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NHK杯に見る受けの手筋

(2018年3月5日出題)

第639問(2018年3月4日 豊島八段-稲葉八段戦)
(問639-1)
先手豊島八段、後手稲葉八段で、戦型は相居飛車。最近はやりの後手が角道を止め、居飛車にするという指し方に、先手は早繰り銀で対抗した。そして▲3五歩と開戦。下図はその中盤、▲3四歩の角取りに△7七角成と角を交換し、△5五角と打ったところ。無条件に△1九角成と香を取られてはいけないが、安易な受け方はさらなる攻めをくう。ここは丁寧に読み、どう応対したら良いか。先手豊島八段の指した一手は?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問639-2)
中盤から終盤と、難解で力のこもった戦いが繰り広げられた。下図はその終盤。今、▲7二金と張り付き、次の▲6二金から▲5三飛成が受けづらく先手が抜け出したかにも見える。しかしここで稲葉八段はあまり見ない手筋を放ってこの窮地を脱した。ここで指された後手稲葉八段の指した一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問639-1解答)「攻め合いも考慮した受け」
△1九角成を受ける為の普通の一手は▲3七角。そして△同角成▲同桂となれば、ゼロ手で桂を跳ねることが出来、良いことが多い。しかし、もちろんそれは後手の読み筋で、この桂がここでは逆に攻めの目標になる。たとえば、(桂を跳ねさせた後)単に△5五角と打ったり、△4四歩と打ち、もし▲5六銀なら△1五角から▲2七飛に△3六歩がありここまで進めば後手優勢。と言うわけで、▲3七角とは受けづらい。次に考えられるのは▲4六角か▲4六歩か本譜の▲6六角。▲6六角は、もし△1九角成なら▲1一角成の攻め合いも考えた受けだ。また、角交換した時、▲4六歩と突いてあるのが良いか▲6六歩と突いてあるのが良いかの判断も必要で、これは微妙で難しい選択になる。

本譜は、後手が7〜8筋で動いた後、今度は先手が▲5五角と打ち返し攻勢を取った。そして角銀交換から、▲5六飛と飛車を中央に振り、第2問へと続いている。

(問639-2解答)「珍しい受けの手筋-歩の突き出し」
持ち駒がたくさんあれば簡単に受かる局面でも持ち駒がないと受からないという場合は多い。ここでも角しかない為、▲6二金△同玉▲5三飛成を受けるのは、△5四角と受けるか、△9五角と王手で銀にヒモを付けるかしかないように見える。しかし、ここで稲葉八段は△5四歩と歩を一つ突き出して受けた。これは非常に珍しい手筋。▲同飛なら△6三玉▲6二金△5四玉だ。もし▲3七桂と跳ねていれば成立しない薄氷の受けとも言えるが、終盤は常に読みの世界でもある。

本譜はそれでも難解な終盤戦が続いた。しかしそこを抜け出したのは後手で、最後は一気に先手玉を長手数の即詰みに討ち取り、後手稲葉八段の勝利となった。

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