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NHK杯に見る受けの手筋

(2010年10月25日出題)

第272問(2010年10月24日 広瀬王位-渡辺竜王戦)
(問272-1)
先手広瀬王位の四間飛車穴熊に後手の渡辺竜王は居飛車穴熊。予想通りの戦型で始まったこの将棋は、渡辺竜王の攻め、広瀬王位の受けが延々と続く大熱戦になった。時間いっぱいまで対局が放送されたので感想戦もなかったのだが、広瀬王位の受けには問題にしたい手がたくさんあった。ここではその中で、特に驚き感心した手を二つ出題した。
下図は、千日手含みの中、94手目△3八同とと、金を取ったところ。一見すると終局間近に思えるが、この後に続く大熱戦がまだ始まったばかり。ここで指された先手広瀬王位の一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問272-2)
上の局面から何度も千日手になりそうだったが、渡辺竜王が打開。しかし打開した為、今度は攻めが届かず切れそうになり、今136手目△8六歩と飛車を攻めに参加させようとしたところ。
ここで指された先手広瀬王位の次の一手は?

(難易度・・・



(これより下に解答)

(問272-1解答)「攻め駒に当てない異筋の受け」
問題の局面は、とりあえずと金に当てたい為、▲6五角、▲4七銀、▲3九銀打などが考えられる。通常、受ける時は駒に当てておかないと、その駒をそのままに手をためられてしまい受けがなくなってしまうからだ。
ところが、ここで広瀬王位の指した一手は▲4七金。と金に当てていないが、△4八金や△4七金などからみつかれる手を防いだ異筋の受け。
実際、これで攻めをつなげるのが難しいように見えたが、△4九金と異筋の受けには異筋の攻めで攻めを続行。ものすごい攻防が延々と続いた。


(問272-2解答)「穴熊に貼り付いた金銀を一掃する遠見の角」
△8六歩に▲同歩と取ると△7三桂から跳ねた桂が(7七の)角にあたる。しかしそれでも一旦は取るよりないかと考えていた時に指された▲6六角。△8七歩成に▲8三歩を用意すると同時に、▲3九金△同金▲同角と攻め駒を一掃する手を狙っている。
この角は近いので、遠見の角とは言えないかも知れないが、この前の▲6五角は飛車がいなければ▲8三角と打つ所で、このように遠くから自陣に利かせる角は受けの好手になることが多い。
このふわりとした▲6六角は好手に見え、先手が残したのかと思ったが、そんなに単純ではなかった。

本譜は、この後も50手以上熱戦が続くことになり、感想戦がなかったので、どのような形勢の揺れ動きがあったのかは分からずじまい。ただ、渡辺竜王の攻めも切れることなく急所を突き、192手の熱戦を制した。攻めも受けもさすが若手タイトル者同士と言える戦いで、今期上位五指に入る一局だったと思う。
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