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NHK杯に見る受けの手筋

(2011年8月8日出題)

第311問(2011年8月7日 豊島六段-渡辺竜王戦)
(問311-1)
先手豊島六段、後手渡辺竜王で戦型は角換わり腰掛け銀。両者、研究のように指し手が早く、駒がぶつかるとあっと言う間に下図のようになった。今打った▲7七角が玉をにらんだ遠見の角で味の良い一手。次に▲6五銀直などの攻めがあり、この角の筋を簡単には止められないように見える。ここで指された後手渡辺竜王のうまい凌ぎの手順は?五手一組で考え五手先まで。

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問311-2)
4八の金を見捨てて▲6九飛から飛車を成り込んだ手順がすごかった中盤。そして終盤に入り、今△9七歩成と端の歩を成ったところ。このような局面なることは良くあるが、ここではどの駒で取るのが良いか。先手豊島六段の指した一手は?

(難易度・・・



(これより下に解答)

(問311-1解答)「駒の損得より玉の安定度」
ここで渡辺竜王の指した一手は△2五銀。以下▲同飛△2四歩▲2九飛△3三金右と進んだ。角筋に対し、よく△1二玉とかわして受けることも多いが、ここでは▲1五歩△同歩と味を付けられ▲6五銀直と攻められると危険だ。
そこで、銀と桂の駒損になるが、△2五銀と桂を取ってしまうのが分かりやすい。また、最後の△3三金右も味の良い手で将来の▲4四歩と言った手を消して陣形がしっかりしている。

また、駒損と言っても、このような陣形では、桂は攻めに使えることも多く、すぐに相手の銀と交換になる可能性もあるので、取り返しのつかない銀桂交換とは違う。
本譜は、この後△4七歩成に▲6九飛と回った手が好手で、飛車を成りこんで先手が主導権を取ったように見えた。


(問311-2解答)「端の歩成りを桂で取る形」
△9七歩成を香で取ると、最後に桂か玉で取らざるを得なくなり、危険だ。このような局面では、まず最初に桂で取ることが多い。これに対し、本譜△9六歩だが、▲9八歩と受けて、桂損にはなるが、端は破られないでしっかりしている。
なお、端を破ろうと思えば、△9六歩では、△9八歩と叩き▲同香△9六歩とすれば▲9八歩とは受けられない。ただし、歩の枚数が問題で、歩切れになる場合は、それで良いとも限らない。

実戦は難しい戦いが続いた。先手が良さそうにも思えたが、角を見捨てて銀をかけた手が勝負手となり、攻守逆転。最後は後手の攻めがつながるか切れるかという際どい勝負になったが、細い攻めをつなげることにかけては棋界一の竜王がその才能を遺憾なく発揮し先手玉を寄せきることに成功した。
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