の新手」。今回は趣向を変えて、相居飛車戦における上半期の動きを追っています。最初は矢倉の序盤から(5手目の選択)。続いて角換わり▲9五歩-▲4七金型、横歩取り▲5八玉-▲3八銀型を解説。最後に相掛かり、新しい△7四歩型と、とにかく居飛車党でしたらしっかり覚えておかなければならない現在の状況ばかりです。(参考棋譜は平成28年王位戦リーグ豊島-広瀬戦と平成28年順位戦金井-千田戦)

先月からの短期連載、「大山将棋 強さの秘密」第2回です。題は大山vs升田 名人戦の名局。この題の通り、取り上げている対局は三つ。第12期名人戦第2局大山-升田戦(昭和28年)、第13期名人戦第2局大山-升田戦(昭和29年)、第24期名人戦第5局大山-山田道美戦(昭和40年)。棋譜もあり、この将棋についてここに登場している佐藤天彦名人、行方尚史八段、中田功七段の三人が会話形式で解説しています。最初に棋譜を並べて見て、自分なりに考えた上で本文を読むとよりいっそう役に立ち面白いかもしれません。

かりんの将棋部屋」第7回は「続・囲いの急所」で講師は香川愛生女流三段。続、とあるように今回も先月に引き続き囲いの崩し方。居飛車対振り飛車の穴熊、相振り飛車の穴熊、相振り飛車の高美濃、そして相振り飛車の金無双。今回も実戦にそのまま使える手筋ばかりです。

付録は斎藤慎太郎六段の「対矢倉 左美濃新型急戦」。はしがきに「ここ1年ほどで注目されいる」と書かれている先手矢倉に対する左美濃からの急戦。出だしは(相居飛車の)右四間飛車に似ているところもありますが、銀を腰掛けず、△6五歩▲同歩△7五歩と軽く仕掛けていく戦法。右四間飛車もそうですが、時間の短いアマチュアの将棋では一方的に攻められる展開というのは嫌なものです。そう言う意味でもこの戦法はアマ向きかもしれません(そうとは書いていませんが)。いつものように次の一手形式で39問。ポイントを覚えて実戦に使って見て下さい。

2016年10月号(9月3日発売)の内容と感想
今月は50ページ大特集が組まれています。それは、”勝率が5%アップする”「現代の穴熊戦略」。個人的にもこれは期待を持って本文を読みました。全体は5章に分かれています。
まずChapter1は「穴熊スペシャル対談」として鈴木大介八段と田中寅彦九段が登場。昭和と平成の穴熊の名局を独断でランキングし、それぞれのベスト5を紹介しています。有名な将棋が多いですから、人によってはほとんど知っているということもあるかもしれません。ただ、一位に選ばれたのはどちらも衝撃的な一着の入った将棋です。(参考棋譜は三つ:平成20年順位戦C1広瀬-村山戦:平成22年王位戦挑決広瀬-羽生戦:昭和59年十段戦リーグ福崎-谷川戦)
続いてChapter2は「穴熊の講座」。これが全部で4つ。最初は森下卓九段の「序盤のワンポイントアドバイス」。居飛車と振り飛車、どちらも単純に組むだけではなくその組み方の注意点を解説。級位者だけでなく、初段前後の人にも良く知って置いてもらいたい重要なポイントです。そして二つ目は久保利明九段の「久保流振り穴さばきのコツ」。実戦3局の一局面からそのさばき方を説明しています。三つ目は戸辺誠七段の「戸辺流終盤の攻め方守り方」。こちらは部分図での解説。基本的なことなので級位者向けですが実戦できっちりこのように指せれば有段者とも言えるでしょう。最後の四つ目は所司和晴七段の「地下鉄飛車端攻め一点突破戦法」。奇襲戦法の本などに載っている地下鉄飛車ですが、これを振り飛車穴熊に対して4ページに渡り解説しています。穴熊を指す方も、当然このような攻め筋があることは知っていなければなりません。

続くChapter3は、「リレー自戦記」としてです。青嶋未来五段で、取り上げた棋譜は第29期竜王戦決勝トーナメントの豊島将之七段との一戦。この一戦は実況でもやりましたので私も見ていました。相穴熊戦の激闘です。しかしこうして本人の自戦記を読むと、よりその内容が分かり穴熊を指す人には参考になる記事ですね。
Chapter4は、「最新定跡探査」振り飛車編Vol.5で門倉啓太四段の解説。「四間飛車穴熊-先後による戦略の違い」です。現在良く指されているプロの実戦から詳しく紹介。細かい定跡の違いが分からないと理解できない為有段者向けかもしれませんが、穴熊を指す人には有益な講座です。(参考棋譜は平成23年棋王戦本戦広瀬-糸谷戦と平成27年棋王戦本戦行方-永瀬戦)
Chapter5は、「穴熊流次の一手」問題です。前半の11問は藤森哲也四段出題で、比較的やさしく級位者から初段向け。後半の11問は森信雄七段出題ですから有段者向けで”実戦的なスーパートリック”と言った趣です。
以上が今回の大特集「現代の穴熊戦略」の概要。穴熊党の人はもちろん、穴熊を相手にする人にも読み応え十分の記事になっていると思います。

プロ棋戦は、まず巻頭カラーに「王位戦第3局」(羽生-木村)(記:大川慎太郎氏)があります。続いて「竜王戦挑決第1局」(丸山-三浦)(記:渡部壮大氏)、「棋聖戦第5局」(羽生-永瀬)(記:渡部壮大氏)です。そしてそれ以外の棋譜としては、「順位戦B級1組」(久保-木村)(「盤外盤上一手有情」の中)、「銀河戦決勝トーナメント」(渡辺-横山)、「竜王戦決勝トーナメント」(黒沢-青嶋)(青嶋-中座)などがあります。

9月より王座戦開幕、と言うことで、挑戦者になった「糸谷八段へのインタビュー記事」があります(構成は池田将之氏で、参考棋譜としてこの王座戦挑戦者決定トーナメントの対渡辺戦と対稲葉戦)。さらに続いて「展望座談会」として山崎八段と畠山七段の話もあります(文:諏訪景子氏)。

