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NHK杯に見る受けの手筋

(2018年5月7日出題)

第647問(2018年5月6日 上野五段-松尾八段戦)
(問647-1)
先手上野五段、後手松尾八段で戦型は角換わり。先手の腰掛け銀に対し、後手は銀を進出する前に桂を跳ね、早々に△6五桂と仕掛けた。これに先手も▲2五桂と反撃し、その隙を狙って今度は後手が馬を作る。下図はその中盤から終盤の入口。先手が▲1一角成と香を取り、後手は△2五馬と桂を外したところ。ここは非常に手が広い。現時点で△6六桂は馬が利いており大丈夫だが、△3三桂と跳ねられると遠く△8一飛も利いてきて忙しい。実はここは何が正解なのか良く分からない。そこで実戦で上野五段の指した一手、また、激指によるほぼ互角と評価した手を五つ。手を当てると言うより、どのように考えるべきかということで問題にしてみた。
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問647-2)
上図から少し後手が良さそうなものの先手も追撃し、局面は際どい。今▲6四歩と取り込み、次に▲3二馬△同歩▲4二金の詰みを狙われている。駒を渡さずに詰めろを掛け続けられれば問題ないが、それも難しくここは一手受けに手を入れたいところ。ここで指された後手松尾八段の指した一手は何か?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問647-1解答)「焦点の歩」
ここ解説では、△3三桂と跳ねられ、△6六桂や△7二金(飛車での馬取り)を見られる手を説明し、▲8二歩△同飛に▲5五馬と引く手や▲6六馬などを話していた。なので、「なるほど、馬引きが第一感か」と思っていたところ、実戦は▲3六歩。これも一見うまそうな手に見えた。馬で取ると▲3四桂が残り、銀で取ったり△4六銀とかわすのでは馬筋が止まる。敵陣で使う筋とはやや違うかもしれないがこれも焦点の歩の一種。ただこれに構わず△3三桂が強手だった。▲3五歩と銀を取るのは、△6六桂が厳しい。と言うことで、実戦は▲8二歩から▲6七金右と受けたが、打った歩で銀を取れないのではやや疑問だったのかもしれない。
ちなみにここは何が正解か分からなかったので、激指に推奨手を聞いたところ、次のようになった。
▲5五馬(-185)▲2六歩(-206)▲2九香(-254)▲6四歩(-261)▲8二歩(-261)▲6七金右(-261)
激指の最善手は▲5五馬だったが、人間的に見ても「馬は自陣に」の格言通り、引いておいた方が負けづらいと言えるのかもしれない。


(問647-2解答)「逃げ道の開け方」
攻めるなら△6六歩は筋だが詰めろになっておらず▲3二馬で事件だ。それに簡単な受けが見えるだけに、ここは一手受けに手を入れたいところ。その手も普通は△5一金かと思っていた。逃げ道を開けながら△4二に利かせる自然な一着だからだ。しかし実戦は△7二金。これは同じ逃げ道を開けるのでも△5一金だと6三の地点が薄くなるのを気にしたのかもしれない。

本譜は▲3二馬から▲2三飛成と攻め込んだが、これが詰めろになっておらず、また角を渡したのが痛かった。△6六歩が詰めろになってしまい、受けも利かず、最後は先手玉を即詰みに討ち取り後手松尾八段の勝利となった。

その最後の詰み、実戦は5手で投了となったが、実際は17手詰。余詰め(収束部)もほとんどないきれいな手順だったため、そのまま「今日の実戦の詰み」として出題したのでそちらもどうぞ。
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