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NHK杯に見る受けの手筋

(2018年5月28日出題)

第650問(2018年5月27日 井出四段-近藤誠也五段戦)
(問650-1)
先手井出四段、後手近藤五段で戦型は先手の角道オープン四間飛車。ただ、先手がすぐ向かい飛車に振り直したため、後手も穴熊志向の駒組みを諦め左美濃に組み上げた。そして開戦は向かい飛車らしく振り飛車の▲8六歩から。その後、巧みに飛車交換に持ちこみやや振り飛車の良さそうな局面で中盤戦へ入った。下図はその直後で、今△6五歩と突いたところ。解説でも話していたが、この後の進行として何も考えなければ▲8二飛と飛車を下ろし、△6六歩▲5八銀△6七歩成▲同金△9九角成▲8一飛成と進みそうなところ。しかし先手の井田四段は振り飛車にとってもっと良い手順を披露した。先手の指した次の三手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問650-2)
上図から振り飛車優勢の終盤戦になり、もう一息で寄せ切れそうな局面にまで持っていった。しかしチャンスを逃し後手に凌がれ形勢不明に押し戻されたのが下図の局面。後手から見ると、凌いだと言ってもまだ局面は難しい。受けに不都合な大駒しか持っておらず、玉の側に張り付かれているからだ。ここで後手の指した次の一手は何か?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問650-1解答)「一手遅れても歩切れという主張」
▲6五歩と単に歩を取ったのが実戦であまり見ない筋。もちろん、初心者の人に「突かれた歩は取るのが基本」と教えてはいても、このような局面では、一手パスになりかねない。しかし△9九角成にじっと▲8八歩と馬の利きをさえぎった局面は、一時的に香損とは言え相手は歩切れで早い攻めがないだろうという主張。先手の攻めは飛車を下ろし桂香を拾っていければ良いだけなので分かりやすい。

本譜は△5五歩とやや離れた所から動いたが、先手は飛車を下ろし駒損を回復すると、後手の攻めの間隙を縫って後手玉に襲いかかった。そして寄せきる手段もありそうな所まで持っていったが、それを逃すと龍を切らざるを得なくなり形勢は混沌、第2問の局面になった。


(問650-2解答)「攻防の角」
実戦、△8六角と打ったのが良く出てくる攻防の角。▲5九の金取りであると同時に、△3一△4二へ利かせている。(角の代わりに)部分的には△3五歩と要の桂取りに歩を突き出すのも見えるが、▲4二金と引かれると△4三の銀取りが受けづらい。この▲4二金や▲3一銀を受けつつ、ぬるい手なら△5九角成と金を取って攻め合いも視野に入れた攻防手だ。

本譜は▲6九金と我慢したが、△8六角の利かしが通った形でいわゆるゼロ手で受けに手を入れたことになった。それでも実戦的には難解で、最終盤には詰むや詰まざるやの局面が出現。しかし後手に「詰めろ逃れの詰めろ」が出ると勝負が決まり、後手近藤五段の逆転勝利で終局した。

本局最後、(詰めろ逃れの詰めろなので)後手玉は当然詰まない訳だが、持ち駒を少し増やし詰むように修正し、「今日の実戦の詰み」として出題したのでそちらもどうぞ。
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