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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年8月3日出題)

第510問(2015年8月2日 木村八段-脇八段戦)
(問510-1)
先手木村八段、後手脇八段で戦型は角交換振り飛車(向かい飛車)。3筋の歩交換の後、先手は矢倉、後手は美濃から銀冠へ組み替えて両者仕掛けをうかがっていた。そして後手から△5五銀とぶつけて開戦、角銀が駒台にのった。下図はその直後。今▲7六角と自陣角を据えて後手の応手を聞いたところ。▲4三角成という単純な狙いだが、持ち駒に銀がある為意外に受け方が悩ましい。後手脇八段の指した次の一手は何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問510-2)
先手は歩得を主張し、後手は馬の威力に期待している。この局面、すぐに何かを受ける必要がある訳ではないが、攻めも難しく、何を指すべきか難しい。ここで先手木村八段の指した一手は何か?「受けの一着」ということが分かっていればそれほど意表な一手ではなく自然かもしれない。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問510-1解答)「棋理に反しても正確な読みで」
金銀は多くの場合、玉の方に近づけるのが正しい筋だ。なのでここでも△5二金と動きながら4三の地点を守るのが自然。しかし▲6一銀の割り打ちはあるし、感想戦では▲3二歩が示されこれが結構うるさい。そこで、棋理には反するが△3二金と反対側に動いて4三の地点を守ったのが読みの入った好手。これで先手からの明快な攻め筋がなく、逆に△7四歩や△6四銀などの攻め筋が残り、先手の急がされる局面となっている。

本譜はこの後、その先手の角に働きかけつつ、後手は馬を作ることに成功したが、歩損もしておりどちらが良いかは分からない難しい攻防が続いた。


(問510-2解答)「上部を厚くし後手の動きを待つ」
△4四歩から△6五馬が見えるだけに6五の歩を守りたくなるが、▲7七の銀は動かすと極端に先手陣が弱くなる。そこで単に▲6七金右と上がって上部を厚くしたのが「なるほど」の一着だった。そして△4四歩に▲2七角と引いて△6五馬に▲1六角と角を転換した構想が鋭く先手の指せる展開となっていった。

感想戦ではこの一手前、△3二馬から△4四歩〜△6五馬と一歩を取りに行くのではなく、△4一馬と下まで引いて、△3三の金を使えるようにしておいた方が良いとのことだった。実戦は▲1六角に対し、この角を目標に△1四歩と動いていったが、巧みな手順でこの角に逃げられると、後手だけ終盤という辛い展開になり、結局双方の玉に一度も王手がかかることなく後手の投了となった。
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