ここでは、将棋世界の内容と感想を簡単に書いていきます。何年もたまっていけば、いつその記事があったかのデータベースになりますし、普段購入していない方の購入時の参考になればとも思っています。
また、何年もたまり、長く重くなってしまった為、2015年以前を分けました。今後は5年単位に分けて載せようと思っています。
※この「将棋世界のレビュー」は2019年12月号までで終了しました。
2016年9月号(8月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、特集記事にもなっている「頂上対談」、15ページに及ぶ「渡辺明竜王×佐藤天彦名人の対談」です。最初のページに「出会いから青春時代、棋王戦での激突、そして未来の将棋界について、本音で語り合う」と書かれているように、普段あまり知ることのない二人の関係や対戦に対する思いなど、いろいろ興味のある話が載せられています。 プロ棋戦の観戦記はたくさんありました。まず「棋聖戦第3局」(羽生-永瀬)(解説:藤井猛九段、構成:大川慎太郎氏)から。この記事、対局の解説も面白いのですが、その解説に入る前に書かれている藤井九段の羽生棋聖や永瀬六段への思い、分析がとても面白い。さすが藤井九段という感じで一気に読んでしまいましたね。今月号は、読み切り講座やリレー自戦記も面白かったのですが、個人的にはこの記事が一番でした。続いて「棋聖戦第4局」(羽生-永瀬)(文:池田将之氏)、「王位戦第1局」(羽生-木村)(記:小暮克洋氏)が詳しい観戦記とともに載せられています。 またそれ以外の棋譜としては、「順位戦C級1組」(青嶋-泉)(「盤外盤上一手有情」の中)、「銀河戦本戦Bブロック」(羽生-屋敷)、「明治36年の将棋新手合」(関根金次郎-飯塚力造)(「粋鏡こぼれ話」の中)などがあります。 時々掲載される「リレー自戦記」は、青野照市九段。取り上げた棋譜は第42期棋王戦の予選で永瀬拓矢六段との一戦。40歳も年が違う新鋭との一局について。いろいろな思いのある一局だったのでしょうが、元々青野九段の文章は読みやすく面白いのでこれも現在の状況として興味深く読みました。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって36回目。今月のテーマは、(1)升田幸三の神技、(2)大山康晴、受けの至芸、(3)午前5時54分の勝負手、(4)上手芸は、いまもあるか?の四つ。(1)は昭和33年の名人戦第7局、大山-升田戦の序盤から中盤の箇所での升田自慢の名手。(2)は昭和31年の名人戦第2局、花村-大山の終盤戦。猛烈に攻められ、大山陣に受けがあるか、という局面。(3)は平成20年A級順位戦の佐藤康光-木村の終盤戦で、なんと朝5時54分の局面ということです。(参考棋譜は3つ:第17期名人戦第7局大山-升田戦、第15期名人戦第2局花村-大山戦、第67期A級順位戦佐藤康光-木村戦) 読み切り講座として、黒沢怜生五段の「黒沢流振り飛車のさばき方」があります。自身の棋譜を使い、その局面からどのように指したら良いか、単なる棋譜の解説ではなく、その考え方を分かりやすく書かれています。評判が良ければ連載の可能性もあるのでしょうか?個人的には読みやすいので標準以上の記事だと感じています。ものすごく個性があるとは言えませんが、振り飛車の講座は連載して欲しいですね。(参考棋譜は3つ:平成27年竜王戦6組黒沢-青野戦、平成28年YAMADA杯黒沢-中村亮介戦、平成28年竜王戦5組村田-黒沢戦) 隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.5は「相掛かり-引き飛車棒銀の攻防」。題名の通り相掛かりで先手の棒銀について。後手の△8四飛型における基本的な棒銀の受け方から、山崎八段の新構想や△1四歩の意味、△8五飛型までいくつかの実戦を元に、この戦型のポイントを解説しています。(参考棋譜は平成26年名人戦第4局羽生-森内戦) 「かりんの将棋部屋」第5回は「端攻めのポイント応用編」で講師は飯島栄治七段。先月に続き「端攻めのポイント」で今回は「応用編」と書かれていますが、特に難しくなった訳ではなく、続編のような感じです。問題も良く実戦に出てくる基本的なもの。有段者にとってはこうした筋はすべて知っている訳ですが、その上で実戦で使えるかどうかです。級位者の人たちはこのような筋があることを知ることがまず第一。そしてそれを実戦でも使えるようになれば勝率は格段に上がるということでもあります。 また、室谷女流二段との二枚落ちの棋譜もあります。銀多伝で定跡通り、破り方の見本みたいな棋譜ですので実戦で指す機会のある人には参考になるでしょう。 付録は上野裕和五段の「歩の攻め手筋50」。「攻め方がうまくなる!歩の基本テクニック集」とあるように、歩の基本手筋の問題50問です。難易度は初心者向きの基本から最後までやさしい級位者向け。しかしそれを実戦で使えることが大切。体に染みこませて必要な場面で的確に使えるようになれば初段は近いと言えるでしょう。 |
