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NHK杯に見る受けの手筋

(2019年8月26日出題)

第712問(2019年8月25日 久保九段-藤井聡太七段戦)
(問712-1)
最初の一局は千日手となりこれは先後を入れ替えての指し直し局。先手久保九段、後手藤井七段で出だしの戦型はノーマル四間飛車。その後、早い段階で角道を開け角交換。先手は石田流に、後手は銀冠にして駒組みを進めた。中盤の細かい折衝の後、後手が自陣角を打ち動いたがそれに乗じて先手も角を打ち込み、難解な中盤から終盤戦へ。下図は再度の角交換後、▲1四歩と伸ばしたところ。ここで後手はどう指したら良いか?ここで指された後手三手一組の手を。
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問712-2)
終盤に入ってから後手は巧みな攻めでリードを奪った。しかし先手も容易に崩れず際どく粘る。下図は、▲4五銀と香を取った手に対し△同桂と後手が取り返したところ。直接的に△4七香は厳しそうだが、それ以外にも様々な攻めが見えるだけにどこを受けたら良いか悩みそうだ。そこでどう受けるのが一番耐久力のある受けとなるか?先手の指した次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問712-1解答)「香をつり上げる手筋」
実戦の進行は、△1五歩▲同香△1四香。単に△1四香と取り、▲同香と取ってくれるならその方が一歩損しないで良いが、▲1五歩△同香▲同香△1四歩に他の手を指されてしまう。そこで、一歩損しても香をすぐに取れるように△1五歩と香をつり上げたのが本譜。この△1五歩のような手は違う意味でも良く指される。たとえば、桂を持っていて△1六桂を狙い、△1五歩▲同香とつり上げてから一旦△1二歩と受けておく。ただ、一歩よけいに使うので、今回もそうだが歩の数が少ない時にはそれで良いかどうか常に考えて指す必要がある。

本譜は端の攻防が収まった後、小技を駆使し後手が飛車を成り込むと有利になり最終盤の戦いが繰り広げられた。しかし、先手も粘りを発揮し、混戦の始まりが第2問以降になっている。

(問712-2解答)「飛車筋を止める一段歩」
ここで▲6九歩と龍筋を止めたのが実戦。部分的には良くある受けの手筋で、ここだけを見ればやさしい問題だ。しかし、実戦では△4七香以外にも△6五銀と食いちぎったり、△1七に打ち込む手などいろいろ考えなければならず簡単ではない。ただ、いずれの場合も一番強力なのが龍の利きなので、このようにさえぎっておく手は攻めの威力を半減させる意味でも大きい。

本譜はこの後もギリギリの一手差争いが続いた。後手が有利だったと思われるが、最終盤に勝負手連発で逆転、馬を田楽刺しの形で動けなくして自玉が詰まないようになり、先手久保九段の勝利となった。
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