ここには過去(2008年9月号から2015年12月号)の内容と感想があります。現在の将棋世界についてはこちらをご覧下さい。
2015年12月号(11月2日発売)の内容と感想 |
今月は竜王戦が始まった為、まず巻頭カラーにはその開幕局である「竜王戦第1局」(糸谷-渡辺)(記:鈴木健二氏)があります。逆転で始まったこの竜王戦、どの辺りで形勢が動いたのか、詳しい解説でもう一度並べて見たいところです。 そして今月号には特集記事が二つ。その一つ目は「戦型予想で観る竜王戦展望」。解説を村山慈明七段がしており、「角換わりがカギを握るシリーズ」として、最近の傾向について紹介しています。まえがきに「角換わりの定跡講座としても活用していただきたい。」とありますが、むしろ「竜王戦展望」という意味合いの方が少ない。最近の角換わりの状況、定跡の推移を実戦譜から解説しており、内容は「突き抜ける!現代将棋」に近い感じです。それだけにちょっと難しいですが、角換わりを指す級位者、私のように指さないけどプロ将棋を見る有段者には大変役に立つ「講座」となっています。 そして特集二つ目は「受けの達人」として対談が組まれています。ここに出てきているのは”受ける青春”の中村修九段と”千駄ヶ谷の受け師”木村一基八段。受け自体取り上げられることが少ないですので、ちょっと期待しながら読み始めたところ、内容も期待通りのものでした。話の内容そのものに役に立つことは少なかったのですが、ここで取り上げられている棋譜がすばらしい。大山十五世名人の超絶の受けもあれば、中村・木村両氏の将棋も取り上げられており全部で参考棋譜は8局。一つ一つ盤に並べてみたい対局です。 プロ棋戦としては「王座戦第4局」(羽生-佐藤天)(記:渡辺大輔氏)があり、「第2局」「第3局」は棋譜を含め2ページのみ。「新人王戦第1局」(菅井-大橋)(記:池田将之氏)と、「第2局」(記:雲井宏氏)は棋譜を含め3ページ。他には、「第28期竜王戦昇級者決定戦3組」(横山-ア)などがあります。 「かりんの将棋上り坂↑」vol.11は特別編です。「ショウギナデシコ2015」の団体戦に出場したとのことで、今回はそのレポート。指した将棋の内容はポイントだけですが、どのような大会だったのか雰囲気は伝わってきます。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって29回目。今月のテーマは、(1)あなたは大観定跡を体感したか?(2)南禅寺の決戦、木村の攻め、(3)永瀬拓矢、鬼の勝負術、(4)自分の将棋の解説を誰に頼む?の四つ。(1)の大観定跡とは二枚落ちで飛車を▲7六飛と捨てて銀で必死をかける手順のこと。(2)は昭和12年に行われたいわゆる「南禅寺の決戦」での一場面。(3)は平成24年王将戦の北浜-永瀬戦。(4)は木村十四世名人が自身の解説を大山名人に頼むよう要望したということで、この質問です。 まず(1)の駒落ち定跡ですが、作ったような寄せを実際に指したことがあるかどうか。実は私は一度だけ似たような局面の必死を掛けられたことがあり、三〜四度は掛けられず追われて逃げ出した記憶があります。この質問は棋士によりそれぞれでした。(2)は比較的やさしい問題。それに比べて(3)は難問です。玉型が大差で、永瀬六段側を持ってどうしようもなさそうに見える局面。(4)は普通に面白く読みました。 今泉健司四段の「中飛車左穴熊」第6回ですがなんと最終回と出ています。題は「いろいろな左穴熊」。振り飛車側が穴熊にした時の指し方や先手三間に対する後手の左穴熊など。最後に平成25年のアマ王将戦決勝の棋譜を載せてポイントを解説しています。 さて、この講座が終わると次は何かな?と思い予告を見ましたら、金井五段の「最新定跡探査「居飛車編」」と永瀬六段の「矢倉早囲いを指そう(仮)」が始まるようです。「リレー自戦記」も復活するようですので期待しましょう。 付録は編集部編「天国と地獄3」。「どっちを選ぶ!?究極の”二択”次の一手39題」です。今回「3」ということで以前のものも見てみましたら、1も2もやさしい級位者向け問題と難しい問題の両方があったようですね。しかし今回はやさしい問題はありません。二択ですからしっかり読みを入れれば解ける問題ではありますが、有段者向けと言って良いでしょう。読みを鍛える39題です。 |
2015年11月号(10月3日発売)の内容と感想 |
今月号の巻頭カラーには渡辺棋王が挑戦者になった「竜王戦挑戦者決定戦第3局」(渡辺-永瀬)(記:鈴木健二氏)と先月2日から始まった「王座戦第1局」(羽生-佐藤天彦)(記:大川慎太郎氏)があります。その王座戦、今回はタイトル戦に初登場した佐藤八段について、その将棋観を渡辺棋王、村山七段の話を交えて分析しつつ棋譜解説しています。これを読むと、形勢判断やその大局観には独自のものがあり、今後対局を見る時、頭の片隅に入れておくと面白いかもしれません。続いて、
「かりんの将棋上り坂↑」vol.10も巻頭カラーの中にあります。「相中飛車戦のテクニック」と題して、まず飛車が中央で向かい合った形から美濃にして銀で押さえ込まれた場合の対処法。さらに先手からの戦端の開き方など、級位者向けの分かりやすい講座です。 プロ棋戦としては「王位戦第5局」(羽生-広瀬)(記:雲井宏氏)と、「第4局」(記:相崎修司氏)は棋譜を含め2ページのみ。「竜王戦挑戦者決定戦第2局」(渡辺-永瀬)(記:鈴木健二氏)、「銀河戦決勝」(深浦-佐藤天彦)(自戦解説:深浦九段)などの他、「順位戦B級2組」(青野-阿部)(「盤上盤外一手有情」の中)、「第1回女子将棋YAMADAチャレンジ杯決勝」(竹俣-渡部)、「第28期竜王戦昇級者決定戦6組」(藤原-牧野)などがあります。 高橋道雄九段と作家のさがら総さんの「対談」が8ページに渡って載せられています。さがら総さんは、将棋の棋力が三段くらいあるライトノベル作家ということです。最後の方に、将棋をテーマにしたマンガや書籍もあります。 今月も特集として、「さばきの極意」が24ページの特大講座となってます。(先月と今月の二回)。今回、最初は大山振り飛車から。華麗なさばきから、渋くなっていった大山の振り飛車を実戦譜から見ています。後半は、久保振り飛車と中田振り飛車の実戦譜を題材にどのようにさばいて行くか、さばき方の説明です。そして最後にこれからの振り飛車について。参考棋譜も全部で10局ありますから、盤に並べて勉強するには良い教材となっています。 「イメージと読みの将棋観2」、今回、メンバーが半分入れ替わりました。郷田王将、鈴木大介八段、永瀬六段は今まで通り。森内九段、加藤九段、豊島七段の代わりに行方八段、木村八段、山崎八段の3人が加わっています。そして今月のテーマは、(1)驚きの嬉野流、(2)山崎流、序盤の奇手、(3)阪田三吉、名人位に近づいた将棋、(4)コンピュータとの対戦はどうなる?、の四つ。(1)は初手より▲6八銀△3四歩に▲7九角という驚きの新戦法について。鈴木八段は実戦で、永瀬六段は本を読んでいると言うことで詳しく知っているようですが、他の人は知らないので一般的なプロの感覚で話した内容だけ。こういう時は、知っている二人の感想をもう少し詳しく聞きたいですね。(2)は今年6月の順位戦で山崎-橋本戦。山崎八段が角交換型の振り飛車穴熊に対する驚きの駒組みを見せてくれました。(3)は大正6年に行われた阪田三吉と関根金次郎の一戦。中盤戦の指し方です。(4)は叡王戦について。「あなたは迷わず出場を決めましたか?」と言うことと、「今後のプロとコンピュータの対戦をどう予想しますか?」という質問です。 人選については最初見た時、もう少し年齢に幅を持たせた方が、と思いましたが、今月はテーマも良かった為か面白かったので、あるいはこのメンバーでこれから期待できるかもしれません。 今泉健司四段の「中飛車左穴熊」第5回で「後手向かい飛車編」。今回から先手中飛車に対し、後手は△4四歩と角道を止め、向かい飛車に振る戦法です。この戦法、向かい飛車の△2五歩に対し、対応策は二手損の▲2八飛!初めて見た時は誰でも”衝撃”の一着でしょうが、今では”定跡”。そして居飛車穴熊にしっかり囲い、そこからの成功する攻めを解説しています。対して後手の工夫した変化も解説し、最後にこの向かい飛車の参考棋譜としてプロ編入試験第4局を簡単なコメントと共に載せています。 付録は児玉孝一七段の「詰め手筋サプリ2」。「基本の5手詰から11手詰までやさしい詰将棋集」と書かれています。2年前に一度同じような体裁で出されており、これは2回目。5手から11手まで各10題ずつ全部で40問。はしがきに「手数と難度は必ずしも直結していません」とありますが、基本的には長い方が難しく、級位者から有段者まで幅広く練習に使えるでしょう。 |
2015年10月号(9月3日発売)の内容と感想 |
今月号の巻頭カラーは特集1として「佐藤天彦八段へのインタビュー記事」からです。9月から始まった第63期王座戦の挑戦者に初めてなったという事で、挑決の将棋や佐藤天彦の将棋とは、他ファッションなどについて語っています。 続く巻頭カラーは、「王位戦第3局」(羽生-広瀬)(記・大川慎太郎氏)。最終盤、羽生王位がとん死っぽい逆転負けを喫したことで話題になった将棋ですが、題は「そんなに簡単じゃない」としてその辺りの詳しい解説があります。 さらに3ページしかありませんが、「竜王戦挑戦者決定戦第1局」(渡辺-永瀬)もあります。 佐藤康光九段特別対談として、「日本の伝統文化としての将棋」が6ページに渡って載せられています。内容の多くは、駒の魅力や盤について。 「かりんの将棋上り坂↑」vol.9の今回は「単純突破を許さない」。初心者にとって最初の関門とも言える棒銀の受け方。それも最新の将棋である5筋位取り中飛車や中飛車同士の形での指し方を解説しています。 プロ棋戦としては「王位戦第2局」(羽生-広瀬)(解説:屋敷伸之九段)の他、「フリークラス脱出自戦記」として、渡辺大夢四段の竜王戦昇級者決定戦6組の将棋(対伊藤博文六段)が自戦記で載せられています。 特集2として、「さばきの極意」が今月と来月の二回に分けて掲載されるようです。その前編、「振り飛車のさばきとは何か?」について久保九段と中田功七段がいろいろな将棋を題材に分析し、解説しています。実際、「さばく」と言うのは、初心者の人には説明しづらいもの。それを「基本」や新しく格言を作り、出来るだけ分かりやすく説明しようとしていますのでこれは必見です。参考棋譜11局もすべて初手より載せられていて、級位者だけでなく有段者にも参考になる記事になっています。 「CLOSE-UP INTERVIEW」という記事があります(構成・写真:池田将之氏)。「ぼくはこうして強くなった」の代わりなのか今回だけなのか分かりませんが、今月号には「斎藤慎太郎六段」が登場し、「上を目指して」という題で、電王戦、研究、課題などについてインタビューに答えている他、後半には50の質問コーナーもあります。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって27回目。今月のテーマは、(1)升田-板谷の対面玉、(2)伊藤宗印、若き日の攻め、(3)羽生-藤井、20代の戦い、(4)穴熊に抵抗感はあるか?、の四つです。(1)は昭和49年のA級順位戦、升田幸三九段対板谷進八段の終盤戦。玉と玉が一間で向き合う局面を問題にしています。(2)は江戸時代の将棋。伊藤宗印対大橋宗aの終盤戦。(3)は平成12年勝ち抜き戦の羽生四冠対藤井竜王の終盤戦。(4)は「昔は「穴熊を指すようでは名人にはなれない」なんて言った人もいた」と言うことで穴熊に対してどう思うか聞いています。 今泉健司四段の「中飛車左穴熊」第4回で、「△4四歩型・改と先手の対抗策」。振り飛車の△4四歩型ですが、今回は△5二金左ではなく、△3二金と上がってバランスで対抗する指し方。それに対し、平凡に組むと居飛車(中飛車)作戦負け。なのでどう指すべきかを解説しています。 付録は飯島栄治七段の「飯島流相掛かり引き角戦法」。先月に続き、「次の一手で学ぶプロの定跡最前線」との副題。はしがきにも書かれている通り、引き角と言うと、対振り飛車のような印象を持ちますが、「さまざまな戦型に応用できる思想」と言っており、今回は相掛かり戦法での引き角を紹介しているという訳です。ちょっと変わった指し方、実戦で試して見るのも面白いかもしれません。 |
2015年9月号(8月3日発売)の内容と感想 |
今月号の巻頭カラーは特集1として「波戸康広さんと渡辺明棋王の対談」からです。波戸さんの肩書きは横浜F・マリノスアンバサダーで、対談の内容はもちろん将棋とサッカー。お互い、相手の職業に詳しいと言うことで幅広い内容で対談をしています。 続く巻頭カラーは、「王位戦第1局」(羽生-広瀬)(記・大川慎太郎氏)。広瀬八段にとっては久しぶりのタイトル戦であり、どのような心理状態で臨んだのか、手の解説と共に心の動きも追った面白い記事です。 「かりんの将棋上り坂↑」vol.8の今回は特別編。実際にファンの前で公開講座を行ったレポートで、8ページに渡りこちらも巻頭カラーの中で紹介しています。 プロ棋戦としては「棋聖戦第4局」(羽生-豊島)(文:鈴木健二氏)と「棋聖戦第3局」(解説:木村八段)。特に第4局は、羽生棋聖が失敗を認め、打った歩を直後に成り捨てたあの一戦です。またこの二局以外にもいろいろな記事の中に棋譜は載せられています。 特集2として先月からの続き、「升田幸三賞受賞者による特別座談会」の三回目、後編があります。藤井九段、佐藤康光九段、菅井六段三人の話で今回は、コンピュータ将棋の話や居飛車振り飛車のイメージについて、さらに序盤の検証や最後は升田将棋についてまで、こちらも幅広く話をしており今回も面白い内容。個人的には、2回目が一番面白く、次に3回、1回の順と思っていますが、これは人によるのかもしれません。いずれにしても三回に分けて載せるだけの価値ある特別座談会でした。 久しぶりの読み切り連載、「ぼくはこうして強くなった」は第5回で広瀬章人八段の巻。小学生時代から奨励会を通りプロになり、さらに羽生名人と対戦して感じたことまで、13ページに渡り詳しく書かれています。これを読むとなぜ居飛車を指すようになったのかも、あの特徴ある振り飛車穴熊の成立過程も分かるような気がしました。また、小学生の時の実戦からプロになっての対局まで6局の棋譜も載せられています。 巻頭カラーに写真もありますが、カロリーナさんが外国人女性初の女流3級になった為、「インタビュー記事」(構成:渡辺大輔氏)が6ページあります。少し前、私も実況で指していたのを見ましたが、強くてしかも面白い将棋だったので今でも印象に残っていますね。これからの活躍を是非期待したいところです。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって26回目。今月のテーマは、(1)木村義雄八段、塚田正夫五段を角落ちで負かす、(2)藤井猛対鈴木大介、竜王戦の攻防、(3)羽生名人の勝ち方教室、(4)対局中の食事は勝負に影響するか、の四つです。(1)は昭和10年に行われた木村-塚田の角落ち戦。局面は中盤で、上手からどのように動くかという問題。(2)は平成11年の竜王戦第4局。その終盤で難解な局面をどう読むか。(3)は平成12年勝ち抜き戦の塚田九段対羽生四冠戦。まだ難しいと言われた局面から、羽生があっさり勝ったその手順は?というもの。(4)は対局中の食事にこだわりがあるかどうかを聞いています。 今泉健司四段の「中飛車左穴熊」第3回で、「先手▲5六飛保留型」。先月号からの続きで、菅井六段新工夫の解説。実戦譜を元にすぐに▲5六飛と浮かないで後手からの攻めに対応する形を紹介しています。 付録は塚田泰明九段の「矢倉△4五歩作戦の研究」。先手の矢倉▲4六銀に対する指し方。昔からあった定跡ですが、「プロの定跡最前線」と副題が付いているように、この△4五歩の反撃についての新しい指し方を紹介。それを次の一手39問で勉強して下さい。 |
2015年8月号(7月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は全部で三つ。その一つ目は巻頭カラーにあり、「名人戦第4局」(羽生-行方)を羽生名人の自戦解説で(構成:大川慎太郎氏)。いつもの読ませる観戦記も面白いですが、やはり自戦解説には当事者しか分からない読みや心情もあり、これらは月刊誌ならではです。そして第1局から第5局まで他の一戦も簡単ですが(4ページ)、インタビュー形式で感想、解説があります。さらにその後に「名人戦第5局」(文:鈴木健二氏)もしっかり7ページあります。 特集の二つ目は、「竜王戦の世界」。-棋界最高棋戦の28年-と題して分厚い内容の特集記事です。第1章「担当記者の竜王戦物語」第3章「ランキング戦決勝と決勝トーナメント出場者のコメント」第4章「予想クイズ」などいろいろありますが、何と言っても第2章の「竜王戦プレイバック」がすごい。第1期から第27期までの名勝負を12局選び出し、「渡辺明の眼」として解説、棋譜も12局すべて載せられています。これは特に第1期から見ている人には思い出深い記事になっているでしょう。 特集の三つ目は先月からの続き、「升田幸三賞受賞者による特別座談会」の中編。藤井九段、佐藤康光九段、菅井六段三人の話で今回は、「新戦法の誕生秘話」や「注目の戦型」など。個人的には、前回より話の内容はずっと面白く、竜王戦の記事がなかったら間違いなく赤字にしていたところです。 巻頭カラーは、名人戦に続き、王位戦挑戦者になった「広瀬章人八段のインタビュー記事」が5ページ。4年ぶりのタイトル戦で様々な戦型が出れば面白いタイトル戦になるかもしれません。 そして、巻頭カラーの最後は 「かりんの将棋上り坂↑」vol.7。実戦、中盤での考え方の一つと、「守りの金を攻めろ!」と言うことで、これも実戦から基本的な終盤での攻め方を出題しています。 プロ棋戦としては上記「名人戦」や過去の「竜王戦」以外に「棋聖戦第1局」(羽生-豊島)(解説:久保九段)、「第2局」は棋譜とポイント解説2ページのみ。「マイナビ女子オープン第4局」(加藤-上田)(自戦解説:加藤女王)、「女流王位戦第3局」(甲斐-里見)(文:鈴木健二氏)などがあります。 引退に伴い「淡路仁茂九段の語り」の記事があります。奨励会当時の話から道場経営、棋譜データベース、さらには理事生活まで、過去を振り返り様々な話。その最後には特選譜が4局ありその一つは339手の激闘でした。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって25回目。今月のテーマは、(1)升田六段、21歳のとん死、(2)深浦少年、21歳の名人に勝つ、(3)谷川スペシャル、逆転の寄せ、(4)奨励会時代の苦闘、の四つです。(1)は昭和14年に行われた若き升田-大山戦でしかも角落ちの終盤戦。(2)は昭和58年の谷川-深浦戦、と言っても深浦九段の小学生時代の対局で飛車落ち。押さえ込まれ難局に見える終盤を、下手とは思えぬ打開をしていった将棋です。(3)は昭和62年のA級順位戦で有吉-谷川戦での最終盤。自玉は詰めろで相手玉は詰まない時にどうすれば逆転出来るかという問題。(4)は奨励会時代、負けた時に何をしていたかを聞いています。 先月から始まった今泉健司四段の「中飛車左穴熊」第2回。今回は「後手の対策△4四銀型」とあるようにまずは後手の有力な対策の紹介。これに漫然と組むと、中飛車左穴熊は必敗になるという説明。その後に菅井六段の新工夫。但し紙面の都合上途中まで。以下は来月ということです。 付録は屋敷伸之九段の「屋敷流”忍者銀”戦法」。「シンプルかつスピード感あふれる新戦法初公開!」とあるように、矢倉戦において棒銀プラス左銀も繰り出す戦法のようです。じっくりした矢倉戦より急戦調の矢倉の方が好きという人は面白いかもしれません。問題文にして39問。指し方の流れはサクッと頭に入ってきますので、読んで見て下さい。 |
2015年7月号(6月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーはまず「名人戦第3局」(羽生-行方)(記:大川慎太郎氏)から。85手目の「▲7七同玉が敗着」ということですが、この敗着を指すに至るまでの心の動きやその背景、今回も単に棋譜の解説だけをしている観戦記とは違い、読ませる非常に面白い観戦記になっています。 続いて巻頭カラーには、棋聖戦挑戦者になった「豊島将之七段のインタビュー記事」を6ページに渡って掲載。将棋の内容は二次予選から振り返り、他に勉強法や棋聖戦に向けてと言うことでいろいろな話をしています。 また、巻頭カラーの中に、「広瀬、渡辺の欧州旅行記」(記・写真:大川慎太郎氏)と 「かりんの将棋上り坂↑」vol.6もあります。今回は実戦から棒銀に対する角頭の守り方を勉強。 今月の特集記事は二つ。一つ目は「升田幸三賞受賞者による特別座談会」。登場しているのは、藤井九段、佐藤康光九段、菅井六段の三人で、3回に渡ってと言うことで、今回は前編。「序盤のパイオニア」とも言うべき三人ですから面白い話が聞けそうとの期待が大きいからか、思ったよりは印象に残る話が少なかったように感じました。ただ、居飛車党振り飛車党の考えの違いによる研究の深度の話は面白かったです。来月以降の2回にも期待しましょう。 特集記事の二つ目は、「上達講座”極める”シリーズ」で、「あの苦手戦法の攻略法を教えて!(矢倉右四間飛車編)」です。講師は北島忠雄七段。矢倉の右四間についてはアマチュアであれば悩まされている人も多いと思います。ここではその基本的な攻め筋をまず紹介。右四間側の成功例から始め、ではどうすれば良いかの対応策。そしてさらに細かい変化まで基本から応用までかなり詳しく解説されていますので必見です。 プロ棋戦としては他に「世田谷みず木女流オープン戦決勝」(室谷-中村真梨花)、「名人戦第2局」(羽生-行方)(解説:森内九段)、「マイナビ女子オープン第3局」(加藤-上田)(文:渡辺大輔氏)、「第2局」は棋譜を含め2ページのみ。「女流王位戦第1局」(甲斐-里見)(文:諏訪景子氏)、「第2局」は棋譜を含め2ページ(解説監修:中座七段)、「岡崎将棋まつり」(佐々木勇気-香川女流王将)などがあり、さらに「盤上盤外一手有情」の中に「竜王戦昇級者決定戦4組」(片上-遠山)があります。 先月からの続き、「引退特別企画」として「内藤九段の語り」最終の「後編」8ページ。今回も軽妙で面白い。最後には、内藤九段の代表作とも言うべき詰将棋、「ベン・ハー」(111手詰)と「攻め方実戦初形」(73手詰)が載せられています。 今月号から新連載として「ここまでわかった!将棋の歴史」が始まりました。語りは何冊も本を出されている増川宏一氏。第1回は「チャトランガは紀元5世紀にインドで発生した」です。こうした内容は興味のない人には読み飛ばされてしまうでしょうが、将棋の専門誌ですので5ページ位はあっても良いのかなと思います。最近分かった新しい発見があったら、発表して欲しいですね。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって24回目。今月のテーマは、(1)升田の目の付けどころ、(2)谷川の切り返し、(3)加藤一二三、読みの勝負手、(4)八代宗桂、鬼宗看をうっちゃる、の四つです。(1)は昭和43年の棋聖戦、升田幸三-佐伯昌優戦の中盤、どこから戦いを仕掛けるかという問題。(2)は昭和62年の棋聖戦、板谷-谷川戦から居飛車急戦対四間飛車の戦いで終盤に入ったところ。(3)は昭和43年の王座戦、加藤-中原戦。矢倉の中盤戦でどう踏み込むかという問題。(4)は1757年の御城将棋で大橋宗桂-伊藤宗看戦の終盤。 今月の4問、(1)と(2)はほとんどの人が正解を出し同じ感想。(3)は若干人により違うもののほぼ二択です。一番面白いのがテーマ(4)。この問題は、まず解説を一切見ずに隠して考えて見て下さい。最初の方に解答があったので私は見えてしまいました。プロでも分かった人と分からなかった人と。なかなか面白い問題です。 今月から講座で新連載が始まりました。今泉健司四段の「中飛車左穴熊」。旬な人に旬な戦法を解説してもらうという訳ですね。第1回の今回は「中飛車左穴熊の基本」。この左穴熊は相手が振り飛車の時ですので、対居飛車の解説はありません。今月は基本と言うことで、その駒組みの成功例から狙いを解説しています。なお最後に短い「コンセンの勝つためのアドバイス」がありこれがまた深みのある内容。時々「必勝だったのに!」と悔やむことのある人には是非読んでもらいたい一文です。 付録は伊藤果七段の「伊藤果の詰将棋」。1手から9手まで全50題。伊藤七段の詰将棋と言えば、はしがきにもあるように、「一見筋悪に見える手、心理的に指しにくい手、意外性のある手など」が特徴です。今回は「比較的やさしいもが中心」ということで確かに特徴のある筋悪な手は少ないように思います。しかし、1手詰から9手詰までそれぞれ手数ごとに10問ずつありますので、級位者から有段者まで幅広く楽しめる一冊になっていますので挑戦して見て下さい。 |
2015年6月号(5月2日発売)の内容と感想 |
名人戦が始まりましたので、今月の巻頭カラーはまずこの「名人戦第1局」(羽生-行方)(記:小暮克洋氏)からです。内容は丁寧に変化の書かれた記事になっていますが、実戦自体が名人戦史上最短ですから、スタートなのにちょっと残念な意味はあります。 そして今月の特集は毎年5月号に載せられる「-棋士が選ぶ名局ベスト10-プレイバック2014」です。その第1位は「王座戦第5局」(羽生-豊島)。私も実況で見ていてメルマガでも取り上げましたが、本当にすごい将棋でした。またNHK杯では、準決勝の森内-深浦戦が5位に入っています。確かにこの終盤戦もすごかったですね。テレビ将棋ゆえその迫力が見ているものに伝わってきました。なおこのベスト10の棋譜は、番外3局とともに簡単なコメント付きですべて載せられていますので盤に並べて鑑賞してみて下さい。 他に、巻頭カラーには 「かりんの将棋上り坂↑」vol.5もあります。今回は6枚落ち卒業試験。大平五段との六枚落ちは完璧な将棋でした。 今月号の表紙は郷田九段で、「王将戦第7局」(渡辺-郷田)が郷田九段の自戦解説でインタビューとともにあります(「第6局」は最終盤のハイライトを少し解説しているだけ)。 毎年この時期に行われる「将棋大賞選考会」と「升田幸三賞」「名局賞選考会」の記事があります。そしてその後に「ミニ講座」として賞を取った「菅井新手」と「塚田スペシャル」を金井五段が解説しています。様々な手の菅井流と塚田スペシャルの概略、分かりやすい解説となっており、さらにその後には「観戦記者が見た2014年度の将棋界」と題して、相崎修司氏、君島俊介氏、小暮克洋氏の特別座談会があります。 プロ棋戦としては他に「マイナビ女子オープン第1局」(加藤-上田)(文:小野寺隼氏)、「NHK杯テレビ将棋トーナメント決勝」(行方-森内)(文:小野寺隼氏)、「竜王戦出場者決定戦1組」(丸山-郷田)などがあります。 先月で「将棋電王戦FINAL」が終了した為、総括としての記事があります。一対局につき4ページずつ自戦解説と棋譜を載せるという形式で20ページ。私自身もすべて実況で見ていた訳ですが、自戦解説ですので見ていた人にも興味ある内容が多かったです。特に読みやその前段階での研究。生放送では話されていないこともいろいろありました。どのような心境で対局していたのかなど改めて当時の興奮を思い起こさせる内容になっています。 先月からの続き、「引退特別企画」として「内藤九段の語り」が「中編」として8ページあります。先月と同じく軽妙で一気に読んでしまいました。しかも内容は先月よりもさらに面白い。歌手としての生活、対局料の話、観戦記の話等々、昔の人の名前もたくさん出てきて知らない人もいるのですが、それでもそうした人達のことがよく分かる面白い文章です。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって23回目。今月のテーマは、(1)山田道美、升田の乱暴を受ける、(2)米長矢倉の超急戦、(3)羽生善治名人、読みきりの寄せ、(4)常時95点の手を指してくる相手、の四つです。(1)は昭和41年の十段戦、山田道美-升田幸三戦の超急戦、序盤の乱戦局面から。(2)は昭和62年のA級順位戦、有吉-谷川戦から米長矢倉の超急戦の定跡。先手が角金交換の駒損ながら龍を作る変化。(3)は平成12年、オールスター勝ち抜き戦の泉-羽生戦。その最終盤の勝ち方を問う問題。(4)は中原十六世名人の話を若干置き換えてこの質問。「常時95点の手を指してくる相手。そんな実感があなたにはありますか。」と言うものです。なお今さらですが、2ヶ月前の4月号からここで使われた局面には棋譜が載るようになりました。これは良いですね。並べたい人もたくさんいるでしょう。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第38回であると同時に最終回となっています。そして「横歩取り結論の総まとめ」です。内容は、すべての横歩取りの現状の簡単なまとめ。概略、現状の形勢判断を知るには今月号だけでも大丈夫です。 付録は勝又清和六段の「新手ポカ妙手選2014年度版」で、毎年この時期に出される恒例企画。今回は妙手が多かったので、ポカと新手は大幅に減らしたとのこと。そして「勝負手」も取り上げています。平成26年度を振り返るのに良い付録です。 |
2015年5月号(4月3日発売)の内容と感想 |
今月は総力特集として「第73期順位戦最終局」の記事があり、表紙から巻頭カラーまで名人挑戦者決定戦とA級順位戦最終局です。先月「ラス前」ということで、様々な場所で取り上げられていましたが今月も同じです。まずA級。最終局と4者プレーオフの記事。しかし何と途中図面だけで棋譜は一つもありません。B1の棋譜は屋敷-木村戦(屋敷九段自戦解説)があり、続く「盤上盤外一手有情」(田丸九段)の中にはそれ以外のB1の記事と飯塚-藤井戦があります(記事はC2順位戦も)。B2では、北浜-窪田戦、中田宏樹-青野戦の棋譜があり、C1では、佐々木勇気-長沼戦と菅井-高野戦の棋譜があります。 さらに「関西本部棋士室24時」でも先月に引き続き順位戦特集で、C2では村田-中村亮介戦、澤田-浦野戦、B2は先崎-阿部隆戦が載っています。そしていつものようにその後には「昇級者喜びの声」です。 順位戦の後の巻頭カラーには、「第40期棋王戦第3局」(渡辺-羽生)(記:大川慎太郎氏)があります。この記事がまた非常に面白い。前半は「突き抜ける!現代将棋」並みの面白さで、後半は渡辺棋王の勝負術を的確に伝えています。観戦記によりここまで面白く伝えることが出来るんだということを改めて感じさせる内容です。 プロ棋戦としては他に、「第64期王将戦第5局」(渡辺-郷田)(文:鈴木健司氏)(「第4局」は棋譜を含め2ページ)、「マイナビ挑戦者決定戦」(和田-上田)(文:小野寺隼氏)、「朝日杯将棋オープン準決勝」(伊藤真吾-羽生)(渡辺-豊島)、「決勝」(羽生-渡辺)(文:国沢健一氏)などがあります。 将棋電王戦FINALが始まり、その「第1局」(斎藤-Apery)(文:渡辺大輔氏)の棋譜と記事が8ページに渡って載せられています。 今月号の中頃には、「引退特別企画」として「内藤九段の語り」が11ページあります。「今伝えておきたいこと」として全3回で今月は前編。エッセイ本等読んでいると知っている話もありますが、語り口は軽妙で一気に読んでしまいました。 続いて「丸田祐三九段の追悼文」として中原十六世名人を始め8名の方が追悼文を寄せています。 「かりんの将棋上り坂↑」は今回も六枚落ち。上手陣を破った後の指し方が丁寧に解説されています。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第37回で「青野流の重要変化」。青野流▲4六角に△8二角と合わせる表街道の変化。平成8年の井上-丸山戦で△3七角成に▲4八金と上がる手が現れたと言うことで、この変化を今月は解説しています。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって22回目。今月のテーマは、(1)升田、豪腕の仕掛け、(2)飛車落ち跳ね違い定跡のナゾ、(3)加藤、若き羽生六段との対戦、(4)偉大な記録、の四つです。(1)は昭和23年の「塚田・升田五番勝負」から。序盤の大胆な駒組みに升田が仕掛けた将棋。(2)は飛車落ちの右四間飛車定跡。但しその中の「跳ね違い定跡」と言うかなりマイナーな変化。そのため駒落ちを相当指しているプロでも良く知らないみたいですね。(3)は平成元年、49歳の加藤九段と19歳の羽生六段の王位戦の終盤。(4)は偉大な記録として「18歳のA級八段、69歳のA級棋士、44歳の1300勝」。あなたはどれをやってみたいですか?と言うものです。 毎年「A級順位戦」の予想はありますが、今月号には「王位戦挑戦者予想クイズ」があります。とじこみハガキに挑戦者や残り三局の星も記入して応募するようになっています。 付録は編集部編「プロの受け・しのぎテクニック」。はしがきに「プロの実戦を題材に、さまざまな受けやしのぎのテクニックを集めました。」とあるように「受け」、それもほとんどが終盤戦でかつ「作られた」ものではないだけに実際に役に立つ受けの妙技を勉強出来ます。全部で39問、ちょっと難しいですが、観戦し、驚くだけでも奥深さが分かります。 |
2015年4月号(3月3日発売)の内容と感想 |
今月は総力大特集として「第73期順位戦ラス前」があります。大混戦のA級に始まり(記事のみ9ページ)、B1は、佐藤天彦-屋敷戦(自戦記:佐藤七段)、B2は、島-稲葉戦、阿部隆-高橋道雄戦、佐々木慎-豊川戦という三局の棋譜(文:一瀬浩司氏)、C2は横山-勝又戦(文:相崎修司氏)が取り上げられています。 続く「盤上盤外一手有情」(田丸九段)の中にも、C1順位戦の真田-ア戦があります。 さらに「関西本部棋士室24時」でも今回は順位戦特集で、C1では大石-菅井戦、B2は畠山-北浜戦、C2は藤原-千田戦が載っています。 巻頭カラーは、「第40期棋王戦第1局」(渡辺-羽生)(記:大川慎太郎氏)から。この一戦、私は実況を見ていなかったのですが、見ていなくてもその深い読みや変化が面白く伝わって来る記事です。 続いて、先月の続きである「知はどこへ向かうのか」としてponanza開発者の山本さんと西尾六段の対談があります。これも先月に続いて面白い内容です。 さらに巻頭カラーの他の写真には、河口七段、王将戦第3局、リアル車将棋、糸谷竜王就位式などが写っています。 今月号には棋譜がたくさんあります。上にあげた「順位戦」以外にも、「王将戦第3局」(渡辺-郷田)(記:松本佳介六段)、「第2局」(2ページのみ:解説監修:久保九段)、「女流名人戦第3局」(里見-清水)(文:渡辺大輔氏)、「第2局」(2ページのみ)など(他にも毎月載っている「名局セレクション」と一般的な記事の中に)。 中とじのカラーページには、「モノクロの棋士」として内藤九段が写真に収まり、その後に「かりんの将棋上り坂↑」があります。今回は、六枚落ちを使って「数の攻め」をマスターするというものです。 二つ目の特集記事は、上達講座”極める”シリーズ「穴熊なんてコワくない」の後編。最初の方は初心者向けですが、後半はプロの棋譜を参考に解説していますので有段者でも役に立つでしょう。 短期連載、「ぼくはこうして強くなった」は青野照市九段の巻(後編)です。先月とはまた変わり、自身のプロになってからの話と、その後に当時のトップ棋士、升田・大山、さらに中原・米長について青野九段視点の鋭い考察がなされていました。そして、最後は羽生世代から、現在の勉強法まで。若い人が興味を持つかは分かりませんが、私には今月号で一番面白かった記事です。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって21回目。今月のテーマは、(1)香落ち立摩流の仕掛け、(2)立摩流は成功したか、(3)加藤一二三、20歳の名人戦、(4)時間攻めをする棋士、される棋士、の四つです。(1)は江戸時代、名村立摩と三代伊藤宗看との香落ち戦に現れた早仕掛けの序盤。その序盤から進んだ局面が(2)として再びテーマ図に。(3)は昭和35年に行われた名人戦第3局、加藤-大山戦。(4)は去年の竜王戦で時間攻めが話題になったことにからんでの質問。 今回、「立摩流」という言葉を初めて聞いたと思っていましたら、プロ棋士の方々も知らなかったようです。しかもあまり成功している感じではないので、テーマは一つでも良かったのではと思えます。時間攻めについては・・・こんな話題があったことすら知りませんでした。でも棋士それぞれの感想は面白いです。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第64回目で『藤井システムに気をつけろ』。題は藤井システムですが、最初は角交換四間飛車、次はダイレクト向かい飛車の話で、藤井システムは後半から。ただ、話の流れはつながっておりいつものように変遷が良く分かります。その藤井システムを取り上げたのは、最近関西の若手棋士を中心に藤井システムが再び注目されているからと言う理由のようです。しかしなぜなのか、その明快な回答はありません。これからの実戦や研究を待つことになりそうです。 そして何とこの連載、しばらく休載になるということが出ています。この連載は私に取って、あるいは純粋に定跡や技術的な内容を知りたいと思っている有段者に取っては最も役に立つ連載だっただけに何とも残念ですね。 「対局日誌」で有名な河口俊彦七段が亡くなったということで、最後の方に追悼文が7ページに渡って載せられています。そしてこの中に、珍しい棋譜、昭和54年の河口五段-谷川五段戦と、平成元年の村山聖五段-河口六段戦が載っています。 付録は及川拓馬六段の「初段 常識の手筋」。「ボリュームたっぷり50題」とあるように、最初の部分図は1ページに2問あります。内容は、初級者向けのやさしい手筋本。と言っても後半は実戦にも現れそうな局面から作られておりすぐに役立ちそうな良問揃いです。一目で解答が浮かぶようになれば初段は近いでしょう。 |
2015年3月号(2月3日発売)の内容と感想 |
今月は面白い読み物がたくさんあります。 まずは巻頭カラーにある、「第64期王将戦第1局」(渡辺-郷田)(記:大川慎太郎氏)。この観戦記、一般的な手の解説のある観戦記と違って、ほとんどエッセイ並みの読み物になっています。この一戦で、「驚愕の新手」を指したのがソフトだったことについて関係者から様々な感想を聞き、その真相を突き止めて書いている訳です。たいへん面白く、個人的には年間トップ3の記事に上げたいと思うほどでした。 続いて、「知はどこへ向かうのか」と題して、ponanza開発者の山本さんと西尾六段の対談が組まれています。ソフトの強さとその向かう先、そして人間のあり方まで話をされていて、こちらも非常に興味深い内容でした。 特集は二つ。一つ目はこれも面白い読み物で、「糸谷竜王はなぜ最強世代に勝てたか」と題し、橋本八段、山崎八段、佐藤天彦八段の座談会となっています。さらに続く「関西本部棋士室24時」でも糸谷竜王特集です。 特集の二つ目は、上達講座”極める”シリーズ「穴熊なんてコワくない」前編。講師は所司和晴七段で、穴熊攻略のポイントをやさしく解説しています。 「今月は面白い読み物がたくさん」ですが、さらに特別寄稿「過去との訣別、27年の越境」と題して、今泉健司新四段のことについて、北野新太氏が「27年の苦悩の道のりに迫るドキュメント」を綴っています。全部で9ページですが、引き込まれてあっという間に読んでしまいました。 こうした読み物が多いからかもしれません、プロ棋戦としての観戦記付き棋譜は今月号にはありません。巻頭カラー2ページに「女流名人戦第1局」(里見-清水)が速報として取り上げられている他、いろいろな記事の中に載せられている程度です。 その真部-青野戦の香落ちを載せているのが、「私はこうして強くなった」の青野照市九段の巻(前編)です。青野九段と言えば、「勝負の視点」をはじめとする面白い読み物をたくさん出版されています。と言うことで、上達に対する見方もちょっと違い、一読の価値有りです。 中とじのカラーページには、「名匠たちの駒」の写真と、先月から連載が始まった「かりんの将棋上り坂↑」があります。こちらは実際に指した局面を題材に使用し、講座にしています。 去年の大みそかに行われた森下-ツツカナ戦が、8ページに渡って「正しかった森下理論」として記事になっています。森下九段の自戦解説ですので、これも非常に興味深く読みました。特に練習での話や、棋譜だけでは分からなかったその時々の読み、感想など面白い内容でした。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって20回目。最初のページのテーマ図を見た時、どれも最近のものかと思いましたら、三つとも古い対局でした。そのテーマ(1)は、升田、若手をあしらう、(2)宗古-算砂の熱戦、(3)大橋宗英の寄せ、(4)命を懸ける駒落ち戦、の四つです。(1)は昭和52年、升田-田中寅彦戦の中盤、矢倉で駒組みが頂点に達した局面から。(2)と(3)は江戸時代の棋譜でその終盤戦を出題。(4)は昭和49年、A級順位戦で板谷進八段が升田九段と対戦した時の話で、「命を懸けるなら角落ちでも逃げる」と話したことを題材にしています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第63回目で今回は『先手中飛車+左美濃は鉱脈か』です。最近はやりの「先手中飛車+左美濃」は個人的にも興味のある戦型ですので、ここで取り上げてもらえたのはうれしいですね。しかも内容はここに至る変遷まで詳しく書かれていますので、非常に有用です。後半には、「キーパーソンに聞く」として何人かの人達へのインタビューもあり、プロはどのように考えているのか参考になります。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第36回で「青野流▲4六角に△6四歩」。先月は休みでしたが引き続き青野流▲4六角に△6四歩とする定跡。その△6四歩には▲8二歩と▲2八飛という手段が有力とされており、前回▲8二歩で今回は▲2八飛についての研究です。 今月号には「詰将棋サロン」の後に、「2014詰将棋サロン年間優秀作作品選考会」があります。一般的な有段者にとっても難しいですが、一年の中でも特に良い作品と言われたものが、10個もありますので、是非じっくり解いて見て下さい。 付録は編集部編「プロの穴熊攻略テクニック」。本誌の上達講座で基本を学んで、この付録でプロの実戦を題材に、と言うことです。題材はプロの実戦ですが、内容に難しい所はあまりなく、むしろ破り方、攻め方の筋をしっかり学べるでしょう。 |