2016年8月号(7月2日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、特集記事でもある「佐藤天彦新名人誕生」。そのロングインタビューです。構成が大川慎太郎氏でしたので、ちょっと変わった切り口を期待してしまいましたが、比較的おとなしめの内容でした。第1局から第5局までのポイントを解説し、その後に「これまでの棋士人生について」の話。その第1局から第3局の棋譜はこの巻頭カラーの中に。その後、本文の中でまず「第5局」(文:田名後健吾氏)の解説があり、さらに今泉健司四段の文章で「第4局」が載せられています。 棋聖戦が始まり、王位戦ももうすぐ始まるため、「王位戦&棋聖戦展望対談」として深浦康市九段と鈴木大介八段の二人による対談があります。王位戦は木村八段、棋聖戦は永瀬六段の挑戦と言うことで、この二人についてのいろいろな話、興味深い話が多くたいへん面白かったです。 プロ棋戦としては名人戦以外に「棋聖戦第1局」(羽生-永瀬)(文:雲井宏氏)、「女流王位戦第3局」(里見-岩根)(文:下村康史氏)、「マイナビ女子オープン第4局」(加藤-室谷)(文:下村康史氏)、「電王戦第2局」(山崎-PONANZA)(文:田名後健吾氏)、「順位戦B級2組」(青野-森下)(「盤上盤外一手有情」の中)、「銀河戦本戦Gブロック」(野月-丸山)などがあります。 先月からの続き、今回は後編で、「棋士に聞く本音対談 中原誠×渡辺明」。参考棋譜は、全部で5つ(昭和62年名人戦第4局・対米長邦雄、昭和60年名人戦第1局・対谷川浩司、平成15年王位戦予選・対行方尚史、昭和57年名人戦第8局・対加藤一二三、平成20年王将戦2次予選・対木村一基)。棋譜の解説はそれほど多くはないのですが、話の内容は先月に引き続き興味の持てる内容です。 今月号には、全体的にインタビュー等の読み物が多い感じをうけます。既に上記に三つありますが、さらに「関西本部棋士室24時」の中でも、女流2級に昇級した山口絵美菜女流2級と里見咲紀女流2級のインタビュー記事があり、また、インタビューではありませんが、「盤上盤外一手有情」の中では、記録係に関することも触れられています。 さらに、最後の記録のページには、竜王戦決勝トーナメントが始まったということで、出場者の抱負が載っています(その後に、「竜王戦挑戦者予想クイズ」もあります)。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって35回目。今月のテーマは、(1)コンピュータが変えた常識、(2)53歳の升田名人は誕生していたか、(3)鈴木大介-山崎隆之、渾身の終盤戦、(4)タイトル挑戦は人生を変えるか、の四つ。(1)は相矢倉の基本的な形から、以前はダメと言われていた手が復活した局面について。これは矢倉の本道とも言える形。平成25年に復活し、30局以上指されているようです。各棋士たちの勝利イメージ、感想も少しずつ違い、個人的には一番面白い題材でした。(2)は昭和46年、大山-升田の名人戦から。(3)は現代、平成25年順位戦からその終盤戦、詰むや詰まざるやという局面なので難しいです。(参考棋譜は2つ:第30期名人戦第7局升田-大山戦、第72期順位戦B級1組鈴木大介-山崎戦) 隔月講座、門倉啓太四段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.4は「先手中飛車-始まった左穴熊への逆襲」。題は左穴熊とありますが、この戦型の解説はほぼ半分です。そこでは後手の対策(三間飛車)も最新の対局から解説しており、左穴熊側が苦戦しているという風に述べられています。そして、その後半では、先手中飛車に対して居飛車の△5四歩型を解説。こちらも一筋縄ではいかないことから、菅井流▲8八飛の形を解説し、「手探りの部分が多く、お互い工夫の余地のある戦型」と結んでいます。(参考棋譜は2つ:平成27年王位戦予選の今泉-斉藤慎太郎戦と平成26年朝日杯の久保-畠山鎮戦) 「かりんの将棋部屋」第4回は「端攻めのポイント」で講師は室谷由紀女流二段。今回、問題の4問は三択ではなくなっています。しかもその分簡単かというとそうでもなく、初心者には難しいかもしれません。ただ、実戦に非常に良く出てくる筋ですので、覚えておけば必ず役に立つでしょう。特に第4問は実戦そのもの。初段位でも見落とすことのある次の一手ですが、これが指せれば実戦がなお面白くなる、そんな一着です。 付録は塚田泰明九段の「塚田流角換わり△6五同桂革命」。「角換わりの後手戦術に新風!」とあるように、角換わり腰掛け銀における後手の攻め方。はしがきに、「ヒントは将棋ソフト」とあり、そこから研究して実戦にぶつけたとのこと。シンプルで、しかも後手でも攻めることが出来るので、角換わりをたまにでも指す人はこの変化について詳しく研究してみるのも面白いかもしれません。 |
2016年7月号(6月3日発売)の内容と感想 |
