将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ

NHK杯に見る受けの手筋

(2017年12月25日出題)

第630問(2017年12月24日 佐藤天彦名人-久保王将戦)
(問630-1)
この将棋はNHK杯ではなく、将棋の日に行われた「次の一手名人戦」を12月24日に放送したもの。
先手佐藤名人、後手久保王将で、戦型は角交換振り飛車。それも、最近新趣向として出たばかりの5筋を突いた三間飛車からの出だし。その後、向かい飛車対矢倉囲いとなり、この形では良く出てくる生角を打って桂頭の△3四歩を取る形で戦いが始まった。
その後、難しい中盤戦は続いたが、角を縦横無尽に動かした先手が、後手の攻めをせかせる形で徐々にポイントを上げていった。下図はその終盤。数手前、▲5四歩と突き出した手が幸便で後手にとって激痛。▲5三桂が入り先手優勢になっている。対して今△5七歩と一本手筋とばかりに金頭を叩いたところ。ここで先手の応手は?先手佐藤名人の指した一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問630-2)
先手優勢からさらにその差を広げた終盤戦。下図は後手の玉頭を乱した後に▲4一桂成と飛車を取り、後手陣は収拾が付かないと思われるような形をしている。しかしここで辛抱の一着が出た。かなり悪いと思っても、簡単に土俵を割らない終盤での次の一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問630-1解答)「金は引く手に好手あり」
飛車を取れるからと言って、手抜いてこの金を取られてはいけない。そこで逃げることになるが、普通に考えれば玉の近くに引きつけたいので、▲6八金右だ。しかしここでは△5九角がちょっとうるさい。それでも先手有利には違いないが、ここで指された佐藤名人の一着がよりまさる一手だった。それが、▲5九金と引く手。手としては利かされではあるが、飛金取りが残っているので焦る必要はないということ。

本譜は飛車を取ってくれと、△2六角と両桂取りに打ったが、すぐに飛車を取らずに、▲8三歩から遠く▲2九の角を切って陣形を乱したのが巧みな迫り方だった。そして薄くして▲4一桂成と飛車を取ったのが第2問だ。


(問630-2解答)「飛車の打ち込みを防ぐ一段金」
相手に任せて△3七角成と開き直るのも一法だが▲8一飛と打たれるはやはり痛い。また、△7二玉といわゆる早逃げするのも良く出る受けではあるが、ここでは平凡に横から飛車を打たれた時に、合駒がない。受ける形が見当たらないように思えるところだが、ここで久保王将は△7一金と寄って手を渡した。これはなんとも渋い一着で、粘り強い一手だ。ただ正確に迫られるとやはり苦しい。

本譜は、▲8四歩から▲8五歩と玉をつり出して寄せに入った。これに後手も攻防の角を放ったが、今度はその角に狙いを定め、角を手にすると、最後はきれいな即詰みに討ち取り、先手佐藤名人の勝利となった。

先週の問題へ/来週の問題へ

将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