短期連載として、「大山将棋 強さの秘密」が載せられています。一門の現役棋士が登場し、第1回「将棋には人間のすべてが出る」とありますから、何回か続くのかもしれません。ここに登場しているのが、佐藤天彦名人、行方尚史八段、中田功七段の三人。一門の話の後、有名な高野山の決戦について。最後のあの局面だけでなく、そこに至る過程も波乱だったことが分かり面白いです。そしてその後にも、大山将棋についていろいろ話をしています。その話の中にすべて出ている訳ではありませんが、その大山の指した棋譜が参考棋譜として5局もあり、これも棋譜並べをする人には良いですね。

かりんの将棋部屋」第6回は「囲いの急所」で講師は青野照市九段。今回の問題は囲いの崩し方の手筋。実戦にそのまま使えるものばかりです。

付録は小林健二九段の「立石流四間飛車」。角道オープン、角交換振り飛車の源流である立石流四間飛車について、次の一手形式で39問にして出題しています。この付録の第1問の解説の所に書かれていますが、「驚くべきは、30年以上も前に現在流行している角交換四間飛車をすでに指されていた」とあるのはまさにその通りで改めてすごいな、と思います。

2016年9月号(8月3日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、特集記事にもなっている「頂上対談」、15ページに及ぶ「渡辺明竜王×佐藤天彦名人の対談」です。最初のページに「出会いから青春時代、棋王戦での激突、そして未来の将棋界について、本音で語り合う」と書かれているように、普段あまり知ることのない二人の関係や対戦に対する思いなど、いろいろ興味のある話が載せられています。

プロ棋戦の観戦記はたくさんありました。まず「
棋聖戦第3局」(羽生-永瀬)(解説:藤井猛九段、構成:大川慎太郎氏)から。この記事、対局の解説も面白いのですが、その解説に入る前に書かれている藤井九段の羽生棋聖や永瀬六段への思い、分析がとても面白い。さすが藤井九段という感じで一気に読んでしまいましたね。今月号は、読み切り講座やリレー自戦記も面白かったのですが、個人的にはこの記事が一番でした。続いて「棋聖戦第4局」(羽生-永瀬)(文:池田将之氏)、「王位戦第1局」(羽生-木村)(記:小暮克洋氏)が詳しい観戦記とともに載せられています。
またそれ以外の棋譜としては、「順位戦C級1組」(青嶋-泉)(「盤外盤上一手有情」の中)、「銀河戦本戦Bブロック」(羽生-屋敷)、「明治36年の将棋新手合」(関根金次郎-飯塚力造)(「粋鏡こぼれ話」の中)などがあります。

時々掲載される「リレー自戦記」は、青野照市九段。取り上げた棋譜は第42期棋王戦の予選で永瀬拓矢六段との一戦。40歳も年が違う新鋭との一局について。いろいろな思いのある一局だったのでしょうが、元々青野九段の文章は読みやすく面白いのでこれも現在の状況として興味深く読みました。

イメージと読みの将棋観2」、新しくなって36回目。今月のテーマは、(1)升田幸三の神技、(2)大山康晴、受けの至芸、(3)午前5時54分の勝負手、(4)上手芸は、いまもあるか?の四つ。(1)は昭和33年の名人戦第7局、大山-升田戦の序盤から中盤の箇所での升田自慢の名手。(2)は昭和31年の名人戦第2局、花村-大山の終盤戦。猛烈に攻められ、大山陣に受けがあるか、という局面。(3)は平成20年A級順位戦の佐藤康光-木村の終盤戦で、なんと朝5時54分の局面ということです。(参考棋譜は3つ:第17期名人戦第7局大山-升田戦、第15期名人戦第2局花村-大山戦、第67期A級順位戦佐藤康光-木村戦)

読み切り講座として、黒沢怜生五段の「黒沢流振り飛車のさばき方」があります。自身の棋譜を使い、その局面からどのように指したら良いか、単なる棋譜の解説ではなく、その考え方を分かりやすく書かれています。評判が良ければ連載の可能性もあるのでしょうか?個人的には読みやすいので標準以上の記事だと感じています。ものすごく個性があるとは言えませんが、振り飛車の講座は連載して欲しいですね。(参考棋譜は3つ:平成27年竜王戦6組黒沢-青野戦、平成28年YAMADA杯黒沢-中村亮介戦、平成28年竜王戦5組村田-黒沢戦)

隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.5は「相掛かり-引き飛車棒銀の攻防」。題名の通り相掛かりで先手の棒銀について。後手の△8四飛型における基本的な棒銀の受け方から、山崎八段の新構想や△1四歩の意味、△8五飛型までいくつかの実戦を元に、この戦型のポイントを解説しています。(参考棋譜は平成26年名人戦第4局羽生-森内戦)

かりんの将棋部屋」第5回は「端攻めのポイント応用編」で講師は飯島栄治七段。先月に続き「端攻めのポイント」で今回は「応用編」と書かれていますが、特に難しくなった訳ではなく、続編のような感じです。問題も良く実戦に出てくる基本的なもの。有段者にとってはこうした筋はすべて知っている訳ですが、その上で実戦で使えるかどうかです。級位者の人たちはこのような筋があることを知ることがまず第一。そしてそれを実戦でも使えるようになれば勝率は格段に上がるということでもあります。
また、室谷女流二段との二枚落ちの棋譜もあります。銀多伝で定跡通り、破り方の見本みたいな棋譜ですので実戦で指す機会のある人には参考になるでしょう。

付録は上野裕和五段の「歩の攻め手筋50」。「攻め方がうまくなる!歩の基本テクニック集」とあるように、歩の基本手筋の問題50問です。難易度は初心者向きの基本から最後までやさしい級位者向け。しかしそれを実戦で使えることが大切。体に染みこませて必要な場面で的確に使えるようになれば初段は近いと言えるでしょう。

2016年8月号(7月2日発売)の内容と感想
今月の巻頭カラーは、特集記事でもある「佐藤天彦新名人誕生」。そのロングインタビューです。構成が大川慎太郎氏でしたので、ちょっと変わった切り口を期待してしまいましたが、比較的おとなしめの内容でした。第1局から第5局までのポイントを解説し、その後に「これまでの棋士人生について」の話。その第1局から第3局の棋譜はこの巻頭カラーの中に。その後、本文の中でまず「第5局」(文:田名後健吾氏)の解説があり、さらに今泉健司四段の文章で「第4局」が載せられています。

棋聖戦が始まり、王位戦ももうすぐ始まるため、「
王位戦&棋聖戦展望対談」として深浦康市九段と鈴木大介八段の二人による対談があります。王位戦は木村八段、棋聖戦は永瀬六段の挑戦と言うことで、この二人についてのいろいろな話、興味深い話が多くたいへん面白かったです。

