第550問(2016年5月29日 伊藤真吾五段-阿久津八段戦) |
(問550-1) 先手伊藤五段、後手阿久津八段で戦型は後手のゴキゲン中飛車。これに先手は超速を採用、その右銀は▲3四まで進み、早い進行を思わせる展開となった。しかし終盤に入ってからが長かった。両者ともにしっかり自陣を整備した為、対局は放送時間いっぱいまでかかり感想戦の時間はなく、対局が終わると同時に放送も終了。下図はその終盤の入口、後手が丁寧に受けて攻め合いとはなっていないが、先手陣もまだより固くできる局面。今、△3九龍と入った所で、駒割りは五分。ただ、後手からは△3七桂成や香を入手する手などが残り、後手に楽しみの多い局面とも言える。ここで指された先手伊藤五段の指した一手は何か?攻めの急所はどこか、と言うことと、その前に指しておきたい手は何か?ということ。 (答えはこの下に) |
(難易度・・・ |
(問550-2) 上図から後手はさらに丁寧に受け、△3一の金を△5二の地点にまで持って来ることに成功。これで側面からの攻撃ではとても攻略出来なくなり、先手は上部から手を付けに出た。今、▲7五歩と7筋の歩を突いたところ。ここで後手阿久津八段の指した一手は?上部からの攻めをどのように緩和すべきか。 |
(難易度・・・ |
(これより下に解答)
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(問550-1解答)「馬は自陣に」 ここで先手の指した一手は▲7七馬。「龍は敵陣に、馬は自陣に」という格言そのものを具体化する一着で、この一手によって先手陣も非常に固くなった。ただ、「馬の守りは金銀三枚」とも言われるように守りに絶大な威力を発揮するが、引き場所によっては攻めの目標ともなるので気を付けたい。この局面で言えば、▲8八は壁であまり守りになっていないし、本譜の▲7七はともすると△6五桂や△8五桂など目標にされることもある。ただ、後手の急所が△6四の銀で、▲6六香と攻めるのが一つの形。その為の▲7七馬でもあったようだ。 本譜はこの後、さらに先手の龍を追いながら自陣に手を入れた為、後手陣もしっかりした。横からの攻めが遠くなりすぎ、▲7五歩と今度は縦からの攻めを見て手を付けたのが第2問となっている。 |
(問550-2解答)「米長玉での凌ぎ」 ▲7五歩には△同歩と取る手の他、手抜いて香を拾ったり△4八成桂と攻め合ったりする手も考えられる。それでもすぐに後手玉が寄るということはないが、このままの局面で玉のコビンを攻められると、将来、馬が▲5五へ飛び出したり、▲7三へ打ち込まれたりする手が王手になり危険だ。そこで、後手の阿久津八段は△9二玉と米長玉にしてコビンを緩和する手を選んだ。 端の香の上に玉を持ってくる手を一般的に「米長玉」と言い、駒組み段階からこのような形になるのは居飛車の銀冠くらい。しかし、終盤で一手をかけて米長玉にして手を稼ぐという手筋がある。そのような手筋の狙いは、攻め駒から一路遠くすることにより、手を稼いだり、駒の入手を計る(その玉を寄せる時に一枚多く必要になる)為であることが多く、この局面の米長玉とはやや趣を異にする。ここでは、戦場(7三の地点)から離れるということもあるが、△7三の銀を空いた△8二へ引きたいという意味合いの方が強い。 これに対し本譜は、「端玉には端歩」通り▲9六歩から後手玉に圧力を加えていった。対して後手は、急所の△7五香から強烈な△8八角の打ち込みを敢行、最後は先手玉を即詰みに討ち取り、後手の阿久津八段の勝利となった。 |
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