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NHK杯に見る受けの手筋

(2019年8月12日出題)

第710問(2019年8月11日 阪口六段-藤井聡太七段戦)
(問710-1)
先手阪口六段、後手藤井七段で戦型は先手のゴキゲン中飛車対超速。但し、先手の工夫で、▲4五銀と先に出、△3三銀から△4四歩と突かせることで後手の二枚銀の進出を止めて駒組みに戻った。その後、後手は7筋から動き、その動きを待って先手が反撃、難解な中盤戦からねじり合いの終盤戦へ突入。下図は今△2四桂とこれも手筋である控えの桂を据えたところ。△3六桂と端攻め、両方をにらんでいるがすぐに何かを受けなければいけないという訳でもない。そこでここで指された先手の次の一手は何か。
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問710-2)
途中、角が成れるところで、じっと△8二角と先手玉をにらんで引いたのが「なるほど」の一着だった。下図、コビンを攻められ先手が苦しそうに見えるが、ここを凌げば楽しみもできる。そこで今▲7四桂と龍角の両取りを放ったところ。両取りは将棋では頻繁に出てくる手。こうした場合どのようにすれば良いか、どう考えるべきかの指針はある。しかし実戦では時にそれを超えた妙手も出現する。ここで指された後手藤井七段の一着は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問710-1解答)「攻めの催促+玉周辺を広くする手」
ここは▲2六歩とじっと突いておくのが「いかにも強い人の一手」だ。△3六桂に対し▲2七玉を用意し、端攻めに対しても耐久力がある。また、ゆっくりした手だと▲2五歩と催促する手も見ており、後手は急がされることになる。

本譜はそれでも玉頭から何か動くのかと思っていたら、△5一香と打ち、▲7四馬に△5四歩とここから動いたのがすごい構想だった。これで先手の▲5六銀を目標に角を使えるようにし、その成れる角をじっと△8二へ引いて使って、徐々に有利を拡大して行った。

(問710-2解答)「両取りの基本的な考え方と場合の妙手」
両取りをかけられた場合、まず価値の高い方を逃げるのは基本。但し、両方を一手では取られないので、「両取り逃げるべからず」の格言通り、逃げる手に変えて有効な一手を指すのも基本の一つだ。また駒の価値は、その場所、働きによっても変わってくる。今回の場合、角のにらみが強いので、価値そのものは龍より高いと見ることも出来るかもしれない。そこで考えられるのは手抜いて△3六歩と取り込む手だが、角や龍を取られて攻めが続くかどうかを読む必要がある。それが危険であれば普通に△7二龍と逃げておくのも自然。しかし実戦、藤井七段は狙いすましていた。△6四龍が場合の妙手。▲同馬なら△同角と飛角交換で角は敵陣をにらんだまま。実戦もそうなったが、角を取れば、急所の馬を取ることが出来、後手優勢。時にこのような手もあると言うことで覚えておきたい。

本譜はこの後、再度△6四角とこの位置に角を据えたのが急所だった。そして、徐々に局面を優勢にしていくと、先手からの攻め、粘りを丁寧に受け止め勝勢に。後手、藤井七段の勝利となった。
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