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NHK杯に見る受けの手筋

(2017年9月25日出題)

第617問(2017年9月17日 斎藤慎太郎七段-佐々木大地四段戦)
(問617-1)
先手斎藤七段、後手佐々木四段で戦型は横歩取り△3三角戦法。先手が飛車を引かずに▲6八玉と構え、後手が飛車を深く引き△4二玉から△6二銀〜△5一金と構える形で中盤戦に入った。そして、後手が横歩を取った手に先手は▲8四歩の垂らし。しかし、これを受けずに戦いを起こした為、先手の銀得対後手の攻めという構図になり下図となっている。△6二の銀を取った所だが、盤上には△5五角が打たれている。この両取りに対しどうすべきか?先手斎藤七段の指した次の一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問617-2)
後手の猛攻に耐え、少し先手が余せそうな感じで終盤戦へ入った。下図はその最終盤。今、飛車の王手に△6三玉と上がった所だが、これで後手玉はかろうじて詰まない。対して先手玉は△8七角からの三手詰。▲5七の銀が取られる形である為、後手の攻めを完全に切らすことは出来なそうだ。しかし、持ち駒が変われば後手玉が詰むようになるし、また△6七の馬がいなくなれば自動的に先手玉の詰めろも解除される。そこで、ここで指された先手斎藤七段の次の一手は?部分的にはやさしい平凡な受けだが、全体の詰みも見据えた受けの一着。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問617-1解答)「両取り受けるべからず」
何もしないと△9九角成とタダで香を取られるのは痛い。と言って、▲6六銀と受けるのは△3七角成と今度はこちらに二枚換えに来られてこれも先手まずい。そこで▲8一角とこの両取りを直接受けず、飛車取りに打ったのが実戦。△9九角成と取る暇はないので、勢い△3七角成と来るが▲同銀△同飛成と進み、この時、銀を保持しているのも大きく、後の受けに使えて簡単には先手玉は寄らない。
このような両取りには、もちろん取られて厳しい方を受けるのは鉄則だが、厳しさが同じくらいの場合は、他に手があるかどうかも考えたい。なお、激指は▲4八桂というちょっと人間には思いつきにくい手を(人間なら”ひねり出した”と言われる手を)指摘したが、これも△3四飛からの長い変化を読まないと指せない一着だ。

本譜は、△3七角成▲同銀△同飛成と進み、難解で互角の終盤戦が続いた。


(問617-2解答)「持ち駒の入れ替えを見据えた受け」
実戦は、▲8八歩と打ち、△8七角からの三手詰を受けた。基本的な受けだが、相手の歩の利くような所で銀を使うとすぐに取られる危険がある。ただ、この歩は何にも当たっていないし、歩は受けの駒としては弱く一手の価値がないときも多いので注意したい。この局面は、先手に金か角が入れば後手玉が詰み(金の場合は長手数で難解)、あるいは△6七の馬が消えれば先手の勝ち、と言うように、双方の玉の詰み、詰めろが絡み合っているやや複雑な局面。しかし終盤は常にこのような状況になりやすいのでそれらを正確に読む必要がある。

本譜は、△7八馬▲8七桂△同金▲同歩△8八歩に▲5二銀から勝ちに行った。その手順も単純な即詰みという訳ではなかったが、△6七馬が消えると後手に勝ちがなくなるという手順で、(後手も)馬を残して逃げた為、結果として後手玉は即詰み、先手斎藤七段の勝利となった。
なお、その局面を柿木ソフトにかけた所、23手という純粋な詰みもあったがこちらは難解、実戦の勝ち方の方が自然で人間的には分かりやすく明快。
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