プロ棋戦としては名人戦以外に「棋聖戦第1局」(羽生-永瀬)(文:雲井宏氏)、「女流王位戦第3局」(里見-岩根)(文:下村康史氏)、「マイナビ女子オープン第4局」(加藤-室谷)(文:下村康史氏)、「電王戦第2局」(山崎-PONANZA)(文:田名後健吾氏)、「順位戦B級2組」(青野-森下)(「盤上盤外一手有情」の中)、「銀河戦本戦Gブロック」(野月-丸山)などがあります。

先月からの続き、今回は後編で、「棋士に聞く本音対談 中原誠×渡辺明」。参考棋譜は、全部で5つ(昭和62年名人戦第4局・対米長邦雄、昭和60年名人戦第1局・対谷川浩司、平成15年王位戦予選・対行方尚史、昭和57年名人戦第8局・対加藤一二三、平成20年王将戦2次予選・対木村一基)。棋譜の解説はそれほど多くはないのですが、話の内容は先月に引き続き興味の持てる内容です。

今月号には、全体的にインタビュー等の読み物が多い感じをうけます。既に上記に三つありますが、さらに「関西本部棋士室24時」の中でも、女流2級に昇級した山口絵美菜女流2級と里見咲紀女流2級のインタビュー記事があり、また、インタビューではありませんが、「盤上盤外一手有情」の中では、記録係に関することも触れられています。
さらに、最後の記録のページには、竜王戦決勝トーナメントが始まったということで、出場者の抱負が載っています(その後に、「竜王戦挑戦者予想クイズ」もあります)。

イメージと読みの将棋観2」、新しくなって35回目。今月のテーマは、(1)コンピュータが変えた常識、(2)53歳の升田名人は誕生していたか、(3)鈴木大介-山崎隆之、渾身の終盤戦、(4)タイトル挑戦は人生を変えるか、の四つ。(1)は相矢倉の基本的な形から、以前はダメと言われていた手が復活した局面について。これは矢倉の本道とも言える形。平成25年に復活し、30局以上指されているようです。各棋士たちの勝利イメージ、感想も少しずつ違い、個人的には一番面白い題材でした。(2)は昭和46年、大山-升田の名人戦から。(3)は現代、平成25年順位戦からその終盤戦、詰むや詰まざるやという局面なので難しいです。(参考棋譜は2つ:第30期名人戦第7局升田-大山戦、第72期順位戦B級1組鈴木大介-山崎戦)

隔月講座、門倉啓太四段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.4は「先手中飛車-始まった左穴熊への逆襲」。題は左穴熊とありますが、この戦型の解説はほぼ半分です。そこでは後手の対策(三間飛車)も最新の対局から解説しており、左穴熊側が苦戦しているという風に述べられています。そして、その後半では、先手中飛車に対して居飛車の△5四歩型を解説。こちらも一筋縄ではいかないことから、菅井流▲8八飛の形を解説し、「手探りの部分が多く、お互い工夫の余地のある戦型」と結んでいます。(参考棋譜は2つ:平成27年王位戦予選の今泉-斉藤慎太郎戦と平成26年朝日杯の久保-畠山鎮戦)

かりんの将棋部屋」第4回は「端攻めのポイント」で講師は室谷由紀女流二段。今回、問題の4問は三択ではなくなっています。しかもその分簡単かというとそうでもなく、初心者には難しいかもしれません。ただ、実戦に非常に良く出てくる筋ですので、覚えておけば必ず役に立つでしょう。特に第4問は実戦そのもの。初段位でも見落とすことのある次の一手ですが、これが指せれば実戦がなお面白くなる、そんな一着です。

付録は塚田泰明九段の「塚田流角換わり△6五同桂革命」。「角換わりの後手戦術に新風!」とあるように、角換わり腰掛け銀における後手の攻め方。はしがきに、「ヒントは将棋ソフト」とあり、そこから研究して実戦にぶつけたとのこと。シンプルで、しかも後手でも攻めることが出来るので、角換わりをたまにでも指す人はこの変化について詳しく研究してみるのも面白いかもしれません。

2016年7月号(6月3日発売)の内容と感想
今月号の巻頭カラーは、特集記事にもなっている「棋士に聞く本音対談 中原誠×渡辺明」です。これは自然流と呼ばれる中原十六世名人と渡辺竜王とのスペシャル対談。今回は前編と言うことで、二回に渡って載せられるようですが、なぜこのような対談が組まれたかと言うと、渡辺竜王が現在中原将棋を学んでいるということからだそうです。内容も面白く、当時の有名な棋譜を中心に、渡辺竜王が時々「現代ではこう指す(考える)」というような話も交え、対談が進んで行きます。使われた参考棋譜7局もすべて載せられていますので、その考え方と共にじっくり並べて見ると面白いでしょう。
続いて「名人戦第3局」(羽生-佐藤天)(記:大川慎太郎氏)があります。この記事、仕掛け直後の読みと変化が詳しく書かれていますので、最新横歩取りに興味のある方は必読です。また、終盤の寄せの難しさも実況で見ていた以上に詳しい変化が載せられています。

プロ棋戦としては他に「名人戦第2局」(棋譜を含め4ページ、解説は問答形式で飯島栄治七段)、「マイナビ女子オープン第2局」(加藤-室谷)(文:鈴木健二氏)、「第3局」(文:国沢健一氏)、「女流王位戦第1局」(里見-岩根)(文:池田将之氏)、「岡崎将棋まつり」(佐々木勇気-藤井聡太)(文:鈴木宏彦氏)、「王将戦一次予選」(木村-石井)(「盤上盤外一手有情」の中)などがあります。なお、「岡崎将棋まつり」の藤井奨励会三段は、史上最年少の三段。この一局も「詰めろ逃れの詰めろ」が三度出現するすごい一戦で、「歴史に残る天才対決」と書かれており、一手20秒の超早指し対局ですが、盤に並べて鑑賞したい一局です。

