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NHK杯に見る受けの手筋

(2016年6月27日出題)

第554問(2016年6月26日 永瀬七段-戸辺六段戦)
(問554-1)
先手永瀬七段、後手戸辺六段で戦型は後手のゴキゲン中飛車。4筋で銀が向かい合う形から後手は穴熊へ。対して先手も穴熊を目指したが、利かした角に後手が角をぶつけた為、先手は穴熊に入らず銀冠に変更。そして後手が交換した角を自陣に据えて戦いが始まった。その後、秘術を尽くした攻防が行われ、少しずつ先手の指せる局面へ。下図はその終盤、今▲4一にいた飛車を▲2一飛成と成り返ったところ。金取りだが、この金を受けるピッタリした手がない。先手玉もまだ遠く、ここは差が開いたかと思われたが、巧妙な手順でこの窮地を乗り切った。ここで指された後手戸辺六段の指した一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問554-2)
上図からも後手は、攻めが切れないよう、また寄せ切られないようギリギリで追走し、長い終盤戦になった。先手の良い局面は長かったが、下図はもう訳が分からないくらい混沌とし、形勢不明になっている。今、△4七飛と打ち込んだところで、単純には角金の両取り。しかし盤面全体を見れば、先手に銀が入れば△8八銀打からの詰めろになるという仕組みで、その銀は、先手が攻める時に渡してしまう駒でもある(▲8二銀成から▲7二金で後手玉は一手一手だが、その瞬間に先手玉は詰む)。そこでどうするか?先手永瀬七段の指した一手は何か?ここで踏みとどまる為の先手の次の一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問554-1解答)「敵駒の位置を動かす一段歩」
ここで戸辺六段の放った一手は△5一歩。金底の歩や飛車の利きで止めるために打つ一段目の歩は良く出てくるが、ここの歩はちょっと意味合いが違う。△5一歩に対し、▲3二龍なら金は取られても、△5二歩で急所の成桂を外せるし、▲5一同龍なら一歩で一手を稼いだ計算になり効率が良い。本譜は▲5一成桂と成桂で取ったが、これを利かせたことにより、△4二金と逃げることが出来た。これは、単に△3三金では何の働きもないジャマ駒と化すところだったのが、△4二金なら守り駒として活用できそうで、その違いは大きく、それも△5一歩の効果と言える。

本譜はそれでも苦しい時間は長かった。しかしその後、その辛抱が実り形勢不明な終盤戦へと進んで行った。

(問554-2解答)「終盤の凌ぎ方」
▲8二銀成から詰めろをかけると△8八銀打で詰まされてしまう。と言って、銀を渡さずに詰めろをかける手段はなさそうに見え、この両取りはどちらを取られても厳しい。ということで、ここで▲5七角打と打ったのがしぶとい一着。追走され、逆転されかかった局面をここで踏みとどまった感じだ。これで、銀を渡しても先手玉が詰まなければ、▲8二銀成△同銀▲7二金で良く、後手からの攻めを丁寧に受けて、その手段が成立するまで待とうと辛抱した。

本譜は、やはり後手が忙しい。飛車を切って先手玉に迫り、一時は逆転したかとも思われる局面もあったが、丁寧に受けて、最後は後手玉の詰めろに先手玉が詰まない状態になり、先手の永瀬七段の勝利となった。

なお、この局面を見てちょっと思いついた詰み筋を使い、やさしめの実戦の詰みを作成したので、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。

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