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将棋に関するミニ感想

2010年8月

8月27日(金) 詰将棋解いてもらおう選手権と詰将棋の作り方

将棋世界で、「詰将棋解いてもらおう選手権」という企画があったのは、もう二年も前のことだ。自分の中では、ここ十年の間でも最も楽しみにしていた記事だったが、あまり好評ではなかったのだろうか?今の所第二弾の企画は出そうもない。

しかし、これをパクッて、ここ入間将棋センターでも「詰将棋解いてもらおう選手権」を開始したのである。そして、二年が経ち、すでに第七回まで進んでいる。

今回は、これまでの経過をここに記録として残すと同時に、今回、第七回に出題した自分の詰将棋の製作過程を載せてみたいと思う。

まずは第一回目から今回の第七回目までの出題者と優勝、準優勝の面々。

  年月 手数 席主 N五段 O五段 T五段 W三段 N三段 N二段 Y準二段 T準二段 YT初段 YD初段 人数
第一回 2008/10 5〜11 2位 2位 2位 優勝 6人
第二回 2009/01 7・9手 2位 優勝 5人
第三回 2009/05 5手 2位 優勝 2位 5人
第四回 2009/08 5手 2位 優勝 6人
第五回 2009/12 5手 2位 優勝 7人
第六回 2010/03 5手 2位 優勝 6人
第七回 2010/07 5手 優勝 2位 6人

※今まで一度でも参加した人は全部で11人。その中で、自分(席主)を含め三人だけは常に毎回参加している。N五段は最初企画があることを知らなかったが、知ってからの第三回以降は毎回参加。なお、N二段とYD初段は小学生。

※得点方法は、第一回と第二回のみ一番良いと思うものだけを出してもらいその得票。第三回以降は、すべての順位を付けて、得点を逆加算するという方式。(6人の場合、1位に上げたものに6点加算、2位5点・・・6位1点)

※毎回、作成者当てを行っているが、すべての作成者を当てた人はいないので、次回からは、上位にした3人だけを予想してもらう予定。

※第六回の本と言うのは、単行本の標準的な5手詰をこっそり入れたらどのくらいの評価になるだろう?ということで参加させたもの。解答した人たちは、単行本が入っているということは知っていてもどれが単行本かは分からない状態になっている。結果は3位に入った。


第一回は手数を11手までとしたが、やはり手数が長くなる方が難しくなり、当然評価も高くなる。また、難し過ぎるよという苦情?も出て二回目は7手9手限定とした。しかし、それでも難問9手があったため(それが優勝)、やはり苦情が出て、第三回以降は5手詰限定になったという経緯がある。

この表からも分かるように、自分は今まで常に優勝争いをしていながら実は一度も優勝したことがなかった。そこで、この第七回は今度こそと修正に修正を加えて作った一品になった。
その結果、何とか初優勝となったが、実際には二位の作品と僅差で最後まで競り合った。
以下に、その詰将棋を作った過程を書いてみたいと思う。

詰将棋の作り方

解答は一番下

まずは第七回で優勝した自分の5手詰(第1問)を載せるので、挑戦してもらいたい。(第1問の解答は最後。第2問以降は画像をクリックすることで解答ページが開きます)。

ここでは詰将棋を作っていく過程で全部で10問の詰将棋を紹介している。左に載せたものは便宜上第1問から第10問と番号を付けており、余詰め検討もすべて済んでいるオール5手詰である。この下の文章には、ほとんどその答えが書いてあるものもあるので、解きたい人はまず詰将棋を先にどうぞ。


さて、詰将棋の作り方は人によってそれぞれ違うようだが、自分の場合は、まず基本となる筋から考えることにしている。

しかし、正直、5手詰で入玉形でなく新たな筋というものはもうあまり思いつかなかった。(入玉形禁止というわけではない)

今回はどうしようかな、と思いを巡らせていると、ふと、「そう言えばかなり前に、詰将棋掲示板に、自分のやさしい5手詰で難しいのがあるといっていた人がいたな。」と思い出した。