イメージと読みの将棋観2」、新しくなって34回目。今月のテーマは、(1)花村元司、真剣師時代の秘手、(2)花村元司、タイトル戦の秘手、(3)若手をひねるコーヤン流、(4)大山流の豪腕日程、の四つ。(1)は真剣師時代、六枚落ちからのエピソード。(2)は昭和31年、塚田正夫九段戦での寄せの局面。(3)は昨年の順位戦C級2組、永瀬-中田戦。コーヤン流の終盤、居飛車穴熊への端攻めに関して。この棋譜もですが、中に書かれているコメントにもいろいろ面白い内容があります。特にソフトの評価値の話など今回のテーマでは一番面白く読みました。(4)は昭和57年、実際にあった大山十五世名人の対局日程の話。(参考棋譜は2つ:第6期九段戦第1局塚田-花村戦、第74期順位戦C級2組中田-永瀬戦)

永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。最終回だそうです。題は「名人戦で現れた形」として、名人戦第2局の将棋を取り上げ解説しています。ただ後半には、第3回で解説した形にも触れ、その補足もあります。参考棋譜はその部分を踏まえ、1月に行われた順位戦B級1組の谷川-松尾戦から。全6回、最後にまとめの中で、次のように述べられています。「早囲いの▲7八玉型は、意外な堅さを発揮します。▲8八玉型と比べ、玉が戦場に近いというデメリットもありますが、角交換後の打ち込みに強いというメリットもあります。銀を前線に繰り出し、積極的な指し回しができるのも早囲いの魅力のひとつで、自分から動きたい人にはうってつけの戦法でしょう。」

隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.4は「続・角換わり-升田定跡と富岡流」。今年4月に角換わり腰掛け銀の「富岡流」と呼ばれる手順の発見で升田幸三賞を受賞したことに関し、今回は、升田定跡からの歴史を振り返り、最後に富岡流の変化を解説しています。(基本の升田定跡→丸山流▲1二歩〜▲1一角→佐藤流△3五銀〜△2二角→富岡流へ)(参考棋譜は2つ:平成14年棋王戦第4局の羽生-佐藤康戦と平成21年朝日杯の富岡-金井戦)。

かりんの将棋部屋」第3回は「二枚落ち実戦編」で講師は飯塚祐紀七段。最初の問題4問は特に駒落ちということではなく、普通に級位者向けの次の一手や必死問題です。そして後半は飯塚七段との二枚落ち。アマ高段者でも一癖も二癖もある上手だとこんなにきれいに負けてくれないと言うことはありそうですが、指し方の筋は役に立ちますので級位者の人は並べて参考にしてみて下さい。

付録は中田章道七段の「中田章道短編詰将棋集」。今回は良質な詰将棋が表紙を合わせて40題あり、詰将棋を解きたい人にはお得感のある7月号です。7手から9手、11手、13手、15手まで各手数8問ずつ全部で40問。難易度は詰将棋サロン並み(それより筋良くその分やや易しい感じ)ですので、有段者の人でも当分楽しめる付録となっています。

2016年6月号(5月2日発売)の内容と感想
先月から名人戦が始まった為、巻頭カラーのトップには、「名人戦第1局」(羽生-佐藤天)の写真から。観戦記は本体の中央くらいに日浦八段が書いています。その観戦記、もちろん棋譜の解説もありますが、それ以外の話もあり個人的には面白く読みました。続いて「王将戦第1局から第5局総括」(郷田-羽生)(構成:相崎修司氏)があります。これは局面を振り返りながらの郷田王将のインタビュー記事。これも本体に第6局がインタビュー形式の自戦解説として載っています。さらに次の巻頭カラーは、棋王戦防衛を果たした「渡辺明棋王インタビュー」記事、「マイナビ女子オープン第1局」(加藤-室谷)(文:田名後健吾氏)と続いています。

特集として、「
熱局プレイバック」があります。これは2015年度の将棋からプロ棋士が厳選した対局ベスト10です。その一位に選ばれたのは、「棋王戦第4局」(渡辺-佐藤天)。この一戦はその後に観戦記もあります。選ばれた10局の棋譜の他に、番外編2局もあり、どれも面白い名局ばかりですので、是非並べたい対局でもあります(タイトル戦は実況されたものも多い)。またその後に、将棋大賞選考会の模様や全棋士の成績、升田幸三賞など、2015年度が終了したことで賞や記録が載せられています。

プロ棋戦としては上記の「名人戦第1局」「王将戦第6局」「「棋王戦第4局」の他、「竜王戦6組」(田丸-吉本アマ)(盤上盤外一手有情の中)、「竜王戦1組」(久保-屋敷)、「銀河戦本戦Aブロック」(田村-高崎)などがあります。また、「電王戦第1局」(山崎-ポナンザ)(記:下村康史氏)の記事も載っています。

リレー自戦記」は、村山慈明七段。取り上げた棋譜はNHKテレビ将棋トーナメント決勝の千田五段との一戦。これは見ていた人も多いでしょう。しかし放送だけでは分からなかった読みの内容や実際の形勢など、詳しく書かれていますので、「なるほど、そうだったのか」と思うことも多々ありました。

イメージと読みの将棋観2」、先月は休みでしたが、今回で33回目。今月のテーマは、(1)渡辺流の早仕掛けは成立するか、(2)木村義雄八段の大構想、(3)棋士はモテる職業か?(4)谷川、奇跡の逆転勝ち、の四つ。(1)は角換わり腰掛け銀の定跡で、シンプルな▲4五歩の仕掛け。人によって若干見方が違っていました。(2)は昭和12年、木村義雄八段と神田辰之助八段の将棋。誰も当てられなかった木村八段の構想とは?(3)は「昔は関根金次郎名人などモテる棋士がたくさんいた」と言うことでこの質問。(4)は平成3年の王位戦第5局、谷川-中田宏樹戦の終盤戦での大逆転劇。

永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第5回で「手ごわい渡辺新手」。基本図から△8五歩と突いた局面。以前は後手も棒銀に出てくることが多いと言うことですが、△7五歩と突き、▲同歩に△4六角と角をかえ△6四銀と出る変化。これが渡辺新手と言うことで、その解説です。現在は、「後手に風が吹いてきている」という見解をしており、その渡辺新手より前に先手の工夫が必要では、と考えているようです。
隔月講座、門倉啓太四段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.3は「角道オープン四間飛車」。この名称について次のように書かれています。「以前は振り飛車側から早い段階で角交換をすることが多かったため「角交換四間飛車」と呼ばれていましたが、研究が進むにつれて、角交換をするタイミングをずらしたり、角交換せずに飛車を振り直して戦ったりすることが増えてきたため、「角道オープン四間飛車」という呼称にさせていただきます」と。
そしてその「角道オープン四間飛車」の最新の変化を先手と後手で解説しています。相手の有力な対策も載っていますので、居飛車党で指さなくても(相手に指されることを考えると)読んでおく必要がありそうです(参考棋譜は2つ:平成27年棋聖戦2次予選の丸山-藤井戦と平成28年順位戦C1の高野-高崎戦)。

