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NHK杯に見る受けの手筋

(2017年8月7日出題)

第610問(2017年8月6日 深浦九段-増田四段戦)
(問610-1)
先手深浦九段、後手増田四段で角換わりの出だしから後手が角道を止め、今はやりの雁木風に駒組みを進めた。そして先手が9筋の位を取ったのが大きな作戦の分岐点で、この位をとがめる為△9二香から△9一飛と動いて戦いが始まった。
下図は終盤の入口。先手は▲1三歩成から▲1四歩〜▲1五歩と香を取りに行ったが、後手も端の香を走り、飛車を飛び出した。ここで先手はどうすべきか。後手の狙いを読んで受けるべきかあるいは受けずに何を指すべきか決める。先手深浦九段の指した一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問610-2)
先手は後手の玉を引っ張り出す強襲をかけた。後手から見ると、いかにも危ない形。しかし手番が回れば指したい手は多く、実戦もこの数手後に△8四桂と打ったが、この桂が厳しい。とは言え、この局面は受けないとつぶれる。そこでどのように受けるのが良いか?この一手とも言うべき受けの一着は?後手増田四段の指した次の一手は何?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問610-1解答)「二つの狙いがある時は手抜くのも一策」
ここでは後手から△9七歩と垂らす手と、△7六飛と切り▲同銀に△3五銀と王手角取りに出る手の二つの狙いがある。端から攻められた時、▲9七歩と受けるのは自然だが、当然△7六飛と切られ、先手先手で攻められることになる。それに、もしかすると歩を打たなくても△7六飛と切ってくるかもしれないので、そうなった時には▲9七歩は一手かけて自らの玉を狭くする悪手になりそうだ。
このように二つの狙いがあり同時には受からない時は、受けずに攻めの一手を指すことも必要。▲1四歩と香を取りながら歩を進めた手は当然の一着で、攻め合いに持ち込んで勝負となった。

本譜は△9七歩で▲9九歩を利かし、△1七歩成と桂を取り次の△8四桂を狙ったが、それより早く先手が端を強襲、第2問へと続いていく。


(問610-2解答)「玉の早逃げ八手の得」
ここは△2三玉と引く一手。この局面、もし△8四桂などと受けずにいると、▲2四角が香の王手で、△2三玉に▲3三角成から▲1五角と打たれて詰んでしまう。△2三玉の早逃げにも▲1四金とか▲2四角から飛車切りとか本譜の▲2五歩とかいろいろ攻められる手は見えるが、引いてダメならこの局面自体後手が悪いと考えられる(実際は、際どい筋があっても引いて後手が残している)。

本譜は▲2五歩だったが、さらに△3二玉と早逃げした手も一手前に受ける手筋。▲2四歩に△2七歩と叩けるのが早逃げの効果で、▲同飛に△8四桂と攻めに出て一手勝ちを目指した。その判断は正しく、巧みに網を絞ると先手玉を寄せ切ることに成功、後手増田四段の勝利となった。
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