2015年2月号(12月29日発売)の内容と感想 |
今月の特集は2つ。その一つ目は、「新竜王・糸谷哲郎が語る第27期竜王戦七番勝負」。「未知の世界を恐れない」と題し、第5局を詳細な解説で振り返っています。そしてその後に第1局から第4局の印象に残った局面を取り上げ、インタビュー形式で様々な角度からその考え方を掘り下げています。今までにこのような記事がなかっただけに面白い読み応えのある記事になっていました。 特集の二つ目は、「羽生の1300勝を検証」です。通算1300勝は過去、大山、中原、加藤の三人だけということで、史上四人目の記録。但し、その内容面においてはこの三人とかなり違うということで、この検証記事になっています。記録好きの人には、非常に面白い内容でしょう。 プロ棋戦としては他に、「第35回将棋日本シリーズ決勝」(渡辺-羽生)(文:鈴木健司氏)、「女流王座戦第3局」(加藤-西山)(文:渡辺大輔氏)、「倉敷藤花戦第2局」と「第3局」(甲斐-山田)(文:君島俊介氏)など今月のプロの棋譜はやや少なめです。 ただ先月からの続きで、「私はこうして強くなった」の第4回、渡辺弥生女流初段が登場し(後編)、女流の棋譜二つがあります。今月号のこの「後編」の記事、後半の「男性と女性の将棋の違い」について述べられていることはなかなか面白い見解です。晩学の秀才女性としての考え方、上達法など考えさせられる内容が多々ありました。 そして、今泉健司アマの「プロ編入試験」の記事。第3局は三枚堂四段の自戦解説、第4局は鈴木健司氏の文で石井四段との一局が解説されています。ただ、実況を見ていた人にはそれほど目新しい内容はありませんでした。見ていない人は、是非2局とも並べて見て下さい。 今月からの新連載に、「かりんの将棋上り坂↑」と言うのが出ていました。アイドルである「乃木坂46」の伊藤かりんさんが登場して、インタビューとこれからの「上達ドキュメント」の連載となっています。講師は戸辺六段。第1回目の今回は「中飛車を指してみた」となっており、所々、急所の局面を解説しています。今後、どのような記事になっていくのか興味を持って見ていきたいと思っています。赤字にしたのは、将棋を教える目線で、これからの内容を期待して、です。 連載の「棋士とコンピュータ」、今回「最終回」となっており、屋敷伸之九段が登場。電王戦の話やコンピュータをどのように使っているかなどいろいろな話。この連載が終わってしまうのは非常に残念ですね。コンピュータに対し、どのように思っているのか、登場して欲しい棋士はたくさんいるのですが。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第62回目で今回は一手損角換わり・横歩取り編『一手損角換わりの苦悩』。内容は詳細で丁寧、しかしとにかく難しい。一手損角換わりを指す有段者必見という所ですが、アマチュアでどのくらいの人がいるのかはやや疑問。とは言え貴重な講座ですのでこれがなくなったら将棋世界の価値が下がります。 続く横歩取りは、形式を変えて3ページ、「横歩取りグラフィティー」として現代横歩取りのポイントを解説しています。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって19回目。今月のテーマは、(1)大山振り飛車の芸、(2)いまの将棋は詰みまで研究されている?、(3)升田、豪腕でうっちゃる、(4)いまのプロの将棋は小学生に合うか?、の四つです。(1)は昭和61年、大山-勝浦の棋王戦。(2)は最新の横歩取りから。青野流の終盤を取り上げています(昨年3月の佐々木勇気-藤森戦)。(3)は昭和49年、内藤-升田のA級順位戦から。不利な局面からの粘り強い一着を探してもらうことになります。 付録は大石直嗣六段の「いますぐ指そう ダイレクト向かい飛車」。最近は将棋センターでも時々見かけるようになりました。本来は序盤の角成りの変化をしっかり研究しておかないと指せない戦法ですが、まずは付録を読んで、とりあえず練習に指して見るのも良いかもしれません。次の一手形式で39問です。 |
2015年1月号(12月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は表紙にもあるように、「羽生善治が語る第62期王座戦五番勝負」です。第1局から第4局まではポイントだけで、第5局は自身が解説。特に第5局、私も見ていましたが、その時に解説で聞いたことだけでなく、どう感じていたかなど知らないことも多く、これはなかなかの企画でした。ただちょっと残念なのは僅か13ページしかないこと。この倍くらいページを割いても良いんじゃないかと思うくらい内容的には面白いです。 巻頭カラーで取り上げられているものに「竜王戦第3局」(森内-糸谷)(記:大川慎太郎氏)があり、この記事も面白く、一気に読んでしまいました。続いて、「女流王将戦第3局」(香川-清水)は香川女流王将の自戦記で載っています。(第1局、第2局は棋譜のみ) プロ棋戦としては他に、「竜王戦第2局」(森内-糸谷)(文:国沢健一氏)、「女流王座戦第1局」(加藤-西山)(記:馬上勇人氏)(第2局は棋譜のみ)、「新人王戦第2局」「第3局」(佐々木-阿部)(文:相崎修司氏)、「加古川青流戦第2局」(藤森-石田)(自戦記:石田直裕四段)(第1局は棋譜のみ)「倉敷藤花戦第1局」(甲斐-山田)(文:渡辺大輔氏)と今月もたくさんの棋譜があります。 さらに、「私はこうして強くなった」の第3回は渡辺弥生女流初段が登場し(前編)、女流王座戦での棋譜二つ(対清水戦と対上田戦)があり、「第2回将棋電王トーナメント」の記事には、決勝の棋譜(AWAKE-ponanza戦)もあります。 巻頭カラーの中に連載、「棋士とコンピュータ」があり、第4回目の今回は、森下卓九段。第3回電王戦出場の話といわゆる「森下新ルール」の話。今年暮れに行われるリベンジマッチの話に触れてはいませんが、新ルールの考えは良く分かりますし、暮れの対局も興味あるイベントになりそうです。 さらに巻頭カラーには、特別企画として「児玉龍兒の世界」という形で、盛上駒の写真が9ページに渡って載せられています。普段、駒の話があってもあまりここでは取り上げていませんが、この写真はすごい。これで駒に興味を持つ人も出るかもしれません。 「上達講座”極める”シリーズ」の「寄せは”必至”で勝て!」。なぜか特集から外されていますが今月号にも載っており、「3手必至編」です。講師は武市三郎七段。先月の「一手必至」に比べたら当然難しくはなっています。しかし、駒数も少なく基本を丁寧に解説していますので、級位者の人でも良く理解できると思います。しかも、意外に難しい問題もありますので、有段者まで使える非常に良い講座です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第61回目で今回は角換わり編『角換わり腰掛け銀の地殻変動』。内容はいつものように、現在に至るまでの変遷から現在の状況、コンピュータの手や最新竜王戦まで幅広く取り上げ、そして分かりやすく解説しています。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって18回目。今月のテーマは、(1)後手、6手目の工夫、(2)加藤-内藤の熱戦、(3)甲斐-清水戦の好局、(4)升田幸三、生涯の不覚、の四つです。(1)は角換わり模様で始まった序盤に△8五歩▲7七角を決めずに△9四歩と突く後手の工夫について。(2)から(4)はすべて実戦から。その(2)は昭和47年のA級順位戦の終盤。(3)は今年5月の女流王位戦第3局でやはり終盤。この局面は棋士によって形勢判断が違っており面白いです。(4)は昭和31年の名人戦挑戦者決定戦で升田-花村戦(終盤戦)。とん死の一局でした。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第35回で「青野流▲4六角に△6四歩」。前回に引き続き青野流▲4六角。それに対し△6四歩とする定跡。その△6四歩には▲8二歩と▲2八飛という手段が有力とされており、今回はその▲8二歩についての研究です。 「詰将棋サロン」、今月号は何と「初級特集」で、8問すべて初級(11手以下)。ただ初級と言っても、詰将棋サロンは基本的に難しく有段者向けと思って下さい。それでも普段、初級しか解かない人にはうれしい8題です。 付録は本間博六段の「ホンマにやさしい詰将棋」。副題は「すいすい解ける3手・5手詰ボリュームたっぷり60題+1」。書名にあるように、有段者ならひと目で解けるような”最初にやる詰将棋”。難易度も、将棋タウンのやさしい3手詰5手詰より駒数が少ないだけに考えやすいでしょう。ただ表紙の問題は、筋を知らないと解けないかもしれません。中にある、本当にやさしい問題を表紙に持ってきた方が良かったような気はしますが。でも、初級者にお薦めです。 |
2014年12月号(11月1日発売)の内容と感想 |
今月号は、「実戦の棋譜」がたくさんあります。まず最初は巻頭カラーとしてハワイで開幕した「第27期竜王戦第1局」(森内-糸谷)(記:大川慎太郎氏)。続いて、フルセットにもつれ込み、豊島七段が反撃を開始した「王座戦第3局」(羽生-豊島)(記:鈴木健二氏)(第2局は棋譜のみ、第4局は棋譜を含め4ページ)。 他に、「王位戦第7局」(羽生-木村)(国沢健一氏)、「新人王戦第1局」(阿部-佐々木)(文:渡辺大輔氏)、「富士通杯達人戦決勝」(森内-高橋)(文:小野寺隼氏)、「白瀧あゆみ杯決勝」(和田-室谷)(優勝自戦記:和田あき女流2級)など盛り沢山ですので、棋譜並べをするのには今月号は最適です。達人戦とあゆみ杯は2ページしかありませんが、棋譜も載せられています。観戦記として、棋譜としてどれか特別に面白かったというものがなかった為、しかしいずれも平均点以上の面白さでもあった為、すべて含めて赤字にしました。 特集としては二つあります。一つ目は「竜王戦七番勝負展望対談」として森下卓九段と中村太地六段が相崎修司氏構成で対談、竜王戦の予想をしています。将棋世界発売時にはすでに2局終わっていますから、その結果を踏まえながら記事を読むのも面白いです。 特集の二つ目は、「上達講座”極める”シリーズ」の「寄せは”必至”で勝て!」です。講師は、お薦め付録「受けと凌ぎ」を書いており、「懸賞必至」も出題している武市三郎七段。内容は、今まで出題してきたものよりずっとやさしい「1手必至編」です。「初級者から初段を目指している上級者までを主な対象にした必至入門編の講義にしたい」と書かれているように、必至の基本から会話形式で問題を解いていきます。解説も分かりやすくお薦め講座。これで一冊の単行本が欲しいと思わせる内容ですね。 巻頭カラーの中に連載、「棋士とコンピュータ」があり、第3回目の今回は、豊島七段です。今期電王戦に出場した理由から、計画、研究方法まで興味あるインタビュー記事になっています。 さらに巻頭カラーには、倉敷藤花戦の挑戦者になった「山田久美女流四段インタビュー」(構成:渡辺大輔氏)もあります。タイトル戦挑戦間隔の最長記録と言うことでも注目の倉敷藤花戦は、第1局から第3局まですべて11月中です。 電王戦関連の記事、上記「棋士とコンピュータ」の他に、「電王戦FINAL出場棋士決定!」「電王戦タッグマッチのレポート」(文:一瀬浩司氏)があります。この中には、決勝戦である森下・ツツカナvs西尾・ポナンザ戦の棋譜もあります。 「関西本部棋士室24時」、先月今泉氏のプロ編入試験の話を載せていましたが、今月号はその第1局と第2局の棋譜と解説が載せられています。これはネットで見ていなかった人には有り難いですね。ある意味、プロ棋戦以上に興味のある2局です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第60回目で今回から『勝手に戦法ランキング拡大版』として、各戦型の最新状況をレポートしていくそうです。今月号は拡大版1で、矢倉編。矢倉の最も基本的な本道とも言うべき定跡である▲4六銀▲3七銀型。これにボナンザ新手(△3七銀)から話は始まります。このボナンザ新手に対する様々な研究、そしてそれ以前の手の変化。一つ一つをいつものように実戦例を交えながら丁寧に解説していますので、矢倉をそれほど知らなくても非常に面白く読めるでしょう。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって17回目。今月のテーマは、(1)横歩取り後手のアイデア、(2)清水女流六段の長考、(3)升田、消費時間3分の勝利、(4)加藤一二三九段の初タイトル、の四つです。(1)は横歩取り△3三角で後手が両方の端歩を突き越す将棋。こうした両方の端の位を取った将棋は20局以上あり、5割以上の勝利だそうです。対して、見解は各棋士による大きな違いはありませんでしたが、勉強になる解答になっています。(2)は清水女流六段と渡部愛女流初段の横歩取りの将棋。(3)は昭和46年A級順位戦の升田-有吉戦。夜の10時半に開始された指し直し局で、升田の寄せ方について。(4)はいつものように加藤一二三九段の実戦。昭和44年の十段戦で、相手は大山十段(当時)。大山の指し手を考える問題。今回の(2)から(4)はいずれも棋士による回答がそれほど違っている訳ではありません。しかし、問題はいずれも面白く考えさせられるものですので、ちょっと難しいですが、読む前に自分なりに考えて見ると面白いかもしれません。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第34回で「青野流▲4六角の変化」。前回に引き続き青野流▲4六角。今回はそれに対し飯野流△7三角の解説です。実戦の例を出しながら詳しい変化を検証していますので、横歩を指す人は必見です。 付録は編集部編「プロの必至・しばり」。副題は「大技、小技、確実に寄せるテクニック39題」。はしがきには「本誌の上達講座「終盤は”必至”で勝て」で必至の基本を学んでいただきました。付録では生きた教材としてプロの実戦例をご覧いただきましょう。」とあります。その言葉通り内容は、「上達講座」の実戦編とも言うべきもので、似たような寄せが問題に採用されています。復習になり実戦に役立つような良問多数ですので、級位者から有段者まで是非やってもらいたい付録です。 |
2014年11月号(10月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、特集1として「糸谷哲郎七段へのインタビュー記事」(構成:池田将之氏)から始まります。今期竜王戦の挑戦者になったのですから当然ですが、内容は現在の心境や挑戦についての話他、準々決勝、準決勝の将棋のポイントの局面など写真を含め6ページです。 続いて「王座戦第1局」(羽生-豊島)(記:大川慎太郎氏)。いきなり大きく「不完全燃焼の開幕戦」と書かれているのには驚きました。実況で見ていましたが、終盤まで定跡形とは言えそこからの最終盤の応酬は熱戦でしたから。しかしたった一手のミスで将棋が終わってしまったこと、それを言っているようです。そしてその周辺について、心情と詳しい解説があります。ただ内容的には変化棋譜も多く難しいかもしれません。実況を見ていた有段者の人たちにとっては面白く有益な記事です。 さらに巻頭カラーの三つ目は「王位戦第6局」(羽生-木村)(記:古川徹雄氏)。こちらには大きく「木村、奇跡の逆転」とあり、詳しい観戦記が写真を含め10ページあります。 プロ棋戦としては他に、「王位戦第4局」(羽生-木村)(解説監修:深浦九段)、「王位戦第5局」(羽生-木村)(文:鈴木健二氏)、「竜王戦挑戦者決定戦第2局、第3局」(羽生-糸谷)(文:国沢健一氏)、「銀河戦決勝」(渡辺-松尾)(文:編集部)と今月号にはたくさんありますね。 特集記事と書かれているものは三つあります。一つ目は上に書いたインタビュー記事で二つ目は特別対談「黒川博行さん×森信雄七段」。黒川氏は直木賞作家で将棋ファンとのこと。 特集の三つ目は、「上達講座”極める”シリーズ」の「大局観を磨け!」です。講師は高野秀行六段。内容は大部分「形勢判断の仕方」で占められています。 先月から始まった連載、「棋士とコンピュータ」、第2回目の今回は、佐藤紳哉六段の登場です。今年の電王戦に出場していますのでその辺りの話からコンピュータとの付き合い方、興味のあるインタビュー記事になっています。 短期連載、「ぼくはこうして強くなった」は「第2回藤井猛九段の巻」後編です。今回はプロデビューしてからの話。そしてその大半が藤井システムについての話。”藤井システム誕生を語る”と言った副題を付けても良いくらいで、内容も面白いです。 中程、4ページだけですが、今月29日から始まる「女流王座戦五番勝負」に出場する加藤桃子女王と西山朋佳奨励会初段へのインタビュー記事があります(巻頭カラーにも2ページ写真と記事)。また、「関西本部棋士室24時」には今泉氏のプロ編入試験の話が何ページにも渡って取り上げられていて、その中にはインタビューも入っています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第59回目で題は『消えた格言の謎』として、前回からの続き、『羽生東大講義をよむ3』です。数多く話された格言の中から取り上げたのは次の四つ。すなわち「横歩三年の患い」「振り飛車には角交換」「手損は避けよ」「5筋の位は天王山」。何となくこれだけでもどのような内容か想像されますが、実際は例題を上げそれらを非常に分かりやすく書かれています。(※最後の天王山の解説では、「臨機応変」の記事になっています。) 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって16回目。今月のテーマは、(1)山崎新手の△2四飛、(2)升田、豪快な勝負術、(3)初代宗桂の読みきり勝ち、(4)ミクロコスモスは読みきれるか、の四つです。(1)は横歩取り△3三角。24手目に早くも△2四飛とぶつける新手の局面です。(2)は昭和22年の升田-木村戦の中盤戦。(3)は1618年、江戸時代に行われた宗桂と本因坊算砂の一戦。(4)は詰将棋最長手数のミクロコスモスを読み切れるかどうかという質問。この詰将棋の手数は1525手。回答は棋士によっていろいろでした。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第33回で「青野新手を検証する」。相横歩取りで飛角総交換になった局面。そこで▲4六角と打つのが青野流。この手に対し、真田流の△2七角、飯野流の△7三角、屋敷流の△6四歩について検証しています。 付録は藤森哲也四段の「攻めっ気120%の急戦矢倉」。副題には「米長流速攻型の基本から藤森流最新型まで」とあります。そして、はしがきに、単行本で「藤森流急戦矢倉」の出版について触れ、この付録は、その単行本で割愛した「速攻型」を含め「本格型」「藤森流」の代表的な攻め方を紹介していると書かれています。いつものように次の一手形式で39問、気楽に読める付録です。 |
2014年10月号(9月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、先月と同じく「第55期王位戦第3局」(羽生-木村)(記:大川慎太郎氏)。実況中継されていましたし、結果は持将棋ですから本来解説するような対局ではありません。しかしそれを読ませてしまうほどうまく対局者の言葉を交ぜて面白い記事にしています。 巻頭カラーにはもう一つ、「第27期竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局」(羽生-糸谷)もあります。写真を入れて僅か3ページですが、棋譜も載っています。 そして特集。こちらも二つです。一つ目は、今月から王座戦が始まると言うことで、「豊島将之七段へのインタビュー」記事(構成:池田将之氏)。そしてもう一つは、「上達講座”極める”シリーズ」の「逃れ力をつけろ!」です。講師はあのスーパートリックの森信雄七段ですので、難しいのかと思いましたが、初心者向けから入っています。それでも後半部分はかなり考えさせられる問題も多く、全体としては級位者向け凌ぎ講座ですが、有段者でもじっくり考えないと間違えそうな問題も混ざっています。 プロ棋戦としては他に、「王位戦第2局」(羽生-木村)(解説:武市三郎七段)があります。 今月号から新連載、「棋士とコンピュータ」が始まりました。今回は第1回で、菅井竜也五段へのインタビュー記事。その菅井五段対習甦の「電王戦リベンジマッチ」(記:池田将之氏)の棋譜と解説も8ページに渡って載せられており、両方合わせて赤字としました。この対局、私自身は実況ではそれほど長く見ていないのですが、改めて見てもこれはすごい一局でしたね。 先月からの続きの短期連載、「ぼくはこうして強くなった」は「第2回藤井猛九段の巻」中編です。先月号では奨励会試験を受けるまででしたので今回はそこから。奨励会級位時代の研究やその指し手。さらに有段になってからの話など、単に当時の話をされているだけでなく、振り飛車党には役に立つ局面、考え方もたくさんあります。四段昇段を勝ち取った所で終わっていますので、次回はプロになってからの話だと思われます。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第58回目で題は『「駒の性質」を活かすには』として、前回からの続き、『羽生東大講義をよむ2』です。前回は歩についてでしたが、今回は香車と底歩から始まり、一段金や遠見の角、玉の早逃げ等々手筋を実戦で紹介、解説しています。今回も非常に分かりやすく、級位者から有段者まで、棋力アップにすぐ役立つ記事です。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって15回目。今月のテーマは、(1)YSS新手のナゾ、(2)名人戦に現れた不思議局面、(3)加藤-有吉戦の名手、(4)93歳の現役棋士、の四つです。(1)は有名になったYSS新手△6二玉について。様々な所で解説もされていますし、本誌「裏定跡の研究」でも取り上げられていますので、それ以上の詳しい話はありませんが、6人の見解が分かり面白いです。(2)は今期名人戦第1局に現れた△2二角の局面。当然、当事者だった森内竜王の見解もあります。(3)は昭和41年の十段リーグ、▲加藤一二三八段-△有吉八段の終盤戦。次の一手問題としては難問ですので読む前に考えて見て下さい。(4)は囲碁の棋士である杉内雅男九段が93歳の現役で、若手棋士と普通に打っているということで、「あなたは、これを目指しますか?」との質問です。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第32回で「直線定跡の結論」。今回から本題に戻りました。そして相横歩取りの最重要課題として、△2八歩の局面を上げています。特に有名な「羽生の頭脳定跡」の箇所を詳しく解説。非常に難解な所をいろいろと書かれており、相横歩を指す人ならもう一度おさらいしておきたいところです。 付録は中田章道七段の「短編詰将棋傑作集」。今までにも数多く出されています、5手から11手の詰将棋40題(39題プラス表紙の1題)です。「はしがき」には、『全体的にやややさしめ』とありますが、短いものはともかく、11手13問には難しいものも混ざってます。初段前後の棋力の人を中心にしており、じっくり取り組みたい付録です。 |
2014年9月号(8月2日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「第55期王位戦第1局」(羽生-木村)(記:大川慎太郎氏)。実況中継もされていましたし、棋譜には詳しい解説もありますから(実況を見ていた人にとって)技術的な新しい内容はあまりありません。しかし、この将棋世界の記事は木村八段の心情など切り口が面白く、一気に読ませてしまう内容となっています。 特集として別に二つあります。一つ目は「写真で綴る女流棋界の40年」(構成:古川徹雄氏)。巻頭カラーの中に、女流棋士たちの足跡として女流棋士誕生から黄金期〜新時代として8ページに渡り載せられています。 そして特集の二つ目は「端攻めを極めよう」。講師は上野裕和五段。先月から始まった「上達講座”極める”シリーズ」とのことで、内容は分かりやすく級位者向けです。端攻めの基本から実戦例まで幅広く、21ページに渡ってやさしく書かれています。初心者から2、3級まで、何度でも読み返し、自分のものにしてもらいたい講座です。 プロ棋戦としては他に、「棋聖戦第3局」(羽生-森内)(文:鈴木健二氏)と、2ページだけ「第2局」(解説監修:佐藤康光九段)があります。 先月からの続きの短期連載、「ぼくはこうして強くなった」は「第2回藤井猛九段の巻」前編です。「私ほど将棋を指さずにプロになった棋士はいないはず。」と話され、内容は将棋を覚えてから奨励会試験を受けるまでのこと。副題の「プロ棋士に学ぶ上達のコツ」ではありませんが、人物伝として普通に面白いです。 中とじのカラーページには、連載されている「駒に生きる」の他、追悼特集として、将棋写真の大家「中野英伴氏の棋士写真と追悼文」が載せられています。 今回、ちょっと変わった記事に、「イケメン患者の将棋授業」というのがあります。書いているのは、天野貴元氏で元奨励会三段。今年、「オール・イン」という単行本も出版しており、ブログも持っている為、「あまノート番外編」と副題が付いています。内容は、「アマ向け実戦の戦い方」と言ったものに近く、美馬和夫氏やアマ強豪が書いているような単行本を思い起こさせます。正当に棋力を上げる「講座」ではないですが、実戦的と言うことで面白い記事です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第57回目で題は『突き抜ける!式「将棋は歩から」羽生東大講義をよむ』。題だけでは良く分かりませんが、羽生名人が東大で講義をしたことについて、「ごく一部の学生しか聴いていないのはもったいない」「部分的に再現しつつ、現代将棋についていろいろ考えてみます。」ということで今回の記事になったようです。そしてその話は歩についての様々な角度からの講義だった為、副題も「将棋は歩から」になっていると思われます。今回も非常に面白く役に立つ講座です。当然赤字にしたい所ですが、三回連続になってしまう為あえてしていません。しかし今回は特に考え方が大きな部分を占めているため、級位者の人にも役に立つでしょう。お薦めの記事です。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって14回目。今月のテーマは、(1)福崎流の序盤術、(2)大山マジック、若手を惑わす、(3)大山-加藤、激戦の終盤、(4)300回の逆転負け、の四つです。(1)は昭和62年の順位戦、▲佐伯八段-△福崎十段の対局から。急戦矢倉で、動く手があるかどうかということですが、ほぼ全員が同じ答え。(2)は昭和62年棋王戦の▲大山十五世名人-△神谷五段戦の終盤。こちらは人によって見解がかなり違います。違っているので面白いのですが、正解が結局のところよく分からないというのが問題です。(3)は昭和48年のA級順位戦、▲加藤一二三八段-△大山康晴九段戦のごちゃごちゃした終盤戦。こちらも人によって読みも違えば形勢判断も違います。それだけ難しい局面なのかもしれませんが、やはり正解がないのがちょっと残念なところ。ある程度検討してもらい、見解を出しておいてもらいたい気もします。(4)は加藤一二三九段の棋士人生で、300回逆転負けしても1300勝する。「逆転負けと逆転勝ちはどちらが多い?」という質問です。 付録は編集部編「プロの端攻めテクニック」で、本誌の特集「端攻めを極めよう」に連動しているようです。すなわち、その特集で基本を学び、こちらでは、プロの実戦例から端攻めの応用を学んでいくという訳です。プロの実戦ですから、手の組み合わせとしては難しいですが、端攻めと言うヒントがあることで考えやすく、良質の39問です。 |
2014年8月号(7月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は二つ。一つ目は「羽生善治が語る名人戦全局」。まず「第四局」の詳しい解説があります(構成:鈴木健二氏)。その後に第一局から第三局までの解説でこちらは全部で7ページ。内容的には、実況を見ていた人にはそれほど目新しい記事がないように思え、せっかく本人の解説なのにややもったいない感はあります。ただそうは言っても、本人解説で19ページと十分な分量ですから、今月の目玉記事には違いありません。 そして特集の二つ目は「二枚落ち徹底マスター」。講師は飯塚祐紀七段。「二歩突っ切り・銀多伝はこれでOK」とあるように、その二つの定跡講座です。内容は、「決定版駒落ち定跡」にあるような極めて基本的な内容。そのポイントを押さえた講座ですが、なぜ「特集」扱いなのか不思議。以前にもあった「読み切り定跡講座」のような感じだからです。なお、銀多伝の後に「△5五歩止め」も取り上げられています。 プロ棋戦としては他に、「女流王位戦第4局」(甲斐-清水)(記:渡辺大輔氏)と、この記事の中に「第2局」「第3局」も棋譜だけあります。 先月からの続きの短期連載、「ぼくはこうして強くなった」では「第1回森下卓九段の巻」の後編です。奨励会時代の話や最近のプロ将棋についての話。非常に面白く一気に読んでしまいました。来月は藤井九段とのことで、これも期待しています。 ここではあまり取り上げていませんが、「盤上盤外一手有情(第10回)」、「関西本部棋士室24時(第30回)」、「-評伝-木村義雄(第14回)」、「感想戦後の感想(第104回)」など長く続いている記事には一定以上の面白さはあり、特に今回は興味の惹かれる記事がいくつもありました。 中とじのカラーページには、「棋聖戦五番勝負第1局」(羽生-森内)(記:大川慎太郎氏)があります。内容も初戦から熱戦でしたが、解説も分かりやすい。 続いて、王位戦挑戦者になった「木村一基八段のインタビュー記事」(構成:古川徹雄氏)。内容は、王位リーグでの話と後半は近況と王位戦に向けて。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第56回目で題は『あっという間に知らない世界-横歩取り最新事情』。そして今回も非常に為になる記事となっています。まずは横歩取り△3三角戦法の歴史から。横歩取りグラフィティーとして、「古典時代」「8五飛戦法+中原囲い時代」「5二玉時代」「銀冠と美濃」の4つを各1ページずつその変遷について。その後、最新事情。こちらは△2四飛のぶつけからひねり飛車、美濃囲い等々。二ヶ月続けて「お薦め」にはしないようにしていたのですが、この記事以上のものが見られなかった為、今回も強調文字に。思うにこの手の記事は、週刊では重すぎ単行本では遅すぎ、なので月刊誌に合っていると言えそうです。横歩取りを見る時の背景知識として勉強するのにピッタリの教材ですのでしっかり読んでおいて下さい。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって13回目。今月のテーマは、(1)相掛かり急戦の落とし穴、(2)加藤、絶妙のしのぎ、(3)芹沢美学に散る、(4)羽生伝説の勝負手、の四つです。(1)は定跡の一局面、残りは実戦から。(2)は平成7年のA級順位戦、中原-加藤戦。(3)は昭和62年のB級2組、芹沢-中村修戦、(4)は昭和62年の羽生-小野戦。(1)の定跡と(4)の実戦では棋士間の考えが違い面白い内容になっていますが、(2)と(3)はあまり違わない。こういう場合、問題を差し替える(あるいは掲載分より多くの問題を用意しておく)ということはしていないのでしょうか?面白さ半分ですね。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第31回で今回も番外編「プロ棋界に波紋を呼んだYSS新手」。先月に引き続きソフトの指した新手△6二玉の検証です。この電王戦の後、実戦例が2局指されたとのことで、その手順も少し書かれています。そして多く割かれているのは3枚換えの変化。後手もかなり有力だとの結論で、当時電王戦直後に感じていた形勢判断は間違っている可能性もあります。これからの研究待ちかもしれません。 付録は西川和宏四段の「相振り飛車のエッセンス」で、はしがきには「相振り飛車を指す上での基本的な考え方や、知っておくべき必須手筋を紹介します」とあります。戦型は先手の向かい飛車対後手三間。さらに相三間飛車などを取り上げ、いつものように次の一手形式で39問です。 |
2014年7月号(6月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「名人戦第3局」(森内-羽生)(記:大川慎太郎氏)です。私は実況ではそれほど良く見ていなかったのですが、そういう人にも非常に分かりやすく面白く書かれていました。この将棋の指された背景(渡辺流)から若手の感想も取り入れ、月刊誌ならではの記事になっていると思います。 続いて「天童特集」として人間将棋などの写真と記事。「マイナビ女子オープン第3局」(里見-加藤)は天童対局でしたので、その記事も(第3局は2ページのみ)。 プロ棋戦としては他に、「マイナビ女子オープン第4局」(里見-加藤)(観戦記:古川徹雄氏)、「女流王位戦第1局」(甲斐-清水)(記:鈴木健二氏)、「第7回世田谷みず木女流オープン戦決勝」(加藤-中村真梨花」(文:渡辺大輔氏)(2ページ)などがあります。 今月号には、面白い記事がいくつもありました。まず、「棋士たちの第3回将棋電王戦」(記:北野新太氏)。「今さら電王戦の記事か」と思いましたが、読んで見ると意外に面白かったです。『問い掛けたかったのは(中略)彼らが抱えていた思いであり、プライドの行方だった。』とあるように、棋士の思いが伝わってきます。 そして次に短期連載として「ぼくはこうして強くなった」の記事。第1回は森下卓九段の巻(前編)。こうした記事も今まであまりなかっただけに良いですね。ただ、「強くなった経過」以外の内容も多くて、できればポイントだけを絞って一回読み切りにして欲しいかなと。 ようやく、勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」が帰ってきました。第55回目で題は『昔の将棋に学びたい』です。この題、昔の将棋を取り上げるのかと思いましたら、全然違っていました。最初に電王戦雑感から。そしてコンピュータの指し手についてかなりのページを割いて、そこに昔の将棋も取り上げつつ解説しています。ボナンザ新手や宮田新手など最新状況も取り上げ、これなら題は「コンピュータ将棋を斬る!」とか「コンピュータと新手」などの方が内容に合っているような気がします。しかし内容はとにかく面白い。やはりこれがあるのとないのとでは「将棋世界」の価値が違う、と言っておきます。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって12回目。今月のテーマは、(1)石田流の新世界、(2)升田-加藤の順位戦、(3)香川女流王将の好局、(4)魚つりの歩のナゾ、の四つです。(1)(2)は先月の姉妹編と言った感じ(内容は新規ですが)。(1)の新世界は、後手石田流で、先手の▲6八玉に対し△4二金と言う手が成立するかどうか。関西で流行していると言うことで、なるほど、アマチュアなら普通に有力そうでやってみたいですね。(2)は昭和41年のA級順位戦の終盤。(3)は昨年女流王将になった香川女流王将と清水女流六段との対局で中盤のねじり合いと言った感じの局面。但し問題図は先手の清水側です。(4)は江戸時代、伊藤看寿対大橋宗与の右香落ち戦。有名な「魚つりの歩」の将棋ですが、改めて考えて見ると意外な局面なのですね。棋士の考え方もそれぞれに違っていてこれは面白かったです。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第30回で番外編となっています。題は「豊島-YSS戦の△6二玉を検証」。今回はあの電王戦を見ていた人に取っては必見です。△6二玉に角を交換して▲2一角以降の変化。詳細に書いているのは、△3一銀の代わりに△2五歩ならどうなるのか、というところ。実際、豊島七段はどこまで研究していたのか知りたい所です。 付録は勝又清和六段の「新手ポカ妙手選2013年度版」で、毎年この時期に出される恒例企画。実況や将棋世界の棋譜を見ていると、所々思い出す局面があります。100近くの候補から選んだ39題ということですから、考えながら一つ一つやってみて下さい。 |
2014年6月号(5月2日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、名人戦が始まりましたので、もちろんその「名人戦第1局」(森内-羽生)(記:相崎修司氏)です。内容も激戦で、それを「人知を超えた領域」の表題のもと解説しています。巻頭カラーの部分には他に、2年ぶりタイトル挑戦となる「清水市代女流六段へのインタビュー」記事もあります。 今月号には特集のような形で、「プレイバック2013」が載っています。これは現役棋士が選ぶ2013年度ベスト10の対局と棋譜。さらに番外編として3局追加され、並べて見たい棋譜は全部で13局です。なお1位に選ばれたのはあのA級順位戦9回戦の三浦-久保戦で、並べるには長い271手!全局に簡単なコメント有り(1ページに棋譜とポイントの手の解説)。 プロ棋戦としては、「王将戦第7局」(渡辺-羽生)の棋譜はありますが、解説は「王将防衛インタビュー」として渡辺王将の自戦解説が第1局から第7局まで少しずつで、その後に棋王戦の感想、2013年度を振り返るという構成になっています。 他には、「NHK杯決勝」(丸山-郷田)(自戦解説:郷田真隆九段)、「マイナビ女子オープン第1局」と「第2局」(里見-加藤)(文:国沢健一氏)があります。 今月号には「第41回将棋大賞選考会」の記事があり、森内竜王・名人が10年ぶりの最優秀棋士になったことが載っています。その後に各賞と平成25年度全棋士成績表。さらに「第20回升田幸三賞」「第8回名局賞選考会」の記事。この中で、升田幸三賞を取った「横歩取り△5二玉型」のミニ講座を長岡裕也五段が書いているのですが、横歩を指さない人にも分かりやすいほど丁寧に解説されていて「突き抜ける!現代将棋」を彷彿とさせます。 そしてもう一つ、今月号には、あの「第3回電王戦」の完全レポートが29ページに渡って取り上げられています。第1局は先月号に載っていますので、今月は第2局から第5局まで。観戦記は、それぞれ別の人(第2局より順に渡辺大輔氏、諏訪景子氏、一瀬浩司氏、鈴木健二氏)。内容は、ネットで見ていない人には、詳しくてかなり面白いと思われます。但し、全局、解説を聞いている人にとって、新たな情報はあまりないと言えるかもしれません。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって11回目。今月のテーマは、(1)5手目▲7七飛戦法のナゾ、(2)加藤-升田の順位戦、(3)富沢幹雄八段、強烈な攻め、(4)1分将棋の神様も時間は必要か?、の四つです。テーマを見た時、(1)が一番気になりました。いわゆる「無理矢理石田流」にする為、角道を開けない居飛車に▲7七飛と上がる序盤についてです。(2)と(3)は実戦。しかし今回の題材は人によっていろいろ意見の分かれる内容で、こういうのは面白いです。さらに(4)は「優劣不明の終盤で、相手が1分将棋なら、自分の持ち時間がどのくらいあれば自信がありますか。」と言うものです。実はこれ、質問を見た時は、「しょうもない質問」と思ったのですが、意外に人によって捉え方が違っており読んで見たら面白かったです。今回は、四つとも良い題材ですね。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第29回で「羽生の頭脳に挑んだ男」。今回も前回の飛角総交換をする相横歩取りの変化。「羽生の頭脳9巻」にある先手良しの変化を四段になったばかりの北浜八段が後手を持って指して勝ち、その後羽生名人(当時)も指したという話を当時の棋譜も入れて解説しています。 付録は編集部編「天国と地獄2」です。これは一年半前に一度出され、なかなか良い付録だったもので、その第二弾。今回も「はしがき」には次のように書かれています。『前半は、「地獄への入り口編」として序盤でありがちな落とし穴の問題を、後半はどちらかが勝ち(天国)、もう一方は負け(地獄)の2択問題を集めました。』 難易度は、13問目までは基本的な序盤の知識と言った感じで初段以下向け、それ以降はきちんと読みを入れて問題を解く有段者向けの問題となっています。天国への道を選ぶべく39問に挑戦してみて下さい。 |
