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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年11月30日出題)

第527問(2015年11月30日 阿部光瑠五段-久保九段戦)
(問527-1)
先手阿部五段、後手久保九段で戦型は後手の四間飛車(藤井システム)。これに先手が最近では珍しい玉頭位取りを採用。さらにそれを見た後手が穴熊にもぐると、先手も穴熊にし、結局相穴熊戦となった。
戦端は、後手△4四銀型から△5五歩▲同歩△4六歩と仕掛けたところから。さらに途中先手が(端歩と銀取りを)二度手抜いたこともあり急激に激しい終盤戦に。そして下図、今△8三金左とと金を払ったところ。局面だけを見れば、先手の桂得でさらに先手の手番なので先手の方が良さそうな条件。しかし、△9六歩の爆弾が残っていることと、後手の金二枚の形に容易に詰めろがかからないことから、ここではやや後手に分がありそうだ。ここで指された先手阿部五段の指した一手は?受けの手とすればほぼ二択になる。

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問527-2)
先手の頑強な粘りに後手の執拗な攻めが続いている。今△9六銀と上から銀を打ったところ。詰めろではないが、次に△8七銀成で必死。と言って飛車を打って二枚飛車にしても、とても後手玉は詰まない。金銀のない状況では受けもないと思われる所だが、ここで阿部五段は最後の勝負手を放った。相手を最後まで安心させないその勝負手とは?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問527-1解答)「形良く、大駒に当てて」
▲8八銀打と埋めるのは固そうだが、相手をせかしていない上、ここでは△9七歩成があり一手の価値ある守りにもなっていない。終盤の受けでは先手を取ることが大切で、ここでは▲8七銀と打つか、▲7七銀と打つかのほぼ二択。本譜の▲8七銀は端の守りにもなっており、まずこの局面はこう打つところだろう。もちろん相手が飛車を逃げてくれるとは思っていないが、ここを守り切り、▲8四歩が入れば逆転の望みも出てくるという訳。

本譜は、ここで△8六銀と上から押しつぶすような攻め。▲8八銀打△5五角▲7七桂と攻め切れるか凌ぎ切れるかギリギリの攻防が続いた。

(問527-2解答)「最終盤の人間的な勝負手」
ここで▲8五桂と跳ねたのが怪しい勝負手。△8七銀成と来られると必死だが、▲9二香成と攻め、△同玉には▲9三歩、△同金には▲8一龍から飛車の王手〜▲7二角とかなり際どい王手が続く。実際には、(局後ソフトにかけたところ)後手玉に詰みはなかったようだが、勝ちだと思っている方はちょっと踏み込めない順だ。
いかにも人間的な勝負手と言え、最後まで相手に安心させないようなこういう怪しい手を指せるようになると終盤での逆転も多くなってくると思う。

本譜はこの手に対し、△7八銀▲同銀△9七金という考えられた手順で詰めろを続けたまま先手玉を寄せ切ることに成功し、後手の久保九段が勝利した。
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