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NHK杯に見る受けの手筋

(2012年3月19日出題)

第341問(2012年3月18日 羽生NHK杯選手権者-渡辺竜王戦)
(問341-1)
今年度の決勝、先手羽生NHK杯選手権者対後手渡辺竜王の戦型は、なんと昨年の準決勝とまったく同じ手順の相矢倉で進んだ。終盤の入り口80手まで同一で、81手目に羽生NHK杯が手を変えて未知の局面へと入っていった。
下図はその数手後の局面。▲8一馬と桂を補充した所で、後手の指し手が難しい。明確に何かを受けなければならないという局面ではないが、先手からの攻めを緩和させた後手渡辺竜王の次の一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問341-2)
最終盤、後手玉に必死をかけ、先手玉が詰むかどうかというところ。今、△8一香と下段から香を打たれた。全て読み切るのは至難の業だが、このような王手に対しては、詰みづらくする受けの手筋がある。先手、羽生NHK杯選手権者の次の三手一組の手順は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問341-1解答)「攻めを催促させる受け」
先手玉は固いので、▲5四馬や▲9一馬〜▲6四馬など少しゆるめた攻めが間に合う形だ。ここは本来なら3四の銀は逃げたいが、香を拾われて攻められるとその一手の価値があるかどうか疑わしい。そこで渡辺竜王が打った△4五歩が銀取りを催促する手で感心させられる一手だった。▲3四桂△同龍となった形は駒損とは言え、後手玉も固く、△8六歩から攻め合いに出て盛り返したかに見えた。

(問341-2解答)「中合いの凌ぎ」
「香は下段から打て」という格言があるが、それは上に行くほど香という駒は弱くなるからだ。つまり逆に言えば、受ける場合にはこの下段にいる香をつり上げれば良いことになる。そしてその手筋が中合い。この局面もひと目は▲8五歩。しかしその場合は取らずに△6七飛成から△8六歩と打たれ、玉をつり出された時に、香が8三に利いているので危ない。そこで中合いをさらに押し進め▲8四歩と打ち△同香に▲8五歩と二重に中合いするのが好手で実戦もそのように進んだ。これは大道詰将棋などに出てくる受けの手筋で、実戦で現れることは珍しいが覚えておいて損のない手だ。

本譜はこの後も、詰むかどうかギリギリの攻防が続き、最後の合駒も間違えるととん死になる局面もあったが、正確に逃げ切り、羽生NHK杯の4連覇という快挙で第61回が終了した。
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