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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年4月12日出題)

第795問(2021年4月11日 伊藤匠四段-松尾八段戦)
(問795-1)
先手伊藤四段、後手松尾八段で戦型は相横歩取り。但し、後手があまり出てこない手を指したのに対し、先手も踏み込み、どこまで研究範囲なのか分からない序盤から一気に終盤戦へとなだれ込む乱戦となった。局面は、後手の反撃が厳しく後手有利から優勢へ。そして下図、今△6九飛と飛車を下ろされこれが非常に厳しい。AIの形勢判断も後手勝勢の90%。事実上受けはないと思われるところだが、ここで「なるほど」と思わせる幻惑の一着を指した。ちゃんと指されると形勢が挽回する訳ではないが、相手を迷わす受けも終盤戦での戦い方の一つ。ここで指された先手の次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問795-2)
上図から、先手玉に対しもう少し明快な攻めがあったのかどうか分からないが、後手玉にも詰めろがかかり、見た目には少し怪しくなっている。下図は△2九飛成の王手に▲2八歩と受けたところ。先手玉を詰めてしまえればことは簡単だが、▲3五の金がいて詰みはない。となると▲2四銀の一手詰を受ける必要がある。ここではどのように受けるのが良いか?後手の指した次の一手は?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問795-1解答)「焦点の軽い歩突きで詰めろをかわす」
△7八飛成からの5手詰を防ぐには普通は▲5九金などがあるが、△8四に角がいるため△5七角成から詰んでしまう。飛角三枚が非常に良く利いており、AIの形勢判断からも事実上受けのない形。しかしこうした所で、幻惑の一手を指せるかどうかも勝敗に大きく影響する。ここで指された手が▲6六歩。直接には△7八飛成からの5手詰を防いでいる手で、同時に角筋も止める味の良い手。ただ一つしかない明快な寄せより、複数あるどれでも良さそうな手が残っている方が間違いやすいと言える。

本譜は飛車切りから決めに行くか、△2九飛成と桂を取って安全に迫るかなどいろいろありそうな所だが、△5九銀▲3九玉に△6八銀成と駒を取りに行った。もちろんそれでも決して悪い訳ではなく形勢は変わっていないのだが、▲6六歩が功を奏し、人間同士ではちょっと怪しくなったと思えるのが第2問である。

(問795-2解答)「玉頭戦の戦い方」
△2三銀と受けるのは普通だが受けただけの手で、▲5二角成がまた詰めろになり形勢も混沌。実戦△2四金と相手の金に当てて打ったのが力強い受け方で、怖い手だがこれでAIは後手勝勢。ただ、見ている時は、ひと目▲4四銀△同歩▲2四金△同玉▲2五金の筋が見えるだけに大丈夫なのかと思う受け方。実戦、先手の指し手は▲2六金で、AIも90%以上の後手勝勢と評価していたので▲4四銀からの攻めもダメなのだろうと思っていたが、感想戦ではその手順に言及。しかも結構難解で、そう指していればまだ勝敗は分からなかったかもしれない。但し、常に先手玉には難解な詰みが生じており、正確に指せば後手勝ちとのことのようだ。

本譜は、先手も玉頭を厚くして後手玉に詰めろをかけることは出来たが、最後は大駒の威力で先手玉を即詰みに討ち取り、後手松尾八段の勝利となった。
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