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詰将棋のルール


詰将棋のルールには、基本的なルールと、詰将棋独特のちょっと分かりづらいルールがあります。
ここではまず、基本的なルールを説明し、その後分かりづらい部分をできる限り分かりやすく説明してみようと思います。

詰将棋の基本的なルール

ここでは、「指し将棋のルールは、ひととおり知っていること」が前提です。

まず、詰将棋の本などでも、取り上げられていますが、次の七つのルールがほとんど全てです。
(自分の方を「攻方」、詰められる玉の方を「玉方」と表現します)

(1)指し将棋のルールが適用される(一例として次のようなものです)。
 ・打ち歩詰め、二歩はダメです。
 ・行き場所のない駒は打てません。
 ・途中で得た駒を使えます。
(2)千日手は、攻方の失敗となります。
(3)攻方は、王手の連続で攻め、最短手順で詰めなければなりません。
(4)玉方は、最長手順になるように逃げなければなりません。
(5)玉方は、王様を除く残りの駒全部を、合い駒として使えます。ただし、無駄な合駒はいけません。
(6)持駒は全て使う必要があり、王様が逃げる場合も、駒を全部使わせるように逃げなければなりません(詰め上がりに駒が余ってはいけない)。
(7)2手手数が長くなっても、駒が余る場合は、攻め方に駒が余らないように逃げるのを正解とする。

以上のことが全て理解できれば、それで詰将棋の本は読めますが、分かりづらいところもありますので、いくつか具体的に説明していきます。
まず、(1)〜(3)までは、指し将棋が分かれば分かると思いますので、ここでは(4)以降について説明します。


(4)玉方は、最長手順になるように逃げなければなりません。


右の(第1図)詰将棋を解いて見て下さい。「塚田詰将棋代表作」第2問(5手詰)からの出題です。



答えは、1二飛・同玉・3四角・1三玉・2三角成までの5手詰です。

さて、初手1二飛に対して、同香は2四角の一手で、詰んでしまいます。つまり、早く詰んでしまう、同香は受け方として間違いになります。
つまり、1二飛に対しては、同玉とするのが正解となり、このように玉方は常に最長手数になるように逃げなければならないわけです。

(5)玉方は、王様を除く残りの駒全部を、合い駒として使えます。ただし、無駄な合駒はいけません。

この無駄な合駒とはどのようなものか説明します。
上の左図(第2図)を見て下さい。今1六香と打ったところですが、この後、1筋にいくら合駒をしても取られるだけで、意味がありません。つまりこの図は詰んでいると言えます(1筋のどこに香を打ってもその時点で詰み)。しかし、中合いをすることにより、単純に取っても詰まない場合は、無駄な合い駒とは言いません。これが右の第3図です。初心者の方にはちょっと難しいのですが、今2六香と打ったところです。一見合駒が利かず、1二玉に2三香成・2一玉・2二とまでの5手詰に見えますが、2三に桂(又は角・銀)の中合いをするのがうまい受けです。同香成は王手になりませんので、同香不成と取りますが、そこで1二玉と上がります。以下、2二香成・1三玉・2三成香・1四玉・2六桂までの9手詰になります。詰め手順はちょっと長いですが、2三の中合いが無駄ではないことを理解してもらえれば良いと思います。


(6)持駒は全て使う必要があり、王様が逃げる場合も、駒を全部使わせるように逃げなければなりません(詰め上がりに駒が余ってはいけない)。


左の詰将棋を解いて見て下さい。「名作詰将棋」第14問(5手詰)からの出題です。



正解は、1三飛・同金・2四金・同金・1三香成までの五手詰です。

3手目2四金に対し、1二玉は1三香不成、2四同玉は1三馬までで、手数は同じですが、取った金が余ってしまいますので不正解となります。したがって、この場合正解は一つの書き方しかありません。
第1図の五手詰ですが、4手目、1三玉に、2三角成でも、2三馬でも詰みます。こういうふうに、同手数でどちらも駒が余らない場合は、どちらも正解です。詰将棋の本などでも、何の説明もなしに正解が一つしか書いてない場合が多いのですが、同手数で駒が余らない場合は、「基本的にどちらも正解」と覚えていただいて構わないと思います。

(7)2手手数が長くなっても、駒が余る場合は、攻め方に駒が余らないように逃げるのを正解とする。
左の詰将棋を解いて見て下さい。「塚田詰将棋代表作」第7問(5手詰)からの出題です。




