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NHK杯に見る受けの手筋

(2018年5月21日出題)

第649問(2018年5月20日 杉本和陽四段-斎藤慎太郎七段戦)
(問649-1)
先手杉本四段、後手斎藤七段で戦型は先手のノーマル三間飛車対居飛車穴熊。この将棋、途中秒読みを省略して手だけが進むので千日手局じゃないだろうな?と思っていたら、総手数218手、1時間半の時間いっぱいに収めた大熱戦の一局だった。その一戦は中盤、双方の銀が中段に進み、どちらが主導権を握るか難しい折衝が行われたが、最初にリードしたのは先手だった。小技を駆使し、先手の駒だけがさばけるような形に持っていき攻勢を取った。下図は今▲7七桂と跳ねて、後手の動きを待って存分にさばこうとしているところ。ここで後手の指した一手は?何が正解かは分からないが、見ていて思わず「ほう!」と感心した一着。後手斎藤七段の指した次の一手は?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問649-2)
上図から飛車交換になり、さらに後手の穴熊に食い付くとギリギリの攻防は続いた。そして一旦は食いつきが成功したようにも見えたが、ここで土俵を割らず逆に自陣に駒を投入、再構築して逆転、今度は後手が凌ぎきったかに見えた。しかし先手も辛抱。駒損しないように、後手についていくと、再び形勢は混沌、初めに書いたように長手数の大熱戦となった。下図はその終盤。終局直後にチラッと話していたが、この少し前大駒を切らずに▲1五香と走っておけば後手玉を寄せ切れたようだったが、これでも受けが難しいと見て▲2一金と桂を取りながら、次に▲2二角(銀不成)を見せたところ。先手玉は詰まないため受けるしかなく、その受けもほぼ一つしかない。終盤に出てくる受けの手筋、後手斎藤七段の指した次の一手は何か?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問649-1解答)「飛車交換を見越した金底の歩」
打たれた飛車に対し、「金底の歩岩より固し」という局面は良く出てくる。しかしここはまだ飛車交換にすらなっていない。こういう所に歩を打ってしまうと、先手も飛車交換にしてこないし、△5七歩の攻めもなくなる為、基本的にはあまりお勧めする先受けでもない。しかし、経験と読みでこの歩が良いと判断したのだろう、斎藤七段は先受けの底歩を打って先手の攻めを待った。

ここから先手も、この歩を悪手にすべく穴熊玉に殺到、歩の内側から攻める事に成功したが、後手も自陣に駒を投入して頑強に抵抗、局面は後手良しに傾いた。しかしそこからさらに長い終盤戦で、先手が再び逆転、もう少しで後手玉を寄せきることに成功しそうだったが、後手に受けのある形で第2問へ続いていく。

(問649-2解答)「王手で凌ぐ筋」
△2二の地点に駒を足しても、先手の方が一枚多い。こういう場合は逃げ道を開けるのが常套手段。しかしその逃げ道も、△2五歩では▲2二銀不成△2四玉▲1三角で簡単に詰み(▲2二銀不成に△1二玉なら詰まないがこちらは簡単な必死)。と言うことで部分的に受けはない。しかし、終盤で良くあるように相手の玉との関係で受けることは出来る。それが△6四角でこの一手とも言える一着。先手が王手を防いだら△3一角と取れば、△2二の地点にも利いてくるため受けになっているという訳だ。

ただ本譜はそれでも難しかった。その最終盤には後手玉に即詰みも生じたようだがこれが難解。その詰みを逃し、最後は先手玉が即詰みに討ち取られ、二転三転した大熱戦の一局は、後手斎藤七段の勝利となった。

その最後の逃した後手玉の詰みをそのまま「今日の実戦の詰み」として出題したのでそちらもどうぞ。なお、21手と長く、変化・紛れも多い。収束5手前には余詰めもあるがそのまま出題している。
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