2014年5月号(4月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーには二つのタイトル戦があります。一つは「王将戦第6局」(渡辺-羽生)(記:大川慎太郎氏)でもう一つは「棋王戦第2局」(渡辺-三浦)(記:鈴木健二氏)です。 また同じ巻頭カラーに、「阿久津主税八段へのインタビュー記事」もあります。 そして今月の特集は「第72期順位戦最終局」として、これに関する記事がたくさんあります。巻頭カラーの阿久津八段も新A級だからと言うことでしょうし、「棋士に聞く本音対談」でも新A級の広瀬八段が出ています。その最終局の記事は、まずA級から始まりB級1組の戦い(記:国沢健一氏)、続いて「盤上盤外一手有情」ではC1とB2について、「関西本部棋士室24時」でもB2、C1の関西編の記事を取り上げており、最後にC級2組の記事(記:相崎修司氏)が載せられています。 さらにその後に今回昇級した9名の棋士による「昇級者喜びの声」が各1ページずつあります。 プロ棋戦としては、他に「棋王戦第3局」(渡辺-三浦)(文:浅見将平氏)、「王将戦第5局」(渡辺-羽生)(解説:深浦康市九段)、「マイナビ挑戦者決定戦」(清水-加藤)(文:小野寺隼氏)があり、特に王将戦は深浦九段の解説です。分かりやすくて良い解説なのですが、個人的にはもっと片寄っていてもプロ目線(深浦目線)の感想を聞きたいような気はします。 プロ同士ではありませんが、表紙には「第3回電王戦開幕」の文字が入り、「第1局」である菅井五段対習甦の戦いが載っています(記:一瀬浩司氏)。ただ電王戦については、週刊将棋にもネット上にもかなり詳しく書かれていましたので、それらを見た人にはちょっと物足りない記事です。見ていない人にはそれなりに興味のある記事になっているとは思います。 「棋士に聞く本音対談」は、広瀬章人八段と戸辺誠六段が登場。この二人の同期、今さらながらすごいメンバーですね。「二十代の彼らはいま何を考え、何を目標にしているのか」と言うことで、奨励会時代の話から、タイトル戦でも見せた広瀬八段の寄せまで、話や棋譜解説に面白い内容が盛り沢山。今月号で一番面白かったです。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって10回目。今月のテーマは、(1)棋士人生、どこからやり直す?、(2)糸谷新手は成立するか?、(3)二上、名人戦の駆け引き、(4)神谷、28連勝中の逆転、の四つです。(2)は昨年7月の▲深浦-△糸谷戦で現れた不思議な新手△3一金。(3)は昭和42年の名人戦第5局▲大山-△二上戦の中盤。(3)は公式戦28連勝中の神谷七段の27連勝目の将棋、▲青野八段-△神谷五段戦の終盤戦。 なお登場しているのは、先月の途中から変わり、森内竜王名人、加藤九段、郷田九段、鈴木八段、豊島七段、永瀬六段の六人となっています。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第28回で「羽生の頭脳定跡」。「羽生の頭脳」にある相横歩取りの変化。最も激しい変化である飛角総交換を問題の局面としていろいろ解説されています。「羽生の頭脳」を読んだ人、横歩の研究をしている人なら最初に勉強した手順かもしれませんが、もう一度復習しておきましょう。 付録は及川拓馬五段の「囲いはこう破れ(穴熊編)」です。過去、「矢倉編」「美濃編」と出して来て、今回「穴熊編」とのこと。振り穴、居飛穴の様々な形を取り上げ、基本的な崩し方からその応用まで役に立つ筋が載っていますし、こういう問題はすぐ実戦に使えますので、39問、すべて解いて見て下さい。 |
2014年4月号(3月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは「棋王戦第1局」(渡辺-三浦)(記:大川慎太郎氏)です。棋王戦が始まりその開幕局は横歩取りの熱戦でした。それを分かりやすい解説と周辺取材を含め読みやすく構成されています。 また同じ巻頭カラーとして、「スペシャル対談、田中隆祐選手(プロレスラー)×郷田真隆九段」があります。 今回は、順位戦が終盤に差し掛かっているということで、これに関する記事がいろいろな所で取り上げられていますね。 まず、田丸九段の「盤上盤外、一手有情」では後半でA級順位戦8回戦の記事。続いて「B級1組、B級2組ラス前レポート」(文:相崎修司氏)、さらに「関西本部棋士室24時」でも、C級1組、C級2組の記事を載せています。 プロ棋戦としては上記順位戦の記事の合間に「B2、9回戦」(泉-佐藤)の棋譜が佐藤天彦七段の自戦解説で載っている他、「王将戦第3局」(渡辺-羽生)では、解説が飯塚祐紀七段です。 また、「朝日杯将棋オープン戦」の準決勝2局(渡辺-森内)(豊島-羽生)と決勝(渡辺-羽生)の棋譜(文:鈴木健二氏)、「女流名人位戦第3局」(里見-中村)(記:北野新太氏)と「第2局」(棋譜のみ)もあります。 今月からいよいよ電王戦が始まります。その「公式ガイドブック」発売にちなみ、「第3回将棋電王戦」の記事が5ページに渡って書かれています。また、この下に書いた「イメージと読みの将棋観2」でもテーマの一つとして取り上げられています。 中とじのカラーページから、「棋士に聞く本音対談」があります。今回登場したのは先月号表紙の続きでしょうか?室谷由紀女流初段と長谷川優喜女流二段。女流棋士の事とかは意識的に見ないと知らないことも多いですので、こういう風に取り上げられるのも良いですね。写真も多く、もちろん指した将棋の解説もあります。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって9回目。今月のテーマは、(1)木村義雄、名人戦で升田をひねる、(2)負けて強くなるのは本当か、(3)永瀬新手の真実、(4)第3回電王戦はどうなる?の四つです。(1)は昔の実戦の終盤戦。(3)は研究課題局面で、最近のタイトル戦でも見たばかり。(2)と(4)は将棋の局面ではありません。(2)は考え方、(4)はいよいよ始まる電王戦について、今回の勝負をどう予想するかを聞いています。今回赤字にしたのは、特にこのテーマがあるからという事ではなく、それぞれ考えさせられる局面やテーマであったからです。なお、今月号の登場者は、前半と後半で半分変わっています。テーマ(1)と(2)は、今まで通り郷田九段、鈴木八段、豊島七段、渡辺二冠、三浦九段、中村六段ですが、テーマ(3)(4)では、後半にあげた三人の代わりに森内竜王名人、加藤九段、永瀬六段が入っています。 広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」穴熊編第9回。今月も引き続き、△5四銀に▲6六歩と居飛車が突いた形の解説であり結論も書かれています。そして最終回、とありますね。相穴熊を指す人にとって(終わるのは)ちょっと残念な所もありますが、講座としては定跡の重箱の隅をつつくようで細かすぎるのかもしれません。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第27回で「激戦定跡の入り口」。今回も飯野流△2七角以降の変化です。 「詰将棋サロン」を開けて見たら、初入選特集ということでした。しかも知り合いがいます。なので少し解き始めたら(特に前半部は)非常にやさしい。サロンでこれだけやさしい問題が揃うことはないように思います。やさしくても解後感抜群。前半は、初段なくても解けるかもしれませんので、是非挑戦して見て下さい。 付録は編集部が作成した「駒落ち 仕掛けの常識」。十枚落ちから飛車落ちまで必須手筋39題とあり、「基本編」とありますので、後で「応用編」も出る予定なのかもしれません。駒落ちの記事は元々少ないので、こういう付録もたまには良いかなと思いますが、取り上げられているのは定跡書にある手順のポイント部分と言った感じ。しっかり勉強している人にはやさしすぎるかもしれません。多少うろ覚えくらいの人にちょうど良く、復習になるでしょう。 |
2014年3月号(2月3日発売)の内容と感想 |
今月の将棋世界は、まずいきなり表紙が華やかです。「関西女流棋士たち」ということで、見ての通り、6人の女流棋士。こういう表紙も珍しいですが良いですね。 そして巻頭カラーは、「王将戦第1局」(渡辺-羽生)(記:大川慎太郎氏)と「女流名人位戦第1局」(里見-中村)(記:鈴木健二氏)。開幕局の王将戦は、実況もあり一日目は前例通りでしたが、終盤は非常に面白い将棋でした。その将棋に両者の感想を加え、観戦記としてさらに面白く仕上がっています。当時の状況を思い出しながら一気に読んでしまいました。 プロ棋戦としては他に「女流王座戦第4局」(加藤-里見)(文:池田将之氏)はありますが、これだけで、今月は全体的に読み物が多いです。 特集として二つの記事がありその一つ目が「電王戦リベンジマッチ」。これは年末に行われた船江-ツツカナ戦(写真・文:浅見将平氏)。私自身は実況では見ていませんが、週刊将棋で並べています。月刊誌なのでもう少し知らないこと、突っ込んだ内容を知りたい気はしますね。 もう一つの特集が、「わが青春の奨励会(地方出身編)」。阿部健治郎、八代弥、石田直裕の三人の、将棋を始めてから奨励会時代のことが語られています。 さらに読み物として、先月前編として載せられていた「電気通信大学特別対談」の後編もあります。 「感想戦後の感想」の連載が100回になったと言うことで、巻頭に写真が出ていて、さらに特別編として今回登場したのは谷川九段。話は、主に羽生の七冠フィーバーの一年目、神戸の震災のあった時に行われた王将戦のことが中心でした。 中とじのカラーページから、「棋士に聞く本音対談」があります。今月号は杉本昌隆七段と小林健二九段。「板谷の熱血は生きている」と題して、板谷九段の話で、進九段の現役時代の親友でもあった鬼頭孝生氏を招いて「名古屋座談会」としています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第54回目で題は『「勝手に戦法ランキング」拡大版その5 ダイレクト向かい飛車の巻』。ある意味前回の角交換振り飛車からの続き。一手得問題(▲6五角を打たない)から▲6五角問題、若手棋士に見解を聞いています。そして最後は、先手中飛車についての解説。いつも通り、詳しく分かりやすい。有段者必読でしょう。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって8回目。今月のテーマは三つ。(1)師弟戦に出現した名手、(2)タイトル戦史に残る大ポカ、(3)羽生善治三冠、18歳の読み。(1)は平成3年11月の全日プロから米長-中川戦。同型角換わりの終盤です。(2)は昭和63年の棋王戦第2局から谷川-高橋戦。有名な局面で、今までにも別の場所で取り上げられているでしょう。(3)は平成元年、18歳の羽生六段と土佐六段C1順位戦。問題図には、今月の白眉ともいうべきテーマ図とあり、超難問と書かれています。そしてそのページ数はこれだけで6ページ。長手数の難問ではなく、考えづらい難問ですので、有段者だけでなく、棋力に関わらず考えて見て下さい。 広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」穴熊編第8回。今月も引き続き、△5四銀に▲6六歩と居飛車が突いた形の解説です。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第26回で引き続き「相横歩取り飯野流」。今回も△2七角以降の変化。実戦譜として飯野-羽生戦を紹介し解説しています。 「詰将棋サロン」の後ろに、「2013詰将棋サロン年間優秀作品選考会」が載っています。最近はサロンを解いていないのですが、この中でも、特に優れたものが10題選ばれている訳ですから、これくらいはやってみようかと思ってます。 付録は武市三郎六段の「受けと凌ぎ4」。このシリーズ、一番最初が2010年の3月で当時赤字にしました。そして前回は2012年の2月でそれから2年も経っています。付録の中ではお薦めの一品ですので、多くの方に挑戦してもらいたいと思います。 |
2014年2月号(12月28日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「竜王戦第5局」(渡辺-森内)です。竜王のタイトルを奪取したこの一戦を、森内名人の自戦記で載せられています。内容的には淡々と書かれていますが、その時の気持ちや読みが良く分かり今月一番の記事でしょう。そして、さらにインタビューとして今期竜王戦七番勝負を振り返っています(第4局は棋譜と解説有り)。 プロ棋戦としては他に、「倉敷藤花戦第3局」(里見-甲斐)(取材:編集部)(「第2局」は棋譜を入れ2ページ)、「女流王座戦第3局」(加藤-里見)(記:古川徹雄氏)、「第34回将棋日本シリーズ決勝」(久保-羽生)(記:一瀬浩司氏)があります。 「電気通信大学特別対談」の前編として羽生三冠と伊藤毅志氏の対談があります。「人間と知的システムとのコラボ」〜将棋とコンピュータとその未来〜と題しての対談で、コンピュータ同士で指した将棋を題材になかなか面白い内容でした。 中とじのカラーページから、「棋士に聞く本音対談」があり、今月号は飯野健二七段と武市三郎六段です。先月の漫才的な面白さはありませんが、「友情と親子のきずな」と題して、塾生時代の話から、飯野流の将棋、武市流筋違い角の話、そして飯野愛女流二級の話までほのぼのとした話題が多かったですね。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第53回目で題は『「勝手に戦法ランキング」拡大版その4 角交換振り飛車の巻』。今回は角交換振り飛車についてですが、最新状況も踏まえとにかく詳しく分かりやすい。最初は、角交換振り飛車が出始めた頃の話からで、ポイントとなるのは常に藤井将棋です。特に後半は、「藤井システム 角交換振り飛車最新版」と題し、つい最近の将棋から現在の角交換振り飛車を解説しています。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって7回目。今月のテーマは(1)矢倉91手組の真実、(2)木村、升田をひねる、(3)大山-羽生戦のナゾ、(4)高野山の決戦、の4つ。(1)は去年立て続けに4局現れた矢倉の終盤の一局面。ただ、棋士による見解の相違はほとんどありません。(2)は昭和26年の名人戦で升田-木村戦。(3)は18才の羽生六段と大山十五世名人の対局。(4)は非常に有名な将棋。升田-大山の高野山の決戦、最終局で起きた事件です。 広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」穴熊編第7回。今月も引き続き、△5四銀に▲6六歩と居飛車が突いた形の解説。△6二飛△5二金型から僅かの形の違いで攻めが成功したり失敗したりします。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第25回で「相横歩取り飯野流」。変化そのものは前回からの続き。飛角総交換から▲8三飛を打ち、△8二歩に▲8五飛成と成り返ります。この時、△2七角と打つのが飯野流と言うことで、今回はこの後の変化を解説しています。 付録は「あっという間の3手詰スペシャル」。著者は森信雄七段。「似たような形から異なる手順を編み出す」をテーマとして60題用意したとのこと。中空に玉がいて、引っかかりそうな問題もたくさんあります。単行本の「あっと驚く三手詰」に近い感じですので、級位者ですと三手詰でも難しいかもしれません。 |
2014年1月号(12月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「竜王戦第3局」(渡辺-森内)(記:大川慎太郎氏)と「第61期王座戦」(羽生-中村)ですが、何と言っても激闘だった王座戦を羽生王座の自戦解説として載せていますので、今月号の目玉記事でしょう。と言いましても、棋譜がすべて載って解説されている訳でありません。第1局から第4局までは、インタビュー形式で印象に残っている局面をあげて話しているだけで、第5局もそれらよりは詳しいもののやはりインタビュー形式です。読みの中で、「感じた世代の違い」について話している箇所に興味を持ちました。 プロ棋戦としては他に、「竜王戦第2局」(渡辺-森内)(記:鈴木健二氏)(棋譜を含め2ページ)、「女流王座戦第1局」(加藤-里見)(記:馬上勇人氏)(「第2局」は棋譜のみ)、「女流王将戦第3局」(里見-香川)があります(「第1局」と「第2局」は棋譜のみ)。特にこの女流王将戦は、ネットに棋譜も出ない為、「囲碁将棋チャンネル」を見られない人には貴重な棋譜。巻頭カラーにある「香川新女流王将のインタビュー記事」と合わせ、初めて見る自戦記という訳です。 今月号は棋譜が多いです。後半には、「倉敷藤花戦第1局」(里見-甲斐)(文:渡辺大輔氏)と「新人王戦第3局」(藤森-都成)(自戦記:都成三段)、「加古川青流戦第3局」(千田-佐々木)(自戦記:佐々木四段)(「第1局」と「第2局」は棋譜のみ)もあります。 「将棋電王トーナメント」のレポート記事が10ページに渡って書かれています。記事そのものは経過やポイントの局面などを載せており状況は良く分かるのですが、残念なのは棋譜が一つもないこと。せめて決勝か、ソフトらしい熱戦になった一局など棋譜も欲しかったですね。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって6回目。今月のテーマは(1)羽生三冠が食った熱いお灸とは?、(2)升田三冠王、会心の自陣飛車、(3)福崎文吾、十段戦の名手、(4)弟子を取るなら、才能、根性?、の4つです。今回は三つとも実戦譜から。(1)は昭和63年順位戦の羽生-剣持戦。(2)は昭和32年の升田-大山戦。(3)は昭和61年の米長-福崎戦。(3)は妙手順に気づかない人がいて見解も分かれていますが、(1)と(2)はアマチュアでも有段者なら分かるような問題。当然棋士による見解の相違はありません(問題としては良問とは言えない?)。(4)は「天才少年二人、一方はおしゃべりな才能派、無口な根性派。あなたはどっちを弟子に取りますか。」という質問。意見が片寄るかと思いましたが意外な回答にちょっと面白かったです。 中とじのカラーページに、今月から始まった「駒に生きる」があります。将棋駒についての記事、評判はどうなのでしょうか?駒氏の記事2ページの他に駒の写真などカラーで5ページ。個人的にものすごく興味があるという訳ではないのですが、将棋雑誌ならこうした記事も良いのかなと思っています。 「棋士に聞く本音対談」、今月は福崎文吾九段と浦野真彦八段の後編です。内容は、二人の指した棋譜もありますが、昔の将棋界での様々な話。それを掛け合い漫才的に話されていて、面白くて今回も一気に読んでしまいました。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第52回目で題は『「勝手に戦法ランキング」拡大版その3 激動のゴキゲン中飛車の巻』。今回はゴキゲン中飛車。特に対超速についての非常に詳しい解説があります。詳しすぎて、もう完全に「ゴキゲン中飛車対超速」の最新講座となっています。基本を押さえた上で、現在のプロ間での状況がどうなっているのかを学んで下さい。 今月号には、記事にする棋戦が多かった為か講座はありません。 付録は「常識とマナーハンドブック」。著者は堀口弘治七段で、1993年1月号のリニューアルとのことです。このような付録の評価は分かれそうですね。技術的な記事だけ欲しい人とかネットでしか指さない人には不要なのかもしれません。ただ、盤駒を使って指す機会のある人なら、一回は読んでおきたいマナーやルールでもあります。 |
2013年12月号(11月2日発売)の内容と感想 |
今月号の巻頭カラーは、「竜王戦第1局」(渡辺-森内)(解説:鈴木大介八段)と「王座戦第4局」(羽生-中村)(記:古川徹雄氏)です。この二局、どちらも対局そのものが大熱戦でした。解説も分かりやすく、実況で見ていた以上のことが載っています。 プロ棋戦としては他に、「王座戦第2局」(羽生-中村)(解説:佐藤康光九段)、「第3局」(記:鈴木健二氏)、「新人王戦第2局」(藤森-都成)(記:渡辺大輔氏)があります。さらに「新人王戦第1局」は棋譜だけ。「白瀧あゆみ杯決勝」(竹俣-伊藤)は棋譜を含め2ページ、「女流王将戦第1・2局」(里見-香川)(文:小野寺隼氏)は一枚の写真と記事のみあります(棋譜なし)。 「第3回電王戦出場棋士決定」をうけて、その5人に対するインタビュー記事が5ページに渡って書かれています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第51回目で題は先月からの続きで『「勝手に戦法ランキング」拡大版その2 居飛車基本3大戦法の巻』。今月号は、一手損角換わりと横歩取りについて。特に横歩取りは7ページ半と多くのページを割いて解説しています。そしてさらにその後には、なぜか石田流についての解説もあります。一つの戦法について細かくその変化を解説している訳ではありませんが、現在このようになっているということを概観できるという意味でも分かりやすく相変わらず為になる記事です。 中とじのカラーページには将棋まつりを始めとしたいろいろな写真が載っています。そしてその後半から、「棋士に聞く本音対談」があり、今回は福崎文吾九段と浦野真彦八段です。しかも1回では収まりきれなかったと言うことで、今月は前編。来月号と2回に渡り載せるようです。内容は、二人の奨励会時代の話から、実際の対局まで様々。面白い話が多く、一気に読んでしまいました。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって5回目。今月のテーマは(1)康光将棋の魅力、(2)成香冠の不思議、(3)島-羽生戦、ナゾの将棋、(4)福崎十段誕生の一局、の4つです。(1)は佐藤康光九段の将棋で対森内名人戦。ゴキゲン対超速、序盤早々の乱戦を取り上げています。(2)は平成3年の王位リーグ、大島六段-丸山四段戦。後手丸山四段(当時)の△2三に成香がいるという珍形の将棋。(3)は昭和62年の島-羽生戦。矢倉戦で、不思議な手順の現れた将棋です。(4)は福崎-米長戦。十段戦、最終第6局の終盤を取り上げています。 今回は、どれも皆実戦から。こんな将棋があったんだ!?と言うようなものが多いですね。 広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」穴熊編第6回。今月は、△5四銀に▲6六歩と居飛車が突いた形の解説。振り飛車は△6二飛△5二金型で△6五歩のタイミングを考えることになりますが、これは昔からある定跡の一つ。現在でも結論が出ていない将棋の奥深い所ですね。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第24回で前回に引き続き「相横歩取りの歴史」。飛角総交換の変化を江戸時代の定跡書から始めています。その後に、升田流▲8三飛の変化など。 付録は沼春雄七段の「ささやかなトリックNeo」。6年ぶり13回目で、いつものように全部で39題。所々開いて難易度を確認したところ、「かなり難しい問題」と感じました。副題には、「どんどん解いて爽快感を味わおう」とありますが、どんどん解くのは結構大変。中には爽快な一発もありますが、いろいろ考え、読みを入れないと答えにたどり着かないものもあります。有段者向けですが、そうでなくても時間をかけて考えて見て下さい。 |
2013年11月号(10月3日発売)の内容と感想 |
今月号の巻頭カラーは、「王座戦第1局」(羽生-中村)(記:大川慎太郎氏)です。詳しい解説は載っているのですが、元々実況も詳しい為、(実況で見ていた人にとっては)新たな内容というのはあまりありません。ただ初めて棋譜を見る人には丁寧に書かれています。 また、巻頭カラーの中に、女流王将戦に初挑戦の「香川女流二段のインタビュー」記事があります。 プロ棋戦としては他に、「王位戦第5局」(羽生-行方)(文:池田将之氏)、「竜王戦挑戦者決定戦第2局・第3局」(森内-郷田)(記:岩田大介氏)、「女流王座戦挑戦者決定戦」(里見-本田)(文:古川徹雄氏)、「銀河戦決勝」(稲葉-橋本)(自戦記:稲葉陽七段)があります。 今月から新連載として、「盤上盤外 一手有情」という読み物が始まりました。著者は田丸昇九段。いわゆる「対局日誌」→「千駄ヶ谷市場」→「熱局探訪」→「将棋時評」と同じ趣旨の連載ということです。こうした実戦を切り取って面白く伝えるのは難しいもの。今月号では、順位戦の改革時のことなど興味のある話を書かれていますが、今後どのような話が出るのか。特に変わった事がない限りここでは取り上げないかもしれませんが、楽しみにしたい記事が一つ増えました。 中とじのカラーページに、「飯野愛&相川春香、女流2級昇級インタビュー」があります。さらに「棋士に聞く本音対談」では高群佐知子・山田久美両女流三段と今月号は女流のカラーページが多いですね。しかも、この本音対談は、「アイドルはいま、こう変わった」との副題のもと、長く女流棋界にいた頃をいろいろと話されています。面白い話が多く、一気に読んでしまいました。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって4回目。今月のテーマは(1)阪田三吉、意表の角頭歩、(2)藤井振り飛車の不思議、(3)谷川浩司、幻の妙手とは?、(4)あなたは誰を練習パートナーにする?、の4つです。(1)は昔の香落ち戦で阪田三吉が指した三手目△2四歩の局面(△3二銀▲7六歩△2四歩)、(2)は今年4月の藤井-宮田戦。ひと目、藤井必敗に見える局面からの出題とその対局の勝ちについて、(3)は平成5年の棋聖戦第2局、谷川-羽生戦。将棋の奥深さ、難しさを表す一戦でこれだけ4ページになっています。(4)は「奨励会初段のあなたが自由にトレーニングパートナーを選べるとしたら、奨励会初段のライバル、筋のいい先輩三段、渡辺明竜王の中から誰を選びますか。」と言うものです。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第50回目で題は『「勝手に戦法ランキング」拡大版その1 居飛車基本3大戦法の巻』。拡大版として、この5年ほどの流れをマクロとミクロの両方の視点で振り返るということです。そしてその1回目の今回は、居飛車基本三戦法(矢倉・角換わり・相掛かり)を取り上げています。 広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」穴熊編第5回。実戦譜から中盤の戦い方を解説しています。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第23回で「相横歩取りの歴史」。今月からいよいよ相横歩取り。これもいろいろな”裏”はありそうですね。そして今月は、まず歴史を振り返り、昔の大山康晴-塚田正夫戦などを取り上げ解説しています。 今月の「詰将棋サロン」には、今、新人王戦決勝を戦っている都成竜馬三段の作品が出ていて、しかも優秀作になっています。これはかなり難しい問題ですが、三段以上でしたら是非自力で挑戦して見て下さい。その問題、私も解きました。まず凌ぎ筋を見つけるのに結構時間がかかり、それを見つけた後は解くのにまた時間がかかるという代物。紛れが多く、難問。どれだけ時間をかけても解ければ三段以上、それ以下の人なら詰将棋は相当得意と自慢出来るでしょう。 付録は村田顕弘五段の「痛快!”7七飛”戦法」。副題に「石田流必見!常識破りの画期的序盤戦術」とあるように、先週に続きかなり衝撃的な一着です。これは、▲7六歩△8四歩▲7八飛に△8五歩と突かれると石田流に組めない、と言うのが常識であった所を、▲7七飛と上がって石田流を目指すというものです。以前、何かで読んだ気はするのですが、あまり真面目に捉えていませんでした。付録ですからそれほど詳しい変化はないものの、面白そうですのでちょっと考えて見たいと思っています。 |
2013年10月号(9月3日発売)の内容と感想 |
今月号の巻頭カラーは、「王位戦第4局」(羽生-行方)(記:大川慎太郎氏)と王座戦挑戦者になった「中村太地六段のインタビュー」記事です。昨年の棋聖戦に続き2年連続タイトル戦出場ということで、どのような戦いになるのか、インタビュー記事は普通でしたが、対局は大いに期待したいですね。 また、巻頭カラーの中に、「夏のゆかたコレクション」があります。何となく全体的に固いイメージの雑誌になってしまうだけにこういうカラー写真があると華やかで良いです。 プロ棋戦としては他に、「竜王戦挑戦者決定戦第1局」(郷田-森内)(棋譜と簡単な解説:2ページ)、「王位戦第2局」(羽生-行方)(記:森信雄七段)と「第3局」(文:小暮克洋氏)、「棋聖戦第4局」(羽生-渡辺)(記:上地隆蔵氏)があります。 今月の特集として、「わが青春の奨励会」という記事が載せられています。これは、橋本崇載八段、広瀬章人七段、佐藤慎一四段の三人に、奨励会時代、特に当時の三段リーグについての話を聞いているものです(取材と文は相崎修司氏)。この中で、印象に残ったのは佐藤四段の三段リーグの話。やはり比較的簡単にプロになった人とは違って、苦労した人の話には胸を打つものがあります。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって3回目。今月のテーマは(1)里見新手は成立するか、(2)史上最も有名な香落ち戦、(3)終盤の鬼、村山聖、痛恨の敗戦、(4)あなたは名人に香を引いて勝てるか?、の4つです。(1)は女流王位戦第1局で現れた中飛車に対する▲6七角のこと(局面は向かい飛車になっていて、△3四歩を取る狙い)、(2)は升田-大山戦。あの大山名人に香車を引いた一局です、(3)は平成元年のC1順位戦での村山-河口戦の一場面を取り上げているもの。今回も局面以外の質問である(4)はちょっと微妙。棋士による違いもあまりないですし、もう少し良い質問はなかったのかなと思ってしまいます。 中とじのカラーページには、女流王位表彰式やマイナビなどの写真の後に「棋士に聞く本音対談」があります。今回は、高橋道雄九段と中座真七段。「横歩取りのうねりの中で」との副題はついていますが、定跡の話があるわけではありません。二人の広範囲に渡るいろいろな話です。ここでも中座七段の三段リーグの時の心情はやはり衝撃的ですね。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第49回目で題は「だから千日手はおもしろい!」。正直、千日手は面白くないだろ!とツッコミを入れながら読み始めました。しかし中身はさすがです。最初に書かれているのは、千日手のルールが変わったことについて。二度の大山-加藤戦や谷川-米長戦などそれが理由でという話は聞いたことはありましたが、局面を紹介してここまで詳しくまとめられているものは思い当たりません。そう言う意味で貴重な資料として残して置きたいですね。そしてその後に、千日手にからむ定跡の話やタイトル戦の千日手、永瀬六段へのインタビュー、伝説となった打開など相変わらず面白い記事になっています。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第22回で「△4一玉戦法のまとめ」。まとめと言っても、今までの講座を復習している訳ではなく、プロの実戦譜を取り上げ、それに「飯島研究」を披露しています。そして後半部分は、何局もプロの実戦譜をこちらも取り上げそれを解説しています。 今月号の講座はこれだけで、 広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」は休みのようです。 付録は門倉啓太四段の「初手の革命”7八飛”戦法」。「相手をビビらせる1手目の衝撃!」とありますが、本当に将棋にはいろいろな手があるものです。2手目△3二飛戦法もそうですし、今回はその応用と言えるわけですが、常識から外れた手はなかなか考えなくなってしまうもの。驚いたのは、ただ単にアマチュア向けにハメ手っぽい手を紹介しているという訳ではなく、門倉四段が実際に初手▲7八飛をプロ相手に指していること。そして勝っていることですね。この驚きに赤字としました。我々アマチュアは勝っても負けてもそんなに変わらないのですから、こうした面白い手をどんどん指して行きたいものです。 |
2013年9月号(8月3日発売)の内容と感想 |
今月号の特集記事は「二大インタビュー」、名人戦で防衛した「森内俊之名人インタビュー」と、女流王位戦でタイトルを奪還した「甲斐智美女流王位インタビュー」です。どちらも番勝負を一局一局振り返っていますが、それ以外の話もあり面白いインタビュー記事になっています。 上記特集は50ページから。その前に巻頭カラーがあり、なぜか「ロッテリフレッシュ対談」のVol.6で、羽生三冠の対談相手は乙武洋匡氏です(最終回と出ています)。そして続いて「王位戦第1局」(羽生-行方)(記:大川慎太郎氏)があります。 プロ棋戦としては終わったばかりの棋聖戦が三局取り上げられています。「棋聖戦第3局」(羽生-渡辺)の解説は木村一基八段。導入部には第2局についても触れられており、技術的な解説も詳しく多くの人に役立ちそうです。そして、その後に速報として「棋聖戦第4局」の棋譜も載せられています。 ところで、巻頭カラーの直後に、毎月谷川九段の「懸賞詰将棋」があります。最近では、毎回簡単に解けそうな問題しかやらなくなってしまいましたが、今回は初形に驚きました。詰将棋はもちろん「作る」ものですが、今月号のようなものは単純に作るというよりは「発見するもの」とも言えそうです。それにしてもすごい、奇跡と言っても良いような作品が載っています。解けない人は、ソフトに解かせても良いですから、是非並べて見て下さい。 中とじのカラーページ、今月号はちょっと変わったものが出ています。最初に、タレントのつるの剛士氏の駒落ちレポート。10月に出版予定とのことで取り上げられたようですが、(その情報だけで)棋譜はありません。続いて竜王の奥さんがマンガ家デビューと言うことで、伊奈めぐみさんへのインタビュー記事。 それから「棋士に聞く本音対談」。こちらは、脇謙二八段と井上慶太九段。「泣いて笑った関西棋士人生」の副題の元、ちょっと懐かしい昔の思い出話から現在の関西棋界についていろいろ話されています。以前の事を知っている人には特に面白いでしょう。 「イメージと読みの将棋観2」、新しくなって2回目。今月のテーマは先月に続いて電王戦特集。(1)ツツカナの妙手は人間も指すか?、(2)puella αの▲8三銀は無理か?、(3)コンピュータは創造力を身につけたのか?、(4)弟子の敗戦に師匠は泣くか?、の4つです。(1)は△5五香の局面、(2)は飛車取りに打った▲8三銀の局面、(3)はGPS将棋のいわゆる新手△8四銀についてです。、(4)は電王戦とは関係なく、囲碁で弟子の敗戦に師匠が泣いたと言うことでこの質問を出したようですが、ちょっとページ数がもったいなかったですね。でもテーマ(3)のそれぞれの棋士の見解は非常に興味深い内容でした。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第48回目で題は「現代将棋と香車」。今までとちょっと趣の違うテーマで、ネタ切れかとも思わせるテーマですが、香に絞っても面白い対局はあるものです。最初はスズメ刺しを中心に矢倉の解説から始まり、続いて角換わりと香車、さらに現代振り飛車の香車など。個人的に面白いと思ったのは、その後に書かれている「香の妙手」の記事。名香が紹介されている他、コンピュータの解析による「三桂より二枚香」の考えは非常に画期的とも思えます。こうしたコンピュータの考え方をもっと知りたいですね。この辺りの詳しい内容については是非本文をご覧下さい。 広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」穴熊編第4回。今回から実戦次の一手問題も付くそうです。定跡講座は先月に続き細かい中盤戦をいろいろと。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は第21回で「△4一玉戦法の持久戦型」。先月までの急戦に比べ、先手がそれを回避し、もっとゆっくり指そうと言うのが、今回の▲8七歩と▲3六飛。今月はこの変化の解説です。 付録は田丸昇九段の「将棋クイズ123」。将棋の知識力をアップさせようと言うことで、歴史、記録、用語、裏話、文化、雑学から問題を出題しています。もうすぐ将棋文化検定が実施されると言うこともあるのかもしれませんが、何問くらい出来るとどのくらいのレベル、と言うのが書かれていれば、もう少しやってみようかというモチベーションも上がりそうですが。 |
2013年8月号(7月3日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは「史上初の三冠対決」と言うことで始まった「棋聖戦第1局」(羽生-渡辺)。その解説はなんと渡辺竜王の自戦解説です。実況も見ていましたが、やはり本人が書くとまた違った印象を受ける箇所も出てきますね。比較的無難な言葉でまとめた感はありますが、負けた本人の自戦解説と言うことで「お薦め」です。 そして続いて、王位戦挑戦者になったことで、「行方尚史はなぜ変わったのか」という記事が10ページに渡って書かれています。王位リーグを振り返りながらのインタービュー記事ですが、個性的な受け答えで面白い記事になっています。ちょっと残念なのは、急所の局面だけで棋譜のないこと。 プロ棋戦としては「名人戦第5局」(森内-羽生)(記:相崎修司氏)と「女流王位戦第4局」(里見-甲斐)(記:田名後健吾氏)、「第3局」「第5局」(棋譜と簡単な解説)があります。 特集記事として、「外国人棋士は生まれるか?」と言うのが掲載されてます。先日、ポーランドのカロリーナさんが女流王座戦で女流棋士を破ったことから特集されたのかもしれません。まずはその「カロリーナの挑戦」としてインタビュー記事から。そして上海から奨励会合格を果たした17才の少年についてのインタービュー記事。さらに、国際普及についての座談会と続きます。最後には、その女流王座戦1次予選のレポートもあります。 青野九段の「将棋時評」が最終回とのこと。その前の記事に連動している訳ではないのかもしれませんが、女流を取り上げている記事が多いです。 中とじのカラーページに、「棋士に聞く本音対談」があります。出ているのは、塚田泰明九段と中村修九段。「55年組とは何だったのか?」の副題の元、電王戦の話から、55年組の栄枯盛衰を所々局面を出しながら語っています。 「イメージと読みの将棋観」が装いを新たに新登場しました。「2」としてです(ローマ数字が使われています)。登場するのは、渡辺竜王を筆頭に、郷田九段、三浦八段、鈴木大介八段、豊島七段、中村太地六段の六人。なかなか良さそうな人選でこれから期待したいですね(問題はテーマの選び方ですが)。 そして今月のテーマは電王戦特集。(1)習甦、桂跳ねは本当に無理?、(2)ponanzaの▲8七金、(3)ツツカナの4手目△7四歩、(4)で、結局、どっちが強いのか、の4つです。(3)は他にポイントとなりそうな局面はもっとありそうですが、全体的には興味ある記事です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第47回目で題は「▲2六歩〜▲2五歩オープニングの深層へ」。名人戦第4局、さらに女流王位戦第3局と立て続けにタイトル戦で現れた▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角の出だし。これを今までの定跡の流れや考え方などから、なぜ指されたかを解説しています。相変わらず内容は難しいですが、定跡通の人にとっては復習に、また最近のプロ将棋を見る一つの知識としていつもながら大変役に立つ記事です。 広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」第3回。今回も穴熊編。組み方の細かい注意点から、相穴熊に組み合った後の仕掛けまで、実戦譜も見ながらいろいろと解説しています。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は20回目で「△4一玉戦法、ハメ手返しの▲7七角」。先月解説していた△3八歩〜△3三角のハメ手の続きで、もう一つの先手の対抗策。それが△3三角に▲7七角と打つ変化。今月はこれを詳しく取り上げています。 付録は児玉孝一七段の「詰め手筋サプリ」。5手詰から11手詰まで表紙のものを合わせて40題の詰将棋です。「やさしめに」を心がけたという通り、最初はひと目で解いていけますが、最後の11手10問、中にはハマルと時間のかかる問題もあり、有段者でも楽しめるでしょう。最初と最後ではかなり難易度に差がありますので、級位者の人なら解ける所まで挑戦したので良いと思います。 |
