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NHK杯に見る受けの手筋

(2016年4月11日出題)

第543問(2016年4月10日 大石六段-石井四段戦)
(問543-1)
先手大石六段、後手石井四段で戦型は後手の四間飛車(藤井システム)対居飛車穴熊。穴熊にガッチリ囲わせるのはやや振り飛車大変と思われている為プロ間ではあまり出てこない戦型だが、後手の石井四段は中盤巧みな手渡しをして先手の攻めを待った。対して先手はさばきと小技を織り交ぜ香得に成功。しかし歩をたくさん渡した為、後手からも端攻めが入った。そして今、△7七歩と急所を叩かれたところ。ここで先手はどのように応対したら良いか?先手大石六段の指した一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問543-2)
穴熊玉も薄くなり終盤は激闘になった。△7七の金をそのままに、今▲6二角と王手をしたところ。後手から見れば、王手なので応手は三通りしかない。ここで後手石井四段の指した一手は?盤面全体を見て考える深い読みの必要な所だが、短い時間では直感も必要なところ。ここで後手の指した手は何か?そしてその狙いは?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問543-1解答)「陣形の弱体化と駒の価値」
ここで実戦は▲7七金右。これば普通なら金桂交換になり損な手であるが、この局面では普通の手だ。と言うのも穴熊の弱い所は▲9七の地点。その為、駒損しない▲7七同桂では、△9七桂成とこちらに攻め込まれてしまう。6、7筋が鉄壁でも、9筋だけで負けてしまう可能性もあるからだ。
このように穴熊の受けに置いては、駒の価値より陣形を弱体化させないということの方を重要視することも多い。その為、(攻めが切れるのでなければ)角も逃げずに桂との交換を甘受することもある。

本譜は、一旦後手の攻めを受けた後、▲8六桂から反撃。難しい攻防戦の末、後手の角を取った所では先手の手勝ちが見えてきたかと思われた。しかし、後手も大量の駒をもらって先手玉に食らいついて第2問となった。

(問543-2解答)「詰みに必要な駒を入手」
終盤、王手に対しどこへ逃げるかと言うのは基本的にはその都度読みを入れる必要がある。しかし、大きな原則としては下や隅に逃げるより、上や中央へ逃げた方が捕まりづらい。ここでも△8二へ逃げるのは普通に考えると損。と言うのも、▲7一角成△7三玉▲6二馬と進むと、▲6二角が馬になってしまう為、△6三の地点に逃げられなくなるから。
なので、もし▲8二にあるのがと金なら△7四か△6三へ逃げるところ。ところが8二にいるのが成桂である為に、後手の石井四段はこれを取って勝負をかけた。つまり桂は、先手玉を詰ますのに最も必要な駒だからだ。先手玉を詰ますには、△8六桂や△7六桂と打つことになり、桂を持っていないと絶対詰まない形と言える。

本譜は△8二玉に対し先手は▲6二角を馬にしてから▲7七角と金を取ったが、△3八龍▲7八金に△同龍と切って、最後は先手玉を長手数の即詰みに討ち取った。なお、先手玉に凌ぐ筋があったのかどうか、柿木ソフトで詰みを調べたところ、△3八龍に▲6八歩でも△同龍から詰み。本譜もそうだがいずれも30手前後の長い詰みで変化も多く、△8二玉と桂を取る所ではさすがにすべてを読み切ってはいなかったと思うが、詰むという直感が当たり△8二玉の勝負手が功を奏したと言える。

なお、先手玉の長い詰みを短めに修正してみたので「今日の実戦の詰み」もどうぞ。
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