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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年8月17日出題)

第512問(2015年8月16日 橋本八段-澤田六段戦)
(問512-1)
先手橋本八段、後手澤田六段で戦型は角道を開けたままの向かい飛車。初手▲5六歩に後手が飛車先を早めに突いて形を決めた為、この戦型となった。そしてお互い玉を移動した後、早い段階で先手が▲8六歩と突っかけて戦いが始まった。飛角総交換後、今△6四角とここに角を打って先手の応手を聞いたところ。▲8六の銀取りを受けなければならないがここではどのように受けたら良いか?実戦で指された手筋でもある最も自然な一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問512-2)
仕掛けた段階では先手がポイントを上げたかに見えたが、▲8六銀が遊び駒になってしまったのも痛く、中盤過ぎはもうどちらが良いか分からない局面が続いた。そして下図は△5五角の王手に▲4六香と攻防に受けたところで、後手から見れば次に▲3五桂と打たれてはあっという間に終わってしまう。そこでその筋を受けなければならないが、ここで指された後手澤田六段の指した一手は?このような終盤で指される当然の一着とは?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問512-1解答)「大駒は近づけて受けよ」
厳密な意味でこの格言が当てはまるという訳ではないが、△7五同角にすぐ取れない(▲同銀は△8一龍と素抜かれてしまう)という意味では近づける為の手筋の歩とも言える。そして△同角なら▲5一龍と先に切ってから▲7五銀と取る手や、場合によってはそれから▲8七歩と受けても角取りの先手は残る。良く出てくる第一感の歩なのでこうした感覚は持っていたい。しかし本譜はこの第一感がもしかすると正着とは言えなかった可能性もある。

本譜はこれに△同歩と歩で取り返したのが、じっくりとした好手だったと言えそうだ。対局中は▲6五歩から▲5五歩と先手好調に見えたが、△7六歩を利かし△4四角と活用すると結局▲8六の銀が完全に残ってしまい、僅かな駒得だけでは追いつかなくなってしまった。
実際、感想戦では、この後なかなか先手の良くなる順が見つからず、終わり際にはここで▲8五銀とかわした方が良かったのでは?という言葉まで出てくる敗着の分かりづらい不思議な一戦だった。


(問512-2解答)「終盤は先手を取って攻防になる手を」
ここでは△3三香が第一感で本譜もこう打たれた。▲3五桂を受けるだけなら、「敵の打ちたい所へ打て」の△3五歩や△3三歩と歩で追っても一旦は受かるが、やはり終盤は先手を取ることが大切ということと攻防ということを考えると△3三香の一手とも言える。

本譜はこの後、△5五の角が馬になると生角との差がはっきりして、先手の苦しい戦いへと進んで行った。そして美濃の急所、▲3六の地点を狙われると玉頭での攻防が逆転し、まだ詰めろもかかっていない状況ではあったが、先手の橋本八段が投了、後手澤田六段の勝利となった。
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