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(役に立たない最初の話)
ひっかけ戦法の話

このお話は、毎日コミュニケーションズから出版されている週刊将棋編「奇襲大全」(但し新版にはありません)に載っていたものです。
思わず笑ってしまう「必笑ひっかけ戦法」のご紹介を。

まず、次の有名な定跡はご存じでしょうか?
初段くらいあれば、必ず知っているはずですが、この知識は必要ですね。

初手から、2六歩・8四歩・2五歩・8五歩で第1図。

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ここで定跡は、7八金・3二金・2四歩・同歩・同飛(第2図)ですが、7八金と締まらずにすぐ、2四歩といくとどうなるか?

すなわち、第1図より、2四歩・同歩・同飛・8六歩・同歩・8七歩・2三歩・8八歩成・同銀・3五角(第3図)となります。
これは先に角を取られ、馬を作られるので、先手が悪い、というのが定跡というより常識になっています。




このことを背景に、ひっかけ戦法を見ていきましょう。
初手より、2六歩・8四歩・2五歩・8五歩・2四歩・同歩で第4図となります。

ここからは「奇襲大全」の抜粋です。



この戦法を実行するには少々三味線を弾く必要がある。原内さんは第4図の局面で先の定跡に気がついたふりをして、「あっ、いけない。これ取ったらイカンのや」とつぶやく。そして2四に掛けられていた手を引っ込め、残念そうな顔で7八金(第5図)と上がる。
この演技力いかんで成否が決まるので要注意だ。後手は当然飛車先の歩を切ってくる。
第5図から、8六歩・同歩・同飛。
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その瞬間2三歩(第6図)と一手先に角取り。
「ン?どっかヘンだな」と思いつつ8七歩で角取りの追っかけ。そう、いつの間にか定跡とは逆の現象が起きている。
第6図より、8七歩・2二歩成・同銀・7五角(第7図)。
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7五角と打たれて、後手はやっと逆の立場であることに気がつく。
「どこから逆になったのかなァ」と考えつつ飛車をバックする。先手はすかさず角成で一歩損を回復する。
第7図より、8二飛・5三角成・8八歩成・同銀・3二金・2四飛・6二銀・7五馬(第8図)。
後手はまだ頭の中がハッキリしないまま、とにかく角を取り返し、自陣を固める。そして6二銀で馬を追っ払う。ところで第8図の局面、いつの間にやら一歩得になっている。「損して得取れ」とはこのことをいうのだ。
この後の変化も多少書いてありますが、最初にこの文章を読んだときは、ホントに思わず笑ってしまいました。しかもどうしてそうなったのか、すぐに分からないところがこの戦法のミソですね。 イラスト


相掛かりを得意とする遊び相手に、一度試してみてはいかがでしょう。

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