将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ

NHK杯に見る受けの手筋

(2011年8月29日出題)

第314問(2011年8月28日 松尾七段-杉本七段戦)
(問314-1)
先手松尾七段、後手杉本七段で戦型は、後手のゴキゲン中飛車。先手が二枚の銀を繰り出し、中央から玉頭で小競り合いが起き、次第に大きな戦いに発展していった。そして後手の銀が取られる形になると、後手の攻め、先手の凌ぎが明確になったが、その間隙を縫って反撃した手が厳しく、形勢は先手に傾いた。下図は▲7五銀と急所を押さた手に、△7六桂と王手し▲7七玉と上がったところ。現在7四の角取りと同時に後手玉にも迫られており、ここをどのように凌いだら良いか。ここで指された後手杉本七段の次の一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問314-2)
最終盤、後手玉が寄ったと思われるような所からギリギリ凌がれ、先手玉も相当危ない所まで来てしまった。今、△6五銀直と角取りと同時に5六の桂取りにもなるように6四の銀を進めたところ。後手玉は桂以外の何か一枚でも入れば詰みだが、先手玉も角を渡すのは相当怖い。ここで指された先手松尾七段の次の一手は?

(難易度・・・



(これより下に解答)

(問314-1解答)「距離を正確に計って辛抱する」
逃げながら飛車を取れる局面で、しかも3八の飛車を取ってもまだすぐに(後手玉が)詰むわけではないので、取ってしまいたくなる。しかし角が動くと△7四歩を打たれ、あっと言う間に受けがなくなり、一方で飛車を取っても先手玉は詰まない。そこで△6三銀と辛抱したのが実戦。部分的な受けとしては最も普通だが、実戦で指すのは難しい。

将棋というのは、最終的に相手の玉を詰ますゲームなので、相手の玉と自分の玉、常にそれが詰むのか詰めろなのか二手スキなのか三手スキなのかを考え、その距離を正確に計る必要がある。そして、辛抱しなければいけないときは、辛抱することも大切なこと。


(問314-2解答)「早逃げで手を遅らせる」
ここで松尾七段の指した一手は▲6九玉の早逃げ。
この局面は複雑で、7八玉のままだといつでも△6七歩成あるいは銀成、銀不成からの攻めがあると同時に角を渡すと△8七角も脅威になってくる。また、後手玉は、何か一枚入ると詰むが、仮に入らなくても次に▲8二金と打てば受けのない形になる。
そこで実戦でも指された▲6九玉の早逃げが味の良い一着。△6七歩成と来るのは、▲同金右△同銀成▲同金の局面で、後手玉が詰めろになり先手玉は詰まない(△6七歩成自体が詰めろではないので▲8二金でも良さそう)。また、単に△7四銀と角を取られた局面も▲同角成と取り返しておけば先手の勝ち。

本譜は△5六飛と先手に圧力を加えながら、▲8二金に△7一桂を用意したが、△5六飛自体が詰めろでない為、▲9一金から詰めろの連続で迫った先手がそのまま後手玉を寄せきることに成功した。
先週の問題へ/来週の問題へ

将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