かりんの将棋部屋」第2回は「終盤力をつけよう」。講師は村山慈明七段で、最初のページには三択で問題が四問出ています。まずは自分なりに答えを出してから読み進めてもらいたいと思いますが、初段位ある人なら三択を見ずに正解して欲しいくらいの難易度ですね。

付録は勝又清和六段の「新手年鑑2015」。毎年「新手ポカ妙手」を出していましたが、今回は新手のみでまとめたということです。中を見てみると、居飛車振り飛車の対抗形が多いですので、アマチュア向きと言えるかもしれません。解説も分かりやすいですし、後で私もしっかり読んで実戦に使おうかと思ってます。

2016年5月号(4月2日発売)の内容と感想
今月は、3月で順位戦がすべて終了したということもあり、特集は「第74期順位戦最終局」。そして巻頭カラーには、その順位戦を総括、名人戦の展望も兼ねた「橋本×阿久津対談」が組まれています。この対談、8年前にも行われ、過激な発言で話題を呼んだとありますが、今回もなかなかはっきりとものを言っており面白い記事になっています。特に天彦将棋の特徴をつかんで話していることや、橋本八段の名人戦予想は「奪取!」とはっきり言っているところなど(ちなみに私の予想は希望も含めて4-3で防衛です)。また先月と同じく棋譜もたくさんありますから並べて勉強するにも良さそうです。その載せられている参考棋譜は、A級で5局(森内-佐藤天戦、深浦-佐藤天戦、佐藤康-深浦戦、屋敷-広瀬戦、郷田-行方戦)、B1では橋本-畠山鎮戦と昇級した「稲葉八段の自戦記」で畠山鎮-稲葉戦があります。B2は糸谷-豊川戦、阿部隆-澤田戦、飯島-中川戦、C1では浦野-中村太地戦、斎藤慎太郎-片上戦、北島-富岡戦が、C2は「盤上盤外一手有情」の中で取り上げられ、永瀬-藤森戦が載っています。そしてそれらの後に、いつも通り「昇級者喜びの声」があります。

プロ棋戦としては「
王将戦第4局」(郷田-羽生)(解説は深浦康市九段で、自身の感想も入れ、角換わりを分かりやすく書いています。)と「第5局」(棋譜を含め2ページ)。(王将戦第6局は次号ということですが、3月19日に終わっているのにこれで間に合わないのですね)。
他に、「棋王戦第3局」(渡辺-佐藤天)(記:田名後健吾氏)、(「第2局」は棋譜のみ)、「女流名人戦第5局」(里見-清水)(文:渡辺大輔氏)、(「第4局」は棋譜のみ)、「第1回湯原あったまるオープン戦決勝」(室田伊緒-室谷由紀)(写真と記事で4ページ:渡辺大輔氏)、「第9回朝日杯将棋オープン戦準決勝・決勝」(棋譜は村山-羽生戦、森内-戸辺戦、森内-羽生戦)(記事は棋譜を含め6ページで文:相崎修司氏)などがあります。

巻頭カラー3ページを含め7ページに渡ってマイナビ女子オープンの挑戦者になった、「室谷由紀女流二段のインタビュー」記事があります。そしてその中には、挑戦者決定戦でもある室谷-西山戦の棋譜も。また、続く「リレー自戦記」も室谷女流二段で、棋譜は準決勝の清水女流六段との一戦。戦型は後手の角道を開けた四間飛車に先手は中央位取りの趣向。後手が序盤から動いて手将棋となった将棋です。この実況は私も見ていましたが、室谷女流二段の快勝譜。今回これだけ取り上げているなら、表紙にも使ったら良いのにと思いましたね。

短期講座の最終回、「相振り飛車の可能性」。今月は「藤井システムとわたし」と言うことで、藤井システムについて、杉本七段の考え方と共に様々な形のポイントを分かりやすく解説しています。現在の藤井システムがどういう状況にあるのか、振り飛車で指す人はもちろん、居飛車穴熊を指す人にも知っていて損のない講座です。(参考棋譜として平成20年竜王戦の杉本-羽生戦、平成27年竜王戦の西尾-杉本戦、平成27年NHK杯の斎藤慎-杉本戦の3局)

隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」は、居飛車編Vol.3「角換わり-後手、端歩を手抜く先攻策」。今回は、角換わり腰掛け銀の同型から。最近はやりだした後手が9筋を受けずに△6五歩と先攻する形です。そしてその形が先手不満として▲3七桂のかわりに▲9五歩と端を突き越す形、さらに先手番での応用、と最新の変化を解説。こちらも指す人には必読の講座です(参考棋譜は2つ:平成27年日本シリーズの三浦-深浦戦と平成28年王将戦第2局の羽生-郷田戦)。

先月、「かりんの将棋上り坂↑」が最終回と出ていましたのでまったく出なくなるのかと思っていましたら、今月から新連載として「かりんの将棋部屋」が始まりました。内容は、三択になっている次の一手問題をかりんさんが解いていき、その解説をすると言うもの。難易度は級位者向けのやさしいものからやや読みを入れないといけないものまで。記事は気楽に読める会話形式ですが、かりんさんの答えの側に「正解」まであると読者が解答を考える前に見えてしまいますね。解答だけは最後に持ってきて欲しいです。でもこれからの進行には期待しましょう。

「第58回奨励会三段リーグ戦」が終了し、その表の後に、3人の「四段昇段の記」があります。

付録は杉本昌隆七段の「相振り飛車 常識の手筋」。「初段を目指す相振り党必読の一冊!使える手筋50題」とあるように、大部分は部分図で基本的な手筋を取り上げて問題にしています。相振りを指すと必ずと言って良いほど出てくる筋ですので、級位者はじっくり考えて、有段者はひと目で指せるように50問に挑戦してみて下さい。