正解は、1二金・同香・2三金・同銀・2二銀の5手詰です。

「アレレ!1二金に同玉とすると、どうしても7手になってしまう」と思った方がいると思われます。
その通りです。同玉だと、2三銀・同銀・2二金・1三玉・2三金まで7手で駒が余ってしまいます。
この問題は、有段者でも知らない人が結構いて詰将棋をやる際のネックになっています。
こういう場合は、詰将棋の特殊なルールとして、「2手手数が長くなっても、駒が余る場合は、攻め方に駒が余らないように逃げるのが正解」と覚えて置いて下さい。


以上でルールについての説明は終わりですが、詰将棋について、知っていればいくつかの疑問が氷解すると思われる事項について解説します。


(1)「変化」と「紛れ」について
詰将棋の本を見ていると、時々「変化」と「紛れ」と言う言葉が出てきます。この言葉の意味がよく理解できない人がいたのでここで説明します。
「変化」は指し将棋でも使いますし、そう使っている通り、王様が作意手順とは別の方へ逃げた場合の詰め手順です(したがって、「変化」は詰む)。それに対して「紛れ」は、解答者を惑わすための手順であり、解答者が間違った手を指したことによって、王様が詰まなくなることを言います。


(2)同手数の場合の逃げ方について
「逃げ方が同手数の場合、どっちが正解なの?」という質問はよくされます。
もちろん、駒が余る方へ逃げるのは不正解ですが、同手数駒余りなしの場合はどうでしょう。
この場合は、基本的には、どちらも正解ということになります。しかし、有段者の人には、できれば作意手順をちゃんと見つけてもらいたいのです。
すなわち、「同手数駒余りなしの場合には、妙手が入っている方を正解として下さい」ということです。

たとえば、左の詰将棋をやってみて下さい。「名作詰将棋」第27問(5手詰)からの出題です。



正解は、2二飛・3二香合・4三金・同玉・5三金までの5手詰めです。

初手2二飛に対して、同角・5三金・3二玉・4二金打でも同じ5手で駒が余らず正解です。しかし、3二に合駒をした後、平凡に5三金と打つと3一玉と落ちられて詰まなくなります。すなわち、4三金のちょっとした妙手が必要になってくるのです。
詰将棋を作る人たちは、できるだけ作意手順(正解)を一つにしようと努力しているのですが、同手数駒余りなしが直せない場合も多々あるのです。その場合はできるだけ妙手の入っている方を正解に答えてあげて下さい。


(3)「キズ」とは

「詰将棋にキズがある」とは、詰将棋を作る人の間では普通に言われることですが、解く側としては知らなくても問題はありません。ただ、知っていればより詰将棋がより理解し易いと思われますのでここに説明しておきます。
先ほどの「同手数駒余りなし」というのも、「キズ」のひとつです。本来はない方がいいし、なくすように作者は苦労しているのです。
そのほかのキズとしては、非限定のキズ(たとえば、香や飛車・角を打つ場合、決まった位置ではなく、どこから打ってもいい場合)や、次の(4)で説明している「二手変長」のキズなどがあります(キズにも大小あり、詰将棋作家の間でも必ずしも一致している訳ではなさそうです)。
「不詰め」や「余詰め」は、キズではなく、こういったものが生じる場合は、不完全作として、詰将棋には入れてもらえません。

(4)「二手変長」とは
有段者でも「指し将棋派」の人は、このことを知らない人が結構多く、同手数の逃げ方の場合と同じくよく質問される項目のひとつです。「変化長手数」のうち、変化が二手長くなるのを「二手変長」といい、「キズ」の一つですが、ときに普通の詰将棋の本でもこのキズのまま載せてあり、有段者の人に「この詰将棋へんじゃないの」と質問されます。

第5図の5手詰がそうでしたね。
5手詰なのに、逃げ方によっては、駒余り7手詰になってました。
繰り返しになりますが、詰将棋特有の「ルール」のひとつだと考えて下さい。
前に、ちゃんとした単行本の詰将棋で、4手手数が長くなって駒が余るものを見たことがありますが(常連客が持ってきた)、これは通常は不完全作として載せてはいけないものだという認識をほとんどの詰将棋を作る人は持っていると思います。
しかし、変化が二手長くなる「二手変長」は普通の詰将棋の本でも頻繁に出てきますので、駒が余らない詰手順を答えて下さい。


以上で詰将棋のルールについての説明を終わりにしたいと思いますが、もし、これらの文章で分からないところがありましても、多くの詰将棋を解くうちに徐々に理解していく部分もありますので、簡単なものからたくさんの詰将棋に触れてみて下さい。

1999年1月20日作成
1999年6月18日改訂

※2019年8月追記
「二手変長」につきましては、現在はほとんど不完全作との認識が強くなっており、新しい本や雑誌には出てこないと思われます。そのため、現在では気にする必要はないでしょう。但し、古い詰将棋本を解いた時に、「おかしいな?」と感じましたら、ここにある「かつてのルール」を思い出して頂ければと思います。

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