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NHK杯に見る受けの手筋

(2016年9月12日出題)

第565問(2016年9月11日 深浦九段-先崎九段戦)
(問565-1)
先手深浦九段、後手先崎九段で戦型は角換わり腰掛け銀。この戦型で最も良く歩がぶつかる▲4五と△6五、両者がこの歩を突き合って戦いが始まった。そして中盤、どちらが読み勝っているのかと言うような手抜きの攻め合いに、先手の深浦九段が飛車を目標にひねった受けを捻出、先手が一本取ったかに見えた。しかし後手の先崎九段も玉頭を叩かれた歩に対し端に逃げて辛抱、下図はその数手後の終盤戦。今、▲2一金と桂を取ったところで、後手玉には▲1四歩からの詰みがある。対して先手玉は△9三角からかなり王手は続いても下段に味方の駒がないため詰まない。そこで、ここで指された後手先崎九段の受けの一手は何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問565-2)
上図は先手の攻め自体やや細く凌ぎは成功、後手優勢となった。対して下図の一手前、先手玉は「打ち歩詰でギリギリ逃れている」というほとんど受けのないような状況で敗勢、後手から見れば後一歩という局面になっている。下図は、その打ち歩詰打開も兼ね、△3七飛成と桂を取りながら先手玉を詰めろにした味の良い一着でもある。逆に先手から見れば、どこをどう受けたら良いかちょっと分かりづらい局面でもあるが、この局面だけの先手の狙いは▲5五角の詰めろ龍取りだ。ただすぐに打つと、△7四金で簡単に詰まされてしまう。ここで指された先手深浦九段の次の一手は何か?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問565-1解答)「敵の打ちたい所へ打て」
問題図で何もしないと、▲1四歩と打たれ、△同玉なら▲2二歩成で簡単に詰み、△1二玉でも▲2二歩成から詰むし、▲3二角成の必死でも後手の負けだ。そこで△1四銀とここの急所に銀を埋めたのが実戦。これがしぶとい一着だった。先手にしてみると、詰めろをかけ続けないと、先手玉は一手一手の寄りになってしまいそうで焦らされる。実際、▲2二歩成△同銀に▲5六歩とこの飛車を取りに行ったが、こんな手しかないようなら、通常は後手勝ちで終わるところだ。

本譜は、サクッと△6五飛と切り、▲同歩に△3九角と王手飛車をかけて後手が勝ちになったかと思われた。しかし▲4八飛打がさらにしぶとい受けの一着。今度は後手の焦りを誘うことになる。そして二転三転の大熱戦の末に迎えたのが第2問だ。


(問565-2解答)「安い駒で龍の利きをさえぎる」
ここは△7四歩や金から下段に落とされることを覚悟しなければいけない。となると当然七段目に駒を打って、龍の利きをさえぎるのが先決。打つ駒は角、銀、桂のどれか、そして打つ場所は▲5七、▲6七、▲7七とこちらもほぼ三択。実際、どれが最善かは難しい。試しに激指に指させてみると▲5七銀とこちらに銀を打ってきた。そしてその時の評価は後手優勢。やはりどう受けてもきちんと後手が攻めれば先手が大変ということのようだが、人間同士で、しかも持時間がないとまだまだ波乱が起きる。▲6七桂と安い駒で節約したのが実戦。桂は攻めにあまり使い道がなく、銀を持っていた方が良いとの判断で、人間的で実戦的な判断とも言える。

本譜は、この後、詰めろを続けなければならない後手だったが、秒読みの中指し手に変調をきたした。詰めろでない手を指し、今度は後手玉が詰めろ。これを受けることになり、逆転。しかしその後さらに波乱になりそうな局面もあり、感想戦の時間がなくなる大熱戦となったが、最後は先手の深浦九段が後手玉を即詰みに討ち取りこの乱打戦を制した。

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