今月号の巻頭カラーは、特集記事にもなっている「棋士に聞く本音対談 中原誠×渡辺明」です。これは自然流と呼ばれる中原十六世名人と渡辺竜王とのスペシャル対談。今回は前編と言うことで、二回に渡って載せられるようですが、なぜこのような対談が組まれたかと言うと、渡辺竜王が現在中原将棋を学んでいるということからだそうです。内容も面白く、当時の有名な棋譜を中心に、渡辺竜王が時々「現代ではこう指す(考える)」というような話も交え、対談が進んで行きます。使われた参考棋譜7局もすべて載せられていますので、その考え方と共にじっくり並べて見ると面白いでしょう。 続いて「名人戦第3局」(羽生-佐藤天)(記:大川慎太郎氏)があります。この記事、仕掛け直後の読みと変化が詳しく書かれていますので、最新横歩取りに興味のある方は必読です。また、終盤の寄せの難しさも実況で見ていた以上に詳しい変化が載せられています。 プロ棋戦としては他に「名人戦第2局」(棋譜を含め4ページ、解説は問答形式で飯島栄治七段)、「マイナビ女子オープン第2局」(加藤-室谷)(文:鈴木健二氏)、「第3局」(文:国沢健一氏)、「女流王位戦第1局」(里見-岩根)(文:池田将之氏)、「岡崎将棋まつり」(佐々木勇気-藤井聡太)(文:鈴木宏彦氏)、「王将戦一次予選」(木村-石井)(「盤上盤外一手有情」の中)などがあります。なお、「岡崎将棋まつり」の藤井奨励会三段は、史上最年少の三段。この一局も「詰めろ逃れの詰めろ」が三度出現するすごい一戦で、「歴史に残る天才対決」と書かれており、一手20秒の超早指し対局ですが、盤に並べて鑑賞したい一局です。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって34回目。今月のテーマは、(1)花村元司、真剣師時代の秘手、(2)花村元司、タイトル戦の秘手、(3)若手をひねるコーヤン流、(4)大山流の豪腕日程、の四つ。(1)は真剣師時代、六枚落ちからのエピソード。(2)は昭和31年、塚田正夫九段戦での寄せの局面。(3)は昨年の順位戦C級2組、永瀬-中田戦。コーヤン流の終盤、居飛車穴熊への端攻めに関して。この棋譜もですが、中に書かれているコメントにもいろいろ面白い内容があります。特にソフトの評価値の話など今回のテーマでは一番面白く読みました。(4)は昭和57年、実際にあった大山十五世名人の対局日程の話。(参考棋譜は2つ:第6期九段戦第1局塚田-花村戦、第74期順位戦C級2組中田-永瀬戦) 永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。最終回だそうです。題は「名人戦で現れた形」として、名人戦第2局の将棋を取り上げ解説しています。ただ後半には、第3回で解説した形にも触れ、その補足もあります。参考棋譜はその部分を踏まえ、1月に行われた順位戦B級1組の谷川-松尾戦から。全6回、最後にまとめの中で、次のように述べられています。「早囲いの▲7八玉型は、意外な堅さを発揮します。▲8八玉型と比べ、玉が戦場に近いというデメリットもありますが、角交換後の打ち込みに強いというメリットもあります。銀を前線に繰り出し、積極的な指し回しができるのも早囲いの魅力のひとつで、自分から動きたい人にはうってつけの戦法でしょう。」 隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」居飛車編Vol.4は「続・角換わり-升田定跡と富岡流」。今年4月に角換わり腰掛け銀の「富岡流」と呼ばれる手順の発見で升田幸三賞を受賞したことに関し、今回は、升田定跡からの歴史を振り返り、最後に富岡流の変化を解説しています。(基本の升田定跡→丸山流▲1二歩〜▲1一角→佐藤流△3五銀〜△2二角→富岡流へ)(参考棋譜は2つ:平成14年棋王戦第4局の羽生-佐藤康戦と平成21年朝日杯の富岡-金井戦)。 「かりんの将棋部屋」第3回は「二枚落ち実戦編」で講師は飯塚祐紀七段。最初の問題4問は特に駒落ちということではなく、普通に級位者向けの次の一手や必死問題です。そして後半は飯塚七段との二枚落ち。アマ高段者でも一癖も二癖もある上手だとこんなにきれいに負けてくれないと言うことはありそうですが、指し方の筋は役に立ちますので級位者の人は並べて参考にしてみて下さい。 付録は中田章道七段の「中田章道短編詰将棋集」。今回は良質な詰将棋が表紙を合わせて40題あり、詰将棋を解きたい人にはお得感のある7月号です。7手から9手、11手、13手、15手まで各手数8問ずつ全部で40問。難易度は詰将棋サロン並み(それより筋良くその分やや易しい感じ)ですので、有段者の人でも当分楽しめる付録となっています。 |
2016年6月号(5月2日発売)の内容と感想 |
先月から名人戦が始まった為、巻頭カラーのトップには、「名人戦第1局」(羽生-佐藤天)の写真から。観戦記は本体の中央くらいに日浦八段が書いています。その観戦記、もちろん棋譜の解説もありますが、それ以外の話もあり個人的には面白く読みました。続いて「王将戦第1局から第5局総括」(郷田-羽生)(構成:相崎修司氏)があります。これは局面を振り返りながらの郷田王将のインタビュー記事。これも本体に第6局がインタビュー形式の自戦解説として載っています。さらに次の巻頭カラーは、棋王戦防衛を果たした「渡辺明棋王インタビュー」記事、「マイナビ女子オープン第1局」(加藤-室谷)(文:田名後健吾氏)と続いています。 特集として、「熱局プレイバック」があります。これは2015年度の将棋からプロ棋士が厳選した対局ベスト10です。その一位に選ばれたのは、「棋王戦第4局」(渡辺-佐藤天)。この一戦はその後に観戦記もあります。選ばれた10局の棋譜の他に、番外編2局もあり、どれも面白い名局ばかりですので、是非並べたい対局でもあります(タイトル戦は実況されたものも多い)。またその後に、将棋大賞選考会の模様や全棋士の成績、升田幸三賞など、2015年度が終了したことで賞や記録が載せられています。 