2013年7月号(6月3日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは「女流新記録!里見香奈五冠達成」。この五冠を達成するまでの活躍を写真を中心に追っていて、やはり女流棋戦がカラーで紹介されると華やかですね。そして続いて彼女のインタビュー記事が5ページあります。 次に、 「ロッテリフレッシュ対談」のVol.5があり、羽生三冠の対談相手は元アスリートの為末大氏です。 第5局で終わってしまった名人戦ですが、今月号には「名人戦第3局」(森内-羽生)が島九段の観戦記で載っています。この特色のある書き方には賛否両論ありそうですが、内容はさすがに島九段と言える面白いものになっています。今期名人戦はどれもねじり合いと言ったものにはならず、ある意味面白さの伝わらないタイトル戦です。これをいかにうまく伝えるかは難しそうで、そういう意味では、(導入の情景描写は微妙ですが)中身の内容は、一気に読ませてしまうほど面白い記事になっていました。 プロ棋戦としては「マイナビ女子オープン第3局」(上田-里見)(記:渡辺大輔氏)と「女流王位戦第1局」(里見-甲斐)(記:渡部壮大氏)、「第2局」(棋譜と簡単な解説)があります。また、プロではないですが、「小学生名人戦」のレポートと決勝の棋譜もあります。 特集記事に、「船江恒平・佐藤慎一が語る電王戦」があり、目次を見た時とりあえずこれから読み始めました。電王戦が終わってすでに一ヶ月以上。通常のタイトル戦ならもう忘れてしまいそうですが、やはりあれほど盛り上がったイベントですし、特に終わった後の詳しい観戦記がないということで、最も熱戦となったこの二人の話は大変興味深いものでした。また、当時実況を見ていた時のイメージと実際には違っていたと思える箇所もありますので改めてそうだったのかと知ったこともあります(この二局の棋譜有り)。 さらに、この記事の後には、ゴールデンウイークの時に行われた「第23回世界コンピュータ将棋選手権」の模様がレポートされています。そしてその後に、森田和郎さんの追悼座談会という形で、将棋ソフト初期の頃の話が交わされておりこれも知らない事が多く面白い内容です。 新連載として「評伝-木村義雄」が始まりました。書いているのは「対局日誌」の河口俊彦七段。第1回の今月は「木村名人の思い出」として4ページしかありませんが、巻頭に5ページ「写真で見る足跡」もあります。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は19回目で「△4一玉戦法の激戦定跡」。今回の激戦定跡とは、△4一玉▲2四飛とした手に対し、△3八歩▲同銀△8八角成▲同銀△3三角という変化。これについて様々な変化を解説しています。 そして先月から始まった広瀬七段の「僕の考える振り飛車のアイデア」第2回。「今の振り飛車は序盤の時代」ということで、△5四銀と出るタイミングから始まり、細かい駒組みの折衝を詳しく解説しています。局面によっては振り飛車穴熊を放棄し、美濃で指す必要もあるとの変化解説もあります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第46回目で題は「入玉をめぐる冒険」。良くこの「突き抜ける〜」はお薦め記事にしていますが、今回は今までの中でも特に5指に入る優良記事と思います。入玉を取り扱うことは単行本でも「入玉大作戦」くらいしか思いつかないですし、非常に少ない。その点、今月の16ページに渡る実戦の紹介やそこから解説している入玉のテクニックなどは必見です。さらに入玉のメカニズムや渡辺竜王へのインタビュー、コンピュータの入玉にまで言及していますので、これだけでも今月号を買う意味があります。 付録は勝又清和六段の「新手ポカ妙手選2012年度版」で、毎年この時期に出される恒例企画。今回も選題には苦労し、「すばらしいものでも、正解が二つあるようなものは泣く泣く外した」とのこと。多くの人は普段目にしない対局ですので、39問しかありませんが一つ一つ考えながら読み進めてみましょう。 |
2013年6月号(5月2日発売)の内容と感想 |
最初に表紙を開くと、いきなり「第2回電王戦」の写真からでした。この写真が3ページありましたので、中にある記事も期待して読んだのですが、棋譜はあるものの単なるレポート。生放送を見ていた人にはやや物足りないかもしれません。 巻頭カラーは、やはり名人戦です。「第71期名人戦第1局」(森内-羽生)(観戦記:関浩六段)が始まりましたので、当然これが一番最初です。続いて史上8人目の三冠になった「渡辺竜王のインタービュー記事」。各棋戦ごとに印象に残っている局面を取り上げている他、ソフトとの戦い、今後のタイトル戦などについて話されています。 プロ棋戦としては「マイナビ女子オープン第2局」(上田-里見)と「第1局」(記:渡部壮大氏)、そして「棋王戦第4局」(郷田-渡辺)(記:相崎修司氏)と「第2局」(棋譜のみ)があります。 また今月号には、「プレイバック2012」が載っています。これは現役棋士が選んだ対局に順位を付けて10局、解説付きです。そのうち渡辺竜王の対局が6局。実況で見ていたものが多いだけにどれも納得の選出ですが、第5位にあるNHK杯の稲葉-丸山戦は、半年前ですがその放送を見ていただけに再度思い出しました。本当にすごい将棋だったですね。 さらに年度終了と言うことで、「第40回将棋大賞選考会」が行われ、渡辺竜王が初の最優秀棋士に選ばれました。また、「第19回升田幸三賞」や「第7回名局賞」の模様、平成24年度全棋士成績表や勝率、勝数、連勝の記録なども載っています。 今月号から定跡講座に新連載が始まりました。「僕の考える振り飛車のアイデア」という題で執筆者は広瀬章人七段。現在のプロの将棋では、ゴキゲン中飛車や石田流、さらに角交換四間飛車など角道を開けたままの振り飛車がほとんどです。それをあえて角道を止める昔ながらの四間飛車を考えて行く、特に居飛車穴熊が最大の敵なので、四間飛車穴熊対居飛車穴熊の戦いを考えて行くということです。相当細かい講座になりそうで個人的にも大いに興味があります。ちょっとひいきし赤字にしておきました。 そしてもう一つの講座、飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は18回目で「△4一玉戦法田丸-森内戦の検証」。先月、棋譜が紹介されていましたが、それをさらに検証しています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第45回目で題は「穴熊いまむかし」。穴熊に焦点を当てた講座ですが、単に昔の穴熊、現在の穴熊を紹介比較しているだけではありません。いつものように、分かりやすく歴史的な流れも解説していますが、後半部分は囲いの補修についてまで話が進んでいます。そしてそこで登場するのが渡辺竜王。竜王の将棋を取り上げその補修術を紹介、一気に読んでしまう面白さです。 「イメージと読みの将棋観」の新32回目。今月のテーマは、(1)升田幸三のとん死、(2)谷川浩司、若き日の寄せ、(3)中原-米長、名人戦史に残る熱戦、(4)失恋の痛手は将棋に影響するか、の4つです。今回は(1)から(3)まですべて実戦から。しかも棋士による違いもあまり出ていませんでした。 付録は先月号の続きである編集部編の「米長邦雄の終盤(下)」。今回は、昭和56年度から引退までの棋譜の中から前回と同じく面白くてためになる終盤の妙技を集めているとのことです。いつものように次の一手形式で39問あります。 |
2013年5月号(4月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は順位戦がすべて終わり、「第71期順位戦最終局」の記事があります。もちろんA級についての記事が一番多いのですが、B1からC2まで少しずつ内容について触れ、さらに「関西本部棋士室24時」でも順位戦を取り上げ、最後には「昇級者喜びの声」が載せられています。 巻頭カラーは、 「ガムでリフレッシュ対談」のVol.4で千葉ロッテマリーンズ監督の伊藤勤氏と羽生三冠の対談です。 さらに、「棋王戦第3局」(郷田-渡辺)(記:大川慎太郎氏)が載っています。実は目次を最初に開いたときに、いきなり大きな字で「銀得は地獄への報酬」という見出しが飛び込んできました。面白そうな見出しだったので最初に読んだところ、内容はさらに興味深いものでした。銀得でも不利な局面、控室の見解と渡辺竜王の見解の違い。郷田棋王の戦い方。最近は実況で棋譜を見られるだけに、月刊誌にはこういう記事があると買った甲斐があったと思わせてくれます。 プロ棋戦としては他に「王将戦第5局」(佐藤-渡辺)(記:渡部壮大氏)があり、「第4局」も棋譜だけ載せられています。また、「NHK杯テレビ将棋トーナメント決勝」(渡辺-羽生)(記:古川徹雄氏)と女流棋戦では「女流名人位戦第5局」(里見-上田)(記:一瀬浩司氏)が解説され、「第4局」も棋譜だけはあります。後半にはそれぞれ2ページずつ、「マイナビ女子オープン挑戦者決定戦」(鈴木-里見)と「大和証券杯決勝」(上田-中井)(文はどちらも国沢健一氏)の棋譜と記事があります。 中とじのカラーページは「棋士が聞くプロ対談」。先月の続きの特別編で、囲碁棋士の井山裕太五冠(3月、六冠になった)と室田伊緒女流初段が出ています。ゲストの村田智穂女流二段、司会構成の鈴木宏彦氏も同じです。今回は、「囲碁の天才と将棋の天才を比べべちゃおう」と言うことで、実際の盤面がいくつも出てきて、その比較はなかなか面白いです。特に両方を知っている人には納得出来る比較論ですね。後半は囲碁の世界戦の話。こちらも日本と中国や韓国との違いが分かり興味のある話になっています。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第10戦でありこれが最終戦となっています。トップチーム(木村一基八段・屋敷伸之九段)対振り飛車党チーム(永瀬拓矢五段・戸辺誠六段)の対戦。永瀬-木村戦の戦型は角道を止める普通の三間飛車対居飛車穴熊。但し、その振り飛車は昔、大山が使っていた指し方で、40年前の将棋対現代将棋という構図。内容も面白い将棋でした。屋敷-戸辺戦はゴキゲン中飛車対超速。詳しい解説は週刊将棋に載ります。そして優勝が決まりました。 この双龍戦、勝敗の決まり方が分かりづらく、しかもとにかく長い期間かけたこともあり、毎号(どのチームが勝つだろうかと)興味を持って見られる感じではありませんでした。将棋そのものは熱戦も多く面白かったのですが、月刊誌の企画としては微妙な感じですね。 先月に続き、「第2回電王戦」の記事が3ページあります。現在、盛り上がっている最中の記事ですので、もっといろいろな人に聞いて欲しかったと思います。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第44回目で題は「勝負としての米長将棋」。前回に引き続き米長将棋ですが、今回は、昔指された記憶に残る数々の名局やその時の手を解説しています。 「イメージと読みの将棋観」の新31回目。今月のテーマは、(1)2手目△8四歩はなくなるか?、(2)土佐浩司七段の妙手、(3)大山康晴の金、(4)石田、涙の順位戦、の4つです。(1)は初手から▲7六歩△8四歩▲5六歩△8五歩と突かせて、向かい飛車に回り、角交換から▲7七銀以下8筋を逆襲する将棋です。△8四歩をとがめる急戦向かい飛車についての見解を聞いています。それ以外の三テーマはすべて実戦譜からでした。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は17回目で「△4一玉戦法2つの棋譜」。△4一玉戦法とは、▲3四飛と横歩を取った先手に対し、すぐに△4一玉と寄る変化。この実戦譜を解説していますが、一つは江戸時代の棋譜でもう一つは平成元年の森内-田丸戦。江戸時代の棋譜も、田丸七段がテレビ放送で当時新鋭四段だった森内名人に快勝する棋譜も面白い棋譜です。△4一玉戦法のハメ手度は80%と書かれており、私も良く知らないのでこれからの講座が楽しみになりました。 付録は編集部編の「米長邦雄の終盤(上)」。泥沼流と呼ばれた米長邦雄永世棋聖の終盤。それを今回は、入門から昭和55年度までの棋譜の中から面白くてためになる題材を集めたとのことです。次の一手形式で39問あります。 |
2013年4月号(3月2日発売)の内容と感想 |
今月号はまず巻頭対談「いにしえを継ぎ未来を披く者」として、狂言師の野村萬斎氏と郷田真隆棋王の対談が巻頭カラーにあります。 続いて「棋王戦第1局」(郷田-渡辺)(記:大川慎太郎氏)が載っています。この一局は日曜日だったので私は見ていなかったのですが、郷田棋王の完勝譜だったようですね。記事は、後日の両対局者の感想などもありやや難しいかもしれませんが、相掛かりを指す人にはかなり役に立つでしょう。 プロ棋戦としては他に「王将戦第3局」(佐藤-渡辺)(記:相崎修司氏)があり、続いて「第2局」も2ページだけですが棋譜が載っています。女流棋戦では、「女流名人位戦第3局」(里見-上田)(記:渡部壮大氏)が詳しく解説されており、その後に「第2局」が2ページだけあります。また、棋譜は決勝しかありませんが、「朝日杯将棋オープン戦」(文:国沢健一氏)の記事が準決勝からあります。 今月号には、「第2回電王戦観戦ガイド」が10ページに渡って書かれています。観戦ガイドと言っても、大部分は、出場者(プロ5人とソフト開発者4人)のインタビュー記事で、しかも皆控えめな話になっているためあまり面白みはありません。しかし、電王戦自体はかなり楽しみ。3月23日の土曜日から毎週土曜日に「ニコニコ生放送」にて見られますので、私も全部見る予定にしています。 中とじのカラーページに「棋士が聞くプロ対談」がありますが、今回は特別編です。登場しているのは、囲碁棋士の井山裕太五冠と室田伊緒女流初段で、新婚座談会前編。ゲストに村田智穂女流二段、司会構成は鈴木宏彦氏です。将棋界と囲碁界、両方興味のある人には面白い企画かもしれません。中には初心者向けの詰碁と詰将棋もあります。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第9戦。関西俊英チーム(豊島将之七段・菅井竜也五段)対アマ選抜チーム(清水上徹アマ・今泉健司アマ)の対戦。清水上-豊島戦の戦型は先手の石田流に後手は左美濃。中盤、豊島七段の攻めが決まり大差になりましたが、そこから清水上アマが猛追。面白い将棋になっています。菅井-今泉戦は先手居飛車に後手の角交換四間飛車。週刊将棋に載る為こちらは2ページだけです。 「イメージと読みの将棋観」の新30回目。今月のテーマは、(1)藤井将棋は振り飛車を変えるか、(2)山田記者の妙手とは?、(3)女流将棋の隠れた名局、(4)点数計算の鬼、の4つです。(1)は去年の王位戦、対羽生戦での一局面。(2)は森安-大山戦。観戦記者が指摘した次の一手。(3)は中村真梨花女流二段-室田伊緒女流初段戦。(4)は勝浦-大山戦の持将棋模様の将棋。最後の点数計算の鬼はなかなか面白い局面です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」は第43回目で題は「米長玉と現在将棋」。米長永世棋聖自身の米長玉に始まり、現在の棋士たちの米長玉まで広範囲に取り上げています。特に、米長玉の解説だけではなく、激闘となった終盤の解説から、後半は「玉のフォーメーション」についての話もあります。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は16回目で「△4五角戦法の結論」。今回は▲3六香の続きで、△同角からの変化。最後に、現状の結論が書かれています。 久保九段の「さばきのエッセンス」は38回目で最終回となっています。内容は「相振り飛車の世界3」。先手中飛車対後手三間飛車と、相石田流の解説です。 付録は及川拓馬五段の「囲いはこう破れ(美濃編)」。一年前の「矢倉編」に続き今回は美濃編とのこと。美濃囲いを破る手筋としては横からのものは多いですが、これは上部から攻める手筋をテーマにまとめてあります。次の一手形式で問題にして39問、有段者ならすらすら、級位者の人でも読みやすく書かれていますので、一読してみて下さい。 |
2013年3月号(2月1日発売)の内容と感想 |
今月の特集は、「追悼 米長邦雄永世棋聖」です。巻頭の写真に始まり、タイトルホルダー5人の追悼文、その後に23人の追悼文があります。谷川浩司会長(九段)から関係した棋士、新聞社の人達、最後には林葉直子元女流棋士まで70ページ近く割かれています。 さらに特別寄稿として河口俊彦七段の話と、青野九段の「将棋時評」、高橋九段の「名局セレクション」でも米長将棋を取り上げています。 プロ棋戦としては「王将戦第1局」(佐藤-渡辺)があり、佐藤康光王将の自戦解説です。中とじのカラーページからですが、特集がなければ一番の記事だったでしょう。そして続いて「女流名人位戦第1局」(里見-上田)(記:渡辺大輔氏)もあります。 「ガムでリフレッシュ対談」のVol.3があり、今回はタレントのつるの剛士氏と羽生三冠の対談です。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第8戦。新人王チーム(村山慈明六段・阿部健治郎五段)対関西俊英チーム(豊島将之七段・菅井竜也五段)の対戦。豊島-村山戦の戦型は横歩取り△8五飛戦法で最新の研究将棋。今回はこの一戦が詳細に解説されています。阿部-菅井戦は相穴熊の将棋で週刊将棋に載る為こちらは2ページだけです。 「イメージと読みの将棋観」の新29回目。今月のテーマは、(1)プロを負かした今泉アマの戦術、(2)昭和61年、光速流次の一手、(3)昭和47年、さわやか流の寄せ、(4)将棋界に生きる米長哲学、の4つです。(1)は先手の石田流対策として、△5四飛型をとる作戦。(2)と(3)は、当時の実戦から華麗な寄せを問題にしています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第42回目。題は「魔法のような大山の金」ということで、「金の話」の続きで金については最終回とのこと。その為、大山の指した実戦譜を数多く紹介しています。こうしてまとめて抜き出すとその金の使い方はまさに絶品。ちょっと長めの棋譜もありますから、頭の中で再現できない人は面倒でも並べて見たいものです。 「2012年詰将棋サロン年間優秀作」があります。元々詰将棋サロンは難しい詰将棋ですが、ここに選ばれた9作品は特にその中から選ばれたものですので、普段解かない人も腰を据えてじっくり考えて見てはいかがでしょうか。 今月は講座が一つもありません。追悼文に多くのページが割かれた為、講座が削られたようです。 付録は小林健二九段の「中央制圧 力戦相振り飛車」。先手中飛車対後手三間飛車の戦いを、いつものように次の一手で39問出題しています。 |
2013年2月号(12月29日発売)の内容と感想 |
今月の特集は、「最強竜王、渡辺明が振り返る竜王戦」です。巻頭カラーで、竜王戦の一局一局を振り返りながらのインタビュー。実況はかなり細かい解説もありましたが、やはり本人がその時々でどのように考えていたか、一つ一つは短いですが内容には非常に興味のある事柄が多いです。また、将棋に対する「合理的な」考えも良く出ていて面白かったですね。 そして続いて、「竜王戦第5局」(記:内田晶氏)と「第4局」(記:相崎修司氏)の棋譜、観戦記があります。 プロ棋戦としては他に「日本シリーズ決勝」(久保-羽生)(記:編集部)と「第20期大山名人杯倉敷藤花戦第2局」(里見-矢内)(記:渡辺大輔氏)が載せられています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第41回目。題は「開拓者たちの軌跡」ということですが、内容は先月あった「金の話」の続きです。升田の金に始まり、現在の定跡上の金、さらに羽生の金まで金という駒を様々な角度から検証しています。そして最後に羽生三冠のインタビュー、マジックではなく「羽生ロジック」の考え方には納得させられます。 中程のカラーページに 「棋士が聞くプロ対談」。4ヶ月ぶりですが11回目で、森内名人と上田女王の登場。もう完全に「棋士が聞く」になっていません。鈴木宏彦氏を司会として、両者に将棋界の出来事から自身の実戦の感想、新年の展望までいろいろな話を聞いています。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第7戦。トップチーム(屋敷伸之九段・木村一基八段)対新人王チーム(阿部健治郎五段・村山慈明六段)の対戦。阿部-屋敷戦の戦型は相掛かりで今回はこの一戦が詳細に解説されています。なお、出だしは相掛かりですが、阿部五段の趣向で先手は横歩を取っています。木村-村山戦は後手ゴキゲン中飛車の将棋で週刊将棋に載る為こちらは2ページだけです。 「イメージと読みの将棋観」の新28回目。今月のテーマは、(1)清水上流5手目▲9五歩をどう見る?、(2)藤井流角交換振り飛車の4手損作戦、(3)花村元司九段、最後の鬼手、(4)阪田三吉、明け方の名角、の4つです。(1)は先月の双龍戦での5手目▲9五歩について。(2)は、昨年の王位戦第1局で使用した藤井九段の指し方。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は15回目で「△4五角戦法の真実」。今回は、メインの▲1一角成以降の変化を解説。△8七銀や△3三桂などの変化です。 久保九段の「さばきのエッセンス」は37回目。今回から「相振り飛車の世界2」です。先手が▲6六歩と平凡に振り飛車を目指した時に、すぐに△3二飛と飛車を振る指し方。向かい飛車対三間飛車です。 先月紹介されていた「将棋ミニパズル!」。宿題の解答と、新たな問題があります。 「感想戦後の感想」には、あの「突き抜ける!現代将棋」の勝又清和六段が登場しています。 内藤九段の「どっちが勝ち?」ですが、今回は番外編としてちょっと面白い問題になっているようです。 谷川九段の「懸賞詰将棋」、初形「巳」の曲詰です。やさしいですので挑戦して見て下さい。 付録は中田章道七段の「短編詰将棋作品集」。5手、7手、9手、11手と各10問ずつの計40問。中段玉や入玉の作品もある為、筋もののきれいな詰将棋でも、特にこうした形に慣れていない人は時間がかかるかもしれません。なお、2問目の解説欄にコンピュータソフトが詰将棋のルールに則った解答を出さなかったと書かれていますが、「柿木将棋」ではきちんと解答を出していました。それ以外のソフトでは、「詰将棋としての正答」を期待しない方が良いことを付け加えておきたいと思います。 |
2013年1月号(12月3日発売)の内容と感想 |
竜王戦(渡辺-丸山)の記事、先月号は第1局だけでした。今月号は、第2局から第4局まであります。そのうち巻頭カラーに、「竜王戦第4局」(写真と簡単な記事の速報)と「竜王戦第3局」(記:大川慎太郎氏)があります。特に第3局は熱戦でもありましたし、その序盤戦術と終盤の難解な変化の解説が詳しく書かれておりもう一度振り返るには良い記事になっています。なお、「竜王戦第2局」(記:古川徹雄氏)は巻頭カラーではありません。 他に巻頭カラーとして、2ヶ月前に載っていた「ガムでリフレッシュ対談」のVol.2があり、今回は日本サッカー協会最高顧問の川淵三郎氏と羽生三冠の対談です。 プロ棋戦としては他に「新人王戦第2局第3局」(永瀬-藤森)(自戦解説)と「加古川青流戦第1局第2局」(永瀬-伊藤真)(記:田名後健吾氏)、さらに「女流王座戦第3局」(加藤-本田)(記:渡部壮大氏)(巻頭カラーに写真有り)、「女流王座戦第2局」(簡単な解説:編集部)、「倉敷藤花戦第1局」(里見-矢内)(文:国沢健一氏)などがあります。 その新人王戦と加古川青流戦の両方で優勝した「永瀬拓矢五段のインタビュー」があります。その中の千日手論については必見です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第40回目。題は「深くて不思議な金の話」ということで今回は戦法ではなく、金という駒に焦点を当てています。最初に王座戦第4局(千日手局)の終盤に出現した難解な双方の読みを解説(その中に金の役割が出てきます)。この一局は実況でも見ていましたが、ここまで深い読みは解説されないと分からないですね。そしてその後は、矢倉や角換わり、横歩取り、相掛かりなど戦法ごとに金の解説をしています。将棋というものをちょっと別の方角から見てみるということも面白い方法なのかもしれません。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第6戦。振り飛車党チーム(永瀬拓矢五段・戸辺誠六段)対アマ選抜チーム(清水上徹アマ・今泉健司アマ)の対戦。永瀬-清水上戦は二人とも振り飛車党なのに実戦は序盤に駆け引きがあり戦型は相掛かりになっています。盤上に並べたい一戦としておきます。戸辺-今泉戦は先手石田流対変則(△5四飛型)の将棋で週刊将棋に載る為こちらは2ページだけです。 「イメージと読みの将棋観」の新27回目。今月のテーマは、(1)4手目△8八角成は悪手か好手か?、(2)石田流の不思議定跡、(3)棋士の一生は20歳で決まるか、(4)米長-大山戦の名場面、の4つです。(2)は先手の石田流▲7五歩に対し後手が角交換し、それを飛車で取り△4五角と打つ一つの変化であり乱戦がそのまま定跡となっているものです。最新定跡ですが、棋士により見解が違うのが面白い所。(4)は難解な局面で、「どっちが勝ち?」の実戦版と言えそうです。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は14回目で「△4五角戦法の表定跡」。「先手が後手の言い分を全部聞いて指したらどうなるのか。」と言うことで、△4五角戦法、▲2四飛と回り△2三歩に▲7七角と打つメインの解説にいよいよ入っていきます。 久保九段の「さばきのエッセンス」はありません。代わりと言う訳ではありませんが、以前も一度ありました「初段を目指す人の駒落ちクリニック」があります。今回は二枚落ち銀多伝で、端を上手に攻められた場合。前にも書きましたが、毎月欲しい記事です。 今月号にはちょっと変わった記事が一つあります。「将棋ミニパズル!」と題した堀口弘治七段の記事。「初心者には詰将棋のハードルはかなり高い」ということで、「初心者をこの詰将棋を解くまでに導くプロセスとしてこのミニパズルを開発した」そうです。全部で5種類のパズルがありなかなか面白い。堀口七段が意図する初心者向けとしても役に立ちそうですし、同じものを盤面を広くして普通に将棋を指す人達に向けて作ってみるのも楽しそうです。 付録は門倉啓太四段の「角道オープン四間飛車穴熊」。3月号で「先手角交換四間飛車」の付録を出し、その派生版ということ。角道を開けたままの振り飛車は今では様々なパターンがあります。これなども特に時間の少ないアマチュアの将棋では有力な感じがします。39問の次の一手で指し方の指針を勉強して下さい。 |
2012年12月号(11月2日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは、「王座戦第4局の写真」と先月から始まった「竜王戦第1局」(渡辺-丸山)(記:大川慎太郎氏)。さらに三ヶ月に渡って特集が組まれている「羽生善治、タイトル獲得の軌跡」です。竜王戦については、ほとんどの人がすでに実況で知っているでしょうが、観戦記も書きづらいほど(新手以降は)短い将棋でした。しかしこの記事は非常に良く書かれています。新手前後の内容、誤算の周辺、あまりにもつまらなかった実況を実はそんなことはなかったと思い直すことが出来るかもしれません。 プロ棋戦としては他に「王座戦第3局」(渡辺-羽生)(棋譜と簡単な解説のみ)と「王座戦第4局」(渡辺-羽生)(記:渡部壮大氏)、こちらは詳しい観戦記。さらに「新人王戦第1局」(永瀬-藤森)(記:古川徹雄氏)、「銀河戦決勝」(阿久津-羽生)(記:編集部)などがあります。 また棋譜はないですが、女流王将戦第1局〜第3局(里見-中村真)、マイナビ女子オープン本戦1回戦一斉対局、白瀧あゆみ杯決勝(優勝自戦記:藤田綾女流初段)の記事が載っています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第39回目。題は「勝手に石田流トーク」ですが、内容はしっかり最新の石田流について。中身は、対左美濃、相振り飛車、4手目△1四歩の三つ。さらに永瀬五段へのインタビュー、勝手に石田流ランキングなどの話です。 中とじのカラーページには、倉敷藤花戦の挑戦者になった矢内女流四段のインタビュー記事があります。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第5戦。トップチーム(木村一基八段・屋敷伸之九段)対関西俊英チーム(豊島将之七段・菅井竜也五段)の対戦。木村-豊島戦は横歩取り△8五飛戦法で解説も多く、菅井-屋敷戦は中飛車の将棋で週刊将棋に載る為こちらは2ページだけです。 「イメージと読みの将棋観」の新26回目。今月のテーマは、(1)久保新手の▲7四歩、(2)石田流に右四間飛車、(3)内藤国雄九段の名手、(4)道を歩きながらでも研究はできる?の4つです。(1)は▲7六歩△3四歩▲7五歩△8八角成▲同銀△5四歩の後の▲7五歩について。(2)は石田流に対する右四間からの急戦。棋士による見解の相違、序盤ながらいろいろな待ち方もあり面白いテーマだと思います。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は13回目で「△4五角戦法の前提条件」。題名はちょっと変わりましたが前回の続きで、前提条件のそれ以外について考えて行きます。その一つは、▲2四飛と寄らずに▲7七角と打つ変化。そしてもう一つは▲2四飛△2三歩に▲8七歩と打つ変化です。 久保九段の「さばきのエッセンス」は36回目。今回から「相振り飛車の世界」に入るとのこと。そしてその第1回目は向かい飛車対三間飛車。なぜ三間飛車にするのかの理由から、先手の向かい飛車矢倉に対する後手の攻めについても現在の最新の攻め筋が紹介されています。 付録は編集部編「次の一手 天国と地獄」です。将棋では良く二者択一の局面という場面が現れます。そして一方は勝ちになり一方は負けになる場合も。今回はそんな二択問題を集めたとのことで「はしがき」には次のように書かれています。『前半は、初級者向けの「地獄への入り口編」として序盤の落とし穴の問題を、また後半は、上級者以上が対象の「天国と地獄編」として、一方は勝ち筋、もう一方は負け筋になる終盤問題で構成しています。』二択なので自分で指し手をひねり出す必要はないのですが、後半は有段者でも間違えそうな問題が多数有りなかなか面白い付録になっていると思います(1〜12問目まで級位者向け、13〜39問目まで有段者向けです)。 |
2012年11月号(10月3日発売)の内容と感想 |
特集という形ではないですが、本のトップにあるのは、海堂尊氏と羽生二冠の対談。「新連載、ガムでリフレッシュ対談Vol.1」とありますので毎月このような対談があるようです。 そして「第60期王座戦第2局」(渡辺-羽生)(記:大川慎太郎氏)があります。棋譜はネットで実況中継されていましたが、それ以外に実況中は分からなかった渡辺王座の話がいろいろと載っていて面白い記事になっています。 プロ棋戦としては他に「王位戦第5局」(羽生-藤井)(記:田名後健吾氏)と「竜王戦挑戦者決定戦第2局」(丸山-山崎)(文:渡部壮大氏)、さらに「第3局」があり、この第3局は青野九段の将棋時評の中で(小さく)扱われています。 また、記事として「大和証券杯」(優勝:佐藤康光王将、棋譜なし)と「富士通杯達人戦決勝」(羽生-森内)があり、さらにプロ棋戦ではないですが「アマチュア将棋名人戦」決勝の棋譜(早咲-井上)と「高校竜王戦」決勝の棋譜(高橋-金谷)があります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第38回目。題は「なぜプロは藤井将棋に憧れるのか」。題名はちょっと変わっていますが、内容は角交換振り飛車と藤井システムについてのまじめな考察。特に「藤井マジック」の名で様々な藤井九段の指し方を解説しているのはなるほどと思うことも多く勉強になります。いつも通り分かりやすくこの戦型に興味のある人は必読でしょう。 あまりここでは取り上げていませんが、「感想戦後の感想」に福崎文吾九段が登場しています。「福崎節で語る谷川将棋と羽生将棋」と題したこの記事はたいへん面白かったです。福崎九段は解説もそうですが、この「福崎節」で将棋界の話をまとめたら面白い本が出来そうだなと思いました。 先月からの特集、「羽生善治、タイトル獲得の軌跡」が中とじのカラーページにあります。中編の今回は、七冠達成から次世代の旗手・渡辺との王座戦まで。今回も8ページで写真が多く記事は少しですが、その僅かな文章からも羽生の記録、すごさの分かる内容となっています。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第4戦。新人王チーム(村山慈明六段・阿部健治郎五段)対振り飛車党チーム(戸辺誠六段・永瀬拓矢五段)の対戦。村山-戸辺戦はゴキゲン中飛車対居飛車で解説も多く、阿部-永瀬戦は力戦四間飛車でこちらは2ページだけです。 「イメージと読みの将棋観」の新25回目。今月のテーマは、(1)ポーランド流▲7五歩は流行するか?(2)右四間飛車はなぜ主流にならない?(3)宗英名人、若き日の佳局、(4)大山康晴十五世名人、受けの妙技、の4つです。(1)は▲7六歩△8四歩に▲7五歩と進めた局面について。各プロ棋士の考えに違いは見られません。(2)の右四間飛車は居飛車同士の右四間飛車で対振り飛車ではありません。テーマとしては興味のある人は多いかもしれませんが、各棋士による違いは残念ながらこれもあまりありませんでした。但し、(3)の昔の実戦として出題されたこの問題は見解が分かれました。(4)は創作問題のような実戦、受けの妙技です。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は12回目で前回の続き△4五角戦法の途中「△4五角に▲3五飛の変化」。△2八歩に▲同銀とし、ようやく△4五角を打ちましたが、メインの定跡に入る▲2四飛の前に▲3五飛と一つ引く変化を今月は解説しています。 久保九段の「さばきのエッセンス」は35回目。今回は「復活した△3二金型」です。前回から後手のゴキゲン中飛車ですが、今月は以前からある△3二金型の解説。『最近の私の頭の中では、「これがやっぱり有力なのかなあ」と思い始めている』そうです。いろいろ変化は多いものの△3二金は「原点回帰の指し方で、この定跡の基本形」ということでもう一度復習しておくには詳しく解説されています。 付録は勝又清和六段監修「プロの実戦に学ぶ終盤の手筋」です。恒例の「新手ポカ妙手選」は載せたい問題が多く39問で収まり切らなかったとのこと。で、「埋もれさすには惜しい題材をまとめ、編集部と協力し1冊にまとめた」のが今回の付録になっています。問題として出題されればそれほど難しくないものから、「凌ぎの手筋186」に載っていていてもおかしくないような問題まで様々あり終盤に特化している分役に立つ良い付録です。 ※7月号付録の「新手ポカ〜」を赤字にしなかったので、今回はこれをお勧め記事にしました。「感想戦後の感想」にも一票!という感じですが。 |
2012年10月号(9月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は、「羽生善治、タイトル獲得の軌跡」ということでこれまでのタイトル獲得の流れを写真と共に掲載しています。但し、三回に分けて載せるとのことで、今月号は前編、96年2月の七冠達成まで。写真を含め8ページだけで写真が多く、記事は少しです。 そしてその後に、「王位戦第4局」(羽生-藤井)(記:大川慎太郎氏)と「竜王戦挑戦者決定戦第1局」(丸山-山崎)(文:古川徹雄氏)があります。この王位戦第4局の記事、実況で見ていた人には大変面白い記事になっています。次の一手形式で解説をし、実況や週刊将棋に出てこない内容もあり、これなら月刊誌を買う意味があるでしょう。 プロ棋戦としては他に「王位戦第3局」(羽生-藤井)があり、この解説は山崎隆之七段。プロ棋士の観戦記らしく通常の記者とはちょっと違った内容で面白いです。今月号は第3局第4局と王位戦の記事が一番面白かったですね。 「棋士が聞くプロ対談」。10回目で、石田和雄九段と森下卓九段が登場しています。「棋士が聞く」ではないですが、前半は石田将棋について、後半は石田九段と森下九段へのインタビュー記事。興味ある話が多く一気に読んでしまいました。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第37回目。今回は「角交換四間飛車を語ろうか。」です。振り飛車と角交換の話に始まり、藤井九段のシステム的な角交換振り飛車の解説はいつも通り分かりやすい。ここには、先日行われた王位戦第2局もそのシステムの一部として取り上げられています。 「イメージと読みの将棋観」の新24回目。今月のテーマは、(1)2手目△8四歩をとがめる?向かい飛車、(2)ゴキゲン中飛車の不思議定跡、(3)奨励会1級の実力は?、(4)内藤、加藤、飛車落ちの名局、の4つです。(1)は▲7六歩△8四歩▲7七角△3四歩▲8八飛と進んだ局面がテーマ図。(2)はゴキゲン中飛車対超速▲3七銀の一変化(初めて現れたのが昨年9月の広瀬-鈴木大介戦)です。 中とじのカラーページ直前に、「棋界のトリビア」が2ページ、竹俣紅女流2級インタビュー記事が3ページあります。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第3戦。トップチーム(屋敷伸之九段・木村一基八段)対アマ選抜チーム(今泉健司アマ・清水上徹アマ)の対戦。屋敷-今泉戦はゴキゲン中飛車対居飛車で解説も多く、木村-清水上戦はこちらもゴキゲン中飛車対居飛車でこちらは2ページだけです。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は11回目で前回の続き△4五角戦法の途中「△2八歩に手抜きは成立するか」。△2八歩に対し、▲7七角と打つ変化、先月の続きです。 久保九段の「さばきのエッセンス」は34回目。今回は「ゴキゲン中飛車菅井流」です。今回と次回は、後手のゴキゲン中飛車に戻って解説するとのことで、今月はその菅井流。ゴキゲン中飛車対超速も双方にいろいろな指し方が現れ、「現状はほぼ互角に戻っている」とのことでこの辺りの最新情報ですね。 付録は櫛田陽一六段の「居飛穴破り櫛田流四間飛車」です。居飛車穴熊に組ませて戦う櫛田流の四間飛車、次の一手形式で39問を考えながらその指し方を会得するようになっています。 |