それが、この左の詰将棋の第2問。2007年2月、「やさしい5手詰」に出題した第163問である。この詰将棋自体も、何かにある筋を使って適当に作ったものだったが、思いの外難しくなったらしい。

そしてこの詰将棋がいかに上の詰将棋に変わっていったかをこれから書いていくことにする。

この最初の詰将棋(第2問)は、▲5二角成に玉方は△3二玉と△5四玉があり、どちらも同手数駒余りなしで詰む。詰将棋として問題があるわけではないのだが、出題するものとしては片方に限定した方が良いかな、と思い、まず△3二玉と逃げる方の筋で作ってみた。

それがこの第3問。下に逃げる筋を使って作ったもの。
実はよくそうしているのだが、一度作ったものを一人の五段の人に解いてもらってその難しさの感触を得ている。どうしても自分で作っていると、何度もそれを修正することになるので、それが難しいのか簡単なのか分からなくなってしまうからだ。

5手詰でこの五段の人が数分考えるようなら十分難しいと考えられ、それなら出題しても結構な評価をもらえそうと言う訳。

そこでまずこの詰将棋をその五段の人に出してみたのだが、これがひと目で解かれてしまった。

これにはちょっとがっかり。「やっぱり下に逃げる筋じゃ、見え見え過ぎてダメか。」と思い、今度は上に逃げる筋で考えることにした。

そうして考えたのが左の第4問。一応下に逃げる手もあるが、下は簡単なので、これなら誰でも上に逃げるのが作意であると分かるだろう。これくらいなら許容範囲。

1四銀や2一の香は余詰め消し。これがないと馬が強力過ぎて詰んでしまう。

この詰将棋、実は5三馬と寄ったり2六の馬が入る筋もあり、まあまあかな、と思っていた。これ以上良いものが作れなければこれで出題しようと。
しかし、実際にはここから出題するまでにはかなり頭の中で考えることになった。

たとえば同じ筋でも、できるだけ右上に駒を配置できればより上部脱出を考えづらくなるだろうというようなこと。(つまり、第4問の▲5二馬△5四玉より、第5問の▲4二馬△4四玉の方がより広い場所へ出られるというイメージがある)

まあたいした違いではないのだが、右上にこぢんまりと配置した方が見栄えが良いと言うこともあるし。

そんな訳で、第5問を作ってはみたものの、結局どうも(第4問の)▲4六歩があると、3手目の馬捨てがすぐ見えてしまうようで面白くなかった。

「この歩消去できないかなぁ」と思って作ったのが第6問。桂にして利きを分かりづらくするという姑息な手段を使ったが、桂にすると逆側にも利いてきてしまい第5問のように一路寄った形では余詰めを消しきれなかった。

「なかなかうまくいかないなぁ」といろいろ考えていたが・・・。



ここでちょっと話題変更。

まずこの下の第7問と第8問をこの下の文章を読む前に解いて見て下さい。もちろん5手詰。

解けたでしょうか?この二つ。

第6問まで解いてきた人だと、この7問を見た瞬間に▲5二角から入ると思う。△5四玉には▲4四馬と今まで見て来た筋に入りピッタリ。ならこれが正解と突き詰めてみても、▲5二角に△3二玉と落ちられるとなかなか詰まない。

実はそれが狙い。
いろいろと動かしているうちに全然違った筋で詰将棋が出来てしまうのはよくあること。これもそんな感じで作れてしまったもの。
さらにそれを龍に変えたのが第8問。これを出題しようかなぁと考えたこともあるが、結局初めての人にはたいした詰将棋ではないと思ったので断念。

余詰めあり


さて、話題を元に戻す。

角打ち(馬入り)から馬捨てという筋をずっと考えていたが、どうしてもこれ以上難しく出来ない。4五への利きを初形から見えないように出来ないかということを考えていて、突然、初手銀打ちを思いついた!

