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NHK杯に見る受けの手筋

(2019年4月8日出題)

第693問(2019年4月7日 大橋四段-千田七段戦)
(問693-1)
新年度最初の対局。先手大橋四段、後手千田七段で戦型は角換わり腰掛け銀。中盤までは先後同形だったが、後手の手待ちに先手があまり見ない研究手順の陣形に組み替え、そこから動いた。その動きに乗じて後手が反撃、難解な終盤戦へ突入。下図は先手が香を補充した手にじっと△3七歩と垂らしたところ。この手の狙いは難しい。すぐに見えるのは歩成りから△4五金と桂を外し△4六桂だがこれがどれほどの攻めかも分かりづらい。相手の攻めが分からないと当然受け方も分からないのが将棋。ここで先手の指した次の一手は何か?受けの一手の価値として何が有効な手になるのかという問題だ。
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問693-2)
第1問の局面はまだ優劣不明だが、そこからの数手に疑問手があったと思われる。下図の局面は後手優勢。今▲5四香と玉頭攻めに最後の望みをかけたところだが冷静に受ければ後手の勝ちまでもう少しでもある。ここで指された後手三手一組の手順は何か?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問693-1解答)「金を玉に寄せて相手の狙いを消す」
ここで先手の指した一手は▲6七金。具体的には歩成りからの攻めを消した手だが、同時に上部からの攻めにも対応した受けの一着。こうした終盤での受けの一手は効果がないとパスになりやすいので注意しないといけない。しかし実戦はこの手ではなくこの後に疑問手が出たようだ。

本譜は△3八歩成から△5八角と打ち込んだが、これに▲5九飛から▲5五歩と反撃した手がまずかったようで、一気に後手に形勢が傾いた。感想戦では(△5八角に)▲5七金から△3六角成▲4七金上などの手が示され、千田七段もよく分からなかったと言っていた。実戦は急転直下となり第2問の局面へと進んでいる。

(問693-2解答)「自玉の凌ぎを読んで、飛車筋を止める」
実戦は△5四同歩▲同歩に△5八歩。これで凌いでいる。飛車筋を止めたいのは当然だが、ただこのように止める時は、この瞬間に▲5三銀あるいは▲5三金からの殺到を余せる読みが必要。次の△5九歩成が必死級の手なので、詰めろが続かなければ大丈夫と正確に読んでおかなければならない。

本譜は詰めろが続かない為、仕方ない▲2九飛だったが▲2四飛と出てもまだ詰めろでないことを読み切った後手が、△3八成桂から△5九歩成と決めに出て、先手からの最後の王手ラッシュを凌ぎ、後手千田七段の勝利となった。

なお、この将棋の終局図から先手玉の詰みを作成。余詰めを消す為、原図と全然違ってしまったが、詰将棋並みの軽やかな手順になっているので「今日の実戦の詰み」もどうぞ。
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