2012年9月号(8月3日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは、通算タイトル81期達成と言うことで、まず「羽生二冠のインタビュー」(聞き手:相崎修司氏)から入っています。そしてその後に棋聖戦第3局(羽生-中村)(記:渡部壮大氏)と王位戦第1局(羽生-藤井)(記:大川慎太郎氏)が載せられています。 今月号にはインタビュー記事が全部で三つ。最初の羽生二冠に始まり、「森内名人のインタビュー」では名人戦七番勝負を振り返ってもらい、続いてこれはインタビューとはちょっと違いますが、佐藤王将にも名人戦の事をいろいろ聞いています。 プロ棋戦としては「第6回朝日将棋オープン戦1次予選プロアマ一斉対局」が取り上げられています。但し、対局は部分図だけでレポート形式です。 中とじのカラーページには、没後20年特別寄稿として河口俊彦七段の「勝負に徹した巨人 大山康晴十五世名人」がありますが、写真3枚(3ページ)を含め全部で7ページですので決して多くはありません。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」第2戦。振り飛車党チーム(戸辺誠六段・永瀬拓矢五段)対関西俊英チーム(豊島将之七段・菅井竜也五段)の対戦で、「優勝候補同士の対戦」と言っている通り、興味の持てる一戦になりました。その二局はどちらも長手数の熱戦。特に解説のある永瀬-菅井戦は、石田流対居飛車穴熊の戦いで総手数213手。負けた側からすると納得はいかないでしょうが、並べて観戦するには面白い将棋です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第36回目。今回は「横歩はめぐる」と言うことで、横歩取りについてです。新山崎流から始まり、旧山崎流や旧式横歩取り、そして中原囲いをめぐる駆け引きなど現在の横歩取りを見る上での知識として役に立つ情報を教えてくれます。 「イメージと読みの将棋観」の新23回目。今月のテーマは、(1)2手目△6二金戦法は成立するか、(2)横歩超急戦の結論は?、(3)研究会禁止令が出たらどうする?、(4)丸田祐三九段の名手、の4つです。(1)の△6二金戦法とは、新人王戦で三段の人が▲7六歩に△6二金と指した手だそうです。(2)の横歩超急戦は、24手目に現れた△4四角で以下▲2一飛成△8八角成となる将棋です。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は10回目で前回の続き△4五角戦法の途中「△2八歩に手抜きは成立するか」です。△2八歩に対し、▲7七角と打つ変化を解説しています。 久保九段の「さばきのエッセンス」は33回目。今回は先手中飛車▲5五歩型(位取り中飛車)の解説です。昔の指し方から現代流相穴熊まで大きな流れを載せています。 付録は日本将棋連盟編「将棋文化検定」と題した「模擬試験問題集全100題」。今年の10月21日に将棋界初の試みである「将棋文化検定」を実施すると言うことで、模擬試験問題をまとめたものです。 (※今月号は、先月とは別の意味で赤字にするものを迷いました。全体的に無難な内容で印象に残る記事が少なく、それだけに双龍戦の一戦はすごい一局でした。) |
2012年8月号(7月3日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは、防衛で終了した「名人戦第6局」(森内-羽生)(記:大川慎太郎氏)と6月から始まった「棋聖戦第1局」(羽生-中村)。特に棋聖戦の方を書いているのは負けた中村太一六段。一時は必勝になった局面から逆転した将棋だけに自戦解説は読みたい文章です。 他にプロ棋戦は名人戦第4局(編集部)、第5局(記:一瀬浩司氏)、女流王位戦第3局(甲斐-里見)(文:渡部壮大氏)があります。 将棋世界・週刊将棋合同企画の「双龍戦」が始まり、第1戦として新人王チーム(村山慈明六段・阿部健治郎五段)対アマ選抜チーム(清水上徹アマ・今泉健司アマ)の対戦が出ています。出場している棋士は新鋭の若手が多く、見てみたい対戦ではあるのですが・・・。 青野九段の「将棋時評」、今月号も文章としては一番面白かったと感じています。棋士人生を変えた一手、変えたかもしれない一手について書かれており一気に読んでしまいました。 読み物として相崎修司氏が「永久不滅!?将棋界大記録の話」を書いています。最多対局から勝利、敗戦記録、年少、年長獲得タイトル、タイトル戦連覇、勝率など様々な記録について取り上げており、興味ある記事になっています。 「リコー杯女流王座戦ができるまで」の後編が載っており、その後に「カロリーナの衝撃」の記事があります。このカロリーナさんの対局は実況で私も見ていただけに、改めて記事を読み直しました。 中とじのカラーページは、「女流王位戦第3局」とマイナビ女子オープンを防衛した「上田初美女王へのインタビュー」記事です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第35回目。今回は「早わかり角換わり」。最近の角換わりについて毎度のことながらわかりやすく書かれていて勉強になります。同型の現在(歩の突き捨て順序)や、渡辺竜王で有名な「後手理想形の待ち方」の問題(イメージと読みの将棋観でも取り上げられています)。タイトル戦など実況を見る上の背景知識として大変役に立つでしょう。 「イメージと読みの将棋観」の新22回目。今月のテーマは、(1)佐藤王将誕生の▲5七玉、(2)渡辺竜王のドル箱作戦、(3)感覚破壊の福崎流、(4)大山、新鋭・森内をあしらう、の4つ。▲5七玉については升田幸三賞を取った一着で付録にもあります。テーマ2は最善形を崩さずに待つ「渡辺システム」について。どちらも棋士がどう思いどのように評価しているのか興味あるテーマです。棋士ごとの違いはそれほどありませんが、個人的には久々に面白かったですね。また、テーマ3は、福崎-谷川戦の有名な一戦。実戦譜2題は、現代将棋との対比もありこれも今までの実戦譜よりは興味が持てました。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は9回目で前回の続き「△4五角戦法の入り口」。ハメ手度90%と言うことで、この後の変化を解説しています(△2八歩の是非、▲7七角のタイミングなど)。 久保九段の「さばきのエッセンス」は32回目。今回は先手中飛車に後手△6四銀型を解説しています。 付録は佐藤康光王将の「天衣無縫の一手」と題した「第18回升田幸三賞受賞記念」です。二つの棋譜があり、一つは、木村八段との竜王戦本戦出場者決定戦で指された2手目△3二飛戦法における△4二銀。もう一つはイメージと読みの将棋観でも取り上げられた久保王将との王将戦第1局、後手ゴキゲン対超速の▲5七玉です。この二つの棋譜で23問まで問題という形で出されており、その後に別の対局から合計39問出題されています。 (※今月号は、断トツ一番の記事はなかったのですが、名人戦、双龍戦、将棋時評、大記録、突き抜ける!、付録など面白い記事は多く、赤字にするのは迷いました。) |
2012年7月号(6月2日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは、主に三つ。「名人戦第3局」(森内-羽生)(記:大川慎太郎氏)と特別寄稿、海堂尊氏の「余はいかに名人戦観戦記を執筆するに至ったか」、そして棋聖戦挑戦者になった「中村太一六段へのインタビュー」記事です。 プロ棋戦は名人戦第2局(解説:橋本八段)、マイナビ女子オープン第2局第3局(上田-長谷川)(文:国沢健一氏)、女流王位戦第1局第2局(甲斐-里見)(文:渡辺大輔氏)があります。 今月号には、「第22回コンピュータ将棋選手権レポート」が10ページに渡って載せられています。ネット中継もありましたが、なかなか全部は見られませんのでそのポイントとなる対局や様子が分かって良い記事です。 青野九段の「将棋時評」ではフリークラス、引退関連の対局・記事を取り上げており、将棋界の厳しさ、悲哀が伝わってきます。 中とじのカラーページは、「棋士が聞くプロ対談」。今回は、加藤一二三九段と飯塚祐紀七段。棒銀使いと、その加藤九段に憧れて棒銀を始めた棋士ということだそうです。内容は・・・加藤九段の棋譜や自身をテレビ等で見ていない人にとっては、やや自慢話に聞こえるかもしれません。しかし今までの数々の伝説を知っているとこの対談も非常に面白く読めるでしょう。話をしている光景が浮かんでくるようです。 中とじに、将棋世界・週刊将棋合同企画として「双龍戦」が始まることが出ていました。出場棋士は新鋭が多く、面白くなりそうな感じなので、どうせなら勝敗予想とか読者参加型にして欲しいですね。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第34回目。今回は振り飛車から変わり、「現代矢倉最新レポート」。最近の先手の対策が進んできたことに触れ、後手も2手目△8四歩と突いて堂々と先手の得意戦法を受けて立つ、という作戦選択が見直されつつあると述べています。そこで今回の名人戦第3局までに出た居飛車の戦法、その最新レポートを届ける意味があり、「名人戦を理解するための最新戦法講義」となっています。 「イメージと読みの将棋観」の新21回目。今回から郷田棋王と豊島七段が加わり、渡辺・森内・久保・広瀬の六人となっています。そして、今月のテーマは、(1)菅井新手をどう見る?(2)小学生棋士の誕生は可能性あるか?(3)升田-小池の角落ち戦(4)大山の受けきり勝ち、の4つ。テーマ1の菅井新手についての見解はあまり参考になるようなものはありませんが、渡辺竜王の話は普通に面白かったです。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は8回目で「△4五角戦法の入り口」。前回までに△4四角戦法を終え、今回から△4五角戦法の解説に移るとのこと。この△4五角も横歩取りでは避けて通れない戦法。いろいろな変化がありますので、横歩を指す人には役に立つ講座となるでしょう。 久保九段の「さばきのエッセンス」は31回目。今回も中飛車ではありますが、ちょっと趣が変わり「久保流1筋位取り穴熊」。先手中飛車は、超速がない分有利だが後手が玉を固めてきた場合には打開の責任が生じる為、「何か」を用意しておかねばならない。その何かの1つが今回の講座の考え方ということです。 付録は勝又清和六段の「新手ポカ妙手選2011年度版」です。毎年この時期に出される恒例企画。39問と決まっている為どれを選ぶかは難しいでしょうが、新手編は本誌講座とかぶらないよう見た目が分かりやすいものを選んだとのことです。 |
2012年6月号(5月2日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは、いよいよ始まった「名人戦第1局」(森内-羽生)(記:山岸浩史氏)。技術的な内容は、実況を見ていた人に新しいことはありません。しかし、最初に森内名人へのインタビューから始まり、その第1局の見方を非常に面白く伝えています。一気に読んでしまいましたが、書く人によってここまで読ませる文章になるのかと感心もしました。 特集として、「プレイバック2011」と「豪華2本立てインタビュー」があります。3月までで2011年度が終了し、現役棋士が選ぶその2011年度ベスト10です。そしてNo.1に選ばれたのは王座戦第3局(羽生-渡辺)でした。以下10位まで選ばれた理由(棋士の言葉)と簡単な解説付きの棋譜があります。さらに、将棋大賞選考会と升田幸三賞などの選考会も載っています。 「豪華2本立てインタビュー」は、新タイトルホルダーへのインタビューと言うことで、郷田棋王と佐藤王将へのロングインタビューです(それぞれ8ページ・構成:古川徹雄氏)。 プロ棋戦は他に、マイナビ女子オープン第1局(上田-長谷川)(記:田名後健吾氏)があります。 4ページと少ないですが、「リコー杯女流王座戦ができるまで」という記事が載っていました。今回前編で、来月後編があるようですが、女流王座戦誕生までのいきさつとその思いが伝わってきます。そして、新聞社以外の主催にどのような意味があるのかという事でも考えさせられる内容です。 中とじのカラーページは、今月も「棋士が聞くプロ対談」。今回は、ここ10年間の関西棋界を牽引してきた棋士として畠山鎮七段と山崎隆之七段に関西新時代と言うことで話を聞いています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」の第33回目。そして、「超速、その強さの秘密」とまたしても取り上げたのはゴキゲン中飛車対超速です。内容は、「最新の対策と根本的な疑問」。最新の対策として大きく取り上げたのは、菅井新手とその周辺の変化。2ヶ月前に行われた棋王戦五番勝負についても触れ、ゴキ中vs超速の時間的な流れも含め解説されています。 さらに根本的な疑問は、△4四銀ではなく△5四銀と立ったらどうなるのかについて。そしてその後に「ゴキ中の行方」についての示唆に富む面白い話と、郷田棋王へのインタビュー記事があります。いつも面白くて参考になる記事ですが、今月号はさらにイチ押しです。 「イメージと読みの将棋観」の新20回目。今月のテーマは、(1)木村義雄十四世名人の至言(2)森下卓九段の妙手(対西川六段)(3)中原-真部の熱戦(4)森安秀光、豪腕の寄せ(対米長棋王)、の4つ。今回も定跡を取り上げたものはありません。せっかく居飛車と振り飛車の棋風の違うトップ棋士がいるのに実戦の終盤だけではあまりにもったいない内容です。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は7回目で「羽生新手を解明する」。羽生新手って何だろう?と思ったのですが、△4四角以下▲7七角△同角成▲同桂△8九角に▲7五角と打つ手のことでした。これは以前「イメージと読みの将棋観」の中で羽生二冠が指摘した手で、今回はこの変化の解説です。将棋の奥深さの分かる講座となっています。 久保九段の「さばきのエッセンス」は30回目。内容は「先手中飛車の久保流」。最初に中飛車銀冠対居飛車穴熊の将棋を解説し、この持久戦は自信なし、と。そして久保流では、このように居飛車穴熊対策をすると言うことを解説しています。 付録は内藤九段の「どっちが勝ち?(付録編)」。本誌にずっと連載されている問題ですが、これは「あまり肩の凝らないやさしい問題を作ってみました。」とのことです。しかし少し解いて見た所、結構難しいです。確かに毎月出題しているものよりは易しいですが、あのスーパートリック並みの問題とさらに後手勝ちまでありますので、普通に有段者向けと言って良いと思います。初段クラスの人は、一問一問じっくり取り組んで見て下さい。(※赤字に推したい良い付録です!) |
2012年5月号(4月3日発売)の内容と感想 |
巻頭カラーは、羽生特集。NHK杯V10達成で名誉NHK杯選手権者になると同時にA級全勝で名人戦挑戦者にもなったと言うことで、過去の名人戦等の写真とインタビュー記事。 もう一つの巻頭カラーは、「王将戦第4局」と「第5局」(久保-佐藤)。どちらも佐藤九段の自戦解説です。 プロ棋戦は他に、棋王戦第4局(久保-郷田)(記:相崎修司氏)とNHK杯決勝(羽生-渡辺)(記:古川徹雄氏)があります。 特集記事として、「第70期順位戦最終局」についての記事がたくさん載せられています。 その一つが、「第70期順位戦最終局昇級者代表座談会」。次代を担う三傑として登場しているのは、橋本八段、広瀬七段、佐藤天彦六段の三人。順位戦を振り返るというテーマで話が進められました。 他に、いつもこの時期に出る「昇級者喜びの声」と最終局それぞれの組みの記事。さらに青野九段の「将棋時評」と「関西本部棋士室24時」でも順位戦の話題です。 中とじのカラーページは、今月も「棋士が聞くプロ対談」。今回は、関東若手屈指の研究家として阿部健治郎五段と村山慈明五段に、現代将棋界における新手事情を聞いています。興味ある内容が多く、特に阿部五段の「新手論に関するレポート」は面白いです。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第32回目は前回に引き続き、また旬の話題とも言える「吹き荒れる超速施風」。ゴキゲン中飛車対超速▲3七銀。新しいタイトルホルダーが超速で誕生したとも言える為、現在の状況とゴキゲン中飛車側の対策を調べられています。実際にはまだまだ『未解決の課題が山のように残されたままで、結論が出たと言うには程遠い状況です。』と述べ、多くの実戦局面と詳しい解説があります。 「イメージと読みの将棋観」の新19回目。今月のテーマは、(1)大山の名手(対塚田正夫九段)(2)投了?の将棋を勝っちゃた(3)米長邦雄の大構想(対塚田泰明王座)(4)森けい二、名人戦の名局(対中原誠名人)、の4つ。今回は定跡を取り上げたものがありません。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は6回目で「△4四角戦法その3」。△4四角に対する対策で、正しい受け方を解説しています。 久保九段の「さばきのエッセンス」は29回目。内容は「先手中飛車の入り口」。▲7六歩△8四歩にはなぜ▲7五歩ではなく▲5六歩なのか、とか先手中飛車への超速はあるかなど基本的な部分ですが、序盤の指し方の前提でもあるので今一度整理しておくのも良いかもしれません。 付録は伊藤果七段の「伊藤果に挑戦!」。5手詰、7手詰、9手詰が20問ずつ全部で60問。タイムトライアル60としてその記録で棋力を計れるようになっています。あの伊藤果の詰将棋が60問ですから、これだけでも今月号を買う価値があります。(4月6日追記:全部解いてみたところ、果色が薄く、一般的な筋ものの詰将棋が多かったのがある意味ちょっと残念です。一部薄めの果色のやさしい合駒問題などもありますが、全体的には「タイムトライアル」用に作った感じで、一般向けです。) |
2012年4月号(3月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「第37期棋王戦&第61期王将戦」として久保二冠のダブル防衛戦についてです。「棋王戦第1局」(久保-郷田)の解説は木村一基八段で、さすがにプロ目線での解説は通常の観戦記とはまた違った面白さがあります。「王将戦第2局」(久保-佐藤)の方は椎名龍一氏です。 また、特集としては、「第70期順位戦ラス前」を「関西本部棋士室24時」「将棋時評」で取り上げ、さらに他のクラスも、B1は一瀬浩司氏、C1は渡辺大輔氏、C2は高野秀行六段がレポートしています。 プロ棋戦は他に、王将戦第3局(久保-佐藤)(記:編集部)と女流名人位戦第3局(里見-清水)(記:国沢健一氏)と第4局(記:西條耕一氏)、朝日杯準決勝(広瀬-郷田)(羽生-菅井)と決勝(広瀬-羽生)(記:大川慎太郎氏)があります。 マイナビ女子オープンの挑戦者になった長谷川女流二段が、巻頭カラーに出ておりさらにインタビュー記事があります。マイナビドリームとしてアマチュアから一気に挑戦、二段昇段として注目をあびる女子高生。すでにネットで将棋は見ましたが、人となりが少しだけ(6ページ)分かります。 中とじのカラーページは、今月も「棋士が聞くプロ対談」。今回は、豊川孝弘七段と近藤正和六段で苦労人同士の対談ということです。ただ今回も対談ではなく二人へのインタビュー記事ですので、前半を読み始めた時には特に何の感想もなかったのですが・・・後半の二人の話はなかなか面白かったですね。郷田九段のことを『彼の才能は羽生、屋敷に比べたら大したことない』など思っていることをそのまま言っているのは驚きです(←前後を読めば悪口でないことは分かるのですが)。他にも楽しい話が盛りだくさん。今月号で一番面白い記事でした。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第31回目で「進化とまらぬ超速の世界」です。ゴキゲン中飛車対超速▲3七銀。この戦法について、基本的な考え方から入り現状を詳しくそして分かりやすく解説しています。プロ棋戦の実況を見る上でもたいへん役に立つ記事と言えるでしょう。 「イメージと読みの将棋観」の新18回目。今月のテーマは、(1)相横歩取りの結論は?(2)大山康晴の序盤センス(3)升田幸三の序盤センス(4)米長邦雄-森安秀光の名局、の4つ。今回はどのテーマも棋士による違いが出ていません。テーマの選出に底が見えてきた感じですが、次の一手問題としてテーマ図を考えて見るのは面白いかもしれません。 「リレー自戦記」は加藤一二三九段。取り上げた棋譜は第70期順位戦C級1組(対千葉幸生六段)。戦型は、「加藤と言えば棒銀」の通り四間飛車対棒銀の昔ながらの定跡形。そこに加藤九段の新構想があります。しかし、それにしても棒銀を2六においたまま▲3五歩を打って勝利できる棋士というのはあまりいないような気がしますし、そう言う意味でも貴重で独特な棋士なのだなと思わざるを得ません。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は5回目で「△4四角戦法その2」。ところでこの△4四角戦法ですが、今月の「棋士が聞くプロ対談」の中に、公式戦でこれで勝った棋士は豊川七段だけということが書かれています。確かにハメ手の部類なのかもしれませんが、アマチュアの場合、知っている方が勝ちやすいこともまた事実です。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は28回目。「その後の菅井新手」について。この菅井新手とは、初手より▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7六飛の進行でこの▲7六飛のこと。現状どうなっているかを書かれています。 今月号には、「初段を目指す人の駒落ちテクニック」(編集部)がありました。僅か2ページのワンポイントアドバイスと言った感じの講座ですが、今回は二枚落ちの急所の局面を取り上げてどのように指したら良いかということが書かれており、興味深く読みました。もう少しページ数を増やして欲しいですね。 付録は及川四段の「囲いはこう破れ」。「実戦で使える手筋39題」と言うことで、多くは囲いの部分図を取り出し、どのような手筋でその囲いを破ったら良いかの問題です。内容的にはやさしい基本手筋が多いので級位者向けと言えるでしょう。 |
2012年3月号(2月3日発売)の内容と感想 |
今月号、届いたのを開けて見ていきなり驚いたのは、表紙の写真。今まで、必ず棋士が大きく写っていたのにそれがありません。代わりにきれいな城と対局室の写真が!あまりにも長い間、代わり映えのしない表紙を見てきただけに結構インパクトがありました。これにより販売数がどう変わるのか興味のある所ですが、個人的にはなかなか良いと思いましたね。 さて、内容ですが、今月の巻頭カラーは、「第37期棋王戦挑戦者・郷田真隆九段に聞く」と題したインタビュー記事と、「第61期王将戦第1局」(久保-佐藤)の佐藤康光九段による自戦解説。さらに「第38期女流名人位戦第1局」(里見-清水)(記:浅見将平氏)です。佐藤九段の自戦解説は、やはり本人がどのように読みを入れていたのかが分かり面白いです。ただこの将棋は終盤、形勢が離れてしまったので、できれば来月号には大熱戦となった第2局の自戦解説があればうれしいですね。 プロ棋戦は他に、女流王座戦第5局(清水-加藤)(記:相崎修司氏)と先日行われて話題になった第1回将棋電王戦(米長-ボンクラーズ)(記:田名後健吾氏)、さらに解説は少ないですが、上州将棋祭り(羽生-森内)、マイナビ女子オープン(里見-加藤)(文:古川徹雄氏)があります。 青野九段の「将棋時評」。今月号の中で一番面白かったので、先月に続き強調文字としました。昼食休憩の会話、泉-中川戦の持将棋、詰めろ逃れの詰めろの窪田-飯塚戦、他に女流王座戦や渡辺-三浦戦、棋王戦挑戦者決定戦、マイナビ準決勝などを取り上げています。 ちょっと変わった記事ですが、元奨励会から作家になった橋本長道氏が「第24回小説すばる新人賞」を将棋をテーマにした小説「サラの柔らかな香車」で選ばれたと言うことで取り上げられています。この人の話も面白いのですが、その後に、「香落ち下手▲8六飛戦法」というのがあり、これがさらに面白い内容(戦法)で必見です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第30回目で「究極の実戦的端歩術」と言うことで、今回は端攻めを取り上げています。基本的な端攻めや「端を詰めたら逆サイドから」の解説から入っていますが、大部分は端攻めにからんだ実戦例。特にトッププロの端攻めの実戦は参考になる部分が多く、普通に寄せの講座としても十分成り立っています。 中とじのカラーページは、今月も「棋士が聞くプロ対談」。今回は、佐藤康光九段と飯島栄治七段で研究パートナーとのこと。但し、記事の内容は今回も「棋士が聞く」ではなく、二人へのインタビュー記事。前半は、二人の棋譜を取り上げてその話。後半は、結婚生活、奥さんのことについてでした。 「イメージと読みの将棋観」の新17回目。今月のテーマは、(1)角交換振り飛車はなぜ主流にならない?、(2)島本流▲7七金戦法は成立するか?、(3)駅馬車定跡を知っていますか?、(4)大山、受けの妙手(大山-内藤戦)、の4つ。テーマ(1)は藤井九段が得意としている戦法で、(2)は島本五段が「神戸発珍戦法で行こう」という本で紹介している指し方。この二つに関しては、ここに出てくるほとんどのプロ棋士の感想が同じで違いがありません。(3)の「知っていますか?」の見出しに「そりゃ、知ってるだろう!」と思いながら読んだら、意外に知らない人、名前しか聞いたことがないという人達がいてこれが一番の驚きでした。 「リレー自戦記」は田中寅彦九段。取り上げた棋譜は第53期王位戦予選(対森内俊之名人)。戦型は、相矢倉で勝った自慢の一局、とのことですが、”自慢”と言っても嫌らしくなく、文章が面白いので楽しく読めました。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は4回目。「△4四角戦法その1」と言うことですが、本題に入る前に、新年号を見た人からの質問(ネット上のうわさ話)に対する回答が書かれています。そしてその後に本題である△3八歩▲同銀△4四角についての解説です。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は27回目。「見直された銀対抗その2」で、前回に引き続き、ゴキゲン中飛車対超速の▲4六銀-△4四銀の形です。自身が最近指した将棋なども取り上げ最新の考え、状況を解説しています。 付録は門倉四段の「先手”角交換”四間飛車」。今月の「イメージと読みの将棋観」では後手でこの戦法が載っており、そこではほとんどの棋士が否定的な意見ですが、こちらは先手。その差がまた全然違った将棋になり、この戦法を分かりやすく39問の次の一手で解説しているという訳です。 |
2012年2月号(12月29日発売)の内容と感想 |
今月の特集は渡辺竜王8連覇として、「第24期竜王戦第5局」(渡辺-丸山)(記:大川慎太郎氏)が取り上げられ、渡辺竜王のインタビュー記事「想いを込めた8連覇」(聞き手:西條耕一氏)があります。このインタビュー記事では5局すべてを渡辺竜王が振り返っています。 プロ棋戦は他に、竜王戦第4局(渡辺-丸山)(観戦記:西條耕一氏)と女流王座戦第4局(清水-加藤)(記:渡辺大輔氏)、第5局(棋譜と写真のみ)、倉敷藤花戦第1局(里見-清水)(棋譜と写真のみ)、第2局(記:中島一氏)、JT決勝(渡辺-羽生)などがあります。 4ヶ月前から始まった青野九段の「将棋時評」。毎回、楽しく読んでいますが今回は特に面白かったですね。最初に女流の対局を取り上げており、その一つ上田-中村真戦。本当に実況で見たかったと思わせる終盤戦を紹介しています。また、他の記事も面白くいつも一気に読んでしまいますが、やはり取り上げ方と書き方がうまいのでしょう。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第29回目で「端歩をめぐるストラテジー」。矢倉から始まり、相掛かり、横歩取り、角換わりと端に関連する定跡と実戦譜の解説です。さらに相居飛車戦の後は、藤井システムやゴキゲン対策の佐藤流▲9六歩、相振り飛車の端歩や2手目△3二飛に対する端歩と幅広く取り上げています。ページ数が少ない為、振り飛車の方はあまり詳しくはありませんが、現代序盤テクニックの一端が分かる記事です。 中とじのカラーページは、今月も「棋士が聞くプロ対談」。今回は、三浦弘行八段と伊藤真吾四段。記事の内容は特に言うこともなく普通に面白いのですが。ただ、「棋士が聞く」ではないですね。司会の人(鈴木宏彦氏)が普通に二人にインタビューしているだけです。 「リレー自戦記」は伊藤真吾四段。取り上げた棋譜は竜王戦昇級者決定戦(対大野八一雄七段)。しかも竜王戦と同時に、フリークラスからの脱出もかかった大一番です。戦型は後手伊藤四段のゴキゲン中飛車に先手は丸山ワクチン。苦しい局面を逆転した将棋でした。 「イメージと読みの将棋観」の新16回目。今月のテーマは、(1)久保流△5四銀は通用するか?(ゴキゲン中飛車対超速の序盤△5四銀)、(2)弟子との対局に何を思うか?、(3)横歩取り裏定跡の△4一玉戦法、(4)升田、三間飛車の荒さばき(対木村義雄名人)、の4つ。テーマそのものはそれほど興味あるものではなかったのですが、棋士によってそれぞれ少しずつ感想が違うのが面白いですね。 飯島七段の「横歩取り裏定跡の研究」は3回目。「△3三角基本戦法の真実」として先月の続きですが、真実というだけあり、先手がきちんと応対した場合の変化です。”先手よし”と言っても本当に微差。しかも様々な変化がありすべての変化を細かく覚えるのは大変そうです。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は26回目。「見直された銀対抗」と言うことで、ゴキゲン中飛車対超速の▲4六銀-△4四銀の形です。最近、実況でも良く見る気がしますので、そう言う意味でも講座は読んでおきたいところです。 付録は武市六段の「受けと凌ぎ3」です。4月号に2が出て、それから約10ヶ月。今回は「詰めろを凌ぐ」に限定して39問出題したということです。前にも書きましたが類書のあまりない「希少付録」ですのでちょっと難しいですが、じっくり考えて見て下さい。 |
2012年1月号(12月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーの棋譜は三つ。丸山九段が1勝した「第24期竜王戦第3局」(渡辺-丸山)(観戦記:西條耕一氏)と「第1期女流王座戦第1局」(清水-加藤)(文:相崎修司氏)、さらに「第19期倉敷藤花戦第1局」(里見-清水)(文:田名後氏)の三つです。いずれもネット中継のあった一戦ですので、ネットで見ていた人にはあまり目新しい内容はないかもしれません。ただ、改めて当時見たことを振り返るには良いでしょう。 プロ棋戦は他に、竜王戦第2局(渡辺-丸山)(観戦記:小田尚英氏)と女流王座戦第2局(清水-加藤)(記:立浪健一氏)、新人王戦第3局(豊島-佐藤天)(解説:藤井猛九段)があります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第28回目で「定跡の中の自陣角」と、先月に続き自陣角を取り上げています。そして、「定跡の中の」と言うだけあって、今回は勉強になる内容が多いように感じました。最初に自陣角を打つケースを4つ上げ、その後に振り飛車、居飛車と分けて実戦譜を取り上げています。 中とじのカラーページは、今月も「棋士が聞くプロ対談」です。そして今回は、木村一基八段と野月浩貴七段。同期であり親友でもあると言うことなので、今までのプロ対談とはちょっと趣が違うかもしれません。 「リレー自戦記」は船江恒平四段。取り上げた棋譜は第1期加古川青流戦決勝三番勝負の第3局(対宮本広志三段)。なお、第1局と第2局についても若干の感想があり、全部の棋譜が載せられています。これもネット中継があっただけに本人の感想が読めるのは良いですね。 「イメージと読みの将棋観」の新15回目。今月のテーマは、(1)2手目△3二飛戦法の新手、(2)師匠との対戦にかける思いは?、(3)柳雪、検校の21番勝負より、(4)升田七段、ライバルとの一戦、の4つ。なお、テーマ1の新手とは、佐藤康光九段が指した4手目△4二銀のことです。 先月から始まった「横歩取り裏定跡の研究」。第2回目の今回は、まず△3三角基本戦法から始めています。これは先手の横歩取りに、角交換をして△3三角と据える形。これに様々な応手、変化がある訳ですが、プロの将棋では出てこないだけに実際に使って見るのは面白いかもしれません。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は25回目。「△7一玉型対策」と言うことで、超速に対する△7一玉型の解説です。 ※今までここでは取り上げてきませんでしたが、何年にも渡り長く続いているものに、「感想戦後の感想」や「名局セレクション」、さらに「あっという間の3手詰」や「実戦に役立つ5手7手詰」があります。これらは長く続いているだけあって、どれも良質な記事です。「感想戦後の感想」では、棋士の一端を見ることができ、「名局セレクション」は棋譜並べする人には最高でしょう。「3手5手7手詰」は、私も良く子ども達の手合いが空くと、一緒に盤に並べて解くことにしています。おおよそ3級〜8級位ですと3手詰を、初段〜3級位には5手7手を、有段者の子どもとは、「詰将棋サロン」を、という感じでやっています。 付録は「対5五歩中飛車”杜の都定跡”(初・中級編)」。今までの付録と違い、書いている人は、アマ強豪の加部康晴氏(島朗九段監修)。「東北から生まれた速攻戦法」として、ゴキゲン中飛車への「シンプルな自己流作戦」を解説しています。はしがきに「必ずしも精度の高い序盤を要しないアマ同士の将棋では、ひとつの面白い指し方として十分通用可と確信しています。」とあるように、アマチュアの考えた戦法で、アマ同士なら通用するものが他にもたくさんあるのでは、と思います。面白い試みですし、今後も、”アマチュアの戦法”を取り上げてもらえればうれしいですね。 |
2011年12月号(11月2日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーも二つです。一つは竜王戦が始まった為、その第一局である「第24期竜王戦第1局」(渡辺-丸山)(記:大川慎太郎氏)。もう一つは、王座戦が終了した為、その最終局である「第59期王座戦第3局」(羽生-渡辺)(記:上地隆蔵氏)。また、新王座になったことを受けて、「渡辺明新王座インタビュー」があります。観戦記では、ネットの実況とどうしてもそれほどの違いは出てきませんが、やはり本人が対局を振り返ったり、どのように考えているかなど直接話をする内容には興味が持てます。 プロ棋戦は他に、新人王戦第1局(佐藤天-豊島)(文:国沢健一氏)と第2局(関西本部棋士室24時の中)があります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第27回目の今回は「記憶に残る自陣角」という今まで取り上げてきたような”戦型”ではありませんでしたので、いよいよネタ切れかと思ったのですが、内容は面白く一気に読んでしまいました。『自陣角をめぐって、あれこれの局面や、ファンのみなさんにお伝えしたいエピソードなどが、次から次へと思い浮かんできました』とのことで、特に歴史に残る自陣角や、大山、升田の自陣角など興味深いところを取り上げています。 「イメージと読みの将棋観」の新14回目。今月のテーマは、(1)横歩取り最新の▲7七角戦法、(2)誰と指してみたい?、(3)柳雪の金、(4)升田、逆モーションの寄せ、の4つ。最新形は常に興味のあるところですが、誰と指してみたい?は無難な話しか出なかったですね。 「リレー自戦記」は佐藤秀司七段。取り上げた棋譜は第24期竜王ランキング戦4組準決勝、佐々木慎五段との一戦。今期、竜王決勝トーナメント出場者の最年長ということですが、いきなり「老いと闘いながら」とあるのにはドキッとさせられますね。内容も、心情が良く書かれており、普段ネットであまり棋譜を見ることもないだけに実戦譜も丹念に読んでしまいました。 4ページですが、現在女流王座戦で戦っている「加藤桃子奨励会1級のインタビュー記事」があります。こちらも今までどういう人なのかまったく知らなかった訳ですが、僅か4ページの記事でも女流王座戦の見方が変わるかもしれません。 中とじのカラーページには、先月から始まった「棋士が聞くプロ対談」が収められています。今回は鈴木大介八段と永瀬拓矢四段。『羽生世代だって本物がいればニセモノもいる』とちょっと過激な出だしですが、対談は普通に面白く読めます。 講座の新連載が始まりました。題名は「横歩取り裏定跡の研究」で講師は飯島栄治七段です。いかにも面白そうな切り口で、一気に読んでしまいましたが、第1回目の今回は、「裏定跡の入り口」で、本講座で取り上げる概略を書いています。ここでは、△3三角基本戦法(角交換後の△3三角)、△4四角戦法、△4五角戦法、相横歩取りと4つを取り上げて行くそうです。横歩取りの定跡講座ではありますが、ちょっとでも受け方を間違えるとこうなるということで、指す人には必見の講座でしょう。これから期待大です。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は24回目。「生き残っている△3二銀型2」と言うことで、先月の続きを解説しています。 付録は「勝浦修詰将棋傑作集」。7手〜13手まで、「カミソリ流の切れ味鋭い短編を厳選」とありますが、表紙を入れて40問のうち、7手4問、13手3問だけですので、大部分は9手詰と11手詰です。難易度は、平均的かやや易しめと言った所でしょうか。同じ手数でも、詰将棋サロンのように難しくはありませんので、気楽に解いて見て下さい。 |
2011年11月号(10月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは二つ。最初に大きく取り上げられていたのは、「第52期王位戦七番勝負第7局」。「羽生新王位、通算タイトル1位タイ!」との見出しですが、記事は、「広瀬章人、失冠の一局を語る」として自戦解説で最終局が語られています。ネットの速報性に比べると、もう古くなった感じはありますが、改めてその時の一局が蘇り、通常の棋譜解説にはないお薦めの記事となっています。 もう一つは、「棋士が聞くプロ対談」として連載が始まりました。その第1回目は、郷田将棋にあこがれてプロになったという金井五段が、本人の郷田九段に聞くというものです。 プロ棋戦は他に、竜王戦挑戦者決定戦第3局(久保-丸山)(文:西條耕一氏)と王位戦第5局(広瀬-羽生)(棋譜のみ)、第6局(3ページの簡単な編集部による解説)、銀河戦決勝(糸谷-渡辺)、大和証券杯決勝(村山-菅井)、達人戦決勝(佐藤康-羽生)、JT決勝(渡辺-藤井)などがあります。 さらに中間のカラーで、王座戦第1局(羽生-渡辺)(記:山岸浩史氏)があり、次の一手形式で観戦記が書かれています。 新連載で、「将棋時評」が始まりました。筆者は青野照市九段。「棋士の対局風景を描きながら、棋士や将棋に対する思いを書いていく」とのことで、こうした文章には定評があるだけに期待の持てる連載です。青野九段は、単行本でも、「勝負の視点」などの読み物、鷺宮定跡などの定跡本など数多く出されていて、どれも良質の本が多いです。第1回目だからということはありませんでしたが、それでも一気に読ませてしまう内容で、今後の楽しみな記事が一つ増えました。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第26回目は、先月に続き相振り飛車。「相振り感覚、新旧対決!」です。記事の内容は、定跡の解説ではなく、今月はインタビュー記事。出ている人は、菅井五段、永瀬四段、久保二冠、藤井九段と聞きたい人に聞いていてやはり面白い内容になっています。 「イメージと読みの将棋観」の新13回目。今月のテーマは、(1)石田流の研究課題(居飛車左美濃に▲6五歩の開戦)、(2)中原誠16世名人の妙手(中原-米長戦)、(3)史上最長の長考記録は?(青野-堀口戦で5時間を超える長考)、(4)谷川-米長の初手合い、の4つでした。今月は特に(1)が興味深かったですね。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は23回目。「生き残っている△3二銀」について。現在、公式戦では圧倒的に超速が多いと言うことで、その解説です。木村八段の「これで矢倉は指せる」は34回目。なんと最終回とのことです。内容は、ずっとやってきた▲3七銀戦法、そして先月からの引き続き宮田新手、最新の攻防です。 触れたことはなかったですが、「詰将棋サロン」が臨時拡大版になっていて、いつもは8題なのに14題もあります。難しいので、なかなか”気楽には”解けないですが、挑戦してみましょう。 付録は先月の続編とも言うべき藤井九段の「藤井矢倉の攻防」。今回は、片矢倉で棒銀に組み上げた基本図からどのように攻めるかを、39問の問題形式にして自身で解説しています。かなり細かく解説しており、付録ながら内容が濃く、実戦にも役立つでしょう。 |
