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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年11月16日出題)

第525問(2015年11月15日 木村八段-森内NHK杯選手権者戦)
(問525-1)
先手木村八段、後手森内NHK杯選手権者で戦型は相矢倉。但し、後手が4手目に角道を止め、無理矢理矢倉を目指した為、先手が手得をしている。今、その先手が3筋の歩を切った後▲4六角と飛車取りに角を引き、それに△9二飛と逃げながら端に駒を集中したところ。次に△9五歩から攻めて来てもすぐにつぶれる訳ではないので、ここは普通に考えれば▲3六銀と攻めの態勢を整えるのが自然。しかし、この手より前に一着、木村八段は受けの手を指した。その一手とは何か?受けの手と言うことに限定してしまえばこれしかないので当てるにはやさしい一手と言える。

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問525-2)
”受け師”木村八段の猛攻が始まっている。▲4三の地点で金をはがし、今▲2五銀とぶつけたところ。後手から見れば、△9九歩成とし、△8九と〜△9八飛成と攻めそのものは約束されているが、まだ多少時間がかかる。そこで先手からの攻めを一旦は遅らせる必要がある。ここで指された後手森内NHK杯選手権者の指した一手は?さらに三手目も問題にしたいような一着だったのでそこまで考えておいて欲しい。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問525-1解答)「早い段階での”玉の早逃げ”」
ここで木村八段の指した一手は▲7九玉。△9五歩と来られてもすぐにつぶれる訳ではないし、むしろ端を守っている意味もあるのでちょっと驚きの早逃げだった。おそらくは、こうして戦場から離れておいてその遠さを生かし、あとは攻めるだけという態勢を取ったと考えられる。

実戦は後手は7筋の歩を切り、先手は▲3六銀〜▲3七桂と攻めの態勢を築いた。そして△9五歩から開戦。銀香交換後、先手が▲5二銀と打ち、そこからは先手の猛攻、後手の凌ぎという戦況が続いた。

(問525-2解答)「自陣への駒の投入」
この局面、考えられる指し手そのものはたくさんある。手抜きの△9九歩成から始まり、△2五同銀、△3五銀、△3五銀打、△3三銀など。ただいずれも後手玉の回りが薄すぎて、それらの手では攻め切られそうでもある。もちろん、正確に読みを入れる必要はあるが、ここで森内NHK杯選手権者の指した一手は△3二銀と玉の側に銀を一枚入れる手だった。△2三の地点をしっかり守り、同時に△4三の金にヒモも付け玉を安定させている。
そして続く▲2四銀に△同角と角で取った手も大切な一着。△2四同歩と歩で取るのは、矢倉で頻繁に出てくる▲2五歩の継ぎ歩攻めがあって危険。駒がぶつかっている場合、一般には価値の小さい駒から取るのが基本ではあるが、相手の攻め筋を見てこのように大きな駒から取ることもあるので覚えておきたい。

本譜はこの後も、先手が攻め切れるか後手が凌いでと金〜飛車成りを間に合わせられるかの攻防が続いた。しかし最後は、銀が入れば即詰みと読み切った後手の森内NHK杯選手権者が華麗に詰まし勝利した。

なお、その最後の詰みを、「今日の実戦の詰み」として載せたので、見ていない人は解いてみて下さい。
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