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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年3月23日出題)

第492問(2015年3月22日 行方八段-森内九段戦)
(問492-1)
今期NHK杯決勝戦。先手行方八段、後手森内九段で戦型は角換わり腰掛け銀。定跡形から先手が穴熊を目指し香を上がる。これに後手から△3五歩▲同歩△2四銀と動いて戦いが始まった。
図はすでに終盤。今△2八飛と金取りに飛車を下ろされたところ。この▲5八の金は当然取られてはいけない。ここで、もし4筋に歩が打てるなら、▲4八歩。持ち駒に金を持っているなら▲6八金打と受けるのが固いが、どちらも出来ない。そこで行方八段はどのように指したか。最も効率の良い受け方とは?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問492-2)
上図の飛車打ちが厳しく、少し後手が良さそうだったが、先手も猛追しここでは少し難しくなっている。そして今▲8二角と飛銀両取りをかけた。「両取り逃げるべからず」とは良く言うが、ここでもその格言が当てはまるのかどうか。そして後手の森内九段はどのように指したか。後手の次の一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問492-1解答)「遊び駒の活用」
受けに限らず将棋は全ての局面において遊んでいる駒の活用が大切だ。ここでも、▲4八歩や▲6八金打などしっかりした受けが出来ない以上、▲6七銀と遊んでいる銀を使って受けるのが一番自然な一着。後に△4六桂や△5五桂などの攻め筋は残ってしまうが、この局面では仕方ない受けとも言える。

これに本譜は、△2六飛成とこちらの香を取った後、(▲3七角を含みに)▲1五香と走り、△5五桂と進んだ。そして、その△5五の桂を食いちぎり、▲3四桂から金を取って、第2問の▲8二角へと進んだ。


(問492-2解答)「より価値のある駒を助ける」
駒の価値だけで言うと、飛車の方が銀より二倍近く高い。しかし、盤面(位置)の価値で言うと、5五の地点は隅に比べて三倍も四倍も高いと言える。特にこの局面では、玉が△3三にいる為、▲5五角成とこの地点に銀を取られながら成り返られてはいけない。
という訳で実戦は△6六銀。△5五の銀を助けると言っても、△4四銀や△6四歩などでは、単に助けただけの手であり、先手玉への脅威がない。△6六銀は銀を助けながら攻めの一手にもなっていると言うことで、この局面では当然の一着と言える。

本譜はこの直後間違えたということだった(感想戦で)。実戦は▲3四歩△2二玉を利かして▲9一角成と飛車を取ったが、△7七銀成から△6九銀が厳しかった。ここでは▲6六金と銀を取り、△同龍に▲6七銀と(寄せられてしまう可能性はあるが)受けておいた方が難しかったとのこと。
本譜はその△6九銀を抜くため、持ち駒を放出しなければならなくなり、先手の足りない局面に。結果、森内九段が、第64回NHK杯テレビ将棋トーナメント優勝を決めた。
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