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NHK杯に見る受けの手筋

(2010年3月29日出題)

第242問(2010年3月28日里見女流名人・倉敷藤花-矢内女王-清水女流王位・女流王将戦)
(問242-1)
来期NHK杯への女流棋士決定戦が2局行われた。最初は里見-矢内戦で、この対局に負けた人が清水二冠と戦い、これらの勝者二人がNHK杯への出場権を得る仕組みとなっている。

その一局目、先手里見女流名人・倉敷藤花対後手矢内女王の将棋は、先手のゴキゲン中飛車対後手の居飛車穴熊。中盤の競り合いから馬を引きつけあったが、先手の馬の方に軍配が上がり、先手の模様が良くなった。今、△3二金寄と両取りの金を逃げたところだが、ここで指された先手の次の一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問242-2)
2局目は、先手清水女流王位・女流王将対後手矢内女王の対戦で、戦型は角換わり棒銀。先手が先攻したが、後手も反撃し見応えのある応酬が続いた。形勢が何度も入れ替わる熱戦となり、最終盤の下の局面は、△8七角と打ち、次に△6八金の一手詰みを見たところ。ここで清水女流二冠の指した受けの一手は?

(難易度・・・



(これより下に解答)

(問242-1解答)「駒を渡す前に受けておく、龍をさえぎる底歩」
ここで里見女流名人・倉敷藤花の指した▲5九歩が相手に手のないことを見越した手堅い受けの一手。この歩を打たなくても、今すぐに何かある訳ではないが、相手に金が入ると△2九金で詰むし、銀を渡しても龍筋が通ったまま△4九銀を打たれ非常に危険だ。
その為、攻めを開始する前に、じっとこの龍を遮断しておくのが固い。もちろん、この手との交換として、桂香を取られたり、歩を垂らされて飛車をいじめられるような手があっては逆に疑問となる。そのような相手に手のないことを見越した上での一着と言える。

本譜はこの後、矢内女王が猛追し、最後は一瞬危なくなったように見えたが、確実な読みで終盤を乗り切り、先手の里見女流名人・倉敷藤花がHNK杯出場を決めた。


(問242-2解答)「角を生還させない銀打ち」
△6八金の一手詰だけを受けるなら、この地点に駒を埋めたり、飛車筋を通したり、下に銀を打ったりといろいろある。しかし、6八に駒を埋めると△5八金からボロボロ取られる手があり、また局面によっては△7六角成と成り返られ飛車を活用されることも考えなければならない。
そこで本譜の▲7七銀が、一手詰を受けながら、角の生還を許さない受け。このままでは角を取られてしまうので△5八銀不成と迫るよりなく、▲同玉(▲7九玉には△6七銀成)に△7八角成と進み、玉が少し安全になった。

本譜は、先手玉を寄せるのに時間がかかるようになった為、▲5四歩から後手玉を攻め立て、一気に寄り形へと持って行き、最後は後手の粘りを突破し、清水女流王位・女流王将が勝ってNHK杯出場を決めた。
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