プロ棋戦としては上記の「名人戦第1局」「王将戦第6局」「「棋王戦第4局」の他、「竜王戦6組」(田丸-吉本アマ)(盤上盤外一手有情の中)、「竜王戦1組」(久保-屋敷)、「銀河戦本戦Aブロック」(田村-高崎)などがあります。また、「電王戦第1局」(山崎-ポナンザ)(記:下村康史氏)の記事も載っています。 「リレー自戦記」は、村山慈明七段。取り上げた棋譜はNHKテレビ将棋トーナメント決勝の千田五段との一戦。これは見ていた人も多いでしょう。しかし放送だけでは分からなかった読みの内容や実際の形勢など、詳しく書かれていますので、「なるほど、そうだったのか」と思うことも多々ありました。 「イメージと読みの将棋観2」、先月は休みでしたが、今回で33回目。今月のテーマは、(1)渡辺流の早仕掛けは成立するか、(2)木村義雄八段の大構想、(3)棋士はモテる職業か?(4)谷川、奇跡の逆転勝ち、の四つ。(1)は角換わり腰掛け銀の定跡で、シンプルな▲4五歩の仕掛け。人によって若干見方が違っていました。(2)は昭和12年、木村義雄八段と神田辰之助八段の将棋。誰も当てられなかった木村八段の構想とは?(3)は「昔は関根金次郎名人などモテる棋士がたくさんいた」と言うことでこの質問。(4)は平成3年の王位戦第5局、谷川-中田宏樹戦の終盤戦での大逆転劇。 永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第5回で「手ごわい渡辺新手」。基本図から△8五歩と突いた局面。以前は後手も棒銀に出てくることが多いと言うことですが、△7五歩と突き、▲同歩に△4六角と角をかえ△6四銀と出る変化。これが渡辺新手と言うことで、その解説です。現在は、「後手に風が吹いてきている」という見解をしており、その渡辺新手より前に先手の工夫が必要では、と考えているようです。 隔月講座、門倉啓太四段の「最新定跡探査」振り飛車編Vol.3は「角道オープン四間飛車」。この名称について次のように書かれています。「以前は振り飛車側から早い段階で角交換をすることが多かったため「角交換四間飛車」と呼ばれていましたが、研究が進むにつれて、角交換をするタイミングをずらしたり、角交換せずに飛車を振り直して戦ったりすることが増えてきたため、「角道オープン四間飛車」という呼称にさせていただきます」と。 そしてその「角道オープン四間飛車」の最新の変化を先手と後手で解説しています。相手の有力な対策も載っていますので、居飛車党で指さなくても(相手に指されることを考えると)読んでおく必要がありそうです(参考棋譜は2つ:平成27年棋聖戦2次予選の丸山-藤井戦と平成28年順位戦C1の高野-高崎戦)。 「かりんの将棋部屋」第2回は「終盤力をつけよう」。講師は村山慈明七段で、最初のページには三択で問題が四問出ています。まずは自分なりに答えを出してから読み進めてもらいたいと思いますが、初段位ある人なら三択を見ずに正解して欲しいくらいの難易度ですね。 付録は勝又清和六段の「新手年鑑2015」。毎年「新手ポカ妙手」を出していましたが、今回は新手のみでまとめたということです。中を見てみると、居飛車振り飛車の対抗形が多いですので、アマチュア向きと言えるかもしれません。解説も分かりやすいですし、後で私もしっかり読んで実戦に使おうかと思ってます。 |
2016年5月号(4月2日発売)の内容と感想 |
今月は、3月で順位戦がすべて終了したということもあり、特集は「第74期順位戦最終局」。そして巻頭カラーには、その順位戦を総括、名人戦の展望も兼ねた「橋本×阿久津対談」が組まれています。この対談、8年前にも行われ、過激な発言で話題を呼んだとありますが、今回もなかなかはっきりとものを言っており面白い記事になっています。特に天彦将棋の特徴をつかんで話していることや、橋本八段の名人戦予想は「奪取!」とはっきり言っているところなど(ちなみに私の予想は希望も含めて4-3で防衛です)。また先月と同じく棋譜もたくさんありますから並べて勉強するにも良さそうです。その載せられている参考棋譜は、A級で5局(森内-佐藤天戦、深浦-佐藤天戦、佐藤康-深浦戦、屋敷-広瀬戦、郷田-行方戦)、B1では橋本-畠山鎮戦と昇級した「稲葉八段の自戦記」で畠山鎮-稲葉戦があります。B2は糸谷-豊川戦、阿部隆-澤田戦、飯島-中川戦、C1では浦野-中村太地戦、斎藤慎太郎-片上戦、北島-富岡戦が、C2は「盤上盤外一手有情」の中で取り上げられ、永瀬-藤森戦が載っています。そしてそれらの後に、いつも通り「昇級者喜びの声」があります。 プロ棋戦としては「王将戦第4局」(郷田-羽生)(解説は深浦康市九段で、自身の感想も入れ、角換わりを分かりやすく書いています。)と「第5局」(棋譜を含め2ページ)。(王将戦第6局は次号ということですが、3月19日に終わっているのにこれで間に合わないのですね)。 他に、「棋王戦第3局」(渡辺-佐藤天)(記:田名後健吾氏)、(「第2局」は棋譜のみ)、「女流名人戦第5局」(里見-清水)(文:渡辺大輔氏)、(「第4局」は棋譜のみ)、「第1回湯原あったまるオープン戦決勝」(室田伊緒-室谷由紀)(写真と記事で4ページ:渡辺大輔氏)、「第9回朝日杯将棋オープン戦準決勝・決勝」(棋譜は村山-羽生戦、森内-戸辺戦、森内-羽生戦)(記事は棋譜を含め6ページで文:相崎修司氏)などがあります。 