そう、▲4四銀と打つと詰まなくて、▲3四銀と打てば詰む形にする。そのことを考えながら作ったのがこの第9問。

この図も配置はいろいろと動かしたが、ようやくここまで持ってきたと言った感じ。何と言っても、初手▲5三銀成△3三玉に▲3四銀と作意と同じラインでの余詰めがあり、これを消すのに苦労した。3手目の▲3四銀にも取れないため、△2二玉で凌ぐしかないが、▲4四馬と出られると相当危なく、何度も強引に詰まされてしまった(ソフトに)。

また、同じようでも、2四に金をおいて、1二が飛車の方がより初手の感触は良いな、と思い作ったのが第10問。

実はこれにも同じラインの余詰め筋がある。▲6三桂成△4三玉▲4四銀だ。以下△3二玉▲3三金と打たれるが、一路上より広くして逃れていると言うわけ。

この第10問は結構良いものが出来たと思っていた。ただ、それだけに二手目の変化が三通りもあって、どれでも5手で駒余りなしになってしまうのが気になった。

そこで、やむなく△6三に歩を置くことにした。これで下へ下がる変化と取る変化はいずれも駒が余ることになる。やや不本意なもののそれでもこれを出題しようかと思ってまた数日が過ぎた。

ある時、ふと最初の銀打ちを盤面の銀に置き換えられないかという考えが頭をよぎった。つまり左の「5五銀を置いたら」である。
ただ、ここに銀を置いて初手▲4四銀と出るのが作意であるが、このままでは▲6三桂成△4三玉▲5四馬までの3手詰だ。

この余詰めを消す為には、6三への利きを減らすか相手駒を足すことが必要。しかし、そうすると▲4四銀に△5二玉の変化が詰まなくなる。それを詰ます為に2二の飛車を動かす(下がった時、▲4二金という筋で詰ます為)。しかし、2二の飛車をなくすと初手▲5四銀でも△5二玉に▲4二金が成立してしまう。

「うーん、余詰めが消せない。」
3手目の▲5四馬も作意とかぶるので消す訳にもいかず、いろいろ手を尽くしてみたが、どうしても余詰めが消せなかった。
そしてついには、「この形で、5五に銀を置いて余詰めを消すのは不可能だ!」との結論に達してしまったのだ。

それでも、提出期限までに時間があったので、何となく気にかけていた。5五の銀を持ち駒にした図面で出す直前まで来ていたのだが、ある時、フッと思いついた。

「段を一段下げるんだ!」

そうすれば桂は成れないし、馬なら△3四玉▲4五馬に△4三玉と千日手で逃れられる。さらに、下に下がった時は、角を取られても一手で詰むようにと金を置いておく。飛車はなくても大丈夫だが、角の斜めに(3三に)金を打たれないように桂を利かせておく。
これでどうだろう?と余詰め検討にかけるも余詰めなし。こうしてようやくついに完成したという訳。

しかも、変化同手数を消す為に置いた△5四の歩だが、この図面では、歩がないと▲5四金△3四玉▲4五馬の三手詰。つまり、余詰め消しとして立派に役に立っていることになった。(これはたまたま)

4手目がどちらでも良い、と言うのが僅かなキズだが、これはさすがにもう仕方ないと思っている。いろいろ考え、ずいぶん駒を動かして作ったもの。ここには製作過程で考え方に変化のあった10問を取り出したが、実際には20問以上あっちこっち駒を動かし、似たような詰将棋を作っている。

詰将棋作家の人たちは、簡単に余詰めを消したり、実現したい筋を作ることが出来る才能を持っているらしい。自分にそうした才能がないことは十分分かってはいるのだが、それでも作るのは結構楽しかったりする。

「詰将棋を作る」と言うのは、確かに才能があればどんどん作ることは出来るが、そうでなくても出来ないと言うことはない。最初はやさしい詰将棋を解いてみて、驚いた筋(たとえば歩不成の入った詰将棋に最初に出会ったときは驚いたが)、そうした筋を使って自分でも作ってみて欲しいと思う。
新たな楽しみがそこに生まれ、また思わぬ自分の才能に気づくかも知れない。


(解答)第1問 ▲3五銀△5五玉▲4五馬△同玉▲4六金まで5手詰。

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