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NHK杯に見る受けの手筋

(2016年1月11日出題)

第531問(2016年1月10日 村山七段-森内NHK杯選手権者戦)
(問531-1)
先手村山七段、後手森内NHK杯選手権者で戦型は相居飛車。角換わりの出だしだったが、後手が趣向を見せ、これに先手が真正面から戦いを受けた為、序盤から見たことのない手将棋となった。
そして下図はその中盤、今、▲5六角と自陣に角を据えて次に▲2三歩成からの攻めを見せたところ。もちろん単純に歩成りからの攻めが実現すれば良いが、受け止められると角が負担になる為、決断の一着だ。後手森内NHK杯選手権者はここでどのような受けを指したか?後手の次の三手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問531-2)
上図から後手は△5三銀を繰り出し、▲6六の銀と交換したが、先手は受けに使う手を省略して猛攻に入った。その結果、先手の攻めがつながるか切れるかギリギリの攻防が続いた。
下図はその終盤、駒は少ないが、後手玉も裸であるため、何とか寄せ切れそうにも見えるところ。逆に後手からすると金銀を渡さずに凌ぎたい。とはいえ、現在は王手だ。この王手にどう応対するか。後手森内NHK杯選手権者の指した手は意表の一着だった。悪いながらも、最も寄せが難しいと思われる受け方は?三手まで。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問531-1解答)「筋良く飛車先を止める手段」
もし、歩しか持ち駒を持っていない場合は、△3四歩▲同角△3三金のような筋悪の受けも部分的にはある(局面によっては成立するので覚えておきたい→「大駒は近づけて受けよ」)。ただここではもっと筋の良い受け方がある。それが、△4四角と飛車取りに打ち、▲2八飛に△2六歩だ(▲2五飛なら△3三桂が利く)。
持ち駒の角は使ってしまうが、陣形はしっかりしているし、何より先手の飛車を押さえ込んでいるのも大きい。実戦は、お互いここからいかに角をうまく使っていくかということに苦心して戦うことになる。

本譜は、後手が△5三銀を繰り出し▲6六の銀と交換。さらに▲7四角を引き戻し先手は▲2三銀から、後手は▲7七の桂頭を△7五歩と攻めて攻め合いになったかに見えた。しかし後手が受けに手を戻した為、先手の攻めがつながるか切れるかという勝負となった。

(問531-2解答)「意表の逃げ方」
「玉は下段へ落とせ」と言うように、玉は下へ行くほど捕まりやすい。逆に言えば、逃げるときは上部へ出るのが基本。但し、ここで△5三玉は▲4五桂の両取りが待っている。と言って、△6二桂など合駒するのは▲7四桂がピッタリでやはり分かりやすい。「さすがに決まった」と思われた所で指された森内NHK杯選手権者の一手が△6一玉。これで受かっていればまさに「薄氷の受け」と言われるところ。対して▲7五香はひと目だが、この香を打たせて△5一玉と寄ったのが本譜。もっとも難しい寄せを先手に問うた手と言えそうだ。

本譜は、この難しい寄せの問題を見事に解いた。じっと▲7二香成と成り込み、△5二金の受けに、▲2三歩成から先手で△2六の歩を持ち駒にしたのが好手順。先手の村山七段が後手玉を寄せ切ることに成功した。

なお、この将棋の最終盤から、「今日の実戦の詰み」を作成したので、そちらもどうぞ。
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