巻頭カラー3ページを含め7ページに渡ってマイナビ女子オープンの挑戦者になった、「室谷由紀女流二段のインタビュー」記事があります。そしてその中には、挑戦者決定戦でもある室谷-西山戦の棋譜も。また、続く「リレー自戦記」も室谷女流二段で、棋譜は準決勝の清水女流六段との一戦。戦型は後手の角道を開けた四間飛車に先手は中央位取りの趣向。後手が序盤から動いて手将棋となった将棋です。この実況は私も見ていましたが、室谷女流二段の快勝譜。今回これだけ取り上げているなら、表紙にも使ったら良いのにと思いましたね。 短期講座の最終回、「相振り飛車の可能性」。今月は「藤井システムとわたし」と言うことで、藤井システムについて、杉本七段の考え方と共に様々な形のポイントを分かりやすく解説しています。現在の藤井システムがどういう状況にあるのか、振り飛車で指す人はもちろん、居飛車穴熊を指す人にも知っていて損のない講座です。(参考棋譜として平成20年竜王戦の杉本-羽生戦、平成27年竜王戦の西尾-杉本戦、平成27年NHK杯の斎藤慎-杉本戦の3局) 隔月講座、金井恒太六段の「最新定跡探査」は、居飛車編Vol.3「角換わり-後手、端歩を手抜く先攻策」。今回は、角換わり腰掛け銀の同型から。最近はやりだした後手が9筋を受けずに△6五歩と先攻する形です。そしてその形が先手不満として▲3七桂のかわりに▲9五歩と端を突き越す形、さらに先手番での応用、と最新の変化を解説。こちらも指す人には必読の講座です(参考棋譜は2つ:平成27年日本シリーズの三浦-深浦戦と平成28年王将戦第2局の羽生-郷田戦)。 先月、「かりんの将棋上り坂↑」が最終回と出ていましたのでまったく出なくなるのかと思っていましたら、今月から新連載として「かりんの将棋部屋」が始まりました。内容は、三択になっている次の一手問題をかりんさんが解いていき、その解説をすると言うもの。難易度は級位者向けのやさしいものからやや読みを入れないといけないものまで。記事は気楽に読める会話形式ですが、かりんさんの答えの側に「正解」まであると読者が解答を考える前に見えてしまいますね。解答だけは最後に持ってきて欲しいです。でもこれからの進行には期待しましょう。 「第58回奨励会三段リーグ戦」が終了し、その表の後に、3人の「四段昇段の記」があります。 付録は杉本昌隆七段の「相振り飛車 常識の手筋」。「初段を目指す相振り党必読の一冊!使える手筋50題」とあるように、大部分は部分図で基本的な手筋を取り上げて問題にしています。相振りを指すと必ずと言って良いほど出てくる筋ですので、級位者はじっくり考えて、有段者はひと目で指せるように50問に挑戦してみて下さい。 |
2016年4月号(3月3日発売)の内容と感想 |
今月号の特集は「第74期順位戦ラス前」。ネットを見ていると最新結果を知ってしまうため、どうしてもこうした記事への興味は低くなってしまいますが、雑誌だけしか情報のない人や、どういう状況だったのか後からでも知りたい人には分かりやすい記事になっています。そして棋譜がたくさん載っているのもうれしい。特に選び抜かれた棋譜だけに並べて勉強するには最適でしょう。その載せられている参考棋譜としては、B1で三浦-村山戦(盤上盤外一手有情の中)、B2で北浜-阿部戦、中田宏樹-糸谷戦、田村-野月戦、青野-飯島戦、藤井-鈴木大介戦、C1では富岡-斎藤慎太郎戦、平藤-佐々木勇気戦、中村太地-小林裕士戦、C2で増田-宮本戦、青嶋-石田直裕戦、八代-梶浦戦、及川-佐藤和俊戦などです。 巻頭カラー1ページ目から「王将戦第3局」(郷田-羽生)(記:大川慎太郎氏)があります。この将棋は、相掛かり戦で序盤から長考の続いた難しい将棋でしたが、その説明しづらい対局のポイントを分かりやすく解説しています。そして巻頭カラー後半には「棋士に聞く本音対談」があります。こちらには、村山慈明七段と戸辺誠六段が登場。渡辺竜王、佐藤天彦八段と仲の良い四人組として出会いから、それぞれ対戦した将棋の内容について話され、最後には棋譜も3局あります(平成19年順位戦・村山-戸辺戦、平成25年順位戦・村山-戸辺戦、平成26年順位戦・佐藤天-村山戦)。 プロ棋戦としては「棋王戦第1局」(渡辺-佐藤天)(記:津江章二氏)、「王将戦第2局」(郷田-羽生)(棋譜を含め2ページ)、「女流名人戦第3局」(里見-清水)(記:小暮克洋氏)、「第2局」は棋譜を含め2ページ、などです。 「リレー自戦記」は、八代弥五段。取り上げた棋譜は王位戦予選準決勝の佐々木勇気五段との一戦。戦型は角換わり腰掛け銀。実戦の対局中の読みや変化など丁寧に解説されている他、プロになって3年半と言うことで、心境なども綴っています。 先月で終わりかと思っていた「相振り飛車の可能性」。今月は「定跡のフロンティアに迫る」としてまだ続いていました(来月が最終回とのこと)。今回の内容は、相四間飛車の考え方と杉本七段の実戦講義。定跡は、角道を止めた状態での相四間飛車と角交換型四間の相振り。実戦は2局あり、一つ目は平成9年の全日プロ、杉本-桐山戦で先手向かい飛車対後手四間飛車。二局目は平成27年の棋王戦予選の杉本-香川女流王将戦。こちらは相三間飛車からお互い向かい飛車に振り直す将棋でした。 隔月講座である門倉啓太四段の「最新定跡探査」は、振り飛車編Vol.2「続・藤井システム-攻撃的な先手番」。2ヶ月前の後手番の藤井システムでも取り上げたように、今回も最新のポイントを上げています。