2016年4月号(3月3日発売)の内容と感想
今月号の特集は「第74期順位戦ラス前」。ネットを見ていると最新結果を知ってしまうため、どうしてもこうした記事への興味は低くなってしまいますが、雑誌だけしか情報のない人や、どういう状況だったのか後からでも知りたい人には分かりやすい記事になっています。そして棋譜がたくさん載っているのもうれしい。特に選び抜かれた棋譜だけに並べて勉強するには最適でしょう。その載せられている参考棋譜としては、B1で三浦-村山戦(盤上盤外一手有情の中)、B2で北浜-阿部戦、中田宏樹-糸谷戦、田村-野月戦、青野-飯島戦、藤井-鈴木大介戦、C1では富岡-斎藤慎太郎戦、平藤-佐々木勇気戦、中村太地-小林裕士戦、C2で増田-宮本戦、青嶋-石田直裕戦、八代-梶浦戦、及川-佐藤和俊戦などです。

巻頭カラー1ページ目から「
王将戦第3局」(郷田-羽生)(記:大川慎太郎氏)があります。この将棋は、相掛かり戦で序盤から長考の続いた難しい将棋でしたが、その説明しづらい対局のポイントを分かりやすく解説しています。そして巻頭カラー後半には「棋士に聞く本音対談」があります。こちらには、村山慈明七段と戸辺誠六段が登場。渡辺竜王、佐藤天彦八段と仲の良い四人組として出会いから、それぞれ対戦した将棋の内容について話され、最後には棋譜も3局あります(平成19年順位戦・村山-戸辺戦、平成25年順位戦・村山-戸辺戦、平成26年順位戦・佐藤天-村山戦)。

プロ棋戦としては「棋王戦第1局」(渡辺-佐藤天)(記:津江章二氏)、「王将戦第2局」(郷田-羽生)(棋譜を含め2ページ)、「女流名人戦第3局」(里見-清水)(記:小暮克洋氏)、「第2局」は棋譜を含め2ページ、などです。

リレー自戦記」は、八代弥五段。取り上げた棋譜は王位戦予選準決勝の佐々木勇気五段との一戦。戦型は角換わり腰掛け銀。実戦の対局中の読みや変化など丁寧に解説されている他、プロになって3年半と言うことで、心境なども綴っています。

先月で終わりかと思っていた「相振り飛車の可能性」。今月は「定跡のフロンティアに迫る」としてまだ続いていました(来月が最終回とのこと)。今回の内容は、相四間飛車の考え方と杉本七段の実戦講義。定跡は、角道を止めた状態での相四間飛車と角交換型四間の相振り。実戦は2局あり、一つ目は平成9年の全日プロ、杉本-桐山戦で先手向かい飛車対後手四間飛車。二局目は平成27年の棋王戦予選の杉本-香川女流王将戦。こちらは相三間飛車からお互い向かい飛車に振り直す将棋でした。

隔月講座である門倉啓太四段の「最新定跡探査」は、振り飛車編Vol.2「続・藤井システム-攻撃的な先手番」。2ヶ月前の後手番の藤井システムでも取り上げたように、今回も最新のポイントを上げています。それが、序盤で藤井システムに組むまでの問題。そして本題となる居飛穴を目指す後手に対する先手藤井システムの指し方。最新の棋譜を題材に詳しく解説しています(参考棋譜は2つ:平成27年王将リーグ戦の久保-渡辺戦と平成25年順位戦の窪田-森下戦)。
永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第4回で「早い▲6八玉作戦」。今回最初は現在続いている王将戦の第1局を取り上げています。その後、後手からの急戦対策。さらに1月の行方-石井戦を参考にした指し方も。最後の参考棋譜は平成元年のNHK杯、桜井-羽生戦。これは棋譜もありますが、後手の羽生五段(当時)の急戦がうまくいった例です。

イメージと読みの将棋観2」、新しくなって32回目。今月のテーマは、(1)角換わり腰掛け銀、後手先攻、(2)「神田君、時間だよ!」、(3)若き日の羽生名人、(4)叡王とコンピュータの対決、の四つ。(1)は同型角換わり腰掛け銀から9筋を受けずに△6五歩と先攻する将棋。その仕掛けをどう見るかと言うもの。(2)は昭和17年の第3期名人戦。対局者は木村義雄名人対神田辰之助八段。いろいろな本で紹介されている逸話の中の言葉「神田君、時間だよ!」の将棋です。(3)は平成3年当時の羽生棋王と先崎五段のオールスター勝ち抜き戦。(4)はこれから対戦する注目の電王戦の話です。
このテーマを見た時、テーマ(4)が一番面白そうでしたので最初に読んだのですが、本人がいることもあってか皆無難なことしか話していません。今回の四つのテーマで意外に面白かったのがテーマ(1)。後手の先攻について、人により十分にあり得ると思う人もいれば、後手が無理をしていると考える人もいました。今後、この形がどういう結論になるのか気に掛けていたいです。

かりんの将棋上り坂↑」は今回が最終回とのこと。中川大輔八段との四枚落ちを実際に指した将棋です。定跡から外れた後すばらしい構想力を見せ、寄せちょっと前にややぬるかった手はあったものの全体としては良く指すことができたと思います。と言うことで、「1級認定」となりました。

付録は川上猛六段の「囲いの周辺手筋」。「攻め方、受け方。実戦で差がつく39のハイテクニック」とあり、終盤の寄せや受けの問題集です。難易度は、非常に良く出てくる手筋ですので級位者向け。ですが、形の僅かな違いもしっかり読んで正解するには有段の力が必要です。したがって、級位者から初二段クラスまで、かなり役に立つ付録と言って良いでしょう。実戦で使えるように、何度も見てしっかり覚えて下さい。

2016年3月号(2月3日発売)の内容と感想
今月号の特集は「叡王への軌跡」です。これは第1期叡王に輝いた山崎隆之八段の自戦解説で、決勝の2局を含め、全部で4局取り上げられています。私自身は一局も生では見ていないのですが、それでもこの記事は一番面白く読みました。それだけ指した本人の考えや心の動きが良く書かれていて引き込まれます。一番ページ数の多い決勝第2局で6ページ、それ以外は5ページしかないのがちょっともったいないというくらい面白い記事でした。(棋譜は、山崎-青嶋戦、村山-山崎戦と決勝の2局である山崎-郷田戦)

巻頭カラーには、棋王戦の挑戦者になった「佐藤天彦八段へのインタビュー」記事が載せられています。また、「同姓同名対談」として中村太地六段と、ヴァイオリニストの中村太一(だいち)さんの対談があります。芸術家の話とかは、意識的に読んだり聞いたりしない限りなかなか普段このような話を聞く機会はありません。「へぇー、そうなんだ!」というような話がいくつもあり普通に面白かったです。

