将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ

NHK杯に見る受けの手筋

(2015年7月6日出題)

第506問(2015年7月5日 八代五段-村山七段戦)
(問506-1)
先手八代五段、後手村山七段で戦型は相矢倉。先手が早囲いを目指し、それを見て後手が△7五歩から早めに動き戦いが始まった。角交換後、先手は棒銀をさばいたが、一歩余分に歩を持たせたことで後手からの反撃も厳しかった。特に攻防に放った角を目標に△4五銀と打った手が手厚く後手の指しやすい局面に。そして歩の手筋連発で先手陣を崩し、後手は角銀交換の駒得をし、さらに今急所に△2四角とのぞいたところ。この角の味が良く、先手の苦しい局面ではあるが、ここでは決め手を与えないような指し手が求められる。先手八代五段の指した一手は?いかにも筋と言える一着とは何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問506-2)
後手は角銀交換からさらに銀を一枚得し、結局角得の成果を得た。そして局面は最終盤。後手にはいろいろな勝ち方がありそうに見えるが、逆にこういう局面は危ない瞬間でもある。ポイントは、△7二の飛車が二段目から動くと▲3一銀から金までの詰みがあること。なので考え方としては、▲7二歩成と取られた時に詰むような詰めろをかければ良い訳だ。但し、図のような玉は「中段玉寄せにくし」とも言え、それほど簡単ではない。ここで指された後手村山七段の指した一手は?どのようにして”明快な勝ち”に持っていったのか?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問506-1解答)「角道を止める”手筋”の歩」
飛車を切って後手玉が寄るなら切りたいが、飛車を渡すと逆に先手玉が簡単に寄ってしまう。と言って、このまま角が▲6八に利いていてはやはり先手玉がもたない。と言うわけで、▲3五歩とここを突き出したのが実戦。いかにも”筋”という手で、△同角なら先手の飛車筋が通ると同時に▲4六銀と先手で受ける手も生じる。但し本譜は△4二金寄とされ、さらに駒損が拡大した。駒損を拡大させない為、先に▲3二銀成△同玉としてから▲3五歩とする手も考えられるが、今度は先に銀を渡してしまうので、先手玉がそのまま寄ってしまう可能性も高い。

実はこの局面、何が正解が分からなかったので、激指に次の一手を聞いてみた。すると最善手は▲8七玉と表示。以下△4二金寄▲5二銀打でその後の変化も書かれてはいるが、結局後手良しとの評価。実際に▲8七玉が最善かどうかは分からないが、本譜でも▲8七玉と手を戻していることを考えるとあるいはその方が良かった可能性はある。但し、やはりすでに先手の相当苦しい局面なのかもしれない。それでも本譜の▲3五歩という手筋は、様々な場所で応用可能かつ高段者の第一感と言った手なので、感覚として身に付けておきたい一着と言えるだろう。

(問506-2解答)「明快な決め方」
問題文にも書いたように、勝ちは一通りではないかもしれないが、それでも意外に難しい局面だ。この難しい局面で村山七段の指した一手は△4二角。これがなるほどの好手。王手で▲3一銀からの詰み筋を消すと同時に、▲6四銀と使わせればさらに後手玉に詰めろすらかからなくなるという「保険」もかけた手。局面を最もはっきりさせる明快な決め方と言えそうだ。

本譜はそれでも後手の飛車を攻めて何とか上部脱出を狙ったが、王手飛車をかけられ、その上部への脱出が阻止されると、先手が投了。中盤で攻勢を得た後手の村山七段が、その差を守り切り勝利した。
先週の問題へ/来週の問題へ

将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