2011年10月号(9月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは三つ。一つ目は「山崎バニラ×山崎隆之のスペシャル対談」。二つ目は「第59期王座戦五番勝負開幕直前座談会」として森内名人、佐藤康光九段、佐藤天彦六段がこれから始まる羽生-渡辺戦を語っています。三つ目は「王位戦第4局」で、観戦記は大川慎太郎氏。第4局と言えばあの95手まで前例をなぞった将棋で、実際どのような心境、どのような考えでそうなったのか気になっていましたが、かなり詳しくそのことが書かれており実況を見ていた人には必見です。 プロ棋戦は他に、王位戦第3局(広瀬-羽生)(解説:橋本七段)と竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局(久保-丸山)(文:西條耕一氏)があります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第25回目は、5七銀左が終わり、「相振りに何が起こったか?」との題のもと相振り飛車についてです。内容は、よみがえる金無双や菅井流の仕掛け、新たな攻撃形など相振り飛車の最先端が分かりやすく書かれています。さらに「対策としての相振り飛車」。これは石田流やゴキゲン中飛車が出てきた過程で現れてきた考え方です。いずれにしても今のプロ将棋を観戦する上においても、知っておきたい基礎知識、最新知識です。 「イメージと読みの将棋観」の新12回目。今月のテーマは、(1)4手目△3三角戦法課題局面(角交換後の▲6八玉の局面)、(2)ゴキ中対超速の課題局面(▲6六歩の局面)、(3)完璧なプロができるか?(自分の子供をプロにしますか?との問い)、(4)升田幸三、若き日の角殺し、の4つでした。 「リレー自戦記」は村山慈明五段。取り上げた棋譜は第52期王位戦挑戦者決定リーグ白組プレーオフで羽生二冠との一戦。これはネット中継もされ、自分も見ていましたし、メルマガに観戦記を載せた将棋でもあります。こういう風に考えながら見ていた将棋を本人の自戦記で振り返ってもらうのは一番面白く、実際に見ていた時といろいろと違うこともあり二度楽しめます。 「上田初美女王×新鋭四段三番勝負」のラストである3回目。相手は阿部健治郎四段で、戦型は、相穴熊。最近は実況で広瀬穴熊を見ることが多いですが、本局は、昔からある戦型の見本みたいな形(振り飛車が4筋に飛車を転回して居飛車が△7五歩から攻める)で、変化の解説も詳しく、こうした相穴熊を指す人には勉強になる棋譜です。 今月号には、不定期で時々載せられる終盤講座「逆転の心得」があります。2ヶ月前にあった屋敷伸之編で7ページ。前回と同じくテーマ図を二つ取り上げ、解説しています(棋譜有り)。 そしていつもの久保二冠の「さばきのエッセンス」は22回目。今回はちょっと変えて「3手目▲6八玉のゴキゲン外し」に対する指し方。そしてその「外し」に対し真っ向から対抗する△5四歩を指すとどのような変化になるか、を解説しています。木村八段の「これで矢倉は指せる」は33回目。先月に引き続き後手△9五歩の変化、宮田新手を巡る攻防です。 付録は藤井九段の「藤井矢倉の原理」。数年前から話題になっていましたが、それを39問の問題形式にして自身で解説したものです。今月と来月の二回に分け、今月は「原理編」として、この戦法の狙いや急所はどこにあるのかを解説しています。 |
2011年9月号(8月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は、「第69期名人戦七番勝負第7局」(羽生-森内)とその激闘全7局を森内名人へのインタビューという形で振り返っています。実況で見ていた人達には今さら、という感じですが、読んで見ると内容は面白い。対局中はそんな風に思っていたんだ、という箇所も多く、一気に読ませてしまいます。 また、「第52期王位戦」(広瀬-羽生)が開幕し、その「第1局」も広瀬王位の自戦解説で載せられています。こちらもあの激闘の第1局を、当事者がどのように読み、どのように感じて指していたかが分かり同じように一気に読んでしまいました。さらに、その王位戦開幕に関して「本音座談会:若手はなぜ、挑戦者になれなかったのか」として、渡辺竜王、戸辺六段、村山五段の三人の本音トークもあります。 プロ棋戦は他に、棋聖戦第2局と第3局(羽生-深浦)(文:国沢健一氏)(第2局は棋譜のみ)、女流王位戦第4局と第5局(甲斐-清水)(自戦解説:甲斐女流王位)などがあります。女流王位戦も名人戦と同じくインタビューしながらの解説ですので、対局中どのように考えていたかが分かり興味深いです。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第24回目の今回は、「5七銀左よ永遠に」と題して5七銀左戦法をめぐる長い旅の最後です。そして今回は定跡の解説ではなく、すべて棋士へのインタビュー記事です。しかし内容は非常に濃い。登場するのは、羽生、渡辺、広瀬、石川、室岡、木村、米長、加藤、藤井、久保と大勢、ほぼ聞きたい人全員と言ってもいい豪華さです。 「イメージと読みの将棋観」の新11回目。今月のテーマは、(1)2手目△3二飛戦法のナゾ、(2)ゴキゲン中飛車対超速(△3二銀型対二枚銀)、(3)プロの整理術は?、(4)中原の妙桂(中原-米長の王将戦第7局の終盤戦)、の4つ。(1)は△3二飛戦法について各棋士がどのように考えているかが分かります。(4)ですが、いつも実戦を取り上げており、あまり参考にならないことが多いのですが、今回の実戦はすごい手順です。「ひえー!」と思うような手順を見てから記事を読んだら、同じような感想があり面白かったです。 「リレー自戦記」は佐藤天彦六段。取り上げた棋譜は第82期棋聖戦決勝トーナメント準決勝での郷田九段との一戦。戦型は相掛かり。但し、そうした戦型とは関係なく179手の大熱戦で、しかも終盤を重点的に解説していますので、面白いです。特に次の一手に出てくるような「中合いの香」は厳密には成立していなかったのに勝負手として成功した、という意味ではいかにも実戦的でした。 「上田初美女王×新鋭四段三番勝負」の2回目。相手は船江恒平四段で、戦型は、相振り飛車でした。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は21回目。先月に引き続き「ゴキゲン中飛車対超速」の5回目です。前回までは△3二金型を解説していましたが、今回は△3二銀型です。「イメージと読みの将棋観」の2番でも取り上げられていますので合わせて読みたいです。木村八段の「これで矢倉は指せる」は32回目。先月に引き続き後手△9五歩の変化、先手からの打開である▲6五歩(宮田新手)を取り上げ、さらにそれに対する後手の逆襲を解説しています。 付録は塚田九段の「塚田流急戦の極意」です。副題に「対四間飛車5七銀右戦法中級編」とあるように、四間飛車に対する5七銀右戦法を、次の一手39問にして解説しています。プロの将棋ではほとんど見なくなってしまった戦法ですが、役に立つ手筋も多く含まれており、読んで損はありません。 ※二ヶ月前の7月号とは打って変わって今月は面白い記事が多かったです。赤字は両タイトル戦の解説にしてしまいましたが、「突き抜ける!現代将棋」も「イメージと読みの将棋観」も「リレー自戦記」も、いつもの月なら赤字にしたいお薦めの記事です。 |
2011年8月号(7月2日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「第69期名人戦七番勝負第6局」(羽生-森内)(記:相崎修司氏)と「第82期棋聖戦五番勝負第1局」(羽生-深浦)で、どちらも羽生がらみ、しかも二局とも勝利した一局です。その解説は、かなり詳しく書かれており、実況にはなかった変化もあります。 プロ棋戦は他に、名人戦第5局(羽生-森内)(記:池田将之氏)、女流王位戦第3局(甲斐-清水)(文:大川慎太郎氏)などがあります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第23回目の今回は、「5七銀左文化の総決算」。先月△3二銀型について取り上げた為今回は△4三銀型。これに、急戦の代表的な斜め棒銀、早仕掛け、棒銀が歴史の流れから現代の状況まで分かりやすく述べられています。そして最後の3ページには郷田九段のインタビューがあります。 「イメージと読みの将棋観」の新10回目。今月のテーマは、(1)先手石田流にどうする?、(2)横歩取りの新戦術(後手の△5二玉型)、(3)有吉、升田の構想を打ち砕く、(4)NHK杯史に残る珍事件?(鈴木大-神吉戦での持将棋提案)、の4つ。(1)と(2)はまさに今のプロ将棋の最先端、問題になっている局面なだけにそれぞれの考え方には興味深いものがありました。 「リレー自戦記」は戸辺誠六段。取り上げた棋譜は第52期王位戦挑戦者決定リーグ紅組での深浦九段との一戦。戦型は先手番で▲7五歩からの石田流を目指したのに対し、深浦九段が角を交換した為、完全な手将棋、乱戦となっています。そのため、定跡を勉強という訳にはいきませんが、内容はその時々の読み筋や心の動きなどを丁寧に書いていて、一気に読ませてしまいます。 将棋世界企画として「上田初美女王×新鋭四段三番勝負」が始まりました。その第1回目は、門倉啓太四段で、戦型は、先手門倉四段の角交換四間飛車です。将棋の内容や書き方はちょっと微妙ですが、企画自体は面白く、あと二回に期待したいです。 一ヶ月抜けた講座ですが、今月号にはあります。久保二冠の「さばきのエッセンス」は20回目。先月に引き続き「ゴキゲン中飛車対超速」。現在、プロの将棋に最も良く出てくる超速なだけに、この変化を詳しく解説してもらえるのは有り難いです。これが(単行本ではなく)月刊誌の良いところですね。木村八段の「これで矢倉は指せる」は31回目。今回も先月に引き続き後手△9五歩の変化を掘り下げています。 さらに不定期で時々載せられる終盤講座「逆転の心得」があります。今月号は、屋敷伸之編で8ページ。テーマ図を二つ取り上げ、解説しています(棋譜有り)。 付録は門倉四段の「記録係は見た!」です。副題に「NHK杯など多くの記録係を務めた新鋭棋士が目のあたりにした熱戦集」とあるように、一風変わった次の一手実戦問題集39問です。解説のエピソードも面白くお薦めの付録になっています。 |
2011年7月号(6月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「第69期名人戦七番勝負第3局」(羽生-森内)(観戦記:大川慎太郎氏)。他に特集として、「追悼・団鬼六さん」があり、写真や追悼文で17ページに渡って取り上げられています。 また、6月から始まる棋聖戦の挑戦者である深浦九段へのインタビュー記事が7ページに渡って書かれており、表紙の写真も深浦九段です。 プロ棋戦は他に、名人戦第4局(羽生-森内)(文:相崎修司氏)、第4期マイナビ女子オープン第3局(甲斐-上田)(文:国沢健一氏)、第22期女流王位戦第1局(甲斐-清水)(文:一瀬浩司氏)などがあります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。今月号に際だって面白い記事がなかった為、前回に引き続き強調文字です。第22回目で「5七銀左戦法の変遷」。1970年代、80年代、90年代と順に5七銀左戦法を検証しています。詳しい定跡を知っている人ほど面白く読めると思いますが、うろ覚えの人も知識を整理するのに良いでしょう。後半には現状と青野九段の話が載っています。 「イメージと読みの将棋観」の新9回目。今月のテーマは、(1)変則横歩取りの実戦、(2)主張をし合う矢倉戦、(3)村山流、手堅い勝ち方(4)米長、力の香、の4つ。今回はあまり興味を引くテーマはなかったです。ただ、(1)と(2)で、人により見解が違うことが面白かったですね。 「第21回世界コンピュータ将棋選手権」の模様を10ページに渡って載せています。一次予選、二次予選、決勝とボンクラーズが初優勝するまでのポイントだけを絞った記事で、3日間の概略を知るには良い記事です。 「第24期竜王戦のアマプロ戦総括」記事があります。二人のアマチュアがプロ3人抜きを果たしたと言うことで、このような記事になっている訳ですが、ポイントだけで棋譜がないのは残念ですね。上のコンピュータ選手権もそうですが、棋譜を楽しみにしている人も多いのでは、と思うのですが。 今回は講座がありません。棋譜も少ないですし、毎月勉強の為に買っている人にはやや不満の残る号となっているかもしれません。 付録は内藤九段の「1手・3手必至」です。但し、1手必至を出題後に3手必至を出すと言うのではなく、大部分が3手必至で、その中に1手必至を混ぜるという珍しい出題方法です。しかも問題もやさしいものからかなり難しい問題まで様々で、一応有段者向けと言っておきますが、級の人でも3手までですので考えて見て下さい。 |
2011年6月号(5月2日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「第69期名人戦七番勝負第1局」です。森内九段完勝で始まった名人戦ですが、棋譜だけを見てもあまり面白くない。その一戦を山岸浩史氏が面白く書いており、一気に読ませてしまいます。 特集は二つ。一つは「プレイバック2010」として、毎年行われる現役棋士が選ぶ2010年ベスト対局トップ10。最も面白く評価の上がった対局が10局。棋譜を並べたい人には良いでしょうし、普通に考えればこれがイチ押しの記事です。もう一つは、「振り飛車シリーズを語る」として久保二冠と菅井四段がダブルタイトル戦だった王将戦と棋王戦について一局一局を少しずつですが、感想を述べています。 プロ棋戦は他に、第4期マイナビ女子オープン第1局(甲斐-上田)(文:田名後健吾氏)、第60回NHK杯テレビ将棋トーナメント決勝(羽生-糸谷)(文:一瀬浩司氏)などがあります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。今回は人により面白かったかどうか意見の分かれるところかもしれません。第21回目の今回は、「5七銀左戦法の謎」。最近はほとんど見なくなってしまった昔の定跡です。しかしこの昔の定跡を独自の視点から解析し、面白く解説しています。この定跡をとことん研究した人達にとっては興味のある文章だと思います。 「イメージと読みの将棋観」の新8回目。今月のテーマは、(1)超速はゴキ中に勝つか?(▲5五歩を打つかどうかの課題局面)、(2)飯島流引き角戦法の是非、(3)史上最大の大ポカは?(石田-加藤戦)(4)大山-谷川の名局、の4つです。(3)と(4)は以前見たこともありましたので・・・最新形の(1)をどういう風に考えているかは興味深かったです。 「リレー自戦記」は窪田義行六段。取り上げた棋譜は第36期棋王戦予選。前期棋王戦で大活躍した窪田六段ですが、棋譜は「棋界メディア初登場の棋譜を採用」とのことで、瀬川四段との一戦です。戦型は角交換振り飛車。少し進んで、居飛車の左美濃〜玉頭位取りに石田流(立石流)の構え。開戦前から開戦後とプロらしい細かいやりとりが続き難しい将棋でしたが分かりやすく解説しています。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は19回目。先月に引き続き「ゴキゲン中飛車対超速」(今回から▲4六銀急戦を超速に名称変更)。今月のイメージと読みの将棋観でも取り上げられている▲5五歩の局面、それを今回は掘り下げています。木村八段の「これで矢倉は指せる」は30回目。今回も先月に引き続き後手△9五歩の変化を取り上げています。 付録は勝又清和六段の「新手ポカ妙手選2010年度版」です。毎年恒例の企画。39問と決まっている為どれを選ぶかは難しいでしょうが、一般の人にはほとんど目にしない棋譜だけに感心することの多い手もたくさんあります。 |
2011年5月号(4月2日発売)の内容と感想 |
今月の特集は、「第69期順位戦最終局」で、特にA級の最終日のことをあの「対局日誌」を連載していた河口俊彦七段が書いています。この日のことは知っている内容なので本来なら読み飛ばす所ですが、読み始めると面白くて一気に読んでしまいました。対局日誌も楽しみにしていた記事でしたが、やはり書く人が違うと内容の面白さがこうまで違うものなのかということがよく分かります。 もう一つの特集が、二人への「挑戦者インタビュー」です。もちろん、一人は名人戦挑戦者である森内俊之九段で、もう一人はマイナビ女子オープン挑戦者になった上田初美女流二段です。ちょうど4月から第1局が始まる二つのタイトル戦ですから旬の二人がどのような心境で臨むのか興味のある記事となっています。 また、特集ではないですが、毎年載せられる順位戦の昇級者喜びの声もあります。 他のプロ棋戦は、第36期棋王戦第3局(久保-渡辺)(文:大川慎太郎氏)、第4局(文:相崎修司氏)、第60期王将戦第5局第6局(久保-豊島)(文:上地隆蔵氏)などがあります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第20回目の今回は、「振り飛車の理想(と現実)」。四間飛車、三間飛車、向かい飛車、中飛車とそれぞれ詳しくその理想形を考えています。但し、いわゆる昔の振り飛車の形で、最近のゴキゲンや角交換振り飛車などは今回は取り上げていません。内容的にも、この講座としてはもっとも平易に語られており、初段くらいの人達にも分かりやすく参考になるでしょう。 「イメージと読みの将棋観」の新7回目。今月のテーマは、(1)それでも△5四歩戦法!(▲6八玉のゴキゲン外しに対する△5四歩について)、(2)印達の石田流(江戸時代の将棋から)、(3)現代の少年棋士の戦い(第11回小学生名人戦決勝鈴木大介八段の将棋)(4)升田幸三、鬼の攻め(昭和29年の灘-升田戦の終盤)、の4つです。個人的には、2から4まで実戦からの出題だっただけに興味のある局面ではないのですが、2と3の局面の捉え方、読み方が人によって違うことに面白さを感じました。 いつもは斜め読みしてたいして感想はない「月夜の駒音」ですが、今回は”決断”について。なかなか含蓄ある話でした。もっとも、最後の二行だけは賛同していないのですが。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は18回目。先月に引き続き「ゴキゲン中飛車対▲4六銀急戦」です。これはいくらでも書くことがあるでしょうが、今回は後手△3二金型について詳しく解説しています。木村八段の「これで矢倉は指せる」は29回目。今月から△8五歩型を離れ△9五歩型についての解説に入りました。 付録は藤倉勇樹四段の「二枚落ち必須手筋」です。定跡の解説ではないので、ある程度二枚落ちの定跡を知っている人が読むのに良いでしょう。基本的な筋から新手筋、指導対局に出た手法まで問題にし全部で39問です。駒落ち、特に二枚落ちを指す機会のある人には実戦で使える役に立つ付録となっています。 |
2011年4月号(3月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「神話のふるさと出雲市で最古の将棋盤が出土」と言うことで、米長将棋連盟会長と川原氏(島根県教育庁埋蔵文化財調査センター所長)の対談が一つ。二つ目は、第36期棋王戦第1局(久保-渡辺)これを負けた渡辺竜王が自戦解説しています。この実況は日曜日だったため、私はあまり見ていなかったのですが、この解説は非常に面白い。戦型も石田流の最新形(菅井新手)。これに対する竜王自身の考えもあり、必見です。 他に特集として、「第69期順位戦ラス前A級・C2レポート&各クラス経過報告」があります。 そしてこの中の一つの位置づけですが、「リレー自戦記」。佐藤康光九段で、取り上げた棋譜はB級1組順位戦11回戦で山崎七段との一戦。戦型は後手佐藤九段のゴキゲン中飛車に対し、先手は▲7八金形から角交換になり手将棋模様の将棋。自身の読みを正直にまじめに書いています。 ※やはり自戦記は、他の観戦記とはまったく別の面白さがありますね。今月号は赤字を渡辺竜王、佐藤九段の自戦記にするのに躊躇しませんでしたが、毎回面白い「突き抜ける!現代将棋」「イメージと読みの将棋観」「コンピュータは七冠の夢を見るか?」なども今月号は興味ある題材、さらに前回付録を赤字にした「受けと凌ぎ」の続編が付いていて、個人的にはここ半年あるいは一年を通じても一番面白かった月になっているような気がします。 他のプロ棋戦は、第60期王将戦第3局(久保-豊島)(文:椎名龍一氏)、第37期女流名人位戦第1局〜第3局(里見-清水)(文:西條耕一氏)、第4回朝日杯将棋オープン戦準決勝(羽生-郷田/渡辺-木村)・決勝(木村-羽生)(文:相崎修司氏)棋譜は決勝のみ、などがあります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第19回目の今回は、「パスは進化のエンジン」。今までと同じく教授が解説する形で話は進められていて、どのように説明したら良いか難しいのですが、将棋の技術を上げたいという人より将棋そのものを突き詰めたいという人にとって非常に面白い記事になっている、と言っておきます。内容的には難しいのですが、昨年の竜王戦第6局の話や大山のパスの話など興味深く解説しています。 「イメージと読みの将棋観」の新6回目。今月のテーマは、(1)窪田流玉頭銀は成立するか(居玉のままの玉頭銀)、(2)広瀬穴熊の極意(相穴熊のテーマ図)、(3)升田の角使い(対松浦八段との中盤戦)(4)初代家元同士の大乱戦、の4つです。個人的には、1と2が非常に面白かったです。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は17回目。ついに来ました「ゴキゲン中飛車対▲4六銀急戦」です。今、プロ間で最もはやっているゴキゲン中飛車対策。今回は基本形に至るまでの変化を解説しています。木村八段の「これで矢倉は指せる」は28回目。先月に引き続き▲3七銀戦法と穴熊のその4です。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の14回目。そして残念ですが今回が最終回となるようです。その最終回は、未解決の課題について。一つはコンピュータ将棋の序盤戦略。もう一つは「最適化」について。どちらも興味のある話です。 付録は武市六段の「受けと凌ぎ2」です。約1年前、「受けと凌ぎ」という付録が出ましたが、その続編ということですね。今回も同じように、合駒(応手)を考えたり、詰めろを逃れる問題の他、即詰みを逃れる応手を問うものなど39問あります。前回も書きましたが、類書のあまりない「希少付録」です。 |
2011年3月号(2月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は二つあります。その一つは、「第23期竜王戦」で、もう一つは「第60期王将戦」です。 竜王戦の方は、Part1として第6局を渡辺竜王の自戦解説で載せておりその後に2ページほどインタビュー記事、Part2として渡辺竜王が第1局から第5局を振り返っています。 王将戦の方は、豊島六段のインタビュー、久保王将のインタビューと続き、最後に「関西将棋はかく変わった」との題の元に関西将棋の変遷が書かれています。 他のプロ棋戦は、竜王戦の女流対男性棋士一斉対局(棋譜はありません。急所の局面とその解説だけです)と王将戦第1局(久保-豊島)(文:一瀬浩司氏)です。 巻頭カラーにもなっていますが、新春対談として米長邦雄会長と大内隆美さんの対談「公益法人化で将棋連盟はどう変わる!?」があります。 さらに新連載、「江戸の名人」(記:茶屋軒三氏、西條耕一氏)があり、今月号はその第一回「初代大橋宗桂の巻」です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第18回目の今回は、「後手番のメリット」。先月と同じく教授が解説する形で話は進められていますが、内容は、△3三角戦法が少しと大半は横歩取りについてです。横歩を取るメリット、デメリット、さらに中原囲いについて面白い分析をし、そうした所から現在どのように(横歩取りが)考えられているかまで詳しく現代将棋について語られています。 「イメージと読みの将棋観」の新5回目。今月のテーマは、(1)菅井新手の▲7六飛(石田流)、(2)大山康晴の変化技(対升田戦)、(3)長考の結果として得るものは、(4)魚釣りの歩。その評価は?、の4つです。個人的には、菅井新手の話と魚釣りの歩の評価が違っていたことに興味を持ちました。 「リレー自戦記」は飯塚祐紀七段。取り上げた棋譜は竜王戦4組昇級者決定戦の南九段との一戦。先手の矢倉模様に後手の南九段は陽動振飛車のような出だしから右四間での攻めになり、先手は結局左美濃におさまります。その局面局面で、どのように考えていたか、また考えるべきかが分かりやすく書かれていて、読んでいて面白かったです。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は16回目。先月に引き続き「ゴキゲン中飛車超急戦その2」です。今月は、▲5八金右から▲2四歩と飛車先を切る超急戦の最新の変化が書かれています。木村八段の「これで矢倉は指せる」は27回目。▲3七銀戦法と穴熊のその3です。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の13回目。今回は形勢判断や読み、構想力について片上六段と山本さんの対話形式で話が進んで行きます。 付録は「四間飛車穴熊の極意(下)」です。先月の続編とも言うべきものですが、定跡次の一手ではなく、実戦次の一手問題39問です。相穴熊戦でポイントとなる格言を作って、それにそった問題を出題しています。このヒントがあると、次の一手も当てやすいかもしれません。 |
2011年2月号(12月29日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「第23期竜王戦七番勝負第5局」(渡辺-羽生)(文:相崎修司氏)「第6局」(文:西條耕一氏)があり、本文には「第4局」(文:池田将之氏)もあり竜王戦三連発です。 また、今月号には特集として「里見香奈女流三冠」のことが取り上げられています。そしてその1は巻頭カラーで「里見香奈女流三冠へのインタビュー記事」。その2は「成長の軌跡」として村山慈明五段と佐藤天彦五段の座談会形式で話が進められています。 他のプロ棋戦はJT将棋日本シリーズ決勝(羽生-山崎)(写真と文:相崎修司氏)のみ。また、棋譜は載っておらず、急所の図面と解説だけですが、第60期王将戦リーグについて、「二十歳の挑戦者、豊島登場」として12ページにわたってリーグのことが書かれています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第17回目の今回は、「一手損のパラレルワールド」。先月からの教授と生徒の会話形式が今月も続いており、それで一手損角換わりの説明がなされています。但し、内容はかなり高度で難しい。逆に、ある程度手順を知っている人には役に立つ面白い記事になっていると思います。なお、後半にはウソ矢倉についても触れられています。 「イメージと読みの将棋観」の新4回目。今月のテーマは、(1)ゴキゲンはずしその2(▲7六歩△3四歩に▲6八玉と指すことについて)、(2)横歩取り松尾流、(3)カミソリ流勝浦、驚異の逆襲構想、(4)将軍家治、看寿を追い込む、の4つです。 「リレー自戦記」は飯島栄治七段。取り上げた棋譜は竜王戦2組昇級者決定戦の島九段との一戦。引き角戦法の創始者として有名ですが、本人も書いているように10年間でこれほど大きな対局はなかったそうです。初の1組昇級と七段昇段をかけた一局で戦型は相掛かりでした。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は15回目。ゴキゲン中飛車の解説に移り二回目ですが、今回は超急戦についてです。プロの将棋において以前は良く、今でも時々見るこの超急戦についての基本からその変化が書かれています。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は26回目。先月に引き続き▲3七銀戦法と穴熊です。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の12回目。今回は「コンピュータ将棋の将来」をテーマにして語られており、バックギャモンと囲碁のソフトについても話が出てきています。両方のゲームを知っている人には面白い内容かもしれません。 付録は「四間飛車穴熊の極意(上)」です。定跡次の一手での37問。普通の付録、と言ってしまえばそれまでですが、書いているのが今、旬の広瀬王位。出ている局面もまさに旬の局面ばかりでこれから広瀬王位の将棋を見る上においても参考になるので、あえて赤字としました。 |
2011年1月号(12月3日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「第23期竜王戦七番勝負第3局」(渡辺-羽生)(観戦記:大川慎太郎氏)と「第18期大山名人杯倉敷藤花戦第2局3局」(里見-岩根)(写真・文:池田将之氏)です。竜王戦の方は実況を見ている人にとって新しい内容はあまりないものの、一つだけ感想戦後の話をさらに修正していた部分がありました。 他のプロ棋戦は竜王戦第2局(渡辺-羽生)(記:相崎修司氏)、倉敷藤花戦第1局(里見-岩根)(記:古川徹雄氏)、女流王将戦第2局3局(清水-里見)(記:椎名龍一氏)、新人王戦第3局(阿部-加來)(自戦記:阿部健治郎四段)です。 「リレー自戦記」は糸谷哲郎五段。取り上げた棋譜は棋王戦挑戦者決定トーナメントの羽生名人との一戦。3戦目にして念願の初勝利ということで、そのうれしさが伝わってきますが、内容は研究の行き届いた横歩取り△8五飛最新形。「こんな所まで研究しているんだ!」という驚きと、羽生名人の”常識にとらわれない読み”に驚いた一局です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第16回目の今回は、「相居飛車30年戦争」。今後、横歩取りや一手損角換わりを解説して行く前に、まず戦法の変遷を解説しておきたいと言うことです。そして、最初に佐藤九段と鈴木八段へのインタビュー記事があり、続いて教授と生徒の会話形式で相居飛車の30年を振り返っています。 「イメージと読みの将棋観」の新3回目。今月のテーマは、(1)ゴキゲンはずし(飛車先を決めてしまうことについて)、(2)4手目の奇手△2四歩、(3)夢の中の将棋、(4)谷川、圧倒の読みきり(昭和56年に19才の谷川と中原名人の終盤戦)。 (1)の戦法に対する各棋士の考え方と(4)の将棋のすごさが面白かったです。 中カラー特集が二つあり、一つ目は、「将棋・囲碁トップ対談」として谷川浩司九段と坂井秀至碁聖の対談記事が9ページあります。坂井碁聖は、医師の免許を持ちながら、28才でプロ棋士になったという異色の経歴の持ち主。将棋囲碁の両方を知っている人には興味のある記事でしょう。 もう一つは、「山形が生んだ大器」ということで、阿部健治郎新人王へのインタビュー記事が5ページです。 時々掲載される読切講座「逆転の心得」が戸辺誠六段の解説で載っています。テーマは3つながら、その時の読みを詳しく解説。じっくり読んで見て下さい。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は14回目。今回からゴキゲン中飛車の解説に移っています。最初はゴキゲン中飛車の基本からです。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は25回目。▲3七銀戦法と穴熊です。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の11回目。今回から視点をちょっと変えた話になるようです。そしてまずはコンピュータ将棋の歴史から話が進められています。 付録は「伊藤果に挑戦!」として5・7・9手の詰将棋60問です。各20問ずつ「タイムトライアル60」として時間を計ることで、大まかな棋力の目安もあります。”伊藤果の詰将棋”というとかなりひねった問題を考えてしまいますが、これはそれほど”妙な”詰将棋はなく、形もきれいなものが多いです。とはいえ”果の詰将棋”です。一つ一つにちょい辛の一手が入り、結構楽しめる詰将棋集になっているのではと思います。 |
2010年12月号(11月2日発売)の内容と感想 |
今月の巻頭カラーは、「第23期竜王戦七番勝負第1局」(渡辺-羽生)(観戦記:西條耕一氏)です。但し、せっかくの開幕局なのに、棋譜と記者による観戦記のみ。他には1ページほど竜王戦の記録を振り返ったコラムがあるだけです。 プロ棋戦は王座戦第2局(羽生-藤井)(記:池田将之氏)、王座戦第3局(羽生-藤井)(観戦記:大川慎太郎氏)の他、羽生森内戦が100戦目と言うことで、この二人の王座戦挑戦者決定リーグが取り上げられています。さらに、新人王戦第1局(阿部-加來)(棋譜のみ)と第2局(文:相崎修司氏)、追悼佐藤大五郎九段として、第24期順位戦の佐藤-中原戦があります。 純粋なプロ棋戦ではありませんが、「清水女流王将vsあから2010」の棋譜と記事が9ページあります。週刊将棋だけでは分からなかった内容もあり、必見ですが、せっかくなら「コンピュータは七冠の夢を見るか?」(←今月は記事自体がありません)でも取り上げてさらに様々な角度からの分析を見たかったですね。 「イメージと読みの将棋観」の新2回目。今月のテーマは、(1)ゴキゲン中飛車最前戦(▲4六銀急戦基本形の一つ)、(2)佐藤流陽動振り飛車、(3)力戦調相居飛車の中盤(渡辺明小学生名人誕生の一局)、(4)昭和60年のタイトル戦終盤の局面(米長-中原戦での作ったような鮮やかな終盤)。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第15回目の今回は、「ゴキ中対策と角換わり問題」と題して、ゴキゲン中飛車に対する居飛車の対策最前線から。角の引き場所を残す工夫した居飛車穴熊や超速タイプの▲3七銀急戦、5八金右急戦が三大対策で、他にも少し角交換型、▲7八金型、▲4七銀急戦に触れられています。 そして前回に続いて阿部健治郎四段へのインタビュー記事。聞いていることは、ゴキゲン中飛車への対策と角換わり腰掛け銀について。この角換わり腰掛け銀の話は、指さない人でもプロ将棋を観戦する人にはその変遷が分かりすごく役に立つでしょう。 今月号から隔月連載で、団鬼六氏の「鬼六おぼろ談義」が始まりました。読み物好きな人や昔からこの人の著作を読んでいる人には楽しみな連載でしょうが、好き嫌いは分かれそうです。 あまりここでは取り上げていませんが、「感想戦後の感想」はもう64回目で広瀬王位が登場です。三段リーグの話、順位戦に参加してからの話など知らないことも多く面白かったですね。 「里見香奈 三番勝負!!」は五回目。Extra Roundとして佐藤康光九段との対局です。この企画、評判が良かったのでしょうし、前回、屋敷九段に勝てそうだっただけにもう一番とのことです。内容は、女流トップと男性トップとの力の差がどの程度なのかよく表現された一局だったと感じました。 「リレー自戦記」は西川和宏四段。取り上げた棋譜は新人王戦準決勝の加來アマとの一戦。敗戦局、それも「信じられない大逆転負け」を取り上げるのはかなり辛いと思いますが、それだけに非常に面白い内容になっています。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は13回目。2手目△3二飛戦法の現状として、現在の先手居飛車の対策が書かれています。そしてそれに対する後手△3二飛側の指し方。現在は、先手の作戦もいろいろ工夫されてはいるものの簡単に良くなる順はないので試してもらいたいと結んでいます。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は24回目。今回も▲3七銀戦法で最新の変化を取り上げています。 付録は「広瀬章人王位の軌跡」。王位戦獲得記念としてこれまでの公式戦から好局を取り上げた実戦次の一手です。問題数は39問。はしがきに「ただの定跡次の一手では芸がないので、その将棋に関連したキーワードを一つ取り上げ、フリートークのような形で語る形式にしました。」とあるように、ミニコラム付きです。これはなかなか楽しい思いつきですね。 ※今月も赤字は迷いました。ダントツで面白かったものがなく、上記赤字の他に、「感想戦後の感想」や「突き抜ける!現代将棋」、「里見の三番勝負」の五つは個人的には同じくらいの面白さでした。反面、竜王戦第1局の取り上げ方に大いに不満も残りましたね。 |
2010年11月号(10月2日発売)の内容と感想 |
今月の目玉は、「第23期竜王戦七番勝負開幕直前特集」です。第1部は、挑戦者決定三番勝負第2局(羽生-久保)を羽生名人自身の自戦解説で、第2部は七番勝負へ向けての渡辺竜王と羽生名人へのインタビュー記事、そして第3部は緊急座談会として広瀬王位、佐藤九段、鈴木八段の三人に、シリーズの見どころと展望を語ってもらっています。 プロ棋戦は王位戦第6局(深浦-広瀬)があり、これを広瀬新王位の自戦記で載せています。この第6局はまさに激闘と呼ぶにふさわしい一戦で、私も実況で見ていただけにもう一度自戦記で読めるのはうれしいですね。その時の形勢判断や気持ちもよく書かれています。 他には、王座戦第1局(羽生-藤井)(記:一瀬浩司氏)、王位戦第5局(深浦-広瀬)(記:武市三郎六段)があります。また、それぞれ2ページずつしかないですが、大和証券杯決勝(久保-森内)、銀河戦決勝(佐藤-丸山)、達人戦決勝(佐藤-谷川)の棋譜もあります。 「イメージと読みの将棋観」が新しくなって始まりました。この新シリーズで登場するのは、渡辺竜王、谷川九段、佐藤九段、森内九段に新メンバー二人、久保二冠と広瀬王位です。確かに十分で豪華なメンバーですが、「羽生名人が外れたのか」という不満はありそうです。もっとも名人を入れたとして、あまり外したい人もいませんが。 そして今月のテーマは、(1)稲葉新手は成立するか?(先手石田流の新手)、(2)同型角換わりに結論は出るか?(何度も出現している終盤の局面)、(3)ゴキゲン中飛車最前線(超急戦の一変化)、(4)升田幸三のスーパー消費時間(升田-加藤戦)の4つです。テーマの選定も良く、今月は面白く読みました。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第14回目の今回は、「注目の最新形をチェック」と題して、いくつかの最新形を取り上げています。最初は、広瀬穴熊で、今まで悪いと言われていた相穴熊での振り飛車穴熊を広瀬王位の指し方を取り上げながら検証。二つ目は藤井矢倉。そして三つ目は「石田流の楽しみ方」。久保二冠を中心に石田流を解説。最後は、「大型新人の研究と意見」として昨年12月にデビューした阿部健治郎四段にインタビューしています。 「リレー自戦記」は青野照市九段。取り上げた棋譜は王座戦挑戦者決定トーナメント準決勝(対藤井九段戦)。四間飛車に対する急戦、鷺宮定跡。青野九段と言えば、鷺宮定跡などの急戦定跡の他に、「勝負の視点」など読み物でも面白い著書は多いですね。それだけにこのリレー自戦記も大変面白いものになっています。負けた将棋ですが、鷺宮定跡の新手を披露。一見の価値ありです。 「里見香奈 三番勝負!!」の四回目。屋敷九段との対戦で戦型は後手里見のゴキゲン中飛車に先手の屋敷九段は3七と7七から銀を繰り出す急戦。非常に面白い一局になっています。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は12回目。2手目△3二飛戦法が始まり、今月は「2手目△3二飛と急戦」です。居飛車から超急戦で来られた時の対応策で、これを知っていないと指せません。木村八段の「これで矢倉は指せる」は23回目。今月は▲3七銀戦法の攻防。今回から▲3七銀戦法の核心に入るということです。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の10回目。今回は目前に迫った「清水女流王将対コンピュータ」の特別対局直前特集として、コンピュータへの勝ち方、欠点などを解説しています。何度も指しているとおぼろげに分かってくることではありますが、プログラマの人の話を聞くとより正確に理解できます。 付録は定跡次の一手「対後手三間飛車 いきなり早仕掛け」。副題に「ライバルをギャフンといわせる居飛車の超急戦策!」とあるように、後手の三間飛車に▲4六歩から▲4五歩の超早仕掛けを39問の問題にして解説しています。 ※今月は面白い記事が多かったですね。個人的には、広瀬王位の自戦記、青野九段のリレー自戦記も赤字にしたかったお薦めの記事でした。 |