プロ棋戦としては「王将戦第1局」(郷田-羽生)(文:鈴木健二氏)、「女流名人戦第1局」(里見-清水)(文:渡辺大輔氏)、「女流王座戦第5局6局」(加藤-伊藤)(自戦記:加藤桃子女流王座)の他、「盤上盤外一手有情」の中にある竜王戦6組上野-藤本アマ戦などです。

特別講座として、「
佐藤天彦の積み重ねの逆転術」があります。棋王戦の挑戦者にもなり、最近勝ちまくっている佐藤八段の逆転した将棋を題材にそのポイントを本人が解説した面白い講座です。取り上げた棋譜は全部で4つ。A級順位戦の対渡辺戦、NHK杯の対稲葉戦、朝日杯の対田村戦、棋聖戦の対佐々木慎戦。この中でNHK杯の将棋は私も見ていましたし、「受けの手筋」でも取り上げていますが、その時の考え方が詳しく載っているのには驚きました。順位戦や朝日杯でしたらこれも見ていた人も多いでしょう。内容は、相手もプロを終盤で逆転するのですから簡単ではないですが、考え方は大変役に立ちます。有段者なら是非読んでおきたい記事です。

先月からの短期講座「相振り飛車の可能性」。今月は上級編です。内容は大きく三つ。まずは「後手向かい飛車は苦戦」であるということ。その理由を最新の菅井流速攻も含め解説しています。次に「相振り美濃囲いのコツ」を述べ、その後に後手はどうしたら良いかの「有力な相三間飛車」の解説です。特にこの相三間に対する解説が最新研究も含め一番多くさかれており、相振り飛車を指す人には必読でしょう。

リレー自戦記」は、瀬川晶司五段。取り上げた棋譜は王位戦予選決勝の阿部光瑠六段との一戦。戦型は横歩取り△3三角戦法(先手が瀬川)だが、序盤から光瑠流とも言える一着が出てリードを許してしまいます。しかしその後開き直り逆転。その辺りの心情が細かく書かれています。

永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第3回で「基本図からの変化」。今回は▲8八玉と囲う前の早い▲4六銀の変化についてが一つ。さらに▲6八玉させ動かす前に▲3五歩と突いて動く形と、とにかくこの早囲いも日々新しい形が出てきていますので、その最新形についての解説です。(参考棋譜はA級順位戦森内-渡辺戦)
隔月講座である金井恒太五段の「最新定跡探査」は、居飛車編Vol.2「横歩取り-△2四飛ぶつけの成否」。最近、この筋を外して横歩は考えられないというくらい良く出るようになった△2四飛のぶつけ。これをこの後の様々な変化を実戦での進行を取り上げ詳しく検証しています。(参考棋譜は3つ:竜王戦2組渡辺-木村戦、王将戦予選松尾-行方戦、王位戦リーグ菅井-松尾戦)

イメージと読みの将棋観2」、新しくなって31回目。今月のテーマは、(1)神戸に天才少年現る、(2)定山渓の名局、(3)土井、木見、11日間の激闘、(4)あなたは11日間対局ができるかの四つ。(1)は昭和46年、小学3年の谷川少年と内藤八段(当時)の二枚落ちの終盤。(2)は昭和15年、土居市太郎八段と木村名人との第2期名人戦。(3)は大正9年に行われた土居八段と木見金治郎七段の終盤戦。そしてこの一戦が11日間もかかったということで、次の(4)の質問に続いています。

かりんの将棋上り坂↑」vol.14で「対四枚落ち・四間飛車6筋対抗型」。先月と同じく四枚落ちでの四間飛車ですが、今回は上手が6筋の位を取らせない指し方をしてきた時の対処法です。

今月号には、「詰将棋サロン」の後ろに、「2015詰将棋サロン年間優秀作品選考会」が載っています。後で詳しく読んで「ミニ感想」に追記する予定です。

付録は武市三郎七段の「初段 1手3手必至」。問題数は1手必至20問、3手必至30問。なぜ「初段」と書かれているのか分かりませんが、「初段になる為の」というより、「初段の人がより上を目指す為に」という感じがする難易度です。つまり、ちょっと難しいのでじっくり取り組んでみて下さい。

2016年2月号(12月29日発売)の内容と感想
今月号には特集として「村山聖の追憶」があります。巻頭カラーの写真から始まり、村山将棋に対する羽生名人と谷川九段の対談。そしてその二人による実戦譜の解説と感想がありその棋譜は7つ。その後には「盤上盤外一手有情」の中で田丸九段が村山九段のエピソードについて語っています(棋譜も一つ)。さらにその後ろに森信雄七段へのインタビューもあります。どの記事も面白く、一気に読んでしまいましたが、なぜ今「村山聖」なのかと言うと、「聖の青春」の映画化が決まったということからです。1998年に29歳の若さで他界した悲運の天才棋士、没後17年ですから若い人はほとんど知らないことになる訳ですが、そうした人にも面白い記事になっているのでは、と思います。

竜王戦が終了した為、「七番勝負総括インタビュー」が載せられています。構成は相崎修司氏で渡辺明竜王の自戦解説。1局目から4局目までは簡単な解説、感想で第5局だけ6ページと詳しく書かれています。なお、掲載されている棋譜は第4局と第5局です。

プロ棋戦としては「叡王戦決勝三番勝負第1局」(山崎-郷田)(文:鈴木健二氏)、「女流王座戦第3局」(加藤-伊藤)(文:池田将之氏)(この将棋は持将棋でしたが7ページの解説)、「第4局」は巻頭カラーに棋譜を含め2ページのみ。「倉敷藤花戦第2局」(甲斐-里見)(文:渡辺大輔氏)、「日本シリーズ決勝」(三浦-深浦)(文:小野寺隼氏)、「王将戦挑戦者決定リーグ戦」(文:鈴木健二氏)があり、この王将リーグ戦は挑決の羽生-久保戦の他、最終局3局も棋譜があります。

リレー自戦記」が帰ってきました。1回目の今回は、佐藤康光九段。取り上げた棋譜は王将戦挑戦者決定リーグ6回戦の深浦九段との一戦。角交換向かい飛車で、序盤は定跡形でしたが、駒組み途中の平凡とも思える一手を咎めに行き、まさに康光vs深浦という将棋そのものでした。将棋の内容もそれ以外にちょこちょこ触れられている話も面白く、再開一発目は大成功でしょう。

