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NHK杯に見る受けの手筋

(2018年6月11日出題)

第652問(2018年6月10日 井上九段-糸谷八段戦)
(問652-1)
先手井上九段、後手糸谷八段で戦型は相居飛車。但し、後手の糸谷八段が6手目△7四歩と突き、これを取らせる趣向を見せた為、最近ではたまに見るが、歩得対手得という手将棋模様の将棋となった。駒組みはじっくりと進み、先手は対振りの玉頭位取りみたいな陣形に、後手は銀冠にして戦いは中央から起こった。その後、先手は金銀四枚を陣形に引きつけ、やや有利な状況に。下図は、少し悪いながらも離されないように、今△2二玉と△3一にいた玉を上がって手を渡したところ。後手からの攻めは△5七とから△6七とと分かりやすい。しかしここで先手の井上九段は、巧みな手順でこれを防いだ。先手の指した次の一手は何か?ここからの進行を三手まで。
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問652-2)
上図から先手は▲8六玉と中段へ逃げ出し捕まえづらくなった。しかし後手もと金を銀との交換に成功し、ひたひたと後を付いていく。下図の駒割りはまったくの五分。ただ、今金銀取りになっているのでこれを受けなければならない。先手の指した次の一手は?こちらも自然な手を三手まで。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問652-1解答)「筋を変える龍頭の歩」
ここで▲4三歩成と成り捨て、△同金左に▲4八歩と打ったのが実戦で巧妙だった。△同龍など△5六の銀から龍の利きが外れると▲5五馬が王手銀取りになり、△4八とと取るのでは一歩でと金が一路離れてしまうことになる。

実戦は△6七銀成と取られそうな銀を桂と交換してから△4八龍と歩を払ったが、▲8六玉と早逃げで上部へ脱出し、依然先手の模様の良さそうな局面は続いた。


(問652-2解答)「形良く受ける」
金銀取りだけを受けるなら▲7八銀とか▲7七金上とかいう手もあるが、「形が悪い」「筋が悪い」という感覚は必要だ。ここは、▲7八金と龍に当てて、△5九龍に▲7九歩と受けておくのがしっかりした受け方。これなら仮に上部脱出が止められても、▲8七〜▲8八玉と下に逃げ込む手も残っていることになる。

本譜、図の局面で127手と進んでいるが、この一戦の終局は188手で大熱戦となった。先手の玉が捕まるか入玉できるかという勝負になり、遠くから二枚の角を利かせた後手が、最後は先手玉を捕まえることに成功し後手糸谷八段の勝利となった。

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