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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年8月31日出題)

第514問(2015年8月31日 千田五段-阿久津八段戦)
(問514-1)
先手千田五段、後手阿久津八段で戦型は相穴熊戦。ただ、序盤は細かい駆け引きがあり、後手の三間飛車穴熊対居飛車穴熊という戦型に落ち着いた。そして中盤、後手がポイントを上げようと動いた瞬間、先手が切り返し、一気に激しい変化に突入した。下図はその終盤、今先手が▲3二龍とここにいた銀を取ったところで、結果(先手から見て)角桂交換の駒得に成功した。駒損した後手は、本来なら手番をいかして攻め込まなければいけない所だが、▲1六角も利いており、▲7二銀と打ち込まれるととても持ちそうもない。そこで、ここで指された後手阿久津八段の次の一手は?「受ける手」ということに限定するなら難しい手ではない。

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問514-2)
後手から△9七桂とここに打ち込まれ、△8九桂成▲同金の交換が入っている為、居飛車陣は通常の穴熊よりは薄くなっている。しかし、先手も▲5三歩成に△同金を利かしている為、(振り飛車穴熊も)横からの攻めには薄い。ここでは、候補手はそれほどあるわけではないが、こういう所でどこに目を向けたら良いか。敵陣、自陣と両方の陣形を良く見て、指すべき次の一手を考えたい。先手千田五段の指した次の一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問514-1解答)「金は引く手に好手あり」
ここで▲7二銀を防ぐとしたらこれしかない。通常受けには何らかの意味(切らすとか手を遅らせるなど)がなければならないので、一手受けても同じ速度で攻められたのでは意味がない。ここでの金引きは、本譜のように▲5四歩が見え見えで、と金で攻められる展開になることが予想できるので完全に受け切ることは出来ない。しかし、△6二金引と引くことで、より早い攻めを防ぎ、攻めを遅らせ、攻め合いに活路を見いだす為の受けと言える。

これに本譜は筋の▲5四歩で△同歩なら▲5三歩がやはり厳しい。そこで(▲5四歩に)手抜いて△9七桂と打ち込み勝負に出で、第二問へと続いた。


(問514-2解答)「終盤は攻防手で」
ここで▲9五歩と歩で受けるのはしっかりした受けだがちょっと正直すぎる。また、端を放置して、▲9三歩から▲7二銀や▲6二銀など攻めるのも、正確に攻めれば勝てそうではあるが、やはり△9七への打ち込みや、△9七歩成からの攻めは△9二香が利いていると相当怖いし、逆転の恐れもある。
という訳で、実戦▲9五桂がまさに終盤の攻防手。端攻めを緩和し、後手が何もしてこなければ次の▲6一角成が猛烈に厳しい。

本譜は、△9七桂と打って最後の勝負にかけた。しかし先手陣に桂が入ると、今度は別の筋(▲9三歩からの攻め筋)が生じ、最後は先手玉が際どく詰まないのを見切って後手玉に必死をかけ、先手の千田五段が二回戦を突破した。

なおこの数手後に、後手玉にきれいな詰めろが出現したのでその局面と、最終盤の先手玉にもう一枚駒があれば詰みという局面になったので、その二つの局面を「今日の実戦の詰み」に載せましたのでそちらもどうぞ。
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