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その一 持将棋とトライルール
将棋には、お互いが入玉して勝負がつかなくなったときのために、持将棋というルールがあります。
玉を除き、大駒を5点、小駒を1点として、プロは24点あれば引き分け、アマ の規定はほとんどが27点法を取っていると思われます。27点法では必ず決着がつくので(同点は後手勝ち)、この方法自体は明確で
いいものだと思います・・・が、アマの大会ではほとんどが切れ負けのため、実際には時間で勝負がついてしまうことの方が多いので はないでしょうか。
さらに、別の問題として、駒落ちの場合はどうなっているのでしょう。
この駒落ちの場合の持将棋について、将棋センターをやってきた者としては、ずいぶん考えました。最初の頃は、上手勝ちにしていました。しかし、上手の成績がかなりいい事に気づき(当センターの二段差角落ちでも、年間の上手の勝率は、6割前後)、途中から下手勝ちにかえました。しかし、理論的に駒数の少ないほうが入玉を止める義務を負うのはおかしい、ということで悩んでいるときに、将棋世界に先崎プロの「トライルール」の
話が載っているのを見ました(1996年8月号及びそれらを収録した単行本「世界は右に回る」)。
以下は、将棋世界からの抜粋です。
「ルールは一つ。いたって簡単。自分の玉が、相手の玉が最初にいた位置に(5一)に行けば、勝ちとなるのである。その瞬間に詰みがあっても構わない。とにかく玉が行って、相手の駒がきいていなければ即勝ちとする。これをトライルールという。
このルールには三つの利点がある。
一、無用の駒取り合戦がなくなる。
駒取り合戦が面白くないのは、スリリングではないからである。トライルールならば、入玉模様になると、かえってスリルが増す。先手は4九や4八に金銀を埋めまくり、後手は6一や6二に埋めて、互いにトライを阻止する。色々と新しい手筋も作られるだろう。
二、アマプロ同一のルールになる。
これは、大事な問題である。今は、将棋連盟公認のルールブックはない。いや、プロ用のはあるが、アマの大会では、殆どが、27点法である。トライルールは簡便なため、すぐに広まるだろう。
三、将棋の本質は変わらない。
正確にいうと、殆ど変わらない。将棋をいっぱい指された方ならば分かるだろうが、玉が5一まで行くことは滅多にない。同じ入玉でも1七や2七に入られても5九まではなかなかこないものだ。また、最初から入玉を狙う戦法が流行ることもないだろう。そういう人は、今の駒数ルールでも充分入玉で勝ちまくれる。
外にも、今のルールでは駒落ちの入玉ルールは、あってないようなものだが、一挙に解決してしまう。第一、相手の本丸を自分の大将が占領すれば勝ちというのは、カッコいいと思うんだけどなあ。」(以下略)
これを読んだとき、なるほど面白そうだと思い、すぐ常連客に話し、ためしにしばらくの間、実験してみました。
その後、使えそうだということで、正式採用したのが97年7月、そしてそれから二年近くすぎ、すでに何十局と現れましたが、結果としてはこのルールは、みんながちゃんと知っていれば、非常にすぐれたルールである、ということです。
理由としては、先崎プロの言っていたことに加え、延々と入玉状態が続く事がなくなった(特に弱い人ほど入玉されて、勝つ見込みが全くなくなっても投げない、投げる場
所がわからない)ことなどがあげられる。また、5一をめぐる攻防にも様々な妙手が生まれました(捨駒をして手を稼ぐなど)。
欠点としては、初めてきた人が、多少戸惑う事位でしょうか。
こういったとまどいがなくなるためにも、できるだけ広く知れ渡ることを願っています。
1998年12月1日作成
1999年6月16日改訂
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