2010年10月号(9月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は先月の有吉九段に続き、引退した大内九段について。「”怒濤流”わが勝負人生」と題して子どもの頃から今までの話。 プロ棋戦は第51期王位戦第3局(深浦-広瀬)(写真・文:池田将之氏)と第4局(観戦記:大川慎太郎氏)があります。他には竜王戦挑戦者決定戦第1局(久保-羽生)(文:西條耕一氏)がありますが、なんと文と急所の図面のみで棋譜なしです。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第13回目の今回は、「十六世名人、桂を語る」として、多くは中原十六世名人の話。桂が活躍した棋譜を取り上げ解説しています。その話が大半ですが、前半には少し谷川と羽生の妙手の桂も紹介しています。 今回、特別講座として、所司和晴七段の「振り飛車穴熊対策8筋交換戦法を指してみよう」があります。王位戦第2局で深浦王位が採用した振り飛車穴熊対策です。昔からある戦法ですが、確かに見る機会は少なく、解説本もほとんどないと思いますので、8ページですが貴重な講座でしょう。 講座ではもう一つ、読切講座「逆転の心得」があります。4回目の今回は、村田顕弘四段が書いています。実戦を使った解説でやや難しいかもしれませんが、じっくり考えながら解説を読んでみて下さい。 「里見香奈 三番勝負!!」の三回目です。前回の続きで、先月、「一局を二回に分けられては」と苦情を書きましたが、二回に分けたいほどの内容だったという風に理解しましょう。盤に並べたい一局で、今月のお薦め記事と書いておきます。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は11回目。石田流の解説が終わり、今回からは「2手目△3二飛戦法」についての講座です。その初めての回は、なぜこの戦法が登場したかと言うことですが、従来の出だしではなぜいけないのかの解説だけでページが埋まってしまいました。しかし、基本的な考えから順序立てて解説されてもらえそうで来月以降さらに期待できそうです。木村八段の「これで矢倉は指せる」は22回目。引き続き▲5八飛戦法について。今回はその壁として、後手の最善策を解説しています。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の9回目。今回のテーマは「合議」。去年、文殊がコンピュータ将棋大会に出て良い成績をあげたことで有名になったその合議についての解説です。その中で、直接内容とは関係ないのですが、10月に行われる清水女流王将との対局にもこの合議が使われるとの話があり、コンピュータ史上最強となると言っています。 付録は北島忠雄六段の「駒の輝き」。副題に「歩から玉まで、駒の能力を発揮する手筋問題集」とあるように、手筋の問題を39問取り上げたものです。レベル的には初段前後を想定したものとなっていますが、級位者はじっくり考えて、有段者はひと目で解いていくのにちょうど良いかもしれません。 |
2010年9月号(8月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は引退した有吉九段について。「”火の玉流”棋士人生を語る」と題して有吉九段の話の他、谷川九段、増田六段、内藤九段の話とA級順位戦での有吉-谷川戦の棋譜があります。師である大山十五世名人の当時の話が最も多いのですが、最後の方で語られている「いま、将棋が面白い」という所では、飽くなき探求心に本当に感心させられます。 プロ棋戦は大きなタイトル戦二つ。第81期棋聖戦は「羽生、100回目のタイトル戦」として第3局(羽生-深浦)(観戦記:国沢健一氏)、第51期王位戦は「”振り穴王子”広瀬、大舞台に挑む」として開幕の第1局(深浦-広瀬)(記:大川慎太郎氏)があります。特にこの王位戦の方は、記は大川氏になっていますが、感想は自戦解説として広瀬六段の話で書かれています。そのため、実況になかった内容もあり、興味深いです。他に、女流王位戦第4局(清水-甲斐)(観戦記:東和男氏)があり、その後に、新女流二冠である甲斐智美女王・女流王位へのインタビュー記事があります。さらに、朝日杯将棋オープン戦1次予選プロアマ一斉対局(レポートと急所の図面と解説のみ)もあります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第12回目の今回は、「大棋士たちの”名桂”」。近年登場した新戦法には桂が深く関係している、ということで、桂を中心に昔からの名場面をたくさん取り上げています。 「リレー自戦記」は阪口悟五段。取り上げた棋譜は王座戦本戦トーナメント1回戦(対森内九段戦)。将棋の内容は、熱戦で面白い将棋でした。 「里見香奈 三番勝負!!」の二回目です。今回対戦したのは橋本七段。但し、なんと橋本七段とのこの対局、今月と来月号の二回に分けられています。里見女流二冠の鋭い仕掛けとその後の好手で優勢になり、さあこの後どうなる?と言うことですが、さすがに月刊誌で二回に分けられると次に読む時には忘れてしまいそうです。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は10回目。石田流の講座は今回が最後だそうです。そしてその内容は、4手目の△5四歩について。この手についてはそれでも▲7八飛と回る変化と▲6六歩と突く変化があり、どちらも基本的なところを解説しています。木村八段の「これで矢倉は指せる」は21回目。引き続き▲5八飛戦法について。今回はその強敵。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の8回目。今回のテーマは「並列化」についてで、やや専門的な内容でした。 付録は宮田敦史五段の「穴熊 受けのテクニック」です。問題は基本的なものから高度な技術を要した難しいものまで様々ありますが、穴熊における受けのテクニックを身に付ける39問となっています。 |
2010年8月号(7月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は再び名人戦。但しちょっと趣向を変え、「羽生善治、今シリーズを語る」と題してインタビュー記事20ページです。横歩取りの名人戦以降の新手についての話などもあり、特に名人戦と横歩取りについて興味のある人には面白いでしょう。 プロ棋戦は棋聖戦第1局(羽生-深浦)(観戦記:相崎修司氏)、女流王位戦第2局(棋譜のみ)、第3局(清水-甲斐)(観戦記:塚田泰明九段)です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。第11回目の今回は、「ブレークスルーは「桂」が担う」と題して桂の活躍を中心に、昔から今に至る棋譜を掘り起こしています。初のスズメ刺しである升田-原田戦から始まり、矢倉の大きな流れ、さらに角換わりや横歩取り、相掛かり、振り飛車まで、桂の再評価という立場からその変遷を見ており、いつもながら面白く一気に読ませてしまいます。 「リレー自戦記」は神崎健二七段。取り上げた棋譜は竜王戦5組決勝(対戸辺六段戦)。これに勝てば本戦出場という大きな一番。最後の方で、「ウルトラマンと怪獣」「旧時代棋士の雑感」とあったのには、時代の流れでやむを得ない事とはいえちょっと寂しかったです。 今月号から(たぶん)三回なのでしょう、「里見香奈 三番勝負!!」が始まりました。対戦する三人は、永瀬四段、橋本七段、屋敷九段。まず最初の今月号では永瀬四段との対局が載せられています。戦型は先手升田式石田流(里見)対居飛車。なお、永瀬四段は振り飛車党ですが、石田流に対してだけは居飛車を持つ、と書かれています。将棋の内容は・・・何というかちょっと言葉に表せないようなものです。里見の仕掛け(新手)とその後の攻め方も面白いですが、永瀬四段の受け将棋もかなり特徴のある将棋ですね。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」は終わりましたが、「勝利チーム「関西」に聞く」として6ページほどこの戦いを振り返った記事があります。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は9回目。今回は石田流対居飛車穴熊。居飛車穴熊に対する石田流の基本的な方針が示されている他、先月号の渡辺竜王との一局も振り返っています。木村八段の「これで矢倉は指せる」はついに20回目。今回は▲5八飛戦法について。 さらに短期講座として先月載っていた鈴木大介八段の「逆転の心得」が今月号にもあります。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の7回目。前回のコンピュータ将棋選手権の話から機械学習についての解説。稲庭将棋の丸山スペシャルについての話もあり面白かったです。 付録は豊川孝弘七段の「阪田流向かい飛車戦法」。阪田流向かい飛車が一部で脚光を浴びているということで取り上げられました。問題にしたのは、昔の阪田三吉の実戦譜から現代の阪田流向かい飛車まで。全部で39問ですが、簡単にポイントを知るには良いでしょう。 |
2010年7月号(6月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は名人戦が終わった為、それらを振り返る「羽生善治名人、スピード防衛!」です。巻頭カラーに第4局を持ってきて大川慎太郎氏の観戦記で、他に第3局の観戦記を伊藤能五段が、第2局の観戦記(文章)を梅田望夫氏が書いています。実況を見ていない人には並べて見る価値があるでしょう。 その巻頭カラーにはもう一つ、「ツートップ、関西新時代を語る」として久保二冠と谷川九段の対談が載せられています。昔の関西と今の関西の違い。二冠になった久保と谷川の対談だけに面白い記事です。 プロ棋戦は名人戦がある為、他には女流王位戦第1局(清水-甲斐)(観戦記:一瀬浩司氏)だけでした。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」、第10回目で「ゴキ中愛の声を聞け!」との題に「何だ?」と思いましたが、インタビュー記事でまとめられています。そのインタビューに出てくる棋士は、戸辺、佐藤和、深浦、近藤の四人です。内容は面白く読みました。 「リレー自戦記」は初タイトルを取った甲斐智美女王(当時女流二段)で、取り上げた棋譜もそのマイナビ女子オープン第3局(対矢内女王戦)。実況で見ている時とまた当事者の感想は違っていることも多いので興味深かったです。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」はついに最終の大将戦です。まるで作ったようによくここまで来たな、と言った感じでしょうか。しかも、戦型は先手久保二冠の石田流に、後手の渡辺竜王は銀冠。その勝負は・・・・・これはすごい戦いでした。実況でやっていたら大盛り上がりだったでしょう。今月号イチ押しの記事であり棋譜です。 久保二冠の「さばきのエッセンス」は8回目。石田流対左美濃です。木村八段の「これで矢倉は指せる」は19回目。引き続き矢倉▲3七銀戦法の基礎知識と最新定跡。今月はこの二つの他に、短期講座として3月号にあった「逆転の心得」が講師を鈴木大介八段にして再び載せられています。谷川九段の「寄せのセオリー」が今月で最終回とのこと。こうした終盤の手筋講座は実戦で即役立つ為、続けて欲しいですね。その際、講師は谷川九段でなくても良いかなと思います。アマでも金子タカシ氏のように問題を作る人がうまい人もいますので、個人的には、谷川九段には「光速の終盤術」のような自戦記を元にした講座を書いてもらいたいです。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の6回目。今回は、第20回世界コンピュータ将棋選手権のレポートです。毎回面白いソフト特有の思考法が記事になっていて興味があるのですが、今回はレポートなので残念ながらそう言ったことはありませんでした。 付録は「飯島流引き角戦法」。第16回升田幸三賞を受賞した飯島流引き角戦法の定跡次の一手問題を39問、本人の飯島六段が書いています。「飯島流引き角戦法」は単行本が二冊出ていますので、じっくり勉強するには単行本を買われた方が良いですが、どのような感じか、簡単に狙いを知るには良い教材です。 |
2010年6月号(5月1日発売)の内容と感想 |
今月は、「第68期名人戦七番勝負開幕!」です。その第1局が山崎浩史氏の観戦記で書かれています。2局終わった時点では、名人戦の盛り上がりもそれほどなくそのまま終わりそうな雰囲気がありますが、実況になかった感想やその他の記事は面白く、書き方によってずいぶん違うものだと感じました。 今回は、'09年度が終了したと言うことで、「将棋大賞、升田賞、名局賞の発表」や、「プレイバック2009」と題して現役棋士が選ぶ9年度の名局ベスト10が棋譜と簡単な解説付きで載っています。 プロ棋戦は久保利明二冠が特集で組まれています。棋王戦第5局(久保-佐藤)(観戦記:相崎修司氏)の解説の他、王将戦、棋王戦を久保二冠が振り返っています。他には、マイナビ女子オープンの第1局(矢内-甲斐)(観戦記:一瀬浩司氏)第2局(観戦記:田名後健吾氏)があります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」、第9回目で「ゴキゲン対策最前線」の持久戦編2回目です。講座解説の前に、久保二冠へのインタービュー記事があります。講座は、▲7八金のゴキゲン中飛車対策が5ページ。続いて「進化する先手中飛車」としてこの解説に6ページさかれています。 「イメージと読みの将棋観」、続編の6回目。いつもは、4局のうち1局は昔の実戦が多かったのですが、今回はすべて定跡の一局面です。それは1.急戦向かい飛車を誘う作戦、2.横歩取り△2三歩は成立する?、3.対ゴキ中郷田流、4.対四間▲4五歩早仕掛け、の4つ。それぞれの棋士の考え、先手勝率のイメージ、同じトッププロでも考えが違い非常に面白いです。 「リレー自戦記」は遠山雄亮四段。取り上げた棋譜は棋聖戦決勝トーナメント1回戦(対久保棋王戦)。角交換の石田流に久保棋王が居飛車で迎え撃っています。勝負も内容も面白く読みました。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」は10戦目まで来ました。東の渡辺竜王に山崎七段が挑みます。一手損角換わりの出だしから後手の渡辺竜王が6手目に角道を止め、△4二飛と振り飛車にしました。その後、出だしからは考えられないような、相振りで相穴熊です。熱戦で見応えがありました。 今月は、「さばきのエッセンス」と「これで矢倉は指せる」がありません。連載講座は谷川九段の「寄せのセオリー」だけとなっています。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の5回目。今回は、詰将棋専用の思考法について。これも面白い記事です。 付録は「新手ポカ妙手選」2009年度版です。いつものように39問しかありませんが、実況で見ていたものあり、すごい一手ありで(問題集としては難し過ぎますが)、しばらく考えてページをめくると楽しいですね。 ※今月は、文句なしに「これがお薦め、赤太字!」というものがなくて迷いました。そのかわり、どれもほどほどに面白く、平均点をちょっと超えた記事ばかりという印象です。 |
2010年5月号(4月3日発売)の内容と感想 |
今月は、「第68期順位戦特集号」です。A級からC2まで全クラスのレポートの他、名人への挑戦が決まった三浦八段へのインタビュー記事もあります。特に各クラスのレポートは単なる棋譜解説だけでなく、悲喜こもごもの人間模様が描かれており興味深く読みました。 さらに、「関西棋界みてある記」も今月号は順位戦の話。その後には、「昇級者喜びの声」もあります。 プロ棋戦は上記順位戦の他には、王将戦第5局と第6局(羽生-久保)(観戦記:相崎修司氏)、棋王戦第3局(観戦記:大山慎太郎氏)第4局(写真と棋譜のみ)、そして、NHK杯の決勝戦(羽生-糸谷)がありました。特に最後のNHK杯決勝は僅か6ページですが、放送にはのせられなかった感想戦での様々な変化が書かれており非常に面白かったです。最終盤「幻の逆転手」があったと言うことで、その辺りの変化、ページ数は少ないながらも個人的には今月号で一番面白く、また驚いた記事です。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」、第8回目で「ゴキゲン対策最前線」の持久戦編1回目です。最初は角交換後の持久戦で向かい飛車から打開する△2五桂ポン戦法。次に升田幸三賞特別賞を受賞したという故真部九段の「幻の△4二角」について。この話については当時の話から興味深いエピソードが描かれています。さらに穴熊の登場、超速▲3七銀戦法とまさに最新のゴキゲン中飛車の動きが順序立てて非常に分かりやすく述べられています。この知識をしっかり持って、その上で今後のプロ棋戦を見て行くとより面白く見られるでしょう。 「イメージと読みの将棋観」、続編の5回目。今回は、1.相石田流、2.後手6手目△9五歩戦法、3.相掛かりのハメ手、4.渡瀬荘次郎の名局(香落ち)、となっています。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」は第9戦。ついに東軍は大将「渡辺竜王」の登場です。ここで負けると西軍の勝利で終わってしまいますが、さて。さらに先日、NHK杯でも糸谷五段と対戦したテレビ放送がありその雪辱戦でもあります。そして戦型はそのNHK杯と同じ一手損角換わりに早繰り銀です。 久保棋王の「さばきのエッセンス」、第7回目の今月は、石田流対棒金。個人的には石田流に棒金ならさばけるというイメージがあるのでそれほど嫌ではないのですが、棒金されるのが苦手という人もアマの人達の中には結構いるかもしれません。その最新(久保新手)の指し方が載っていますので、読んで見て下さい。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は18回目。引き続き、矢倉3七銀戦法の基礎知識と最新定跡です。 付録は「内藤國夫の一手必至」。一手必至の問題が全部で39問。簡素な形のものが多くこれは良いです。アマ四段以上ならひと目(30秒位)で、初段前後なら2〜3分で、級位者なら時間に関係なく解けたと思うところまで考えて答え合わせしてみて下さい。中には「どっちが勝ち?」ではないですが、ちょっと引っかかりそうな問題も混ざっていますので、有段者でも全問正解は結構難しいかもしれません。上記のように時間を制限すれば全問正解を目標に挑戦できますので、級位者から高段者まで誰にでも使えるお薦めの付録です。 |
2010年4月号(3月3日発売)の内容と感想 |
今月のトップは、「棋王戦第1局」です。五番勝負が久保棋王-佐藤九段の間で始まり、上海にて開幕となりました。その第1局を、佐藤康光九段の自戦解説で載せています。やはりタイトル戦の自戦解説は良いですね。実況を見ていても分からなかった読みや心の動きなど、改めて読み直し面白かったです。 プロ棋戦は、他に王将戦第3局(羽生-久保)(観戦記:椎名龍一氏)、女流名人位戦第1局〜第3局(清水-里見)(観戦記:西條耕一氏)、朝日杯将棋オープン決勝(羽生-久保)、マイナビ女子オープン挑戦者決定戦(甲斐-斎田)などです。 また、棋譜はなく部分図だけですが、順位戦ラス前レポートとしてかなりのページが割かれています。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」、今回は第7回ですが、ついに来ました「ゴキゲン対策最前線(急戦編)」。この最初に、「あまりにも動きが激しいので、いつなんどき新手や新構想が生まれ、結論がくつがえされるやもしれません。」とありますが、だからこそ、こういう企画を月刊誌でやって欲しいのですよね。ページ数は19ページ。いつものように非常に分かりやすく、特にゴキゲンを指す人、プロ棋戦に興味ある人ならこの記事だけでも一冊分の価値があるでしょう。 「イメージと読みの将棋観」、続編の4回目。今回取り上げられたのは、1.先手石田流には何で臨む?、2.ガンギはなぜ人気がない?、3.矢倉3七銀戦法の最新形、4.大山-升田の名人戦、となっています。個人的には先月号より興味のある題材で面白かったです。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」は第8戦。「西の怪物、襲来」糸谷五段の登場です。阿久津七段との対戦で戦型は横歩取り△3三角戦法です(△8四飛型)。 「リレー自戦記」は先月特集が組まれた豊島将之五段。取り上げた棋譜は昇級の一局でもあるC2、8回戦の順位戦(対室岡七段戦)。戦型が藤井システムの居飛車急戦だったこともあり興味深く読みました。かなり詳しい読みの内容も入っていて勉強にもなります。 久保棋王の「さばきのエッセンス」、今月は、升田式石田流の最新定跡。「イメージと読みの将棋観」のテーマ1と同じ図が最初にありますので両方を読み比べると面白いでしょう。 木村八段の「これで矢倉は指せる」はもう17回目です。今回は、矢倉3七銀戦法の基礎知識と最新定跡。 短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の4回目。今回は、「なるほどなぁ〜!」という感じの記事です。それは、将棋の”パス”は、人間なら悪手ですが、コンピュータにとってパスは悪手にならない、と言うもの。その理由は・・・ひと言で書けないのでとりあえず読んで下さい。 付録は中村修九段の「2手目△7四歩の世界」。2手目に△7四歩と突く変化についての問題を39問。まとめられた本もなく、最初から力戦形になるため、この付録だけでは少なすぎますが、指し方の指針にはなるでしょう。一通り読んで、試して見るのも面白いかもしれません。 |
2010年3月号(2月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は「徹底解剖!豊島将之」です。若手有望株とは言え、正直これだけ大々的に特集を組まれたのには驚きです。まあ、いかにもマニアックな本であればこういうのもありかなとは思いますが。そしてその中身は、将棋界に興味を持っている人なら誰でも楽しめるでしょう。(1)若手棋士2人(村山慈明五段・佐藤天彦五段)の対談。(2)学究派棋士2人(三浦八段・宮田五段)の対談。(3)先輩棋士(山崎七段)へのインタビュー。(4)豊島五段本人へのインタビューという4部構成になっています。 プロ棋戦は、王将戦第1局(羽生-久保)のみ(観戦記:相崎修司氏)。年末年始で対局が少なかったのでしょうか。その分、他の読み物がたくさんある感じです。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」、先月、相掛かりについて「中原誠へのロングインタビュー」という形を取りましたが、今回もそれに続いて、「相掛かりに夢を追う男たち」と題し、多くの人にインタビューしています。登場しているのは、羽生、佐藤をはじめ、中座、飯塚、山崎、野月、飯島、室岡など相掛かりを指す人達がたくさん出てきます。構成が良いのか質問が良いのか、相掛かりに興味がないのに、他の場所に載っていたインタビュー記事より面白く読んでしまいました。 「イメージと読みの将棋観」、続編の3回目。今回取り上げられたのは、1.里見-村山戦の千日手局面(石田流)、2.一手損角換わりストレート棒銀、3.正調角換わり棒銀(テーマ2との比較)、4.昔の実戦、となっています。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」は第7戦。3人抜きの稲葉四段に対するのは、阿久津七段。力戦調の将棋になりました。 今月だけの読み切り講座「逆転の心得」。深浦王位が、自身の対局を4つのテーマに分けて解説しています。全部で13ページとかなりありますが、やや難しい内容でしょうか。 「リレー自戦記」は金井恒太四段。取り上げた棋譜はC2、6回戦の順位戦(対室岡七段戦)。その将棋自体、かなりの熱戦で読んでいて面白かったです。 久保棋王の「さばきのエッセンス」、先月、升田式石田流の基礎知識について書かれていましたが、今月はその続きで、「升田式石田流の変遷」として、後手の△6四歩以下の変化を詳しく書いています。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は16回目で引き続き加藤流。 先々月からの短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」。学習の研究における課題と、評価関数研究の最前線について。・・・と書くとちょっと堅苦しく分かりづらいですが、内容は非常に面白いので一読の価値ありです。 付録は武市六段の「受けと凌ぎ」。今回の付録は非常に珍しい受けと凌ぎについての問題集です。第1問から11問までは合駒(応手)を考える問題、第12問から20問までは詰めろを凌ぐ問題。そして第21問から最後の39問までは盤面全体を使った実戦形式での受けの問題です。 こうした受けの問題のうち、第1問から20問までは、かの有名な(希少価値本に入っている)「凌ぎの手筋186」と同じ形式の問題と考えて下さい。レベル的にも同じくらい(有段者向)なので、ちょっと難しいかもしれません。類書がほとんどないだけに「希少付録」と言って良いでしょう。 |
2010年2月号(12月28日発売)の内容と感想 |
今月の特集は「竜王戦」です。渡辺明竜王、6連覇達成、と言うことで第4局の観戦記(大川慎太郎氏)の他、「竜王戦座談会」として深浦王位、高橋九段、西條氏の三人が今回の竜王戦を語っています。さらに竜王への「インタビュー記事」が9ページあり、竜王戦にかなりのページが割かれています。 「イメージと読みの将棋観」、続編の2回目。今回取り上げられたのは、1.4手目△3三角について、2.相矢倉渡辺新手の△3三銀、3.後手の勝ち越しが定着したら、4.昔の香落ちの実戦、となっています。個人的にはあまり興味のわかない題材ですが、内容はそれでも面白いです。 プロ棋戦、竜王戦の他には、JT決勝(谷川-深浦)、倉敷藤花戦第2局(里見-中村)があります。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」、今回は「中原誠、相掛かりを語る」ですが、講座ではなく、文字通り中原誠へのロングインタビューです。15ページもあるだけにかなり面白い記事になっていて必見です。 先月から始まった、「寄せのセオリー」。今回も役に立つ内容ですから是非読んで実際に考えて見て下さい。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」は第6戦。中盤の大一番は、相振り飛車の激戦になりました。後で、じっくり盤に並べてみたいですね。 久保棋王の「さばきのエッセンス」、今月号は升田式石田流の基礎知識。久保棋王自身の考えも書かれており興味深いです。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は15回目で、引き続き加藤流。矢倉の王道だけに書くことはいくらでもあるでしょう。 先月号からの短期連載「コンピュータは七冠の夢を見るか?」では、Bonanzaがもたらした評価関数について。一般の人が読むには面白い話です。 久々に「棋界のトリビア」がありました。内容は、「自分で考えた手を1手も指さずに勝った棋士がいる」というもの。昔の話かと思っていたら、最近の話でビックリ。 今月号には、新春恒例の「スーパー大懸賞」と「A級順位戦予想クイズ」があります。賞品も多様で、毎回楽しみにしている人もいるのでは、と思います。 付録は丸田祐三九段の「短編詰将棋傑作集」。5手詰と7手詰全部で39問。右上のこぢんまりとしたやさしい筋ものばかりですので、級の人にはちょうど良いでしょう。 |
2010年1月号(12月3日発売)の内容と感想 |
今月の表紙に大きく書かれているのは、「竜王戦第2・3局」と羽生将棋に関する座談会。 まだ第4局の結果が分からないうちに書かれた第2局と3局の観戦記ですが、第2局の方は、郷田九段の解説となっています。しかし、ネットで見ている人には取り立てて後から驚くような記事にはなっていません。 座談会は、「王座戦18連覇に見る羽生将棋の強さの秘密」と言うことで、橋本七段と阿久津七段の話です。若手実力派の二人と言うことで取り上げられたようですが、なぜこの二人なのかよく分かりません。羽生王座が指し続けてきた局面が取り上げられ解説されていてそれはそれで面白いのですが、相手に米長、谷川、森、丸山、藤井、久保、渡辺、森内、佐藤、木村とこれだけの面々の将棋を取り上げているなら、そのうちの誰かの感想を聞きたかったですね。 「イメージと読みの将棋観」が続編として戻ってきました。短期集中連載ということなのでどれだけ続くのかは不明ですが、できれば長く続けて欲しいです。出ている人は前と同じで、羽生、渡辺、谷川、佐藤、森内、藤井と豪華メンバー、これ以上ない人選でしょう。 そして今回取り上げたのは、1.正調角換わり腰掛け銀先後同形、2.一手損角換わり準同形、3.後手勝ち越しの今後について、4.昔の香落ちの実戦、となっています。 最初は(個人的には)「角換わりかぁ、あんまり興味ないな」と思ったのですが、読んで見たら(この興味ない戦型ですら)面白かったです。やはりこれだけのメンバーが自分の読み筋を披露するのは面白いですね。さらに角換わりと言っても、プロ将棋を見る上においては欠かせない戦型ですから、たとえ指さなくても観戦する人には興味ある記事であり見解と言えるでしょう。 プロ棋戦は竜王戦の他には、倉敷藤花戦第1局(里見-中村真)、女流王位戦第4局第5局(石橋-清水)がありました。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」、今回は「相掛かりクロニクル」。駅馬車定跡に始まり、その変遷を分かりやすく解説しています。正直、これも興味のない戦型ですが、この記事だけは取り上げる戦型に関係なくいつも面白く読んでしまいます。 新連載として、「寄せのセオリー」が始まりました。谷川九段の「月下推敲」が終わり、その代わりということのようです。寄せについては数年前から良書が何冊も出ています。なかでも「寄せが見える本基礎編」(森けい二著・浅川書房)と「谷川流寄せの法則基礎編」(谷川浩司著・日本将棋連盟)は双璧でしょう。今回の記事はこれら自身の書いた本に多少は重複しそうな感じではありますが、こうした寄せは何度も読むべきでそういう意味からは棋力アップに最も役に立つ連載が始まったと思っています。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」は第5戦。東西のホープ、稲葉四段-佐藤(天)五段の対戦です。戦型は横歩取り△3三角戦法でした。 「リレー自戦記」は初のタイトル戦に出場した上田初美女流二段。取り上げた棋譜は、その女流王将戦の第1局(対清水戦)。ネットで中継されなかっただけに棋譜を初めて見て、また内容も対局者の心情が伝わってきて良かったです。 久保棋王の「さばきのエッセンス」、今月号はついに久保流の急戦について。▲7四歩△7二金に升田幸三賞を取った▲7五飛の新手。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は14回目で、今回も加藤流の変化。その対策△5三銀について。 今回から短期連載として「コンピュータは七冠の夢を見るか?」と題して、コンピュータ将棋についての記事が始まりました。書いているのは東京大学の松本哲平氏で、解説を片上六段が受け持っています。内容は、現在の強さと、プロとの読み比べなどがあり、こうしたものに興味のある人には、大変面白い記事となっています。 ※毎回個人的に面白い記事2つを赤の太字にしていますが、今回は、「イメージと読みの将棋観」と「寄せのセオリー」。しかし、「寄せのセオリー」と「リレー自戦記」とこの「コンピュータは七冠の夢を見るか?」の三つの記事は皆同じくらいの良さで、実はどれを赤字にするか迷いました。 付録は高野秀行五段の「対四間飛車棒銀戦法」。第1問から第30問までは定跡編、それ以降第39問までを実戦から出題した次の一手問題としています。定跡を正確に覚えていない人には復習の意味も兼ねて一通り読んでおかれると良いでしょう。 |
2009年12月号(11月2日発売)の内容と感想 |
今月も特集記事はなし。トップに持ってきているのは「王座18連覇達成!」と言うことで、第57期王座戦の第3局(羽生-山崎)です。観戦記は、日本経済新聞社の神谷浩司氏。また、第2局のエッセイ風観戦記を梅田望夫氏が書いています。 但し、プロ棋戦は今月号は多いです。上記王座戦の他に、竜王戦開幕と言うことで、第1局(渡辺-森内)が読売新聞の西條氏の観戦記で。個人的に一番面白かったのが、王位戦第7局(深浦-木村)の自戦記を深浦王位が書いていること。3連敗した後の心情も書かれており、対局者ならではの記事になっています。さらに第6局の追記として結論が間違っていたことが載っていました。この結論はネットでも見てそうなのかと思っていたことで、将棋世界を読まないとそのまま納得して終わっていたところです。また、王将戦挑戦者決定リーグの渡辺-森内戦もあり、これはネットで見られなかっただけに興味深い棋譜です。ネットで見られないと言えば、女流王将戦(清水-上田)もそうで、第1局があります。女流王位戦(石橋-清水)の第1局と第2局、さらに新人王戦(広瀬-中村)の第2局もあり、本当に今月号はプロ棋戦情報満載と言ったところ。 勝又講師の「突き抜ける!現代将棋」。今回は「果てしなき石田流ロマン」と題して最近流行の石田流についてです。もちろん、単なる石田流講座ではなく、昔の大山-升田戦を取り上げ検証しています。こうした戦法の変遷を読むのは面白く、ためにもなります。現代の石田感については、羽生、鈴木、久保、戸辺達にインタビューし、その感想を聞いています。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」は第4戦まで来ました。前回完勝だった矢内女王に対するのは関西の新鋭稲葉四段です。戦型は相居飛車。僅かのスキを捉えて動いた為、手将棋となりました。 先月から始まった久保棋王の「さばきのエッセンス」。今月号は鈴木流急戦について。例の▲7四歩と突く変化です。ただ、まだ新刊の単行本に載っているような変化のおさらいでもありますので知っている人にはそれほど新鮮な驚きはないかもしれません。 「リレー自戦記」は銀河戦で優勝した阿久津七段。取り上げた棋譜は、決勝トーナメント1回戦の行方八段戦。 新連載として、「巻頭エッセイ「月夜の駒音」」が始まりました。書いているのは以前「上達日記」を連載していた内館牧子さん。巻頭の2ページだけですし、作家(脚本家)が書くなら上達日記よりずっと良いです。上達日記なら、多くの人は若い女性とか子供などの方が興味あるでしょうし。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は13回目で、今回は加藤流の変化。講座の前に、少しだけ王位戦についての感想(後悔)。深浦王位の自戦記もそうですが、ネットで見られる対局についてはこのような本人の感想が一番読みたいですね。もっとも、ネットを見ない人も多数いるわけで、すべての読者を考えなければなりませんが。 当時を振り返る「盤外アーカイブス」。2ページだけなのでいつも気軽に読んでいますが、今回は「田中九段が勝ちの局面で投了」というもの。この対局は雑誌に載り、当時すごい受けがあったものだと驚いたのを覚えています。今なら「凌ぎの手筋」に載せたい題材です。 付録は飯塚祐紀六段の「矢倉右四間飛車の攻防」。プロでは女流以外あまり見ないですが、アマで得意にしている人は多そうで、興味のある戦型でしょう。攻めと受け、両方に役立ちますので悩まされている人も一通り見ておいたら良いでしょう。 |
2009年11月号(10月3日発売)の内容と感想 |
今月はいつもあるような「特集」としては載っていません。表紙には大きく、「第57期王座戦五番勝負第1局」とあり、観戦記を谷川浩司九段が書いています。すでに王座戦自体は終了してしまいましたが、この王座戦第1局を谷川九段が書いているということが、今月号の一番の”ウリ”と考えているのかもしれません。もっとも、実際トッププロがタイトル戦の観戦記を書くことは少ないので、貴重な記事ではあります。 プロ棋戦は、他に王位戦第6局(深浦-木村)、竜王戦挑戦者決定戦第2局、第3局(深浦-森内)、王位戦第5局があります。 先月から始まった「突き抜ける!現代将棋」。今回は「プロの至芸、自陣飛車」との題の元、様々な自陣飛車について取り上げています。しかも、単に紹介するだけでなく、いかにも”勝又講座”と言った感じで、現代将棋の自陣飛車から古い升田、大山時代の自陣飛車まで取り上げ検証しています。定跡では塚田スペシャル、4五歩早仕掛け、さらに自陣飛車と将棋の作りにまで触れ、今回も読み応えのある記事でやはりイチ押しでしょうか。 今回から振り飛車党には楽しみな講座、久保棋王が書く「さばきのエッセンス」が始まりました。現時点で講座の内容として考えていることは、先手石田流の攻防、その後の2手目△3二飛、さらにその後の藤井システムということだそうです。そして初回の今月号は「石田流の原点」。今回は導入と言うこともあり、振り飛車党なら、というより石田流を指す人なら当然知っていなければならない基本的な変化の話です。次回、鈴木流急戦と久保流急戦の狙いを解説すると言うことですので、これはこれからが楽しみです。 たぶんかなり評判の良い「リレー自戦記」。今回も旬の棋士、中川大輔七段です。取り上げた棋譜は、先日の山崎七段との王座戦挑戦者決定戦の一局。ネットでの実況もありましたので、記事を読むことで再び楽しむことができます。 「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」の第3戦。これも見逃せない女流対決です。里見香奈倉敷藤花に矢内女王。盤に並べた訳でもなく、棋譜を目で追っただけですが、それでも”強い!”と思わせる内容でした。どちらが”強い”と思わせたかは読んでみて下さい。 今月の読み切り定跡講座。戸辺誠五段が「「角交換型」石田流の研究」を書いています。石田流ということですが、久保棋王の内容とはかぶっていません。こちらはしっかり玉を囲ってからの戦いを解説しています。 木村八段の「これで矢倉は指せる」は12回目。▲3七銀戦法の中の加藤流▲1六歩についてです。記事は王位戦第6局の二日後に書いていると言うことでその時の心境が少しだけあります。 付録は村山慈明五段の「最新の横歩取り△8五飛戦法」。いつものように39問の次の一手ですが、第1問〜第30問までは「6八玉型」で、第31問〜第39問までが先日の王座戦でも出た「新山崎流」です。現在の△8五飛戦法を簡単に振り返るには良い付録になっています。 |
2009年10月号(9月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は今回王座戦の挑戦者になった「山崎隆之七段インタビュー」です。そして表紙や、「勝負の刻」にも王座戦挑戦者決定戦が取り上げられています。インタビューの内容は、今回の王座戦挑戦者になるまでのことや以前の羽生王座との対戦、現在の取り巻く環境、これからのこと等々様々な話が載っており面白いです。 プロ棋戦は、王位戦第3局(深浦-木村)、竜王戦挑戦者決定戦第1局(深浦-森内)、マイナビ女子オープンの予選一斉対局(棋譜なし、概況と局面図のみ)、大和証券杯決勝(山崎-木村)などです。 今月号から新連載「突き抜ける!現代将棋」が始まりました。これは今年の1月まで連載されていた「最新戦法講義」の勝又清和講師の連載で、「今回の連載では、プロの将棋の見どころや勘どころを、いろいろな角度から、できるだけわかりやすく伝えていこうと思います。」と書かれています。そして第1回は、「序盤数手の差し手争い」。後半には「盤に並べたい名局」も紹介されていて、定跡通の人、プロ将棋を見るのが楽しみな人には絶対外せない講座が始まりました。 第15回目の「月下推敲」。毎回話の内容は違いますが、今月は「プロ間での注目の局面」を取り上げています。これはちょうど勝又プロの「最新戦法講義」みたいな感じで、しかも書いているのが谷川九段でその感想がありますから必見です。 「リレー自戦記」は中村太地四段。取り上げた棋譜は、銀河戦予選の戸辺五段との一局。戦型は相穴熊ですから、「とっておきの相穴熊」を買っている人には実戦譜として見逃せないページです。 先月号から始まった「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」の第2戦。女流の里見香奈倉敷藤花の登場です。この企画が始まった時、これは面白そうと思ったものの何で女流二人が二番目に配置されているのかと思ったものです。どちらにしても男性の新鋭には勝てないだろうからそれなら第一戦に持ってくれば良いのに、と。しかしそれは評価が低すぎました。この一戦も必見です。(今月は必見が多いですが) 今月もまた読み切り定跡講座があります。「村田アッキーの相振り飛車”マル秘”研究ノート」で、先手向かい飛車対後手三間飛車の戦型を解説しています。内容は、後手三間飛車側からみた攻め方。相振りは未開の部分が多いので、実戦と同じ局面にはなかなかなりませんが、数多くの攻め筋を知っておくことは大切です。相振りを指す人は見ておきたい講座です。 そしてずっと続いている二つの連載講座、木村八段の「これで矢倉は指せる」と鈴木八段の「時代はパワー中飛車」。矢倉は矢倉の王道「▲3七銀戦法の基礎知識と最新定跡」。パワー中飛車は、なんと今回最終回とのことです。内容は相振り飛車で、対向かい飛車と相中飛車です。この講座が終わり、次回どうなるのだろうと予告ページを見ましたら、新連載として「久保流さばく振り飛車のエッセンス」が載っていました。やはり振り飛車の講座は根強い人気がありそうですね。 付録は第50期記念として「王位戦名場面集」。50年の歴史を次の一手形式で39局面。初めの方は大山、途中は中原や米長、そして谷川、羽生と続くこうした局面の移り変わりを見ていくと本当に歴史を感じさせます。 |