それが、序盤で藤井システムに組むまでの問題。そして本題となる居飛穴を目指す後手に対する先手藤井システムの指し方。最新の棋譜を題材に詳しく解説しています(参考棋譜は2つ:平成27年王将リーグ戦の久保-渡辺戦と平成25年順位戦の窪田-森下戦)。 永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第4回で「早い▲6八玉作戦」。今回最初は現在続いている王将戦の第1局を取り上げています。その後、後手からの急戦対策。さらに1月の行方-石井戦を参考にした指し方も。最後の参考棋譜は平成元年のNHK杯、桜井-羽生戦。これは棋譜もありますが、後手の羽生五段(当時)の急戦がうまくいった例です。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって32回目。今月のテーマは、(1)角換わり腰掛け銀、後手先攻、(2)「神田君、時間だよ!」、(3)若き日の羽生名人、(4)叡王とコンピュータの対決、の四つ。(1)は同型角換わり腰掛け銀から9筋を受けずに△6五歩と先攻する将棋。その仕掛けをどう見るかと言うもの。(2)は昭和17年の第3期名人戦。対局者は木村義雄名人対神田辰之助八段。いろいろな本で紹介されている逸話の中の言葉「神田君、時間だよ!」の将棋です。(3)は平成3年当時の羽生棋王と先崎五段のオールスター勝ち抜き戦。(4)はこれから対戦する注目の電王戦の話です。 このテーマを見た時、テーマ(4)が一番面白そうでしたので最初に読んだのですが、本人がいることもあってか皆無難なことしか話していません。今回の四つのテーマで意外に面白かったのがテーマ(1)。後手の先攻について、人により十分にあり得ると思う人もいれば、後手が無理をしていると考える人もいました。今後、この形がどういう結論になるのか気に掛けていたいです。 「かりんの将棋上り坂↑」は今回が最終回とのこと。中川大輔八段との四枚落ちを実際に指した将棋です。定跡から外れた後すばらしい構想力を見せ、寄せちょっと前にややぬるかった手はあったものの全体としては良く指すことができたと思います。と言うことで、「1級認定」となりました。 付録は川上猛六段の「囲いの周辺手筋」。「攻め方、受け方。実戦で差がつく39のハイテクニック」とあり、終盤の寄せや受けの問題集です。難易度は、非常に良く出てくる手筋ですので級位者向け。ですが、形の僅かな違いもしっかり読んで正解するには有段の力が必要です。したがって、級位者から初二段クラスまで、かなり役に立つ付録と言って良いでしょう。実戦で使えるように、何度も見てしっかり覚えて下さい。 |
2016年3月号(2月3日発売)の内容と感想 |
今月号の特集は「叡王への軌跡」です。これは第1期叡王に輝いた山崎隆之八段の自戦解説で、決勝の2局を含め、全部で4局取り上げられています。私自身は一局も生では見ていないのですが、それでもこの記事は一番面白く読みました。それだけ指した本人の考えや心の動きが良く書かれていて引き込まれます。一番ページ数の多い決勝第2局で6ページ、それ以外は5ページしかないのがちょっともったいないというくらい面白い記事でした。(棋譜は、山崎-青嶋戦、村山-山崎戦と決勝の2局である山崎-郷田戦) 巻頭カラーには、棋王戦の挑戦者になった「佐藤天彦八段へのインタビュー」記事が載せられています。また、「同姓同名対談」として中村太地六段と、ヴァイオリニストの中村太一(だいち)さんの対談があります。芸術家の話とかは、意識的に読んだり聞いたりしない限りなかなか普段このような話を聞く機会はありません。「へぇー、そうなんだ!」というような話がいくつもあり普通に面白かったです。 プロ棋戦としては「王将戦第1局」(郷田-羽生)(文:鈴木健二氏)、「女流名人戦第1局」(里見-清水)(文:渡辺大輔氏)、「女流王座戦第5局6局」(加藤-伊藤)(自戦記:加藤桃子女流王座)の他、「盤上盤外一手有情」の中にある竜王戦6組上野-藤本アマ戦などです。 特別講座として、「佐藤天彦の積み重ねの逆転術」があります。棋王戦の挑戦者にもなり、最近勝ちまくっている佐藤八段の逆転した将棋を題材にそのポイントを本人が解説した面白い講座です。取り上げた棋譜は全部で4つ。A級順位戦の対渡辺戦、NHK杯の対稲葉戦、朝日杯の対田村戦、棋聖戦の対佐々木慎戦。この中でNHK杯の将棋は私も見ていましたし、「受けの手筋」でも取り上げていますが、その時の考え方が詳しく載っているのには驚きました。順位戦や朝日杯でしたらこれも見ていた人も多いでしょう。内容は、相手もプロを終盤で逆転するのですから簡単ではないですが、考え方は大変役に立ちます。有段者なら是非読んでおきたい記事です。 先月からの短期講座「相振り飛車の可能性」。今月は上級編です。内容は大きく三つ。まずは「後手向かい飛車は苦戦」であるということ。その理由を最新の菅井流速攻も含め解説しています。次に「相振り美濃囲いのコツ」を述べ、その後に後手はどうしたら良いかの「有力な相三間飛車」の解説です。特にこの相三間に対する解説が最新研究も含め一番多くさかれており、相振り飛車を指す人には必読でしょう。 「リレー自戦記」は、瀬川晶司五段。取り上げた棋譜は王位戦予選決勝の阿部光瑠六段との一戦。