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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年8月30日出題)

第815問(2021年8月29日 松尾八段-三浦九段戦)
(問815-1)
先手松尾八段、後手三浦九段で戦型は横歩取り。ただ、後手は△3三角と上がらず、△4一玉から△5一金を優先し、先手も▲5八玉から▲3六歩〜▲3七桂と攻めの態勢を築く。そして僅か27手目、先手が▲2三歩成から▲3一飛成と強襲をかけ、一気に終盤戦へ突入した。下図はその直後。今、▲2四歩と急所の叩きを打ったところ。△同金は▲2二角成から▲7七角の王手飛車。△3三金は▲同角成△同角に▲2三歩成が詰めろ角取り。△8八角成は一旦▲2三歩成が詰めろで入る。攻めが決まったかにも見えるが、AIの評価値は後手有利の60%弱。つまり正確に受ければまだつぶされないと言う判断。ここではどのように指すべきか。後手の指した次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問815-2)
上図から後手も反撃し、AIは後手有利の60%前後で推移。しかし、徐々にその差を広げて行き70%から80%を超えた。下図は▲3五桂に一旦△2四金と受けたところだが、角一枚ではまだ攻めもなく△3八金▲同金△4九銀が厳しい。そこでどう受けるか?まだまだ後手優勢には変わりないが、横歩取りの終盤には良く出てくる粘りの一着がある。相手の攻めを難しくした先手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問815-1解答)「王手飛車をかけさせた後の読み」
ここで△2四同金はハッとさせられる一着。と言うのも▲2二角成から▲7七角で純粋王手飛車。先手の攻めの本線とも言える手順で、相手の読みを真っ向から否定している。三浦九段はこの後の局面の形勢判断をし、一瞬銀損しても△2八歩成で取り返せるので、これでやれると王手飛車をかけさせた。

本譜はその読みが正しく、△2八歩成とと金を作った局面は後手やや有利。そして最終盤は80%を超えるまでに行き、後はどのように寄せるかという局面が第2問であったが・・・。

(問815-2解答)「上部脱出の逃げ道を開ける」
ここで▲5六歩と突いた手がしぶとい一着。部分的には、単に逃げ道を開けただけの手とも言えるが、横歩取りには時々出てくる類の手で、この一着で攻めが格段に難しくなっている。検討すれば(感想戦でも)、△3八金から△4九銀でも後手優勢は変わらなかったが、逃がしてしまいそうな形と、▲2三への打ち込みや▲4三桂成が詰めろになりそうなので実戦的には金を渡す手順は指しにくい。

本譜は△5四銀から△6五桂としばったが、▲6六歩が「寄せられたら仕方ない」という勝負手に後手が乱れた。一時は後手勝率90%を超えたが、70手目△6六香と打った瞬間先手勝率90%に大逆転。怪しい粘りが功を奏し、先手松尾八段の勝利となった。
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