連載されている定跡講座の前に、短期講座が載っていました。「相振り飛車の可能性」という題で講師は杉本昌隆七段です。今回は基本編で来月は上級編と言うことですから、二回限定なのかもしれません。その基本編、相振り序盤の△3六歩問題からちょっとしたハメ手、矢倉拒否の構え、金無双のコツなど、基本とは言え大切なポイントを分かりやすく解説しています。

永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第2回で「後手急戦に気をつけろ!」です。早囲いを目指す直前の▲3七銀に対する△4四歩。以下▲6八玉に△7五歩の急戦。この解説が一つ。さらに△7四歩を突かず、早めに△8五歩を決め、▲6八玉と上がった瞬間、△8六歩▲同歩△同角の強襲。今回はこの二つの変化を解説しています。
隔月講座である門倉啓太四段の「最新定跡探査」で、振り飛車編Vol.1「藤井システム-再流行の予感」。藤井システムの最新形を2回に渡って見ていくと言うことで、今回は後手藤井システム。居飛車側は、目指すは穴熊ですが、もちろん振り飛車の陣形によっては急戦も視野に入れます。その急戦での最新の変化や、穴熊に囲う瞬間に振り飛車から動く変化、いつどの将棋でこれが指されたかまで載せながら最新の研究と見解を載せています。知らない人にはやや難しいかと思いますが、藤井システムを指す人や振り飛車には居飛車穴熊としている人には現在の状況が良く分かりたいへん役に立つ講座となっています。

かりんの将棋上り坂↑」vol.13で「対四枚落ち・四間飛車6筋位取り型」。今回は、実戦で四枚落ちを勉強ということですが実際に指した棋譜を使っているのではなく、最も自然に組んだ定跡と言っても良いような形からの破り方と寄せ方の練習です。四枚落ちならではの、8、9筋への殺到(下手側から見て)。使える手筋が分かりやすく書かれていますので、級位者の人必読です。

付録は編集部編「現役棋士データブック2016」の(下)。今月は「た行」から「わ行」まで。先月の後半部分で、同じく一人一人について過去4年のデータの他、プロフィールやエピソードなどが載せられています。

2016年1月号(12月3日発売)の内容と感想
巻頭カラーは主に三つ。一つは「羽生名人と書家の吉川壽一氏の対談」。二つ目は「青野九段と薬局会長である渥美雅之氏の対談」。そして三つ目は「竜王戦第3局」(糸谷-渡辺)(記:田名後健吾氏)です。

今月号から巻頭にある「
懸賞詰将棋」の出題者が変わりました。先月には谷川九段が降りることが出ていましたので、誰になるのか楽しみにしていましたら、若島正氏でした。プロ棋士でこそないですが、詰将棋を作るのはもちろん解くのも、さらに指し将棋も強い天才肌の人。詰将棋界の第一人者と言って良く、私はパズルのような詰将棋を作るというイメージを持っています。そして今回、最初の一問はまさにパズル的。簡素で、解いて見たいと思わせる配置、その中に小技を織り交ぜ解後感抜群。手数はちょっと長いですが、難易度は詰将棋サロンの中間くらい。今までの谷川九段の詰将棋もすばらしいものは多かったのですが、ひと目見て後回しにしていたのを、今度はまず最初にここから読む事になりそうです。

プロ棋戦としては「竜王戦第3局」の他に、村山慈明七段の解説で「
竜王戦第2局」(糸谷-渡辺)が、佐藤天彦八段の自戦解説で「王座戦第5局」(羽生-佐藤天)があります。村山七段の解説は序盤講座的な内容も含まれており勉強になります。また自戦解説はやはり実際の対局者がどのような読みをしていたかを正確に知ることが出来、こちらも面白い記事で両方共一気に読んでしまいました。
棋譜は他に、「女流王座戦第2局」(加藤-伊藤)(文:馬上勇人氏)、「第1局」は棋譜のみ。「倉敷藤花戦第1局」(甲斐-里見)(文:一瀬浩司氏)と、「加古川清流戦第3局」(増田-稲葉アマ)(文:雲井宏氏)、「第1局」と「第2局」は棋譜のみ。「新人王戦第3局」(菅井-大橋)(記:池田将之氏)など。さらに「盤上盤外一手有情」の中に「第28期竜王戦昇級者決定戦3組」(阿部健-佐藤紳)などもあり、今月号は棋譜がたくさんです。

今月から定跡講座が二つ連載され始めました。その一つ目が、金井恒太五段の「最新定跡探査」で、今月号は居飛車編Vol.1「矢倉-見直された△4五歩」です。居飛車編と振り飛車編が交互に掲載されるようですので隔月での連載。そして「公式戦での実戦をもとに最新定跡を追いかけていくという趣旨」な為、内容的にはやや難しいかもしれませんが、プロ将棋を良く見る人にはこの戦型が出てきた時に理解しやすく役立ちそうです。
そしてもう一つの講座が、永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第1回目の今回は「早囲いは先手矢倉の新エース」として注目され始めた理由からその基本的な駒組み、ポイントを解説しています。こちらは、実戦で指してみたい人への講座で特に初段前後の人達にちょうど良さそうです。

イメージと読みの将棋観2」、新しくなって30回目。今月のテーマは、(1)馬対抗の向かい飛車、(2)お前らには指せん手や、(3)石田和雄、大感涙の即詰み手順、(4)トップ棋士との相談将棋の四つ。(1)は馬を作り合う乱戦風向かい飛車。王位戦挑戦者決定戦、菅井-広瀬戦で有名になった局面。(2)は昭和14年、高島-升田の香落ち戦。升田が指した意表の一着について考えて見て下さい。(3)は昭和45年の石田-中原戦。両者30秒の終盤戦の中の詰み。実戦中ならプロでも見逃す難解さで、詰むと分かっていても詰ませられれば有段者です。(4)は昔あった相談将棋に関連して、羽生名人と若手六段3人の相談将棋ならどっちが勝つでしょう?と言うもの。テーマ1では意見にあまり差はなく、テーマ2の形勢判断が人によって違うのが驚きでした。

かりんの将棋上り坂↑」vol.12で「端の攻め方、守り方」です。先日の実戦に現れた端攻めからその基本の受けや攻め方など。級位者には即、役に立つ講座内容になっています。

付録は編集部編「現役棋士データブック2016」。(上)ということですから、二回又は三回に分けての付録のようです。一人一人について、過去4年のデータの他、プロフィールやエピソードなども載せられています。

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