戦型は横歩取り△3三角戦法(先手が瀬川)だが、序盤から光瑠流とも言える一着が出てリードを許してしまいます。しかしその後開き直り逆転。その辺りの心情が細かく書かれています。 永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第3回で「基本図からの変化」。今回は▲8八玉と囲う前の早い▲4六銀の変化についてが一つ。さらに▲6八玉させ動かす前に▲3五歩と突いて動く形と、とにかくこの早囲いも日々新しい形が出てきていますので、その最新形についての解説です。(参考棋譜はA級順位戦森内-渡辺戦) 隔月講座である金井恒太五段の「最新定跡探査」は、居飛車編Vol.2「横歩取り-△2四飛ぶつけの成否」。最近、この筋を外して横歩は考えられないというくらい良く出るようになった△2四飛のぶつけ。これをこの後の様々な変化を実戦での進行を取り上げ詳しく検証しています。(参考棋譜は3つ:竜王戦2組渡辺-木村戦、王将戦予選松尾-行方戦、王位戦リーグ菅井-松尾戦) 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって31回目。今月のテーマは、(1)神戸に天才少年現る、(2)定山渓の名局、(3)土井、木見、11日間の激闘、(4)あなたは11日間対局ができるかの四つ。(1)は昭和46年、小学3年の谷川少年と内藤八段(当時)の二枚落ちの終盤。(2)は昭和15年、土居市太郎八段と木村名人との第2期名人戦。(3)は大正9年に行われた土居八段と木見金治郎七段の終盤戦。そしてこの一戦が11日間もかかったということで、次の(4)の質問に続いています。 「かりんの将棋上り坂↑」vol.14で「対四枚落ち・四間飛車6筋対抗型」。先月と同じく四枚落ちでの四間飛車ですが、今回は上手が6筋の位を取らせない指し方をしてきた時の対処法です。 今月号には、「詰将棋サロン」の後ろに、「2015詰将棋サロン年間優秀作品選考会」が載っています。後で詳しく読んで「ミニ感想」に追記する予定です。 付録は武市三郎七段の「初段 1手3手必至」。問題数は1手必至20問、3手必至30問。なぜ「初段」と書かれているのか分かりませんが、「初段になる為の」というより、「初段の人がより上を目指す為に」という感じがする難易度です。つまり、ちょっと難しいのでじっくり取り組んでみて下さい。 |
2016年2月号(12月29日発売)の内容と感想 |
今月号には特集として「村山聖の追憶」があります。巻頭カラーの写真から始まり、村山将棋に対する羽生名人と谷川九段の対談。そしてその二人による実戦譜の解説と感想がありその棋譜は7つ。その後には「盤上盤外一手有情」の中で田丸九段が村山九段のエピソードについて語っています(棋譜も一つ)。さらにその後ろに森信雄七段へのインタビューもあります。どの記事も面白く、一気に読んでしまいましたが、なぜ今「村山聖」なのかと言うと、「聖の青春」の映画化が決まったということからです。1998年に29歳の若さで他界した悲運の天才棋士、没後17年ですから若い人はほとんど知らないことになる訳ですが、そうした人にも面白い記事になっているのでは、と思います。 竜王戦が終了した為、「七番勝負総括インタビュー」が載せられています。構成は相崎修司氏で渡辺明竜王の自戦解説。1局目から4局目までは簡単な解説、感想で第5局だけ6ページと詳しく書かれています。なお、掲載されている棋譜は第4局と第5局です。 プロ棋戦としては「叡王戦決勝三番勝負第1局」(山崎-郷田)(文:鈴木健二氏)、「女流王座戦第3局」(加藤-伊藤)(文:池田将之氏)(この将棋は持将棋でしたが7ページの解説)、「第4局」は巻頭カラーに棋譜を含め2ページのみ。「倉敷藤花戦第2局」(甲斐-里見)(文:渡辺大輔氏)、「日本シリーズ決勝」(三浦-深浦)(文:小野寺隼氏)、「王将戦挑戦者決定リーグ戦」(文:鈴木健二氏)があり、この王将リーグ戦は挑決の羽生-久保戦の他、最終局3局も棋譜があります。 「リレー自戦記」が帰ってきました。1回目の今回は、佐藤康光九段。取り上げた棋譜は王将戦挑戦者決定リーグ6回戦の深浦九段との一戦。角交換向かい飛車で、序盤は定跡形でしたが、駒組み途中の平凡とも思える一手を咎めに行き、まさに康光vs深浦という将棋そのものでした。将棋の内容もそれ以外にちょこちょこ触れられている話も面白く、再開一発目は大成功でしょう。 連載されている定跡講座の前に、短期講座が載っていました。「相振り飛車の可能性」という題で講師は杉本昌隆七段です。今回は基本編で来月は上級編と言うことですから、二回限定なのかもしれません。その基本編、相振り序盤の△3六歩問題からちょっとしたハメ手、矢倉拒否の構え、金無双のコツなど、基本とは言え大切なポイントを分かりやすく解説しています。 永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第2回で「後手急戦に気をつけろ!」です。早囲いを目指す直前の▲3七銀に対する△4四歩。以下▲6八玉に△7五歩の急戦。この解説が一つ。さらに△7四歩を突かず、早めに△8五歩を決め、▲6八玉と上がった瞬間、△8六歩▲同歩△同角の強襲。今回はこの二つの変化を解説しています。 隔月講座である門倉啓太四段の「最新定跡探査」で、振り飛車編Vol.1「藤井システム-再流行の予感」。