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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年8月24日出題)

第513問(2015年8月23日 糸谷竜王-井上九段戦)
(問513-1)
先手糸谷竜王、後手井上九段で戦型は相矢倉。先手が3筋を切りに早めに動いたが、後手も4筋の位を取ると、お互いの玉は一手動いただけの早い戦いとなった。しかし中盤から終盤にかけての駆け引き、一手一手は見応えのある好勝負に。そして下図はその終盤。今、▲7三馬と桂を取りながら飛車取りに当てたところ。△1八馬から△7九飛〜△8九飛成の攻めが見えるので早く攻めたいが、△8二の飛車を取られると上部への脱出を気にしなければならなくなる。ここで指された後手井上九段の次の一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問513-2)
上図から後手は先手の飛車を追いかけ、結果、馬との交換に成功。さらに手筋とも言える歩の垂らし、叩きと急所を攻め、妙着の銀不成も飛び出し、後手必勝と思われる局面にまで持っていった。しかし△4八角から△5九角成と張り付いた手がやや疑問だったか、ここで先手に強烈な勝負手が出た。ここで指された先手糸谷竜王の次の一手は?この後、あっという間に逆転され、感想戦ではこの一手前の△4八角が悪かったのでは?というような話にまでなった。ここからの先手の凌ぎとは?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問513-1解答)「冷静に逃げておく」
ここでじっと△9二飛と逃げたのが実戦。飛車取りなので逃げるのは当然とも見えるが、終盤では単に逃げるだけの手は緩手になりやすい。ここでも▲1八の飛車を取って、すぐにでも攻めたいのだが、やはり△8二の飛車は取られると、先手玉の上部が広くなるだけでなく、後手玉の寄りも早い。
実戦の△9二飛は飛車を逃げるだけの手なので、棋譜だけを見るとたいした手には見えないが、観戦中に、「なるほど、冷静か」と感心した一着でもあった。

本譜は仕方なく先手も▲5八飛と逃げ、△4七馬に▲5九飛と逃がしたが、△5六歩と垂らし、△4六銀のさばきも見えてきて後手の調子が良くなった。そして、この後△7九銀不成という妙着も飛び出し後手必勝態勢に持っていったかに思われた。


(問513-2解答)「受けは攻め駒に当てて」
ここで▲2九飛と打った手が当然とはいえしぶとい一着だった。▲6九の銀をタダで取られない為には、これしかないとも言えるのだが、この後の受けも読みに入れてないとこの飛車は打てない。

本譜は、この後△6九馬▲同飛△5八銀に飛車を見捨てて▲8七玉と早逃げした手が続く勝負手。△6九銀不成に▲6七角と妙着のお返しをするともうその局面はどちらが勝っているのか分からない状況となった。
感想戦ではこの後はあまり触れられなかったが、この図の一手前、△4八角を井上九段は悔やんでおり、平凡に△6八金〜△8八歩成の攻めで後手優勢は動かなかったと思われる。
結局、打った▲6七角が▲5六角と桂を取りながら△1二玉をにらむと、あまり受けようもなく、▲2四桂から一気に後手玉を即詰みに討ち取り、先手糸谷竜王の逆転勝ちとなった。
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