2009年9月号(8月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は「羽生善治、大いに語る」です。そして、その第1部として第7局が自戦解説で取り上げられています。第2部は「可能性を探り合った七番勝負」と題し、1局目から6局目までの解説が少々。その後に、ロング・インタビューが12ページに渡って載せられています。このロング・インタビューはなかなか面白い話題を取り上げ、またそれに対する考え方を載せているのでお薦めです。 プロ棋戦も今月号にはたくさんあります。棋聖戦第4局と第5局(羽生-木村)、王位戦第1局(深浦-木村)、マイナビ女子オープン第2局と第3局(矢内-岩根)などです。 先月号の予告にあって期待していた「真剣勝負!東西対抗フレッシュ勝ち抜き戦」が始まりました。東西の若手6人ずつの勝ち抜き戦です。その初戦は豊島五段対村山五段。この一戦は是非盤に並べてゆっくり味わってみたいですね。2戦目以降も期待大です。 毎回面白い「リレー自戦記」。今月は及川拓馬四段。取り上げた棋譜は、王座戦本戦1回戦の深浦王位との対局。初の自戦記ということでしたが、対局中の読み、気持ちの動きが分かって面白かったです。 ここではあまり取り上げていませんが、野月七段の「熱局探訪」ももう8回目。今月は王位戦挑戦者決定戦(木村-橋本)と王座戦の女流棋士一斉対局を取り上げていました。どちらも実況していた対局ですので、見ていた人には思い出されて面白いでしょう。 先月号の読み切り講座が評判良かったのか、今月も一つだけ読み切り定跡講座があります。「”ムサシ”三浦の対ゴキゲン中飛車 準急戦二刀流」で、ゴキゲン中飛車に対する指し方の講座です。▲4七銀から局面によっては▲5六歩と突き返したり、▲7七銀から動く変化、さらに▲3六歩から▲3七銀と動いていく指し方など、居飛車側から見たゴキゲン中飛車攻略法です。もっとも攻略法というよりは、居飛車に悪い変化も書いていますので、「ゴキゲン中飛車に対する仕掛けの感覚を伝えたい」という感じです。それだけにちょっと難しいながらもまじめな講座となっています。 今月号の「懸賞詰将棋」。久々にかなりやさしい詰将棋でした。ちょっと考えただけで筋が分かったのは何ヶ月ぶりでしょうか。ヒントの四金詰を見て思った通りの詰上がり。こうした趣向詰めでそれほど難しくないものが、この巻頭詰将棋には適しているのではないかと思っているのですが。にしてもこんな詰将棋を作ってしまうなんて改めてすごいなぁと思います。 もっとも、一つだけ応募する人に注意しておきたいのは、筋はすぐ分かりますが、正確な手順の検証には時間をかけた方が良いかもしれません。ちょっと引っかかりやすい箇所があるので注意です。 付録は浦野七段の「7手詰ミニハンドブック」。これは非常に筋が良くやさしい、さらに駒数も少なく解後感の良い詰将棋集です。級位者の人でも少し考えれば解けるくらいですし、詰将棋の苦手な初段位の人たちには是非全部(と言っても39問ですが)、解いてもらいたいと思います。 |
2009年8月号(7月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は「名人戦七番勝負大激闘」ですが、棋譜と解説は第4局、第5局、第6局の三つで残念ながら最終局はありません。しかも観戦記も普通の観戦記なので、有料の実況を見ていた人にとってはイマイチです。但し、ネットを見られずじっくり並べたい人には良いでしょう。 プロ棋戦は、他に棋聖戦第1局(羽生-木村)、マイナビ女子オープン第1局(矢内-岩根)とありますが、こちらもネット中継で見ていますので、そこで見ていた人にも何かプラスアルファが欲しいですね。 今月号の面白い記事、いつも独断で赤く表示していますが、二つあります。 その一つは、「リレー自戦記」。どうもこの記事は毎回好評のようですね。またもスペシャル三本立てです。片上大輔六段(竜王戦3組:対行方八段)、長岡裕也四段(竜王戦6組:対広瀬五段)、瀬川晶司四段(王将戦:対橋本七段)の三人です。記事ももちろん面白い。やはり実際に指した本人がその時何を考えていたのかと言うことは将棋を見る側にとっては最も興味のあることなのだな、と思いますね。 そしてもう一つ、今月推奨したいのが、「夏休みに向けて読みきり講座をラインナップ」です。その三つの講座とは、「豊川孝弘の「マッスル雁木」」「”振り穴王子”広瀬章人の「銀冠撃破」」「武市三郎の「筋違い角虎の巻」」。名称はともかく、取り上げる講座内容としてはなかなか良いところを突いていると思います。まず、雁木の本や筋違い角の本は少ない。しかも絶版になって高値のついているものもあります。さらに広瀬五段の振り穴は有名ですのでやはりこういう人に講座は書いてもらいたい。順に10ページ、10ページ、7ページとページ数だけで言えば当然単行本にはかないませんが、解説は急所を捉えていてなかなか有益な講座になっています。 講座と言えば二つの連載講座、木村八段の「これで矢倉は指せる」と鈴木八段の「時代はパワー中飛車」。矢倉は森下システム、中飛車は、対三間飛車です。そして先月だけかと思っていたミニ講座「角頭歩戦法を指してみよう!」の後編があります。居飛車側が△8五歩と攻めないでじっくり指してきた時にどうするかの持久戦編です。 今月号の「懸賞詰将棋」。先月号はまだやる気になる形でしたが、今月号のヒントは「鬼ごっこ2」。そして盤上には三枚の駒のみ。三枚!ならやってみようかと思うかもしれませんが、その一枚がかなり遠いところにあります。持ち駒に香もあり、合駒も考えなければならなそうですし、すぐ挑戦するかどうかは微妙です。 付録は堅陣撃破のテクニックをスーパーあつし君が伝授「穴熊くずしのメカニズム」です。これは囲い崩しの手筋問題集で、個人的にはこういう問題を数多く解くことがもっとも終盤力を鍛える力になるのではないかと思っています。全部で39問、良問揃いですので、何度も解いて急所に目が行くようになれば勝率もアップするでしょう。 |
2009年7月号(6月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は「中原誠十六世名人に聞く16の質問」です。今年3月11日に引退した中原誠十六世名人への単独インタビュー。長年第一人者として将棋界のトップを走って来た人の言葉には重みがあります。また、現在の棋界の状況、人や戦法について語っているのも面白いですね。 そしてこのインタービュー記事の後に、「棋士・中原誠 名人戦編」として長年名人戦を担当してきた山村記者の記事が載っています。 プロ棋戦は、当然名人戦第2局と第3局。この第2局の観戦記は高橋道雄九段、第3局の観戦記は谷川浩司九段と書いた人が豪華。 今月号には将棋世界企画として「関西若手四強を語る」があります。糸谷五段、豊島四段、稲葉四段、村田四段の四人について、これら若手を良く知る橋本七段と畠山七段の話を会話形式で15ページとかなりたくさん伝えています。 前回三本立てだった「リレー自戦記」は今月は久保利明棋王。取り上げた将棋はあの新手▲7五飛を出した棋王戦第2局(対佐藤九段)。この▲7五飛周辺の考え方やその後のこの将棋について。早石田を指す人だけでなく普通に面白い自戦記ですので必見です。 今月の「トップ棋士vs新鋭棋士指し込み2番勝負!!」。中を読む前に、最初の写真に「大事件発生!上手の気迫、角でも圧倒」と結果が出てしまっていました。私は結果が分かってしまっていてもその棋譜やテレビなどでも実戦を見るのが好きなので大して気になりませんが、結果を先に書いてしまうのはどうなのでしょうか? そして、その対戦は鈴木大介八段と西川和宏四段です。棋譜はそれなりに面白いと思いますが、やはり香落ちだけ何十局も特集を組んでくれないかなとも思います。 先月フリークラスから脱出したため「瀬川晶司四段、昇級の喜びを語る」の記事がありました。しかし2ページだけ。記事としてはずいぶん少ないなと感じましたね。今までの棋譜やら何やらもっと大きく取り上げても良かったのではないかと思うのですが、こんなものなのでしょうか? 毎回楽しみにしている内藤九段の「どっちが勝ち?」。先月号はかなり難しかったと思いますが、さて今月はどうでしょうか。ひと目では分かりませんので後でじっくり考えて見ようと思います。 二つの役立つ講座、木村八段の「これで矢倉は指せる」と鈴木八段の「時代はパワー中飛車」の後に、ミニ講座「角頭歩戦法を指してみよう!」があります。すでに絶版になっている単行本と奇襲戦法の本の一部にしか載ることのないこのような戦法も、時々は解説してくれると興味を持って見る人は多いのかなと思います。 今月号の「懸賞詰将棋」。簡素な形で「七色煙」とあります。使われている駒が玉と飛角金銀桂香歩それぞれ一枚ずつ。しかも煙なら最後は二枚になると言うことで簡単なのかなと思い解き始めたら一向に筋が見えません。かなり時間がかかって・・・・・これはすごい詰将棋です。でもマニアでない初段クラスの人には荷が重すぎます。解けたら四段と言って良いでしょう。 付録は「伊藤果に挑戦!9手詰」です。タイムトライアル60として全部で9手詰だけ60問収録しています。しかもその詰将棋は「級位者の人でも楽しんでいただけると思います」とあるように非常にシンプルでやさしいものがそろっています。もっともそうは言っても9手ですから本当に道場の級位者では1問1問解くのにかなり時間がかかるかもしれません。しかしこうした良問が60題も、これはかなり良い付録ですので是非挑戦してみて下さい。 |
2009年6月号(5月2日発売)の内容と感想 |
今月の特集は「第67期名人戦七番勝負開幕!!」です。もっとも棋譜及び観戦記は第1局のみ。その観戦記も可もなく不可もなしと言った普通の観戦記で実況を見た人には改めて感動するような内容ではありませんでした。 但し今月号は他の記事で面白いものが満載です。 まずは、特別座談会として、渡辺明竜王、鈴木大介八段、佐藤天彦新人王による座談会「新時代の風は吹いたか」があります。そのテーマは、(1)話題の人物で振り返る平成20年度、(2)後手はつらいか、楽しいか、(3)どうなる名人戦?の三つ。名人戦についてはたいした話をしていませんが、後手の話と特に最初の他の人物について。これはなかなか面白かったです。 そして毎回比較的面白い「リレー自戦記」。今月はこれがイチオシですね。一人でも十分面白い上になんとスペシャル三本立て。 登場したのは佐藤康光九段(竜王戦・対木村八段)、豊川孝弘七段(順位戦・対中田宏樹八段)、稲葉陽四段(新人王戦・対里見香奈倉敷藤花)の三人です。これはここ数ヶ月の将棋世界の記事でもトップに持ってきたいほどの出来。是非実際に読んで見て下さい。 他のプロ棋戦は、王将戦第7局(羽生-深浦)、棋王戦第5局(佐藤-久保)があります。 好評なためか続いている、「トップ棋士vs新鋭棋士指し込み2番勝負!!」。今月号はついにと言って良いでしょう、上手に振り飛車党の久保棋王が登場です。対する新鋭は金井四段。この結果は本誌で。 さらに、「プロアマガチンコ10秒将棋」。今回は屋敷伸之九段。10秒将棋となるとプロになり立ての若手以外はきついのかな、という印象を持ちました。 最近真っ先に見るのが内藤九段の「どっちが勝ち?」の解答。なんとか当たっていましたが、級位者の人には難しいですね。有段者の友達がこの意味を一つ一つ解説してくれればこの面白さも十分堪能できると思いますが。 二つの役に立つ講座、木村八段の「これで矢倉は指せる」は7回目。鈴木八段の「時代はパワー中飛車」は11回目です。 今月号の「懸賞詰将棋」。またしても盤面いっぱいの駒!と思ってちょっと見たらあまり変化なくすぐに入っていけそう。「水の流れるが如く」との題もありましたのでやってみた所最初はやさしい。しかし最後詰ますまではちょっと大変でした。でも最初の軽快な趣向手順は短手数の詰将棋しか解かない人でも分かりますので是非挑戦してみて下さい。 付録は「新手ポカ妙手選2008年版」。全部で39問。タイトル戦からも5問出ていますがほとんどは知らない将棋です。また、今回のテーマは「捨て駒」とのこと。ヒントを見ながら次の一手を考えるのも楽しいでしょう。 |
2009年5月号(4月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は「順位戦最終局」です。と同時に挑戦者となった郷田九段へのインタビュー記事があります。個人的にはこのインタビュー記事が面白かったですね。特に挑戦者ということ以前に将棋に対する考え。「一手損角換わりを棋理に合わない戦法」と思っていることなど、こうした考えを読んで、名人戦の中で一回は自戦記を読んで見たいと思いました。 今月号でもう一つ面白いと思ったのは、「リレー自戦記」。書いた人は井上八段で久保八段とのA級昇段の一局です。一局の中における心の動きを素直に書いているような感じで、その心の動きが良く分かり今月号で一番面白かった記事でした。 他のプロ棋戦も先月はタイトル戦がたくさんありました。棋王戦第3局(佐藤-久保)、王将戦第6局(羽生-深浦)、女流名人位戦第5局(矢内-清水)などです。 前回まで3回に渡って繰り広げられた、「トップ棋士vs関西新鋭指し込み2番勝負!!」。先月で終わりと思っていただけに今月号にもあってビックリです。今までの結果が不満だったのかこの企画が好評だったのかは分かりませんが、個人的にはもっと続けて欲しい企画です。もっともいつもこのような結果しか出ないのであれば、もう少し方法を変えることが必要かもしれませんが。 そして、「プロアマガチンコ10秒将棋」が戻ってきました。登場したのは田村康介六段。企画そのものは悪くないと思うのですが、5局戦って初手から終局までの棋譜が一つしかないのではがっかりした人もいるのでは、と推測してしまいます。順位戦の特集もそうなのですが、取り上げた対局はやはり棋譜も欲しいですね。 今回、真っ先に見たのが内藤九段の「どっちが勝ち?」の解答です。難しいとは言えあまりに面白い手順だったのでこれが正解かなと思っていたのがそのまま正解でした。と言うよりさらに受けがあるのかと余分なところまで読み進めてしまっていましたが。 しかし、これでこの「どっちが勝ち?」のレベルがある程度分かりましたのでこれから考えるときの指針になりそうです。今月の問題も見ましたが、いかにも面白そうな手が見えるだけにこれは引っかかりそうです。じっくり時間をかけてやってみたいと思っていますし、詰将棋選手権がなくなってから次の楽しみを見つけた感じです。 第6回目の木村八段の「これで矢倉は指せる」。今回は早囲いを巡る攻防について。先手の早囲いと後手の早囲い。そして現在の状況と相変わらず分かりやすい講座となっています。 トップにある「懸賞詰将棋」。最近難しいような気がします。変化は多そうには見えないのですが、一目では解けないので後でやってみるつもりです。 付録は「対後手三間飛車急戦の基本」。昔からある三間飛車に対する急戦の指し方。非常に有名な定跡であり、また”良く出来ている”手順なので基礎知識としても一度は見ておきたい定跡です。 |
2009年4月号(3月3日発売)の内容と感想 |
今月は大きく特集という感じのものはないのですが、巻頭カラーに、「リレー自戦記」として棋王戦第1局を佐藤棋王の自戦記で持ってきています。この対局は日曜日で入間将棋センターでも終盤検討していただけにこの文章も面白く読めました。 そして巻頭カラーにはもう一つ、A級順位戦8回戦の様子。 今回は特集記事が少ない為他のプロ棋戦がたくさんあります。王将戦第3局(羽生-深浦)、朝日杯将棋オープン準決勝(阿久津-佐藤和)(久保-渡辺)と決勝(阿久津-久保)、竜王戦6組女流・アマ熱戦譜(里見-金井)(中村太-清水)(稲葉-早咲:この対局は棋譜なし)、女流名人位戦第2局と第3局(矢内-清水)、きしろ杯決勝(里見-岩根)など多数です。じっくり観戦記を読みながら棋譜を並べたい人には最高でしょう。 そして前回から行われている、「トップ棋士vs関西新鋭指し込み2番勝負!!」。今回も一番気になっていて最初に読みました。3回目の今回、将棋やその記事としては大変面白かったのですが、結果的には・・・・・。うーん、やはり香落ち十番勝負とかの方が面白い気はします。 今月号、パラパラッとめくっていてたまたま「どっちが勝ち?〜内藤國夫九段からの挑戦状〜」というのに目がとまりました。1ページだけなのですが、単なる詰将棋とか必死問題とかと違い、どちらが勝っているかを当てるもの。なるほど、こういう切り口もあるのか、と感心しました。面白そうなので、来月以降、もっと問題数を増やしてもらいたいくらいです。 さて、私自身毎月「将棋世界」は読んでいますが、だからと言って隅から隅まで読んでいる訳ではありません。必然、興味のある記事しか読まない為、ここで取り上げるのもどうしても多少片寄ってしまいます。 そこで今回は、今まで取り上げなかった記事を以下に紹介しようと思います。 まずページ順に「青春、原田泰夫のノート」・・・昭和36年、新会長になってからの普及事業が書かれています。次に「月下推敲」・・・谷川九段の記事なので大抵読んでいるのですが、今まで取り上げていませんでしたね。「感想戦後の感想」・・・出ている人によって読んだり読まなかったり。今回は46回目で阿久津六段。46回ということは、人気のある記事なのかもしれません。「懸賞次の一手と懸賞必至」・・・すみません、やったことないです。「時代はパワー中飛車」・・・鈴木八段の連載講座なので読んでいるのですが、なぜかここに取り上げる連載はいつも「これで矢倉は指せる」になっています。この講座、ゴキゲン中飛車を指す人は必見です。「関西棋界みてある記」「連盟の瀬川さん」以降普及の記事、棋戦の動向、結果など、申し訳ありませんが読んだことがありません。ただ、関係している人達にはなくてはならない記事なのかもしれません。 「名局セレクション」「あっという間の3手詰」「実戦に役立つ5手7手」「昇段コース問題」・・・どれも自分は読みません(解きません)が、これらは多くの人達に役立っていると思いますし、特に初段前後の人達には有用でしょう。 普段あまり読まない記事を取り上げた為、どうもイマイチな紹介になってしまっていますが、面白いと思う人、良質な棋譜、問題が多数ありますので特に初段前後に人は地道にやってみて下さい。 付録は「寄せのトレーニング 3手必至」。武市六段の出題で、比較的やさしい3手必至問題。やさしいと言っても(同手数の)詰将棋に比べるとやはりかなり難しいでしょう。ある意味7手〜11手の詰将棋を解くのと同程度の棋力が必要かもしれません。上級から有段者まで楽しめる一冊です。 |
2009年3月号(2月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集は引き続き「竜王戦」。正直かなり引っ張るなと言う感じはしますが、切り口は今までと違い、今回は渡辺明永世竜王を全面的に取り上げています。第7局の観戦記はインタビューとの平行で書かれている他、単独インタビュー、渡辺明物語、さらに梅田望夫氏の世代論、初形曲詰「永世竜王詰将棋」まで広範囲に渡っています。 今月号のもう一つの特集は、「プレイバック2008」と題して現役棋士が選ぶ去年の名局ベスト10が選ばれていること。選ばれた対局にある各棋士のコメントを読みながら、その対局を見ていた時のことを思い出してしまいました。棋譜と解説(詳しくはない)も全部ありますので、並べて鑑賞するにはかなり良いでしょう。 特集がかなりの紙面を割いている為、他のプロ棋戦は、王将戦第1局(羽生-深浦)のみ。 そして前回から行われている、「トップ棋士vs関西新鋭指し込み2番勝負!!」。今回もやはり一番気になる記事なので最初に読みました。今月の2回目は、深浦王位対糸谷五段戦。棋譜も観戦記も非常に面白いものでした。これを三回で終わらせてしまうのはもったいないですね。 第4回目の木村八段の「これで矢倉は指せる」。普通の連載講座なのですが、なぜか毎回取り上げたいような記事の書き方です。今回は、竜王戦に現れた阿久津流について。渡辺新手についての見解が書かれていますので矢倉を指す人は必読です。 今月号の「リレー自戦記」は、高橋道雄九段。取り上げた対局は王将戦挑戦者決定リーグでの深浦王位戦。手の解説の他、その時点でどのような読みをしていたかなど自戦記ならではの内容で、毎回興味を持って読んでいます。 「詰将棋サロン年間優秀作品発表」がありました。詰将棋サロンは難しいので、将棋センターに一緒に考える人が来ると解くのですが、最近はあまり解かなくなってしまいました。しかし、今月号にはこの一年間の優秀作品及び候補にあげられた11作品が載っていますので、これは是非挑戦してみたいです。やはり優秀賞になるような作品は時間をかけて解いても驚くような手順に感動するからです。個人的にはこの詰将棋だけで(本の)元が取れると思っていますが、一般的には”付録”程度の記事かもしれません。それにしても、一番楽しみにしていた「詰将棋解いてもらおう選手権」の再開予定はないのでしょうか? トップにある「懸賞詰将棋」。盤面全体に駒があり広くてどこから入るのか難しい。しかし入り方させ分かってしまえば趣向詰めなので同じ手順の繰り返しになり、手数ほどは難解ではありません。このことをヒントに是非挑戦してみて下さい。 付録はこれも「渡辺明 次の一手」。永世竜王誕生記念で出された実戦の次の一手39問です。 |
2009年2月号(12月27日発売)の内容と感想 |
今月の特集も当然のことながら「竜王戦」です。但し第7局が速報と棋譜だけで観戦記が次号になってしまったのはちょっと残念。結局、第4局から第6局までの観戦記となっています。 そして初タイトルを獲得した新倉敷藤花である里見香奈女流プロについても写真入りで大きく取り上げています。こちらの観戦記は第2局。 他のプロ棋戦は、JT日本シリーズ決勝(深浦-森下)が森下九段の自戦記で載せられています。 今回から3回に渡って行われる企画、「トップ棋士vs関西新鋭指し込み2番勝負!!」。その第1回は、佐藤康光棋王対村田顕弘四段。興味を持って読んでいきましが、棋譜も観戦記(鈴木宏彦)もたいへん面白く読めました。ただ、結果は(残念ながら?)ほぼ予想通りの星で終了。香落ちはどちらが勝ってもおかしくありませんが、角ではやはり下手必勝に見えます。平手は・・・・・普段から見ているからそれほど見たいという訳でもありません。 という訳で、この企画はそれはそれで面白いとは思いますが、いっそのこと、香落ち10対局くらいのものを見たいかな、と思ってしまいました。 今月号には、毎年この時期に行われている「新春恒例 スーパー大懸賞2009」と「第67期A級順位戦予想クイズ」があります。今期の順位戦予想は今までで最も難しそうですね。 ちょっと面白い記事に、「打歩詰物語」なるものがありました。10ページにわたって、過去の打ち歩詰めに関した記事。特に有名な打ち歩を打開する為に角不成とした対局の紹介などがありますが、それ以外にも似たような対局がこんなにもあったことに驚きました。打ち歩に誘導するための(受けの)角不成が結構たくさん出ていました。一風変わっていますがこのような記事も良いですね。 第3回目になる木村八段の「これで矢倉は指せる」。今回は後手急戦の続きですが、「阿久津流」について。これはつい先日行われた竜王戦第6局、第7局に現れた戦法なのでまさに旬です。偶然かどうか分かりませんが、今までの三回とも役に立つ講座になっていて必見ですね。 今月号の「リレー自戦記」は、大平武洋五段。取り上げた対局は朝日杯将棋オープン戦で堀口七段との矢倉戦。記事は、個性や考えが出ていて非常に面白かったです。ネット中継された将棋ですので、この文章を見たら、(対局も)見ておきたかったなぁとちょっと見なかったことを後悔しました。 トップにある「懸賞詰将棋」。今月の問題は、玉が2九!にいて、しかも△3二に金がいたり▲4二に銀がいるというすごい配置のものです。しかし、ヒントが「鬼ごっこ」ですので、それほど難しくはないのかな、と思うところもあり、解いて見ようかと言う気にはさせます。この詰将棋はいずれ時間が取れたらやってみるつもりです。 付録は「サトカナ 次の一手」。里見香奈新倉敷藤花誕生記念で出された実戦の次の一手39問です。解答の欄には、所々解説以外の話も載せられています。 |
2009年1月号(12月3日発売)の内容と感想 |
今月の特集はやはり「竜王戦」です。その第2局と第3局、カラー写真もふんだんに入れて、第2局は橋本七段、第3局は読売新聞の西條氏の観戦記で興味深く書かれています。 また、同じくカラー写真で、中程には倉敷藤花戦第1局(清水-里美)が、里見女流二段の自戦記で書かれています。 他のプロ棋戦は、女流王位戦第3局、第4局、第5局(石橋-清水)で詳しく書かれているのは第5局です。 今回、個人的にですが、面白く読んだのは、「コンピュータ将棋特別対談・羽生善治が敗れる日」でした。これは、YSS開発者である山下氏と棚瀬将棋の棚瀬氏との対談です。コンピュータ将棋ソフトについて、興味はあるけど良くは分からないと言う人達にはたぶん面白く読めるでしょう。 「勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義」は今回をもって終わるようです。「すぐに戻ります!」「新連載の準備に入りたいと思います」とあるので、それほど経たずして再開されると期待はしていますが、その最終回は、「犠打」の技法について。かつて生まれた犠打の絶妙手について解説されており、これはこれでいつも通り面白かったです。ただ、”最新戦法講義”ではありませんが。 特集として、中カラーで、「国際将棋フェスティバル2008in天童」の記事があります。国際将棋トーナメントのレポートと、海外での将棋の普及について。普段あまり見る機会のない内容だけに興味深い記事でした。 今月から始まりました新連載、野月浩貴七段の「熱局探訪」。「将棋会館やそれ以外の場所で起こった出来事を、対局中心で伝える」と言うことのようです。要するに、前にあった先崎八段の「千駄ヶ谷市場」や、その前何年にも渡って書かれていた「対局日誌」などと同じ系統と言うことでしょうか。連載となると書き手の力量が問われる内容になりそうなだけに大変かもしれませんが、面白ければずっと続くことになりそうです。 先月から始まった木村八段の「これで矢倉は指せる」。今回は後手の急戦、居玉棒銀について。比較的出てくることは少ないと思うのですが、それだけにこっそり覚えて、棒銀側を持って指してみたら面白いかもしれません。 今月号の「リレー自戦記」は、広瀬章人五段。取り上げた対局は順位戦で村山五段との相穴熊戦。広瀬五段と言えば、私も持っていますが「とっておきの相穴熊」(毎コミ)の著者。また、村山五段との将棋は、いつも相穴熊ばかりだと書いていますし、相穴熊を指す人には必見の記事ですね。 前回から続いている「羽生名人にまつわる記録 その3」。僅か4ページの少ない記事ですが、その1ページに谷川九段の話が載っていて、12年前といまの羽生名人の違いについて語っているのは面白かったです。 トップにある「懸賞詰将棋」が内藤九段から谷川九段に変わりました。初めての今回は、持ち駒がなく変化も少なそうに見えます。ヒントは「初回にちなんで」。簡単そうなので考えて見たところ、ひと目では解けませんでした・・・・・が、まあ詰将棋解いてもらおう選手権の中くらいの難易度でしょうか。ヒントの意味は解いてから分かりました(これじゃヒントになってませんよ!)。 先々月で問題の出題は終了した「詰将棋解いてもらおう選手権」。今回は11月号の結果発表のみ。得票結果にやや不満は残るものの、優勝した北浜七段の作品は私も一番苦労したものですので、この優勝は納得いくものでした。掲示板に書いた「作者当て」が全部当たったのがうれしかったです。 この選手権は、途中からは一番の楽しみになりましたね。また今回、一番驚いたのは、早水女流二段がすごい詰将棋をたくさん作っているということ。これは才能であり、今後対局を見る時にも違った目で注目することになりそうです。 第2回も、是非やってもらいたいですね。 来月号の予告ですが、大きく「トップ棋士vs関西新鋭 指し込み2番勝負!!」が始まるそうです。上位に渡辺竜王、深浦王位、佐藤棋王、下位に糸谷五段、豊島四段、村田四段が出て、1日2局、最初に香落ちで指し、その勝敗により平手か角になるという。 なかなか過激な企画でそれゆえ面白そうな内容です。これは期待できそうですね。 付録は「対一手損角換わり・先手早繰り銀」。阿久津六段の執筆で、題名通り、一手損角換わりでの先手早繰り銀の指し方です。小さな冊子ですからもちろん変化をたくさん書くことは出来ませんが、早繰り銀の指し方、相手の反撃の筋を簡単に覚えるには良いでしょう。 |
2008年12月号(11月1日発売)の内容と感想 |
今月の特集は当然「竜王戦」です。その開幕特集として、第1局の観戦記の他、(1)パリ対局の意義(2)渡辺明竜王インタビュー(3)竜王戦展望座談会があります。 特にこの中でも、竜王のインタビューと、深浦王位・佐藤棋王・橋本七段の座談会は面白く読めました。 他のプロ棋戦は、王位戦七番勝負第7局(深浦-羽生)、王座戦第3局(羽生-木村)、新人王戦第2局(佐藤天-星野)、女流王位戦第1局(石橋-清水)、白瀧あゆみ杯決勝(中村真-山口)などです。 王位戦については、第7局の観戦記の他に、深浦王位のインタビュー、深浦王位が語る七番勝負のポイントもあります。 「勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義」は今回は、竜王戦を楽しむための矢倉ガイド+アルファの巻。早速第2局で出ている為、旬な講座となりました。 そして、新連載が始まりました、木村八段の「これで矢倉は指せる」。「アマ3級の方でも、矢倉は指せるという講座にしたい。」と述べているように、やさしく、それでいて最新定跡も解説するという意欲が見え、これから期待です。 その1回目は、▲6六歩と▲7七銀の違いについて。これは後手急戦(右四間と矢倉中飛車)への対応の違いなのですが、そのことがかなり詳しく書かれています。初回から大変価値の高い一文となっていると思います。 今月号の「リレー自戦記」は、行方尚史八段。取り上げた対局は順位戦で渡辺竜王と戦った将棋です。しかもまたこれが先日の竜王戦第2局と同じなのは何とも不思議な偶然(もちろん渡辺竜王が指したこと自体は偶然ではありませんが、このような対局の自戦記がタイミング良く将棋世界に載ったと言うことが偶然でしょう)。これも旬の話題で面白く読めました。 第11回目を迎えた「プロアマガチンコ10秒将棋」。今回は豊川六段対リコー将棋部。豊川六段の人間性がめいっぱい伝わってきて、とりあえず必見と言っておきます。 トップにある「内藤九段の懸賞詰将棋」。今月号も、盤面全体に駒が配置され最初から敬遠してしまう人が多そうですが、題名に「終着駅は始発駅」とあることから、一周してくるのかな、と想像させ、面白そうな趣向になっているように思えます。 そして、実際に解いたところ、その配置とは違って非常にやさしく作られています。入り方で小考、そのちょっと先で小考。後は一直線で本線。そして最後、収束ちょっと手前で小考しましたが、難しい7手詰の方がよっぽど時間がかかると言っておきましょう。終着駅は始発駅の意味も分かりました。 先月で問題の出題は終了した「詰将棋解いてもらおう選手権」。今回は10月号の結果発表のみ。ダントツ一位推しとしていた第4問が予想通り第1位。以下は若干ずれた所もありますが、納得のいく投票結果です。そして、先月の出題分ですべて終了。最後はどれが一位かかなり混戦になりそうですね。 連載講座の一つであった「新・飯島流引き角戦法」が最終回とのこと。棋界の情報などはネットや週刊将棋で十分な現在、やはりこうした講座は充実して欲しいなと思います。次回からまた何か始まるのでしょうか? ・・・・と思っていましたら、1月号予告のところに、「野月浩貴七段による新連載スタート」とありますね。何かは分かりませんが期待しましょう。また同じところに、巻頭詰将棋が谷川浩司九段で新スタートともあります。内藤九段の巻頭詰将棋も今回が最後ということでした(そういう意味も込めて「終着駅は始発駅」なのでしょうね)。 付録は「勝浦修短編集」。7手詰と9手詰に絞って全部で40問が載せられています。内容的にも簡素で筋の良いものが多そうです。道場初段くらいにちょうど良いと思いますので、やってみて下さい。 |
2008年11月号(10月3日発売)の内容と感想 | |
今回号の巻頭カラーは、またしても羽生で、「第56期王座戦五番勝負」の第1局「羽生、17連覇に好発進」(観戦記・神谷浩司)と第2局「まぼろしの妙手」(写真・文・池崎和記)です。 他のプロ棋戦も、王位戦七番勝負第6局(深浦-羽生)、王位戦第5局、竜王戦挑戦者決定三番勝負(羽生-木村)など羽生がらみが多いのは、実際タイトル戦に多く羽生名人が出ている以上仕方ないでしょう。 また、第2回大和証券杯ネット将棋最強戦(渡辺-鈴木)、第29回JT将棋日本シリーズ(羽生-谷川)、第16期銀河戦決勝(佐藤康-三浦)、第16回富士通杯達人戦決勝(青野-島)などがあります。 今回、個人的に最も面白かった記事は、いつものことながら「勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義」ですね。今回は、「世代に見る堅さ論」です。堅さを生かす戦い方について高度な技術を持っていた大山・中原・米長と言った将棋をお手本として55年世代が育ちその技術に磨きをかけ、さらに羽生世代の登場によって進化させる。そして、それを土台にしながらもそれまでのタブーを突き破る渡辺世代。こうした考え方・変遷を分かりやすく書かれている為、たいへん面白く読みました。特に最後の渡辺将棋についてはかなりページを割いていますので、これからの竜王戦を見ていく上でもこの記事を時々思い出しながら見てみたいと思います。 今月号の「リレー自戦記」は、杉本昌隆七段。取り上げた対局は順位戦で渡辺竜王と戦った将棋です。最初の文章からこのリレー自戦記の執筆依頼には同時に取り上げる棋譜のリクエストもあったようで、この対局は、杉本自身に取って「一生に一回」と言えるほどの珍しい、大熱戦の対局だったとのことです。 「イメージと読みの将棋観」はついに最終回。今月は、「昔の漫画に出てきた5五の龍中飛車は成立するか?」「序盤力と終盤力どっちがほしい?」「江戸時代トップクラスの名局」がテーマです。 中でも面白かったのは、序盤力と終盤力の質問の回答。アマチュアだったら絶対終盤だろうけどプロはどうなのだろう?と思いながら読み始めたのですが、各棋士の特徴が良く出ているような回答に納得しました。 トップにある「内藤九段の懸賞詰将棋」。今月号はひと目”解きたくない”感じの初形です。あまりここでヒントを出してしまうわけにもいかないので詳しくは書けませんが、とりあえず考えて見る価値のある詰将棋です。そして、収束7手あるいは9手だけを取りだしても驚く詰将棋になっています。 しっかり解くようになってからは一番の楽しみになった「詰将棋解いてもらおう選手権」。まず9月号の結果発表ですが、自分が微差ながら一位と推した第5問がダントツの一位でした。そして二位とした第6問が実際も二位と今回は納得のいく順位でしたね。
緊急企画・将棋記録集として「羽生名人にまつわる記録その1」が書かれています。王位戦に勝っていれば、より面白い永世七冠の記事だったのですが、今となってはややむなしい記事となってしまったでしょうか。 連載が始まった頃、一度だけ見てあまりにもくだらない内容だった為その後一度も読むことのなかった「内館牧子の上達日記」ですが、たまたま図面が目に入り、思わず読んで見たら結構面白い。特に最後の「藤倉先生に出された宿題三問」は良問です。さすがに何ヶ月もやって、少しは上達しているみたいで、このくらいであれば、超初心者がどのように考えているか参考になる部分は多いのかもしれません。時間のあるとき、前の号から読んで見ようかと思いました。 付録は安用寺五段の「4手目△3三角戦法」。昔なら奇襲戦法の一つくらいにしか見られなかった一手ですが、現在はプロの公式戦でもずいぶん見かけるようになりました。自分で指す指さないに関わらず、この付録くらいは読んでおきたい戦法です。 |
2008年10月号(9月3日発売)の内容と感想 | |
今回号の巻頭カラー、トップ記事にもってきたのは、「第49期王位戦七番勝負第4局、反骨深浦、防衛に王手」(観戦記・上地隆蔵)と「第56期王座戦五番勝負直前企画、どうしたら、羽生を倒せるか」という木村八段と渡辺竜王の対談です。 しかし今回、最も面白かった記事は、「最新戦法講義番外編2、「羽生マジック」の仕組み、教えます!」でしたね。今まででも一番楽しみにしていた記事のうちの一つでしたが、今回は特に面白い。羽生の”銀使い”から始まり、距離感、間合い、スローインと言ったものを非常にうまく分かりやすく、そして(良い意味で)いかにももっともらしく説明しています。これを読んで、その視点から今後の羽生将棋を見て、次の一手を当てるのも面白そうです。今月号イチ押しの記事ですね。 プロ棋戦は、巻頭カラーにある王位戦第4局の他に、王座戦挑戦者決定戦(谷川-木村戦)、王座戦1次予選女流一斉対局、棋聖戦第5局(佐藤-羽生戦)などです。 先月から始まった「リレー自戦記」。2回目の今回は、深浦王位。王位戦第2局を取り上げていますので、内容は大変面白いものです。特に実況中疑問に思っていて週刊将棋にも書かれていなかった変化や、その時の気持ちが素直に書かれていてこれもイチ押しの記事です。ただし、一般的には、このリレー自戦記にはあまり棋譜を見る機会のない若手のものが欲しいと考えているのですが。 今月の「イメージと読みの将棋観」は、「居飛車穴熊に対する振り飛車のシンプル急戦」「将棋の結論は出るか?」「升田-大山戦」とテーマは三つだけ。そしてその後に、単行本化に伴い新たに収録される「羽生-谷川の特別対談」が少しだけ(2ページ)紹介されています。 面白い企画でしたが、さすがに終わりに近づいているのかなという雰囲気を感じるようになってきました。 トップにある「内藤九段の懸賞詰将棋」は、今月号はちょっと長い。が難解と言うほどではありません。詰将棋をそれほど解いたことのない人ですと、「あれ?簡単に詰んでしまう?」と思ってしまうかもしれませんが、受けの妙手が出てきますので注意して下さい。 2ヶ月前の7手詰の評価の結果を見てかなり驚いた「詰将棋解いてもらおう選手権」。自分が一番か二番だろうと思っていた第3問の問題が最下位でした。あまりに驚いたのでこの話は、「ミニ感想」で取り上げました。
毎回楽しみな「棋界のトリビア」。今回は、「7手連続で持ち駒の歩を打った将棋がある」でした。うーん、そろそろネタもなくなってきたのかなぁと思うような感じの記事でしょうか。 今月号の最後には、「永世名人特別認定」問題があります。4永世名人が出題する20題に答えると六段まで無料認定とのこと。 付録は「清水市代の次の一手」。タイトル40期獲得記念で、1期1問ずつ、全部で40の問題を収録しています。さすがに中井戦が多いですが、初期の頃には林葉戦もあり歴史を感じさせます。 |
2008年9月号(8月2日発売)の内容と感想 | |
今回のトップ記事は、「巻頭カラー特集・十九世名人・羽生善治インタビュー」です。質問の仕方も良くこの記事は必見です。そしてそれに続く「最新戦法講義」も読み応え十分。 同じようなインタビュー記事として「清水市代(獲得タイトル通算40期特集)努力する心」が中程にあり、これもなかなか面白かったです。 プロ棋戦は、目次を見てもらえば分かるように、棋聖戦五番勝負第3局と第4局。さらに王位戦の第1局、第2回朝日プロアマ一斉対局、マイナビ女子オープン予選一斉対局などの記事となっています。プロ棋戦については、個人的にはネットで見て、週刊将棋を読んでいることが多いので、あまり読みません(時間のある時に見ても、「そうだったな」位の確認に終わることが多いです)。 今月号から「リレー自戦記」が始まりました。副題に「トップ&旬の棋士による」とありますが、その第1回目は橋本七段。棋譜は順位戦の阿久津六段との一戦。記事も面白く読みました。普段、超トップの棋譜ばかりしか見ていないので、こういうのも面白いかもしれません。トップはともかく、旬の棋士を出してもらいたいものです。 毎回、何が出るか楽しみにしている「イメージと読みの将棋観」では、「銀落ち」「プロ最先端の相穴熊」「相振り飛車の囲い」「先手が先に2手指せたら?」「花村流の遠巻き攻め」とテーマが五つ。ただし今回は、特別驚くような話もなく、読んで納得できるようなことが多かったですね。 トップにある「内藤九段の懸賞詰将棋」は、非常に難しいこともあるのですが(先月号など)、今回は級位者の人にもやってもらいたいという感じのものです。 最近楽しみにしているのが、「詰将棋解いてもらおう選手権」です。最初、3手や5手だったので、ずっとこの位で行くのかと思っていましたら、先月は7手、そして今月は9手です。少しずつ手数を上げていく趣向なのですね。しかし先月の7手詰は結構難しかったです。初段クラスを多く参加させたいなら、9手以上はどうかなと思います。
「イメージと読みの将棋観」と同じくらい楽しみにしているのが「棋界のトリビア」。今回は、「奨励会時代の成績で、ムダな勝ち星の少ない棋士ベスト3」。面白さはまあまあでしょうか。 付録は「プロが驚いた羽生の終盤術39」。これは、プロ棋士37人(後の二問は故大山、故村山)が実際に戦った中で現れた次の一手を出題しています。これは個人的には二重丸の付録に推したいです。 |