藤井システムの最新形を2回に渡って見ていくと言うことで、今回は後手藤井システム。居飛車側は、目指すは穴熊ですが、もちろん振り飛車の陣形によっては急戦も視野に入れます。その急戦での最新の変化や、穴熊に囲う瞬間に振り飛車から動く変化、いつどの将棋でこれが指されたかまで載せながら最新の研究と見解を載せています。知らない人にはやや難しいかと思いますが、藤井システムを指す人や振り飛車には居飛車穴熊としている人には現在の状況が良く分かりたいへん役に立つ講座となっています。 「かりんの将棋上り坂↑」vol.13で「対四枚落ち・四間飛車6筋位取り型」。今回は、実戦で四枚落ちを勉強ということですが実際に指した棋譜を使っているのではなく、最も自然に組んだ定跡と言っても良いような形からの破り方と寄せ方の練習です。四枚落ちならではの、8、9筋への殺到(下手側から見て)。使える手筋が分かりやすく書かれていますので、級位者の人必読です。 付録は編集部編「現役棋士データブック2016」の(下)。今月は「た行」から「わ行」まで。先月の後半部分で、同じく一人一人について過去4年のデータの他、プロフィールやエピソードなどが載せられています。 |
2016年1月号(12月3日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは主に三つ。一つは「羽生名人と書家の吉川壽一氏の対談」。二つ目は「青野九段と薬局会長である渥美雅之氏の対談」。そして三つ目は「竜王戦第3局」(糸谷-渡辺)(記:田名後健吾氏)です。 今月号から巻頭にある「懸賞詰将棋」の出題者が変わりました。先月には谷川九段が降りることが出ていましたので、誰になるのか楽しみにしていましたら、若島正氏でした。プロ棋士でこそないですが、詰将棋を作るのはもちろん解くのも、さらに指し将棋も強い天才肌の人。詰将棋界の第一人者と言って良く、私はパズルのような詰将棋を作るというイメージを持っています。そして今回、最初の一問はまさにパズル的。簡素で、解いて見たいと思わせる配置、その中に小技を織り交ぜ解後感抜群。手数はちょっと長いですが、難易度は詰将棋サロンの中間くらい。今までの谷川九段の詰将棋もすばらしいものは多かったのですが、ひと目見て後回しにしていたのを、今度はまず最初にここから読む事になりそうです。 プロ棋戦としては「竜王戦第3局」の他に、村山慈明七段の解説で「竜王戦第2局」(糸谷-渡辺)が、佐藤天彦八段の自戦解説で「王座戦第5局」(羽生-佐藤天)があります。村山七段の解説は序盤講座的な内容も含まれており勉強になります。また自戦解説はやはり実際の対局者がどのような読みをしていたかを正確に知ることが出来、こちらも面白い記事で両方共一気に読んでしまいました。 棋譜は他に、「女流王座戦第2局」(加藤-伊藤)(文:馬上勇人氏)、「第1局」は棋譜のみ。「倉敷藤花戦第1局」(甲斐-里見)(文:一瀬浩司氏)と、「加古川清流戦第3局」(増田-稲葉アマ)(文:雲井宏氏)、「第1局」と「第2局」は棋譜のみ。「新人王戦第3局」(菅井-大橋)(記:池田将之氏)など。さらに「盤上盤外一手有情」の中に「第28期竜王戦昇級者決定戦3組」(阿部健-佐藤紳)などもあり、今月号は棋譜がたくさんです。 今月から定跡講座が二つ連載され始めました。その一つ目が、金井恒太五段の「最新定跡探査」で、今月号は居飛車編Vol.1「矢倉-見直された△4五歩」です。居飛車編と振り飛車編が交互に掲載されるようですので隔月での連載。そして「公式戦での実戦をもとに最新定跡を追いかけていくという趣旨」な為、内容的にはやや難しいかもしれませんが、プロ将棋を良く見る人にはこの戦型が出てきた時に理解しやすく役立ちそうです。 そしてもう一つの講座が、永瀬拓矢六段の「矢倉早囲い塾」。第1回目の今回は「早囲いは先手矢倉の新エース」として注目され始めた理由からその基本的な駒組み、ポイントを解説しています。こちらは、実戦で指してみたい人への講座で特に初段前後の人達にちょうど良さそうです。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって30回目。今月のテーマは、(1)馬対抗の向かい飛車、(2)お前らには指せん手や、(3)石田和雄、大感涙の即詰み手順、(4)トップ棋士との相談将棋の四つ。(1)は馬を作り合う乱戦風向かい飛車。王位戦挑戦者決定戦、菅井-広瀬戦で有名になった局面。(2)は昭和14年、高島-升田の香落ち戦。升田が指した意表の一着について考えて見て下さい。(3)は昭和45年の石田-中原戦。両者30秒の終盤戦の中の詰み。実戦中ならプロでも見逃す難解さで、詰むと分かっていても詰ませられれば有段者です。(4)は昔あった相談将棋に関連して、羽生名人と若手六段3人の相談将棋ならどっちが勝つでしょう?と言うもの。テーマ1では意見にあまり差はなく、テーマ2の形勢判断が人によって違うのが驚きでした。 「かりんの将棋上り坂↑」vol.12で「端の攻め方、守り方」です。先日の実戦に現れた端攻めからその基本の受けや攻め方など。級位者には即、役に立つ講座内容になっています。 付録は編集部編「現役棋士データブック2016」。(上)ということですから、二回又は三回に分けての付録のようです。一人一人について、過去4年のデータの他、プロフィールやエピソードなども載せられています。 |