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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年7月5日出題)

第807問(2021年7月4日 渡辺和史四段-井上九段戦)
(問807-1)
先手渡辺四段、後手井上九段で戦型は相居飛車。先手の矢倉に、後手は△3三角から△4三銀と雁木風に構えた。ガッチリ組み合った後、先手の動きに乗じて後手が銀を繰り替えるとやや模様の良さそうな局面に進む。その後、先手も駒を繰り替え3筋から戦端を開く。下図は▲2五歩△同歩に今▲2四歩と垂らしたところ。持ち駒は歩しかないのですぐにつぶれるという訳ではないが、この歩をそのままに戦いに入るのは危険だ。そこでどうするか?ここでは受けの手として味の良い一着がある。実戦で指された後手の次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問807-2)
上図から先手が一気に攻め込んだ。途中、千日手になるかと思われる箇所もあったが、先手が手を変え、少しずつ有利に。下図は今▲5三歩と垂らしたところ。間合いを計った好手で、こうした手を指されると受け切るのも容易ではない。ここで後手の指した次の一手は何か?ここからの実戦の進行を三手まで。
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問807-1解答)「中途半端な銀を引いて守りに使う」
ここでは△3四銀引きが第一感。△4五銀自体が役に立っていないという訳ではないが、相手の玉からは遠く、また自陣の守りとしてもやや中途半端。こうした駒を引きながら特に相手の角に当てながら守りにつかせられるというのは味の良い一着と言える。

本譜は、ここで▲4四角と一気に攻めに出た。△同銀に▲3四飛で角銀交換の駒損でも、先手陣が固く▲2四歩の垂らしもあって、評価は互角。この後、千日手になる可能性もあったが、先手が手を変え、銀の打ち込みから駒をはがして攻め立てた。そして徐々に有利になり迎えている終盤が第2問である。

(問807-2解答)「相手の駒に当てて強く受ける」
たとえば△4一銀など▲5二歩成を受けるだけの手というのは受けとしては弱い。持ち駒を投入しても相手陣への攻めに問題なく、そこだけ凌げば良いという時ならそれもあるが、このような局面では相手の攻め駒に強く当てて受けるのが勝負のコツ。もちろん攻める方も、▲同金△同玉とはしてくれず、▲4四歩とつなげてくるが、そこで△3四銀とかわしながらまた金に当てるのが筋で、なんとか先手の攻めを振りほどこうとした。

しかし本譜は、▲5二歩成△3一角に▲4二銀が重厚な攻め。スピードを必要とする攻め合いではまずくても重い攻めは遅くても切れない。従って切れるかどうかという攻めの時は、重い攻めの方が良いことが多い。この時、AIの評価値は80%を超え先手優勢だが、一手のミスでひっくり返るのが終盤戦。その終盤戦をきっちり攻めきり、先手渡辺四段の勝利となった。
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