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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年10月26日出題)

第522問(2015年10月25日 阿部健治郎五段-渡辺棋王戦)
(問522-1)
先手阿部五段、後手渡辺棋王で戦型は角換わり。後手の渡辺棋王がちょっと工夫して棒銀を繰り出し、それに対応しているうちに、後手の攻め、先手の厚みという構図になった。形勢は二転三転したように思うが、下図はその終盤、今、▲7二と直と飛車に当ててと金を前進させたところ。後手から見れば、大駒は全部取ったものの、先手玉は手厚く捕まえづらい。ここで指された後手渡辺棋王の指した一手は?このような局面で、最も自然な飛車の逃げ場所と言えば?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問522-2)
上図から先手も後手玉に襲いかかった。しかし、受けの手を二回手抜いて攻めた手が危険だったか、先手玉も急に危なくなることに。今、△2九にいた馬を△3九馬と寄ったところ。ここで先手はどう指したら良いか?実は、感想戦ではこの馬寄りが敗着ということになっているが、せっかくの悪手もそれを咎めないと好手にさせてしまうのが将棋だ。当然とも言える先手阿部五段の指した一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問522-1解答)「矢倉の形における飛車の逃げ場所」
飛車は出来るなら8筋に置いて攻めに使いたい。しかし△8三、△8四どちらへ逃げてもすぐ捕まってしまうので、仕方なく横へ逃げざるを得ない。そして逃げるとすれば△3一飛のように一番遠くへ逃げるのが形。ここまで逃げておけば▲5二とと入られても当たっていないので、他の手を指せるという訳だ。

本譜は▲1八香と銀を取り返し、△同馬に▲4五桂と攻めに転じた。そしてさらに▲4一銀と受けずに攻め立てたがこれは危険な一着で、後手にチャンスが回ってきた。

(問522-2解答)「玉の早逃げ八手の得」
問題図の局面は△5七馬左の一手詰なので、ここは早逃げの一手だ。ただ大事なことは、▲3三桂成や▲3二銀成など王手だからと言って駒を取ってしまわないこと。受ける時は、相手に出来るだけ駒を与えないのが基本で、駒を渡してしまうと、その駒で攻められ寄せられてしまうことにもなる。

この後本譜は、△6三銀と上部を押さえたが、▲6一飛がその切り返しで、△4一飛に▲6三飛成と押さえの駒を取ると先手玉は安全になり、先手の阿部五段がそのまま勝ち切った。ただ感想戦では、問題図の△3九馬が疑問。解説の藤井九段も話していたが、その手では△5七馬と言う手があり、▲同玉に△7七銀としばるとこの受けが容易ではなかったらしい。
この一局の全体の流れは、仕掛けの前後は先手有利、その後逆転、さらに問題1の局面前後では再逆転して先手有利、その後一瞬後手にチャンス(第2問の一手前)、それを逃し先手が勝ち切るという形勢に見え、二転三転の熱戦だったと思う。

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