第628問(2017年12月10日 稲葉八段-藤井聡太四段戦) |
(問628-1) 先手稲葉八段、後手藤井四段で相掛かりの出だし。しかし▲6八玉と飛車先を切る前に上がったため、後手も△7四歩と一歩を取られる形、最新の研究形に進み、局面はひねり飛車に似た手将棋となった。 その中盤は見応えのあるやり取りだった。一手指した方が良く見える難解な将棋で、そこを先手が抜け出し、やや有利のまま終盤戦へ。下図はその終盤。今△8八で大駒の交換が行われた所だが、後手玉が薄く、どのように補強するか難しい。ここで指された後手藤井四段の次の一手は? (答えはこの下に) |
(難易度・・・ |
(問628-2) この将棋、先手が良くなってからも簡単に差を広げさせない粘りが続いた。それが上の局面から下の局面を見れば良く分かる。後手陣は、金銀四枚を自陣に打ち付け、さらに遠く馬も利かせてある。駒割りは後手の桂得だが、先手の駒は急所に来ており、先手が攻勢を取っている。ここで指された先手稲葉八段の指した一手は?何かを受けなければならないという訳ではないが、攻めるために必要な一手とは? |
(難易度・・・ |
(これより下に解答)
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(問628-1解答)「攻めを見せつつ空間を埋める」 ここで、先手からの攻めで一番厳しいのが、▲4五飛と回り△4三歩に▲3一銀と下段に落とす手だ。そこで受けとしてはいろいろありそうだが、藤井四段は△4三香と香を打って受けた。これは▲4五飛や▲4四銀と上から押さえられる手を防ぎつつ、将来△4六歩の攻めも見た一着。ただ、これでも▲3一銀△同玉▲5二飛があり、これが厳しく、少しでも間違えればすぐにでも終わりそうな局面は続いた。 本譜はこの後の攻めと凌ぎの攻防がすごかった。受けの問題としてはいくつも作れそうなほど頑強な受けの手を連発。先手の攻勢は変わらなかったが、幾度となく押し返し、決め手を与えない終盤戦が見られた。 |
(問628-2解答)「馬筋を止めて、粘れない形に」 ▲2三歩成から攻め込んでも、△8八の馬が△3三や△2二に利いており、簡単には寄らない。そこでじっと▲7七歩と馬の利きを止めたのが実戦。次に▲2三歩成から攻め込めば、今度は△2二への馬の利きがない為、後手玉は寄ってしまう。このように大駒の利きを歩で止める手は実戦でも時々出てくるので特に級位者の人は覚えておきたい手筋と言える。 本譜は、ここで△5二角とさらに怪しい受けを放って、終盤戦は続いた。そして最後は千日手狙いの粘りまで出て先手に食らいついたが、もう一歩届かず、先手稲葉八段の勝利となった。 なお、この将棋の最後は、先手玉にも王手の連続で肉薄した。そこで、持ち駒と局面を若干変えて、詰むように作成したので、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。 |
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