入間将棋センターでは、1万円前後のツゲの上彫の駒を使っている。盤は、将棋連盟から買った1寸盤である。
この駒を見て、「いい駒ですね」といわれる事があり、それはそれでうれしいのだが、実際にはこの盤駒の世界は、まさにピンキリの世界である。
駒についていえば、安いものは数百円のプラスチック駒(通称プラ駒)から、高いものは1セット数百万円の駒まである。
盤も同じで、安いものは布や合成樹脂でできた千円以下のものから、やはり上は数百万円のものまできりがない。
ただここでは、高い駒について話をするのではなく、将棋に興味を持って、「少しはいい駒と盤」が欲しい。そういう人たちの為に、セットで10万円以下で買うための基礎知識講座にしたいと思います。
○駒についての基礎知識
日本将棋連盟(以下連盟)のカタログを見ますと、普及将棋駒(彫駒)として、高いものは黄楊(ツゲ)材9万円のものから安いものはプラスチック駒千円のものまで、11種類の駒が載っています。
このカタログ以外に、「駒カタログ」というものもあり、こちらは、数十万円の駒を中心に100個の駒の写真が載せられていますが、こういった高価な駒についてここでは触れません。
まず、駒の値段の違いについて説明します。
一番大きな違いは、材質です。
プラ駒が一番安く(600円〜2000円位)、次が椿(1000円〜3000円位)、そしてシャムツゲ材(5000円〜12000円位)、本ツゲ材(15000円〜)となります。
次に文字の作り方により、値段も変わってきます(プラ駒を除く)。
文字の作り方には、次の4種類があります。
(1)書駒・・・駒の上に漆(うるし)で文字を書く(一番安い方法で、椿材はほとんどこれ)。
(2)彫駒・・・文字を彫り、その表面に漆を塗る(シャムツゲ材はすべてこの方法、本ツゲ材も安いものはこの方法)。
(3)彫埋駒・・・文字を彫り、その上に全部漆を詰める(本ツゲに使われる手法)。
(4)盛上駒・・・文字を彫り、漆を盛り上げるように塗る(本ツゲに使われる手法で、値段的にも最も高い)。
文字の書き方によっても値段が違います(プラ駒を除く)。
文字の書き方とは、文字のどの程度略して書くかということです。
(1)極上彫(特上彫)・・・まったく略さない字体(2万円以上する本ツゲ材はほとんど全てこの方法)。
(2)上彫・・・ややくずすが、極上彫と同じ場合もある(区別があいまい)。
(3)中彫・・・文字がかなりくずされる。
(4)並彫・・・大幅に文字がくずされる(私だけかもしれないが、竜と馬の区別が付かない)。
では、実際に駒の購入法を予算別に考えてみましょう(1万円、3万円、8万円)。
1万円の場合
材質は、当然、シャムツゲ材か、本ツゲ材になります。文字の作り方は彫駒になります。彫埋や盛駒は最低でも6万円以上してしまいます。
1万円前後の予算の場合、書き方が一番問題になります。
シャムツゲ材の場合、およそですが、極上彫は、10000円、上彫は8000円、中彫は7000円、並彫は6000円くらいです。
連盟のカタログにはありませんが、ある盤駒店で見たところ、本ツゲの極上、上彫は20000円以上、中彫は17000円、並彫は、16000円くらいでした。
この書き方については、実際に現物を見た方がいいでしょうが、私の個人的な意見では、本ツゲとシャムツゲの違いはあまり気になりません。しかし、略字はかなりダサイので、お勧めは、シャムツゲ(単にツゲとしか書いてない場合もある)の極上彫です。ここだけの話ですが、椿油でよくなじませてから、「これはツゲで、5万円くらいするんだ」と言えば、8割の人は信じます(あなたに信用があることが前提ですよ)。
3万円の場合
材質は、本ツゲ材になり、書き方も中、並といったものはありません。
文字の作り方ですが、彫埋や盛上げは6万円以上してしまいます。もう少し予算と値引きをおこなう交渉術があれば、5万円くらいで彫埋や盛上駒を考えることはできます。
同じ本ツゲの彫駒でも、値段は、2万円くらいから、10万円以上のものまで様々です。これは、書体や作者による違いだと思われます。
私が持っている一番いい駒は、天童に行った時に買った5万円くらいの水無瀬書の彫駒です(かなり粘って4万円弱くらいに値引かせた)。彫埋や盛上駒も買うことはできたのですが、使い込むには、このくらいの彫駒が一番いいと思ったからです。
8万円の場合
彫駒なら、かなり気に入ったものが、彫埋や盛上でも、比較的安いものなら買うことができます。
これだけ予算があるなら、いろいろ見て気に入ったものを購入して下さい。
○盤についての基礎知識
次に盤について見ていきましょう。
安い普及盤には、連盟で売っている木の折盤(2200円)、合成樹脂のソフト盤(1000円)、布盤(450円)があります。
高い盤は、数十万円するものもたくさんあります。
しかし、ここでは、10万円以下で買えるツゲの駒に合った木の盤を見ていきましょう。
まず、材質ですが、榧(かや)が一番高く、次に桧(ひのき)、桂(かつら)、新かや、アガチスと続きます。
二寸盤で値段を見ると、
榧60000円、桧20000円、桂14000円、新かや13000円、アガチス10000円くらいです。
10万円以下の盤を考えるなら、後は高さだけです。
当然の事ながら7寸盤が一番高く、1寸盤が一番安いです。
連盟のカタログに限らず、いろいろなところで卓上将棋盤としては2寸盤が紹介されていますが、私が勧めたいのは、1寸盤か5寸盤です。
一般の机の高さというのは、その上で書いたり見たりするのにちょうどいいように作られています。それをさらに二寸(約5.5cm)高くしてしまうと、駒が近すぎるのです。
将棋センターでは、以前桂の二寸盤を使っていましたが、今では連盟で買った1寸盤を使っています。
畳の上で使うなら、ちょうどいい高さは5寸盤です。4寸だとちょっと低く感じ、6寸だとちょっと高く感じます。材質は桂がもっとも一般的です。
○購入場所は
さて、駒とか盤を実際に購入するのはどこがいいのでしょうか。
私自身、センターを始める時、一番安く上げるため、いろいろな盤駒店に足を運びました。その結果、2万円以下の安い盤駒を選ぶのなら、将棋専門店ではない、ディスカウント店が一番安い(但し品数はほとんどない)と思っています。
こういったところがなければ、あとはそんなに値段は変わりません。
将棋の街天童も、今では観光地となってますので、特に安いわけではなく、都内で買うのと基本的には一緒と思われます。連盟の商品は全般的にちょっと高めですが、支部会員になれば2割引きになるので、この値段で比べれば、他と変わらなくなり、むしろ安心して買えるだけにお勧めかもしれません。
駒の不良品というのはあまり聞きませんが、盤は気を付ける必要があります。
乾燥が不十分な不良品とかがあり、何年か後に割れる場合があるからです。このあたりは見ただけではなかなか分かりませんので、結局信用のおける店から購入するのが一番ということになるのでしょうか。
最後になりますが、現在私が持っている駒は、天童で買った5万円相当の本ツゲの彫駒、将棋センターで使っている1万円相当のシャムツゲの極上彫、それと、将棋世界の順位戦予想クイズでもらった6千円相当のシャムツゲの並彫です。
興味のある方は、三枚の写真を(ちょっと古い35万画素の)デジカメで取りましたので、参考までに見比べて下さい。
◎三枚の駒の写真を見る
1999年06月19日作成